#羊皮紙工房コレクション
羊皮紙研究のスペシャリスト・羊皮紙工房さん作の「中世の筆写台(レプリカ)」。2024年に開催されたコレクション展示会のために製作して頂いた逸品です。
完全な再現ではないのですが、当時の彩色写本などに残っていた写字生の挿絵を元にご本人が自作で作られました。コンパクトに持ち運べるように組み立て式にしているそうです。

筆写台は45度~60度ほどに傾斜しているのが特徴で、首の疲れを最小限に抑えるとともに羽ペンからインクが垂れても直接羊皮紙に落ちないように工夫されていました。

長い時間をかけ、半ば一発書きで記録しなければならなかったので、相当な精神力が問われたのでしょう。
November 9, 2025 at 2:16 PM
羊皮紙研究のスペシャリストでもある羊皮紙工房さんのコレクション展示会を過去何度かお手伝いさせて頂きました。

全てご自身の所有物ということで「よりリアルな事実」をご覧頂く試みもしており、そのうちのひとつが「乾燥した空間で羊皮紙はどのようになるか」という検証でした。とはいえ、たまたま置きっぱなしにしたという偶然からの検証なのですが。

この時は開催時期が2月でとても乾燥していたこともあり、羊皮紙製の写本のほとんどが大きくうねったり、反れていたりしました。ある程度湿気があればほぼまっすぐに戻るのですが、乾燥している地域だと羊皮紙の取扱いは昔もかなり大変だったと思います。
July 6, 2025 at 10:45 AM
羊皮紙は保管状況がよければ数百年使える丈夫なものなので、このように使い終わった公文書やグレゴリオ聖歌の楽譜などを別の用途として利用することはよくありました。
ブックカバーもそのひとつで、本自体はその時の時代のもの・ブックカバーはそれより数百年古いというのもざらにあったようです。

つい先日イギリス・ケンブリッジ大学で発表されたアーサー王物語の未発見写本も、原本の周りに200年ほど後の羊皮紙を巻いた状態で発見されたとのことで、羊皮紙の使用用途が多岐にわたっていたことがうかがえます。
April 11, 2025 at 7:30 AM
【ご案内】
日本国内の羊皮紙研究の第一人者・羊皮紙工房さんの所有コレクション展示会を昨年東京で開催しました。今年も内容を一部変えて開催の方向で企画が進んでおります。

あらたにフォロー頂いた方にもぜひご覧頂きたく、昨年の展示会のコレクション作品を順次解説つきで当アカウントより順次ご紹介します。展示点数が多いため、前回の会期中にご紹介できなかったSNS未掲載のものも合わせてアップできればと思います。

※ハッシュタグ #羊皮紙工房コレクション で過去に投稿したコレクション作品もご覧いただけます。合わせてご利用下さい。
March 11, 2025 at 1:15 PM
3/23まで開催中の「中世の華 黄金のテンペラ画(東京・目黒区美術館)」に、羊皮紙研究の第一人者である羊皮紙工房さんの所蔵コレクションが展示してあります。あいにく現地では撮影不可なのですが、展示作品のうち、中世ヨーロッパの食に関係するものを簡単にご紹介します。

◆時祷書(1470年頃 フランス)
ボーダーには半円を描くようにぶどうが描かれています。ぶどうは、キリストの救いの象徴、また聖母の誠実さの象徴です。同時に、ワインの飲みすぎによる堕落の意味も持ち合わせます。
堕落した人間が、誠実な聖母に神への執り成しを願い、それにより救いが得られるようになる。まさにすべてを象徴する果物なのです。
March 2, 2025 at 12:48 PM
Dec.4 -羊皮紙-

羊と山羊の羊皮紙。長年お付き合いをさせて頂いている、羊皮紙工房さんからお譲りした一葉です。山羊は羊より色が白く、中世ヨーロッパの彩色写本では主に南ヨーロッパでよく用いられていたとされます。

今年6月に東京で開催した「羊皮紙工房コレクション特別展示会」では、多くの方にその羊皮紙の魅力を直接ご覧頂く機会に恵まれました。写真だけでは分からない触感や種類の違い、はたまた灯りの違いによって羊皮紙の見方はかなり変わってきます。

今年は国立西洋美術館でも彩色写本にまつわる大規模な展覧会が開催されました。開催頻度は他の時代に比べて少ないですが、今後の展開に期待したいところです。
December 13, 2024 at 7:40 AM
【展覧会情報】
2025/2/15から東京・目黒区美術館で開催予定の展覧会『中世の華・黄金テンペラ画 - 石原靖夫の復元模写/チェンニーノ・チェンニーニ『絵画術の書』を巡る旅』にて、国内随一の羊皮紙研究家・羊皮紙工房さんが自作された「中世ヨーロッパのレプリカ筆写台(右写真)」が同会場に展示されます。その他にも、ご本人所有コレクション作品も合わせて展示予定となっております。

黄金のように見える美しいテンペラ画は、14世紀以降のイタリアを中心に発展した「卵黄」を用いる技法の一種です。各作品は直接その目でご覧頂くことをお薦めしております。ご都合がつくようでしたらぜひご覧下さい。
December 11, 2024 at 1:39 PM
約600年前の「金色」のゆらぎと輝き。人の手で精巧に描かれた、中世ヨーロッパの世界の光景。

※展示写本は1400年代の本物の彩色時祷書・金箔貼り(ルーアン伝)
※閉鎖された箱の中に暖色系のLEDライトを使用

(2024年6月/羊皮紙工房コレクション特別展示会にて)
November 23, 2024 at 10:31 AM
#羊皮紙工房コレクション
■ パピルスカルトナージュ(エジプト末期王朝、BC600年ごろ)

エジプト末期王朝時代のパピルス製カルトナージュ。ミイラの棺桶の一部とみられます。
ホルスの4人の息子のうち2人が描かれています。人間の姿をしており肝臓を守るイムセティ、そしてジャッカルの姿をしており胃を守るドゥアムトエフ。
粗目のエジプシャンブルーの顔料が使われています。銅の成分が多いためか鮮やかな水色ではなく濃い青となっています。
July 28, 2024 at 4:22 AM
#羊皮紙工房コレクション
■ イニシャルに女性の横顔のらくがき?
(聖務日課書/1400年頃イタリア)

聖務日課書(修道士が使う祈祷書)です。
装飾イニシャル文字には、金色の装飾を目に見立てて、女性の横顔が描かれています。
意図した装飾というよりも、暇つぶしのらくがきのようですね。授業中に教科書にらくがきをしてみた経験はだれしもがあるかと思いますが、中世であっても同じだったのでしょうか。
July 14, 2024 at 7:31 AM
#羊皮紙工房コレクション
■ 科学分析が明かすこと/15世紀スペイン楽譜
(分析:東京藝術大学文化財保存修復センター準備室)

可搬型蛍光X線分析装置を使った成分分析により、何も書かれていない羊皮紙部分からは、次の元素が検出されました。

塩素・カリウム・カルシウム・鉄・硫黄・ケイ素

検出されたこれらの元素は、羊皮紙作りと写本制作に深く関わりのある鉱物です。
また、赤インクは水銀成分があるためバーミリオン、黒インクは鉄分と硫黄が検出されたため虫こぶインクと推定されます。
July 10, 2024 at 12:19 AM
#羊皮紙工房コレクション
■ バロックギターの多層ロゼッタ(現代の再現)

17世紀に隆盛したバロックギターやチェンバロなどのサウンドホールに付けられるロゼッタは、羊皮紙にレース状の加工を施したもの。バロック時代には羊皮紙のロゼッタ制作が隆盛を極め、時に何層も重ねられ、まるでヨーロッパの街にある階段状の噴水広場を彷彿とさせる構造となっています。
一七世紀のルシアー(弦楽器制作家)であるヴォボアム一家やセラス一家のロゼッタは、このような繊細かつ華麗なものが多く有名です。

この展示品は、イタリア・ミラノのロゼッタ作家エレーナ・ダル・コルティヴォ氏制作のものです。
July 5, 2024 at 2:27 AM
#羊皮紙工房コレクション
■ 半月ナイフ(ルネラム)

羊などの皮に付着している肉や脂、石灰などをそぎ落とすために使用します。上下の取っ手を持って刃が皮に垂直にあたるようにして削っていきます。皮に刃を当てたときに皮がやぶれないよう半月形の形状となっています。
June 29, 2024 at 2:23 AM
#羊皮紙工房コレクション
■ オストラコン(陶片追放で使われた陶片)
レプリカ/羊皮紙工房作成

古代ギリシアでは、力づくで権力を奪い取ろうと「しそうな」危険分子を排除するため、アテナイ市民がこのような陶器の破片に「あいつは危ない」という政治家の名前を刻んで投票するシステムがありました。民主主義ですね。

展示品に刻んであるのは、ミルティアデスの息子キモン(紀元前510年~紀元前450年)という名前です。
June 27, 2024 at 1:57 AM
#羊皮紙工房コレクション
■ インクの染みと穴あきと(1450年頃 聖務日課書)

羊皮紙作りの過程で、穴が開くことは極一般的でした。羊皮紙が高価だった当時は、穴あき羊皮紙でも無駄なく活用します。写本においては、なるべく欄外に当たる箇所に穴がくるように羊皮紙をカットします。
しかし、この写本の装飾を担当した職人は、穴があることもお構いなしに、イニシャルのライン装飾(フィリグリー)の線を欄外まで延ばしていますね。
また中央部には、赤い文字を書いたものと同じインクの染みが。何らかの理由でインクが付いたままの指で触ってしまったのでしょうか。写本制作の様子に想像が膨らみますね。
June 24, 2024 at 1:58 AM
#羊皮紙工房コレクション
■ 典礼書 1520年頃 イタリア(羊皮紙に手書き)

典礼書の聖歌部分です。イニシャルは彩色が施されていませんが、これは制作途中ではなく、「アウトラインイニシャル」という完成形です。彩色のコスト削減を狙った方法といわれています。
June 20, 2024 at 1:15 AM
#羊皮紙工房コレクション
■ 装飾の美しいコーラン(羊皮紙の記述あり/1895年オスマントルコ/紙)

1895年にオスマントルコで書かれたコーランの一部です。最初の見開き右ページは、第52章「山」。そこには、「解き広げた羊皮紙に記された経典にかけて」という文章があり、かつてコーランが羊皮紙に書かれていたことがわかります。
June 18, 2024 at 1:20 AM
#羊皮紙工房コレクション
■ 古代ギリシア・コリント式ヘルメット(レプリカ)

本物ではなくレプリカのヘルメットです。本物であれば、約5億円してしまいます(2020年のクリスティーズオークションでは同様の本物のヘルメットが5億4250万円で落札)。

当時のヘルメットは青銅製のため緑青が付いて緑になっているのが一般的です。同時に、金属の生成技術が現代ほど高くなかったため、鉄など他の金属も混じっている「合金」で、展示品のように赤さびが生じているものも多くあります。

※先日開催された「羊皮紙工房コレクション展示会(東京・高田馬場)」で、たくさんの方が被られていました。人気でした(苦笑)。
June 17, 2024 at 12:17 PM
#羊皮紙工房コレクション
聖歌集イニシャル切り抜き「A」
(1400年代 イタリア 羊皮紙動物種:山羊)

大型の聖歌集に施されていたイニシャル「A」の切り抜きです。大変美しいですが、反面このようなイニシャルや細密画の部分的な切り抜きにより、多くの彩飾写本がダメージを受けています。
June 15, 2024 at 3:44 AM
#羊皮紙工房コレクション
■ ティッシュより薄い ポケット・バイブル(ヒエロニムス序言 1250年頃 パリ/羊皮)

13世紀中盤に流行した小型聖書の1葉です。ティッシュよりも薄い羊皮紙が使用されています(0.04mm)。
聖書の小型・軽量化にはこのような極薄の羊皮紙が必須でした。この極小文字は米1粒に4~5文字入るほど。コロコロと丸みを帯びた文字が隙間なくつながっているのが真珠のネックレスを連想させるため、「パールスクリプト」とも呼ばれています。
2020年にイギリス・ヨーク大学にてこの展示品のタンパク質質量分析(ZooMS)を行ったところ、動物種が「ひつじ」であることが特定されました。
June 12, 2024 at 2:33 AM
【ご案内】
先週末から羊皮紙工房さんの展示会関連の投稿がメインでしたが、本日から通常のアーカイブ投稿に戻ります。

また、 #羊皮紙工房コレクション の投稿も、本来は展示会までの限定アップの予定でしたが、まだ全体の2割も紹介してないので(涙)、こちらも引き続きbluesky限定で投稿を続けます。よろしければぜひぜひ。
June 11, 2024 at 8:51 AM
6/7から3日間にわたり開催しました『羊皮紙工房コレクション特別展示会(東京・高田馬場)』は、全日程盛況のうちに無事終了しました。足をお運び頂きましたこと、関係者一同厚く御礼申し上げます。

多くのご来場者様から次回開催のご要望も頂いております。また機会がありました節は、ぜひご来場頂けますと幸いです。誠にありがとうございました。
June 10, 2024 at 1:09 AM
【羊皮紙工房展示会 ご案内】

芳林堂書店高田馬場店にて開催中の「羊皮紙工房コレクション特別展示会」、本日6/9(日)は最終日のため12:00〜17:00(最終入場16:30)までの開催となります。

お時間帯によっては混雑している場合がありますので、譲り合ってのご観賞をお願いします。

入場チケットは3階レジにて取り扱っております.事前にご購入の上、8階展示会場にお越し下さい。

なお開場前のギャラリートークは満席となっております。予めご了承ください。
June 9, 2024 at 1:01 AM
体力的に問題がなければ、週末は演劇実験室万有引力の公演と、羊皮紙工房コレクション展に行く予定。濃いお出かけになりそう!
June 7, 2024 at 4:38 AM
【催事レポート】
本日6/7(金)から3日間開催の「羊皮紙工房さんコレクション展示会(東京・高田馬場)」の様子をお写真で少しパチリ。古代から現代までいろいろな作品がございます。写真&お触りOK、ご来場時の参考までにどうぞ♪
June 7, 2024 at 4:12 AM