引用メモ集
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弟の眼のなかに悲憤慷慨している自分が小さく滑稽に、ビールのコップを胸にかまえてうつっていた。
—―「われらの時代」、『大江健三郎全小説1』(523)

・悲憤慷慨
[名](スル)世情や自分の運命などについて、憤慨し、嘆き悲しむこと。
September 26, 2025 at 2:54 AM
夜の暗い街路、きちがいじみて不安な夜の街路へのあわてふためきズボンをずりあげながらの逃走、そこで深夜まで放浪しなければならない男の汗みずくの出発。
—―「われらの時代」、『大江健三郎全小説1』(492)

・汗みずく
汗だく。
September 26, 2025 at 2:45 AM
これも平和の害毒だ、悪しき時代に生れてきた若者は充血したゴムの性器を長居あいだこすりつづけ、疲れきって青息吐息で、しかもこれっぽっちの快楽もおこらない。
—―「われらの時代」、『大江健三郎全小説1』(478)

・青息吐息
困って苦しいときなどに、弱りきって吐くため息。また、そのため息の出る状態。
September 26, 2025 at 2:44 AM
この一種の精神的なインポテンツが靖男をふくむ、かれの大学の若い学生たちのあいだに疫病のような猖獗をきわめていた。
—―「われらの時代」、『大江健三郎全小説1』(478)

・猖獗をきわめる
この上もなく勢いがさかんで荒れ狂う。
September 26, 2025 at 2:42 AM
かれは酒場とコオフィ店のこみあっている極度に狭い道をぬけ、その裏がわにすぐつらなっている古風で貧しい農家の湿っぽい下肥の臭う庭へ出た。
—―「戦いの今日」、『大江健三郎全小説1』(430)

・下肥[しもごえ]
人間の大小便を肥料にしたもの。
September 26, 2025 at 2:36 AM
かれは小さく明るい矩形のなかに、光にあふれた恋人たちを見つめた。
——「暗い川 おもい櫂」、『大江健三郎全小説1』(359)

・矩形[くけい]
長方形。
September 26, 2025 at 2:30 AM
ぼくらはじつにめんめんと話しあった。
――「見るまえに跳べ」、『大江健三郎全小説1』(350)

・めんめん(綿綿)
[ト・タル][文][形動タリ]長く続いて絶えないさま。「思いのたけを―とつづる」
September 26, 2025 at 2:28 AM
「予感があっても前駆症状があっても、そんなことしかたがなかったわ」と裕子はいった。
――「見るまえに跳べ」、『大江健三郎全小説1』(343)

・前駆症状
ある病気の起こる前兆として現れる症状。
September 26, 2025 at 2:27 AM
 ぼくらが出発しようとした時、道のはるか下からアセチレン・ランプをともした男たちが叫びながらのぼって来た。
――「見るまえに跳べ」、『大江健三郎全小説1』(341)

・アセチレン・ランプ

tezukaosamu.net/jp/character...
September 26, 2025 at 2:26 AM
ぼくは厚いガラスのコップに三分の一ほど残っているペルノ酒へ腕をのばした。
—―「見るまえに跳べ」、『大江健三郎全小説1』(323)

・ぺルノ(-)酒
アブサンabsintheの代用として販売されたフランスの酒。
www.liquor-depot.jp/c/12/1202/14...
ペルノ リキュール | お酒の総合専門店【LIQUOR DEPOT(リカーデポ)】《公式》
中毒性があるとして製造禁止になったアブサンの代替品として発売されたのがこのペルノです。アニスのほか15種類のハーブを配合。
www.liquor-depot.jp
September 26, 2025 at 2:18 AM
しかし警官に殴りつけられて列からはじきだされる時、ぼくの体は怒りから針を刺された貝の肉のようにごういんに縮みあがり、切れた歯茎からの血の味が口腔いっぱいにひろがって、ぼくにおちついたかいがいしい感情を回復させたものだった。
—―「見るまえに跳べ」、『大江健三郎全小説1』(320)

・口腔[こうこう]
「こうくう」は医学用語。
September 26, 2025 at 2:12 AM
 「疫病なら避病舎へ入れないとだめだろ?」と僕はいった。
—―「芽むしり仔撃ち」、『大江健三郎全小説1』(234)

・避病舎[ひびょうしゃ]
ja.wikipedia.org/wiki/%E9%81%...
避病院 - Wikipedia
ja.wikipedia.org
September 26, 2025 at 1:58 AM
しかし、黒人兵の体がどうかするはずみにかしぎ、その足首にからみついた猪罠の鎖が金属質の硬い音をたてると、激しい勢いでおびえが回復し、僕の血管のすみずみになだれこんで、あらゆる皮膚を鳥肌立たせるのを感じるのだ。
――「飼育」、『大江健三郎全小説1」(142)

・かしぐ[傾ぐ]
向きがかたむく。
・猪罠[ししわな]
猪をとらえる罠。
ouchidehaiku.com/contents/349...
猪罠(ししわな)
猪を捕らえる罠
ouchidehaiku.com
September 26, 2025 at 1:55 AM
 ドアが閉じられ、厚い粘液質の壁の罅は、癒合した。
――「他人の足」、『大江健三郎全小説1』(60)

・癒合
(スル)傷がなおり、離れていた皮膚や筋肉などが付着すること。傷口がふさがること。
September 26, 2025 at 1:44 AM
 それは一見、都会におけるアノミー(行為を規制する共通の価値や道徳的規準を失った混沌状態)を昂進させるかに見える。
—―『まなざしの地獄』(82)

・アノミー
社会的規範の動揺、弛緩 (しかん) 、崩壊などによって生じる混沌 (こんとん) 状態、あるいは成員の欲求や行為の無規制状態。語源的には、「無法律状態」などを意味するギリシア語のνομοςに由来するといわれる。中世には廃語になっていたが、フランスの哲学者ギュイヨーによって用いられ、さらに社会学者デュルケームによって社会学上の用語として再生された。
September 23, 2025 at 2:47 AM
 「封殺」という野球のプレイは、ランナーに直接手をふれることなしに、生きる道を封じて生残を断つことである。
—―『まなざしの地獄』(71)

・生残[せいざん]
生き残り。
September 23, 2025 at 2:40 AM
「これからあなた達は傷のある人間の苦患を味わうことでしょう。」
――『まなざしの地獄』(69)

・苦患[くかん、くげん]
仏語。地獄におちて受ける苦しみ。転じて、一般に苦しみや悩み。苦悩。
September 23, 2025 at 2:39 AM
 「見る前に跳べ」というアジテーションは、跳ぶまえに見ることもできる人間の言い方だ。
 「見る前に跳ぶ」ことだけを強いられてあることの無念。
 しかも見るまえに跳んでしまったN・Nの投企の挫折を、われわれのうちのだれにも哂うことはできない。
――『まなざしの地獄』(69)
September 23, 2025 at 2:37 AM
 N・Nが現実に穴をうがったのは、N・Nとおなじく体制の弱者であり犠牲者である、年若いガードマンと運転手たちと、七〇に近い神社の夜警員との、四つの生きている頭蓋骨にすぎなかった。
――『まなざしの地獄』(66)
September 23, 2025 at 2:35 AM
 都会は一つの、よく機能する巨大な消化器系統である。それは年々数十万の新鮮な青少年をのみこみ、その労働力を吸収しつくし、余分なもの、不消化なものを凝固して排泄する。
—―『まなざしの地獄』(65)
September 23, 2025 at 2:34 AM
まなざしの地獄の中で、自己のことばと行為との意味が容赦なく収奪されてゆき、対他と対自とのあいだに通底しようもなく巨大な空隙のできてしまうとき、対自はただ、いらだたしい無念さとして蓄積されてゆく。
—―『まなざしの地獄』(61)
September 23, 2025 at 2:33 AM
人の存在は、その具体的な他者とのかかわりのうちにしか存在しないのだから、彼はまさしくこのようにして、その嫌悪する都市の姿に似せておのれを整容してしまう。
—―『まなざしの地獄』(60)

・整容
姿をととのえること。
September 23, 2025 at 2:31 AM
中野区若宮の三畳のアパートから発見された所持品は、残高ゼロの預金通帳、シェーファーの万年筆、パーカーのボールペン、アメリカ製ボストンバッグ、等々。――『まなざしの地獄』(58)

・シェーファーの万年筆
sheaffer.com?srsltid=AfmB...
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September 23, 2025 at 2:29 AM
 しかし麦めしが、その物的な定在それ自体において「貧乏くさい」わけではない。金持ちが健康上の理由で、あるいは思想上の理由で、あるいはその他の気まぐれな趣味で麦めしを食うとき、麦めしは貧乏くさくない。またその社会の全体が麦めしを常食するとき、麦めしは貧乏くさくない。麦めしが貧乏くさいのは、それが麦めしを食う人間の、ある情況の総体性を記号化しているからだ。
—―『まなざしの地獄』(50)

・定在
きちんときまった場所にある。
・情況
September 23, 2025 at 2:21 AM
N・Nは人足をしているときも、たばこはポールモールであった。
—―『まなざしの地獄』(45)

・ポールモール
ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%...
ポールモール - Wikipedia
ja.wikipedia.org
September 23, 2025 at 2:18 AM