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「今生の別れになるやもしれぬ」
「うむ…次会う時は敵同士」
「されど、友として過ごした日々は忘れがたい…」
「弱気なことを」
「戦場に身を投じていると…幕舎で1人過ごす夜は人肌恋しくならぬか…?私は…度々なる…」
張遼の勢いに飲まれ、寝台に腰掛ける。
「欲望を抑えられず自身を慰める時、毎度毎度貴公の顔が思い浮かぶ。貴公と身体を温め合いたい…互いを貪って、実らぬ種を飛ばすのも一興——」
張遼の腰を抱き、顔を引き寄せる。
「…おぬし、曹操殿から何か吹き込まれたな?」
「今生の別れになるやもしれぬ」
「うむ…次会う時は敵同士」
「されど、友として過ごした日々は忘れがたい…」
「弱気なことを」
「戦場に身を投じていると…幕舎で1人過ごす夜は人肌恋しくならぬか…?私は…度々なる…」
張遼の勢いに飲まれ、寝台に腰掛ける。
「欲望を抑えられず自身を慰める時、毎度毎度貴公の顔が思い浮かぶ。貴公と身体を温め合いたい…互いを貪って、実らぬ種を飛ばすのも一興——」
張遼の腰を抱き、顔を引き寄せる。
「…おぬし、曹操殿から何か吹き込まれたな?」
張遼は無言で頷いた。関羽の助言はもっともである。
「拙者はこの戦にて功を立て、曹操殿にご恩をお返ししたら出てゆく。おぬしは将としてまだまだ甘いところがあるが…以前よりたくましくなったな」
「…もったいないお言葉」
関羽は宣言通り功を立てた。敵将の顔良、文醜をいとも簡単に討ち取ると、攻勢は一気に曹操軍へと傾いた。
その夜、関羽は幕舎で1人出立の準備をしていた。恩は返した。義兄弟らの行方も掴めた。幕舎外から遠慮がちに呼びかける声がする。張遼だ。
「関羽殿、立たれる前に私の話を聞いていただきたい」
張遼は無言で頷いた。関羽の助言はもっともである。
「拙者はこの戦にて功を立て、曹操殿にご恩をお返ししたら出てゆく。おぬしは将としてまだまだ甘いところがあるが…以前よりたくましくなったな」
「…もったいないお言葉」
関羽は宣言通り功を立てた。敵将の顔良、文醜をいとも簡単に討ち取ると、攻勢は一気に曹操軍へと傾いた。
その夜、関羽は幕舎で1人出立の準備をしていた。恩は返した。義兄弟らの行方も掴めた。幕舎外から遠慮がちに呼びかける声がする。張遼だ。
「関羽殿、立たれる前に私の話を聞いていただきたい」
「急に姿を消して何事かと思えば…」
「徐晃殿を見舞いに行ってきた」
「おぬしは将として――」
説教しかけてやめた。浮かない顔をしている。
「徐晃殿の傷は思わしくないのか?」
「いや…ただ私が無礼な振る舞いをして…徐晃殿を怒らせてしまった」
「急に姿を消して何事かと思えば…」
「徐晃殿を見舞いに行ってきた」
「おぬしは将として――」
説教しかけてやめた。浮かない顔をしている。
「徐晃殿の傷は思わしくないのか?」
「いや…ただ私が無礼な振る舞いをして…徐晃殿を怒らせてしまった」
「降ろしてくれ!1人で歩ける!」
「静かにせよ」
「このやり取り前も見たような……」
「降ろしてくれ!1人で歩ける!」
「静かにせよ」
「このやり取り前も見たような……」
「私だけではとても食いきれぬ」
張遼は笑って応えた。自室に戻って果実を食してみると今朝のような甘酸っぱさを感じなくなっていた。張遼が自ら剥いてくれた果実が特別だったのだ。またあわよくば朝食を共にしたいものだ――と徐晃は夢想した。
翌日、董卓が暗殺された。これに乗じて李傕・郭汜らが長安を奪取。張遼は呂布と共に長安を追われることとなった。別れの挨拶もできず徐晃は乱世の無常を嘆くばかりであった。
「私だけではとても食いきれぬ」
張遼は笑って応えた。自室に戻って果実を食してみると今朝のような甘酸っぱさを感じなくなっていた。張遼が自ら剥いてくれた果実が特別だったのだ。またあわよくば朝食を共にしたいものだ――と徐晃は夢想した。
翌日、董卓が暗殺された。これに乗じて李傕・郭汜らが長安を奪取。張遼は呂布と共に長安を追われることとなった。別れの挨拶もできず徐晃は乱世の無常を嘆くばかりであった。
「意地汚いのは拙者の方…」
「気に入っていただけたようで何よりだ。……さて、そろそろ手合わせに参ろうか」
本来の目的を思い出した2人は武器を携え鍛錬場へと向かった。朝方の肌寒さはすぐに消えた。汗がじわりと滲む程度になるとお互い武器を振るうことに夢中になった。
「意地汚いのは拙者の方…」
「気に入っていただけたようで何よりだ。……さて、そろそろ手合わせに参ろうか」
本来の目的を思い出した2人は武器を携え鍛錬場へと向かった。朝方の肌寒さはすぐに消えた。汗がじわりと滲む程度になるとお互い武器を振るうことに夢中になった。
「急ごしらえですまぬ。誘っておきながら客人に出せるような食事を用意できぬとは……」
「気になさるな」
張遼は器用に小刀を滑らせ果物を剥いていく。果汁が滴り張遼の手を濡らす。甘酸っぱい芳醇な香りが室全体に広がる。均等に切り分けた後、おもむろに指を咥えた――が、客人が目を丸くして見つめていることに気付き即座に口を離した。
「意地汚い姿を晒してしまった……」
「いや、拙者でもそうする」
「急ごしらえですまぬ。誘っておきながら客人に出せるような食事を用意できぬとは……」
「気になさるな」
張遼は器用に小刀を滑らせ果物を剥いていく。果汁が滴り張遼の手を濡らす。甘酸っぱい芳醇な香りが室全体に広がる。均等に切り分けた後、おもむろに指を咥えた――が、客人が目を丸くして見つめていることに気付き即座に口を離した。
「意地汚い姿を晒してしまった……」
「いや、拙者でもそうする」
「騎都尉殿、手合わせなどいかがであろう?」
「む……?」
「ああ、不躾に申し訳ござらぬ。騎都尉殿のご都合も考えず失礼いたした」
「張遼だ。字は文遠」
役職ではなく名前で呼んでほしい。大人げなく拗ねた顔を見せてしまった。
「朝食後なら少し暇ができる故……せっかくの機会だ、朝食を共に摂ったあと手合わせしていただこう」
「騎都尉殿、手合わせなどいかがであろう?」
「む……?」
「ああ、不躾に申し訳ござらぬ。騎都尉殿のご都合も考えず失礼いたした」
「張遼だ。字は文遠」
役職ではなく名前で呼んでほしい。大人げなく拗ねた顔を見せてしまった。
「朝食後なら少し暇ができる故……せっかくの機会だ、朝食を共に摂ったあと手合わせしていただこう」