ほめぴえ
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昼行灯
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柳田邦男『砂漠でみつけた一冊の絵本』2025年

2003年「今、おとなこそ絵本を」というキャンペーンを著者が発起人となって打ち出されました。21年を経た絵本にまつわるドキュメンタリー&エッセイの文庫化です。

この背景として著者は「カネとモノを第一とする人々には、詩人は言葉遊びをしているだけに見えるだろう。だが、詩には世界に色彩を加えて生きる力を湧き立たせる言葉を響かせる力がある。心と言葉の危機が人々を覆いつつある今、絵本も詩に劣らぬ心の再生の役割を果たす可能性を秘めていると思う」というような事を述べています。

一行の言葉の力の下には数万文字を超える下地があってこその大人の読み方でした。
三上修『身近な鳥の生活図鑑』2015年

著者は電柱鳥類学という都市部の電柱と電線を生活の拠点としている鳥を専門としているという事を以前ラジオ番組で知って手頃な新書があったので読んでみました。

内容はスズメとハトとカラスの三本柱です。

著者の主張する「身の回りにいる生き物がわからなければ、その価値も感じられません。知らないものが消え去っても何の痛痒も感じません。こういう時代の中で、スズメのようなわかりやすい鳥が身の回りにいることは、とても大切な事だと思うのです」に共感します。

知識としては雑学ですが、季節の移ろいを感じて暮らしに楽しみを見出せるのなら、これもひとつの教養と言えそうです。
クレア・キップス/梨木香歩[訳]『ある小さなスズメの記録 人を慰め、愛し、叱った、誇り高きクラレンスの生涯』2015年

障碍によって親鳥に見離された雛雀と彼を拾い育てた老ピアニストの記録、と書くと感動を誘うドキュメンタリーっぽい語感が漂います。

私としては生老病死に対しての感傷的方面ではなく「知的生物には社会構成主義に基づく考え方の形成があるものだなあ」というinterestingの方面で読んでいました。

これは飼主としての従属的矯正を行わないこそ、生活の上での様々な行動実験を試みているあたりの話になります。

とは言え、動物の学習行動としての刷り込みとは強固なものである事が伺えますね。
冨原眞弓『ムーミン谷のひみつ』2008年

シリーズから特徴的なエピソードを選び出し、キャラクターごとに解説した入門書です。ムーミンエコバッグ(もらいもの)を長年使っていますが、作品をあまり知らなかったもので…。

驚いたことに、ほとんど全てのキャラクターの名前は固有名ではなく種族名か通り名でした。

それと程度の違いこそあれ各位「自分にしか興味がない」という内面性が意外です。

そうすると個性的というより属性的、世界観としては『インサイド・ヘッド』に近い気がします。

作者トーベ・ヤンソンのアルカディアはブルジョアとボヘミアン、審美と実利など対が渾然一体とした複雑な世界でした。
時間が限られている事を念頭に置くと、現代においてやりたいことを全てする事は不可能だと思ったほうがよいですね。「何をやるか」を考える際には「何をやらないか」という選択が必然的について回ってくることになります。

私の中では、タイパという概念について「欲望の資本主義の落とし胤」という感覚が強くなりました。
コーヒー生産量は現地の農業革新で一昔前の2倍近くに上がっているそうなのですが、頭打ちでコレ以上の収穫量の増加は期待できないようです。それ以上にアジア圏の経済成長から急激な需要拡大が進んでいるので値上がりし続けているらしいです。
ハロウィンは、クリスマスと比肩するまでになったのだなあ……とカボチャとガイコツのイルミネーションを見てふと思う事は「ハロウィンってなに?」という本邦での立ち位置なのです。メキシコの死者の日とはまたニュアンスが違いますしね。

どうせよくわからないお祭り騒ぎならイースターのウサギとタマゴの方がほのぼのしていて良くないですかね??かわいいし。
阿刀田高『アラビアンナイトを楽しむために』昭和61年

バートン版千夜一夜物語の副読本のような一冊です。ガリバーは愚か者という意味らしいですが、こちらに出てくる人物の方がそれらしいと言いますか、粗忽者と言いますか「石のほうが多い玉石混淆(例外の方が多いルールブックに語感が似て念能力みたいだ)」という感じでした。

40という数字は中東では「いっぱい」という意味らしいです。日本では千、トルコだと千一ですね。

「インシャラー(何事も神様の思し召し)」が全ての根底にあって、逸話が事実か否かも「神のみぞ知る」だそうです。
『こんな話を聞いた』だったら積んである中にありますね。積読が多すぎていつ読むか分からないですが😅
他も積んであるのですが、初めて読んだんですよ、阿刀田高😅
阿刀田高『あなたの知らないガリバー旅行記』昭和63年

ジョナサン・スウィフトのガリバー旅行記の解説本です。正しくは『ルミュエル・ガリバー著・世界のさまざまな遠方民族への旅』で「リリパット国渡航記」「ブロブディンナグ国渡航記」「ラピュータ、バルニバービ、ラグナグ、グラブダブドリップおよび日本への渡航記」「フウイヌム国渡航記」の四部構成で、実話である体裁を装っているのだそう。

実際には冒険譚ではなく風刺小説であって、人間の根源的部分では今も昔も変わらない事が伺えます。

解説と共に与太話から学ぶ事も多いのですが、何か実生活の役に立つかと言われると何の訳にも立たない所が良いのですよね。
米澤穂信『栞と嘘の季節』2025年

前作の続編になる猛毒の栞を巡る長編小説です。一章事の展開が良くてダレずに一気に読切る事が出来ました。

また、男子二人組に瀬野という女子が加わる事で、物語にこれでもかってくらいの色彩が加わって鮮やかになったように感じられます。

幾重にもなった嘘の下にある人物の内面を掘り下げる事が本作の核心だと思いますが、それにしても嘘が多過ぎます。加えて、尋ねられなかったから言わなかったというような隠し事も多い。

しかし、次の展開でそれらをあっさりと詳らかにしてしまう事で、文筆としての躍動感さが演出されていると感じます。

エピローグに反する爽やかさを伴う快作でした。
米澤穂信『本と鍵の季節』2021年

図書委員の高校生二人組を主人公としたビブリオミステリーです。

作者らしいドロッとした後味の悪い青春白書かと思っていたのですが、案外淡々としていた事が意外でした。

作中にある「言いたいことだけを言うのは難しい。言いたくないことまで伝わってしまう。言いたいことの方は、たいてい歪んでしまうのに。」という一文が本作を見事に表しているものと思います。

暴き過ぎてしまう。理路整然とした成り行きと回収されていく伏線。そして歪み(ミスリード?)。書き下ろしの最終話で各短編を収束させる手腕が見事でした。

ただキャラクター小説としては他のシリーズより弱いかな。
山口周/長濱ねる『未来を照らすコトバ ビジネスと人生、さらには社会を変える51のキーワード』2025年

竹田ダニエル『ニューワードニューワールド』では新しい言葉の社会的背景と内包される価値観の変遷が分析されていますが、これを文化的だとすると本書は社会的な立ち位置から「言葉が世界を変えていく感覚」のアプローチを行っています。

ビジネス書には著者の経験や想いを通して、思考のあり方や社会の見通し方、生活に根ざした深い知恵が息づいています。これは読書の意義として存在する「概念のレンズ」を得ることで、より高い解像度の世界認識へと繋がります。

その為に必要な事は謙虚さと素直さだと改めて思いました。
桑原茂夫『不思議の国のアリス完全読本』2015年

2020年に催された美術館の企画展「不思議の国のアリス展」に足を運んで早5年…知ってるようで意味が分からないなと思っていた作品の解説書をやっと読めた次第です。

この作品がチンプンカンプンな理由は不条理劇(著者によるとサミュエル・ベケット『ゴドーを待ちながら』を彷彿とさせるとか)である点に尽きるかと思います。他にもUKイングリッシュを用いたナンセンスな言葉遊びを日本語に翻訳している技術的背景、ネタ元のマザーグースに馴染みがない等の文化的背景も挙げられます。

あらすじ、時代背景と共にジョン・テニエルの挿絵についての解説も高評価です。
齋藤孝(選・訳)『サン=テグジュペリ 星の言葉』2006年

アフォリズムとして時々に各々響く言葉は変わるのでしょうが、現在の私には↓

物質的な財産のためだけに働くことで、ぼくたちは自ら牢獄を築くことになる。生きるに値するものを何ひとつ手に入れることのできない灰のようなお金によって、ぼくたちは自分を孤独の中に閉じ込める。

世界恐慌の真っ只中に生きた人間が脱GTPを訴えているのです。考案したサイモン・クズネッツも警鐘していますが、確かに幸福の多様化の先の指標としての疑問がありますね。

心にぶっ刺さる言葉の多かった『人間の土地』が読みたい本のリスト入りとなりました。
マックス・ウェーバー『職業としての学問』『職業としての政治』1980年

共に1919年に大学生に対して行われた公開講演です。内容は難しくはないのですが、言い回しの複雑さが難読やもしれません。

前者は、学問や仕事のもつ意義ひいては死とは意味のある現象であるか否か?など実相に対する洞察に感銘を受けると同時に背中を押されるような心象が残ります。

後者は政治哲学ですね。成り立ちと構造理論を主題とする時の必然的帰結が前回ポストした内容になります。

著者の言葉から推すには、ここにある類の思想をドストエフスキーとトルストイは文学として上手に表しているそうです。難解と云われる理由ですね。
今夜は雨の予報なので月は出そうにないですね。

モスの月見「パリとろっ月見フォカッチャ」と裏月見「サクじゅわメンチカツチーズ」にアイスティーで2時間くらい滞在してしまいました。

白身が割れない半熟たまごに感動したっ!!なにこれ…すごい。
「政治にタッチする人間は、権力の中に身をひそめている悪魔と手を結ぶもの」である。しかもこの悪魔は恐ろしくしつこく老獪である。「もし行為者にこれが見抜けないなら、その行為だけでなく、内面的には行為者自身の上にも、当人を無惨に滅ぼしてしまうような結果を招いてしまう」。可能・不可能の一切の結果に対する責任を一身に引き受け、道徳的に挫けない人間、政治の倫理がしょせん悪をなす倫理であることを痛切に感じながら、「それにもかかわらず!」と言い切る自信のある人間だけが、政治への「天職」をもつ―マックス・ヴェーバー『職業としての政治』より

あの人はなんだか『ダンジョン飯』の「狂乱の魔術師」と重なってみえます。
新作アニメ二本観たら二本ともスプラッタだったので「いつの間にか公共電波でokになったのか〜」と本筋から外れたゆるゆるな感想です。

ところで、一昔前「赤くなければいいっしょ」とアメリカナイズされていた飛び散る緑色の何かは、インドの春節にて大気汚染として問題視されたる爆竹🧨に姿を変えている有様です。

「パッケージを緑のペンキでカラーリングしてあるからエコっぽくて大丈夫っしょ」って思考法がアメリカナイズされているなあ、と……全然大丈夫じゃないだろ?!
#つぶやき養生

十月です。「冬の養生は頑張らない」とのこと。

いきなりの「焼き柿」とは聞いたことがなかったのですが、焼いて食べれぬものもなし…美味しいのかな?(柿は好きではない食物なのです)

保湿の季節になってきたので夜は早く寝ましょう。潤いは夜間に作られるそうです。
箸袋が栞になっていることもあります(笑)
三重大学教授(人類学者)深田淳太郎さんの「お金って何だろう?」の回を聞いて‼️っとなりました。

パプアニューギニアでのフィールドワークでの話なのですが、仕事とは自分の生き方に対するプライオリティなんだなと当たり前がひっくり返ります。

ライフワークバランスとは言いますが、貨幣経済に毒され過ぎていることを痛感しました。

open.spotify.com/episode/08Qb...
#90 お金って何だろう?
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余談ですが、作中の舞台となる櫃洗市のモデルが本作で特定できます。

・雪が降っても積もることは滅多にない
・国立大学医学部がある
・空港がある
・飛行機なら東京まで1時間程度だか、船と陸路では一日がかりで臨まなければならない

以上からは四国か九州だろうなあと漠然と思っていましたが、別段特定しようとは思っていなかったのです。既に公言されていたのかもしれませんが、それも調べもしていないです。

しかしながら、四六時中犯罪が起こり、倫理観ゼロの爛れた関係が溢れ、それが原因でまた事件が起こる「殺人シティ」のモデルとして聖地にされても困惑する事この上ないだろうと思うので言及しない事にします。
西澤保彦『異分子の彼女 腕貫探偵オンライン』2025年

コロナ禍でオンライン業務に切替ての腕貫さん(仮)による本格安楽椅子探偵の真髄を魅せる3篇です。

書影のアライグマ🦝的なモノは櫃洗市のゆるキャラ「ヒツセンくん」だそうです。

読み終えると結末から逆算して練り上げられた構成に唖然とします。表題作「異分子の彼女」はホラーと言っても過言ではないですね。

「焼けたトタン屋根の上」は古い映画をインスパイアした作品であり、読後にはタイトルをトリックのオマージュとして成立させている事に震えました。

「そこは彼女が潜む部屋」は丁寧な前振りひとつでこんなに話の飛躍が可能なものかという驚きがあります。