海鷹
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海鷹
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ラファエル・サバチニの作品を中心にした古典小説の翻訳電子出版用アカウント。
パブー http://p.booklog.jp/users/itomaru
note http://note.com/itomaru
posfie https://posfie.com/@SakrelBahr
『エラリイ・クイーンズ・ミステリマガジン』 1958年8月号

「カザノヴァのアリバイ」 訳:森郁夫

"≪西洋剣豪作家の異色作≫

本誌の目次にラファエル・サバティニの名を見出して、おや、と思つた読者もあることだろう。

戦前ではエロール・フリン颯爽のころの『海賊ブラッド』や『シー・ホーク』、戦後ではタイロン・パワーの主演した『黒いスワン』や、スチュアート・グレンジャー主演の『スカラムッシュ』など、われわれの血を湧かした西洋チャンバラ映画の原作者として、彼の名は日本に知られているから、そのサバティニにミステリ作品があるというのは読者にとつて意外だろう。
May 10, 2025 at 2:43 AM
昭和4年に改造社から出た『世界大衆文学全集第14巻 英米新進作家集』収録のラフアエル・サバテイニ「再顯」(訳者は牧逸馬=「丹下左膳」シリーズの林不忘)のオリジナルテキストは Rafael Sabatini の "THE TAPESTRIED ROOM" (初出は1913年?)

とある貴族の邸宅にジャコバイトの兵士が悪霊となって住み着いている一室があると聞いた主人公が、その部屋で一晩を過ごすのだが……という幽霊譚(心霊現象に合理的な解決が示されるのだが、それでも何だかなという余韻が残る話)
May 8, 2025 at 12:31 PM
The Historical Nights' Entertainment ラファエル・サバチニの歴史夜話

殺人事件や詐欺事件などをあつかったツイストのある短編が多いので、 収録作品のうち何編かは大正時代に大佛次郎(「八木春泥」「波野白跳」名義)と野尻抱影(「金王梅雄」名義)の翻訳により博文館の探偵小説誌に掲載され、後に大佛次郎の作品として単行本化されている。

『水船地獄』天人社(昭和5年)
『ヴェニス脱獄』『火焔の仮装服』和平書房(昭和24年)
note.com/itomaru/n/nc...
ラファエル・サバチニの歴史夜話|vic isono
サバチニ歴史夜話は「歴史実話を極力創作要素を排して短編小説形式で描く」をコンセプトにしたシリーズ。とりあえず収録作品の概要だけ書き出しておきます。 The Historical Nights' Entertainment, 1st Series(1917年刊行) I. THE NIGHT OF HOLYROOD〜The Murder of David Rizzio ホリールード宮殿の夜 ~...
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May 6, 2025 at 9:01 AM
‪博文館『新趣味』大正12年8月号掲載「女皇の戀」(訳:波野白跳)

"妙齡のエリザベス女皇の戀を中心に置いて英國王室の歷史上最も悲惨な犠牲を生んだ興味ある事件――權略と戀戀と國際關係との葛藤を描いたもの、英國史を萬代に飾る光彩あるエリザベス時代を現出した女皇の悲戀に關する祕錄!"

The Historical Nights Entertainment, Second Series
VI. THE BARREN WOOING〜The Murder of Amy Robsart
不毛なる求愛 ~エイミー・ロブサートの殺人 
(ラファエル・サバチニの歴史夜話より)
May 6, 2025 at 8:51 AM
博文館『新趣味』大正12年8月号掲載「西洋天一坊」(訳:八木春泥)

"修道院の一若僧がボリス帝の爲に兒刄に斃れたドミトリ皇太子と自稱し、波蘭王援助の下に帝位を窺覦する、所謂露皇室のお家騒動で王座にある集奪者と僞の皇太子との葛藤を描く"

II. THE FALSE DEMETRIUS〜Boris Godunov and the Pretended - Son of Ivan the Terrible
偽のドミトリー ~ボリス・ゴドゥノフと イワン雷帝の息子詐称者
(ラファエル・サバチニの歴史夜話より)

1605年ロシア、偽帝ドミトリーⅠ世をめぐる陰謀の顛末
May 6, 2025 at 5:12 AM
博文館『新趣味』大正12年4月号掲載「戀か仇か」(訳:波野白跳)

"基督教徒に對する猶太教徒の陰謀と、異教徒間に於ける若い男と女の戀愛とを交錯したる可憐にして熱烈悲壯を極めた宗教的陰謀小說!"

The Historical Nights Entertainment, Second Series
III. THE HERMOSA FEMBRA〜An Episode of the Inquisition in Seville
エルモーソ・エンブラ(美女) ~セビリア異端審問の一挿話 (ラファエル・サバチニの歴史夜話より)
May 6, 2025 at 3:20 AM
「運命の頸飾」訳:金王梅雄(野尻抱影)はこれ

The Historical Nights' Entertainment, 1st Series
VII. THE NIGHT OF GEMS〜The "Affairs" Of The Queen's Necklace

宝石の夜 ~王妃の首飾り「事件」(ラファエル・サバチニの歴史夜話より)
首飾り事件を題材にしているが主人公はマリー=アントワネットでもジャンヌ・ド・バロワでもなく、オットー・ペンズラー 編『魔術ミステリ傑作選』に収録された短編と同じくローアン大司教目線のお話

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母もの少女小説とマリー=アントワネット
ツワイク史観アントワネット像を日本女性に普及した偕成社の児童書についてざっと見てみる&サバチニ版ローアン大司教の話
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May 5, 2025 at 1:12 AM
「猛者代官の罪」(誌掲載時は「惡代官の首」 )訳:金王梅雄(野尻抱影)はこれ

The Historical Nights' Entertainment, 1st Series
IX. THE NIGHT OF NUPTIALS〜Charles The Bold And Sapphira Danvelt

華燭の夜 ~豪胆公シャルルとサフィラ・ダンヴェルト(ラファエル・サバチニの歴史夜話より)
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ロマンティック・プリンス~中世ヨーロッパ君主の義妹に婚約破棄宣言した公子の身分違い恋愛からの追放譚
中世ブルゴーニュ公宮の大広間ド真ん中で婚約破棄宣言をした伯爵の愛と受難と復讐の物語(+裁判四種盛り合わせ)1929年初版刊行 ラファエル・サバチニ作 "The Romantic Prince"
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May 5, 2025 at 1:04 AM
「紫の首締繩」 訳:金王梅雄(野尻抱影)はこれ

The Historical Nights' Entertainment, 1st Series
X. THE NIGHT OF STRANGLERS〜Govanna Of Naples And Andreas Of Hungary

14世紀イタリア版『犬神家の一族』ナポリ女王ジョヴァンナの王配ハンガリーのアンドレア暗殺事件 (ラファエル・サバチニの歴史夜話より)
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14世紀イタリア版『犬神家の一族』ナポリ女王ジョヴァンナの王配ハンガリーのアンドレア暗殺事件
爺のめんどくさい遺言に端を発した女相続人をめぐる愛欲と殺人
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May 5, 2025 at 12:28 AM
大佛次郎『水船地獄』(昭和5年)
第一夜 惡魔の媚藥
第二夜 ウエニスの脫獄
第三夜 猛者代官の罪
第四夜 裂かれた破門状
第五夜 六十五の劒痕
第六夜 運命の頸飾
第七夜 紫の首締繩
第八夜 血の假裝舞踏會
第九夜 好色王の最後
第十夜 死の紅薔薇
第十一夜 水船地獄
第十二夜 女王の復讐
May 4, 2025 at 11:53 PM
"これは我が大衆小說壇の第一人者が、材を泰西の宮廷秘錄に採つた戀愛、陰謀、復讐、暗殺、或は破獄の美しく凄く、時に怖しき短篇十二種です。美姫と貴公子、女傑と姦雄、名君と惡代官、魔法婆と惡僧、好色王と嬖人等々の複雜なる人物が宛ら大假裝舞踏會の如く續々と現れる間に、黑覆面の刺客が覗き、白刄が屢々閃くのです。而も悉くが史實に出た自然なる筋の展開と、從つて强い迫眞力とを以て讀者を悅服せしめ、綿密なる歷史家をも滿足させるでせう。且つ見やうでは、每篇は、將來の大衆小說に、或はシナリオに極めて清新なる種を提供するものであります。乞ふ大衆諸賢、新秋の夜々を『水船地獄』の一話一話に割いて悔なからしめ給へ。"
May 4, 2025 at 6:26 AM
ラファエル・サバチニ作 "The Romantic Prince ロマンティック・プリンス" (1929年初版刊行)
中世ブルゴーニュ公宮の大広間ド真ん中でシャルル勇胆公の義妹に婚約破棄宣言をした主人公の身分違い恋愛からの追放譚

このタイトルで性強要に対するケジメと被害者救済がメイントピックになるたぁ夢にも思いませんでしたわ

広く薄く系の増税で生活必需品が値上がりして庶民が苦しむ一方で豪華絢爛な国際イベントが開催され富裕層が物見遊山…という1468年7月の作中描写を読んだ直後に現実では仏五輪というタイミングよ
togetter.com/li/2345678 #Togetter
ロマンティック・プリンス~中世ヨーロッパ君主の義妹に婚約破棄宣言した公子の身分違い恋愛からの追放譚
中世ブルゴーニュ公宮の大広間ド真ん中で婚約破棄宣言をした伯爵の愛と受難と復讐の物語(+裁判四種盛り合わせ)1929年初版刊行 ラファエル・サバチニ作 "The Romantic Prince"
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August 11, 2024 at 2:11 AM
少女漫画イラストの児童小説レーベル、ポプラ社「とんでる学園」シリーズ
実はジュブナイルミステリやオカルトファンタジー、チーム女子もの、パラノーマルロマンスの入門として良作が揃っていた
#名木田恵子 #窪田僚 #くらしき里央 #神崎あおい #島村敬一 #藤木靖子
togetter.com/li/2385283
オカルトと探偵ミステリとロマンスと友情満載の少女小説レーベル「とんでる学園」シリーズについて
少女漫画イラストの児童小説レーベル、実はジュブナイルミステリやオカルトファンタジー、チーム女子もの入門として良作が揃っていたのだ
togetter.com
July 21, 2024 at 3:01 AM
1960年に旧『宝石』でデビュー、ジュニア小説や少女漫画原作を経由した藤木靖子の最後の作品が少女漫画イラスト付きのジュブナイルミステリ『ウエディングドレスになぞがいっぱい!』(ポプラ社とんでる学園シリーズ)というのはキャリアの総決算として中々美しいと思う
July 21, 2024 at 2:08 AM
本日4月29日は20世紀英国のデュマことラファエル・サバチニ先生の生誕149周年記念日です 来年は150周年だけど本国でも特にイベントとかないんでしょーねぇ…… #せめて日本でスカラムーシュの復刊くらいしてくれんかな
April 29, 2024 at 12:02 PM
『海賊ブラッド』 (13)トルトゥーガ島

 スペイン海軍の西インド洋方面提督ドン・ミゲル・デ・エスピノーサ、そして彼と行を共にしている甥のドン・エステバンの両名は、ブラッドを桁端に吊るさんとする意志が固かった。ブラッドを捕えるという任務は今や国際問題であるが、彼等にとっては一族の名誉問題でもあった。

 スペインはドン・ミゲルを通して盛んに脅しをかけてきた。それらの言葉はトルトゥーガ島にも届けられ、そしてドン・ミゲルは母国の権威のみならず、イングランド王の権威をも背負っているのだと断言していた。

#ラファエル・サバチニ
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海賊ブラッド (13)トルトゥーガ島|vic isono
ここで明かしておくが、キャプテン・ブラッドの偉業の数々が後世に遺されたのは、全てサマセットシャーの船乗りジェレミー・ピットの勤勉さに負うものである。航海士としての技量だけにとどまらず、この好青年は疲れを知らぬペンによっても才を発揮したのだが、彼の筆致はピーター・ブラッドに対する隠しようもない愛慕の念によって勢いを増していたように思われる。  彼は自分がマスター、あるいは現代でいうナビゲーション・...
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March 29, 2024 at 10:54 AM
『海賊ブラッド 』(12)ドン・ペドロ・サングレ

「ドン・ペドロ・サングレ、不運なるレオンの紳士です。つい先日、ドン・エステバンのまことに勇敢な御父上によって、虜囚の境遇より救い出されました」そしてバルバドス島を支配する忌まわしい異端者達の虜となり、そこから救出されたという架空の顛末を手短に語った。「ベネディカムス・ドミノ(主を讃美せん)」と修道士が彼の身の上話に対して言った。

「エクス・ホク・ヌンク・エト・ウスクエ・イン・セクルム(今より、とこしえに至るまで)」便宜的パピストのブラッドはそう返し、目を伏せた。

#ラファエル・サバチニ note.com/itomaru/n/n1...
海賊ブラッド (12)ドン・ペドロ・サングレ|vic isono
シンコ・ラガス号とエンカルナシオン号は、礼儀正しくシグナルを交わしてから四分の一マイル弱ほど離れた位置で停止し、そして両船の間で穏やかに波打っている陽に照らされた水面を、前者から降ろされた一艘のボートが渡っていった。それはスターンシート(艇尾床板)にドン・エステバン・デ・エスピノーサとキャプテン・ピーター・ブラッドを乗せた、スペイン人船員六名の漕ぐボートであった。  そのボートには、8レアル銀貨...
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March 28, 2024 at 10:04 AM
『海賊ブラッド』 (11)孝心

「私は死など恐れないと言ったはずだ、それを貴様の前で証明してやる。身の程を知れ。貴様なぞ、イングランドの駄犬に過ぎんのだ」

「アイルランドのだよ、生憎だが」キャプテン・ブラッドは訂正した。「で、貴様の執行猶予はどうなると思うね、スペインの野良犬殿?」

「この美しいスペイン船を貴様等のような下衆どもに引き渡し、我が同胞たるスペイン船と戦わせる為に私の命を救うとはな!はッ!」ドン・ディエゴは喉で笑った。「冗談ではない!さあ殺すがいい。ふん!実に結構。私は己の務めを果たして死ぬのだ。

#ラファエル・サバチニ
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海賊ブラッド (11)孝心|vic isono
彼が行った誓約により、ドン・ディエゴ・デ・エスピノーサは、元々は彼のものであった船における自由を許され、彼が航海士の役割を引き受けた事により船の針路は彼に一任された。この船の乗組員達にとってスパニッシュ・メイン[註1]は未知の領域であり、そしてブリッジタウンでの経験があってすら、全てのスペイン人は即座に殺害すべき油断ならぬ凶犬であるという教訓を得るには充分でなかった為に、彼等はドン・ディエゴ自身の...
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March 26, 2024 at 9:54 AM
『海賊ブラッド』 (10)ドン・ディエゴ

「それで、現状は?セニョール・キャピタン」

「それで、現状は」キャプテン・ブラッドは――ドン・ディエゴが彼を呼んだ称号を当然のように受け止め――答えた。「慈悲を知る者として、貴方が我々の加えた軽打で死に至らなかった事を気の毒に思う。何故ならば、それはつまり、貴方が再び振り出しに戻って死の不安に向き合わねばならない事を意味するのだから」

「ああ!」ドン・ディエゴは深く息をした。「だが、そんな必要はあるのか?」そう尋ねた彼は内心の動揺を表には出さなかった。

#ラファエル・サバチニ
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海賊ブラッド (10)ドン・ディエゴ|vic isono
ドン・ディエゴ・デ・エスピノーサ・イ・バルデスは目を覚まし、痛む頭とけだるい目で、背後にある正方形の窓から陽の光が差し込んでいる船室を見回した。それから彼はうめき声を上げて、頭部の猛烈な痛みに思わずまた目を閉じた。横たわり、彼は考えようと試みた。今はいつで、自分はどこにいるのか。しかし頭の痛みと混乱した思考では、筋が通った考えは不可能であるとわかった。  漠然とした不安から再び目を開き、彼はもう...
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March 25, 2024 at 12:41 PM
『海賊ブラッド』 (9)叛逆流刑囚

 彼等が進入を開始してから五分も経たぬうちに、狭い船尾展望台からあふれ出た総勢二十名は船尾甲板上に身を伏せていた。前方に灯りが見えた。大きなランタンの下、彼等は船首にいるもう一人の見張りが船首楼をゆっくりと歩く黒いシルエットを見た。下からは砲塔甲板の馬鹿騒ぎが聞こえた。朗々とした男声は、品のないバラッドを合唱していた。

「イ・エストス・ソン・ロス・ウソス・デ・カスティリャ・イ・デ・レオン!(そしてこいつがカスティリャ・レオンの流儀さ!)」

#ラファエル・サバチニ
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海賊ブラッド (9)叛逆流刑囚|vic isono
熱帯地方の紫色をした宵闇がカリブ海を包んだ刻、シンコ・ラガス号の守備をする為に残された者は十人以下であり、スペイン人達は島の完全制圧を――相応の根拠あっての事だが――露ほども疑っていなかった。筆者は先に、守備する為の十人と記したが、これは彼等の任務というよりも、彼等が船に残った名目と言う方が的確であろう。実の処、スペイン人の大半が陸上で飲み食いし蛮行に興じる間、スペイン船のガンナー(砲手)とガンク...
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March 24, 2024 at 6:33 AM
『海賊ブラッド』 (8)スペイン人

 焼けつくような午後の間中、戦いは続き、マスケット銃の発射音が次第に町の奥深くから聞こえるようになった事から、防衛側が後退を強いられているのがうかがわれた。日没までに、二百五十名のスペイン人がブリッジタウンを制圧し、島民は武装解除され、そして総督邸ではビショップ大佐と数名の下士官に護られたスティード総督――彼は恐慌状態で痛風の痛みも忘れていた――が、ドン・ディエゴから慇懃無礼な態度で身代金の額を告げられていた。

#ラファエル・サバチニ
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海賊ブラッド (8)スペイン人|vic isono
あの堂々とした風格ある船は、偽の国旗を掲げてカーライル湾中に悠々と侵入してみせたスペインの私掠船[註1]であり、「浜辺の同胞団[註2]」に対する積年の恨みと、カディス行きの二隻の宝物ガレオン船がプライド・オブ・デヴォン号に敗北した先日の借りを返す為にやってきたのであった。軽微な損傷を受けて撤退したこのガレオン船は、ドン・ディエゴ・デ・エスピノーサ・イ・バルデスの指揮下に入っていた。ディエゴはスペイ...
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March 23, 2024 at 9:22 AM
『海賊ブラッド』 (7)海賊

 眼下の湾内には、今や要塞まで一鏈内の距離へと迫った大型船が、船体を包む煙雲の上に中檣をのぞかせた姿が一望できた。崖から驚いて飛び立った海鳥の群れが青空を旋回し、警戒を鳴き交わす鳥達の中でも、悲しげなシギの鳴き声は殊更にけたたましく響いた。

 未だ何が起ったのかを把握できぬまま、一同がその場から凝視を続けると、大檣冠から英国旗が下がり、立ちのぼる雲煙の中に消えていった。間髪を容れず、英国旗に代わって雲の中から上昇し、ひるがえったのは、金と深紅のカスティリヤの旗だった。

#ラファエル・サバチニ
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海賊ブラッド (7)海賊|vic isono
ジェームズ・ナトールは、この暑さの中をブリッジタウンからビショップ大佐のプランテーションまで全力疾走したが、仮に熱帯気候の真っ只中を走る為に作られた人間が存在するとすれば、それは背が低く痩せた体とひょろ長い脚の持ち主である、ジェームズ・ナトール氏を置いて他にいないであろう。彼は極度に疲労困憊し、もはや体中の水分を絞り尽くされたかのようであったが、しかし彼の体内に未だ水分が残っていたのは、砦柵(さい...
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March 22, 2024 at 10:00 AM
『海賊ブラッド』 (6)脱走計画

負傷者達が全員移動させられてからは無人になっていた例の小屋に、ナトールは既に必要な備品を隠していた。ハンドレッド・ウェイト(50㎏)のパン、大量のチーズ、水樽と、かなりの本数のカナリー(カナリア諸島産のサック酒)、羅針盤、四分儀、海図、砂時計、ログライン(測程索)、防水布、様々な大工道具、ランタンと蝋燭。そして砦柵内でも同様に準備が整えられていた。既にハグソープ、ダイク、オーグルは、この危険を伴う冒険への参加に同意しており、そして他にも八名の者が慎重に誘いを受けていた。

#ラファエル・サバチニ
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海賊ブラッド (6)脱走計画|vic isono
その後、アラベラ・ビショップは埠頭の小屋に毎日果物を届け、更に後日、スペインの虜囚達に金と衣類等も持ってきた。しかし彼女が慎重に訪問のタイミングを見計らっていた為に、ピーター・ブラッドがそこで彼女と顔を合わせる事は二度となかった。そしてまた、患者達が回復するにつれて、彼が診療する時間も以前より短くなっていた。ワッカーとブロンソン――他の二人の医師――の治療を受けていた負傷者のうち三分の一が、怪我が...
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March 21, 2024 at 11:25 AM
『海賊ブラッド』 (5)アラベラ・ビショップ

「レディたるもの、御自分の所有する財産を把握しておくべきですね」彼は言った。

「私の財産?」

「少なくとも、貴女の叔父上の財物であるのは確かだ。自己紹介させていただきましょう。私の名はピーター・ブラッド、そして私の値段はきっかり10ポンド。それが貴女の叔父上が私に対して支払った金額だ。そのお陰で私は知る事ができたのですよ。全ての人間に、自分の値段を確かめる機会がある訳ではありませんからね」

 それで彼女は男が何者かを悟った。

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海賊ブラッド (5)アラベラ・ビショップ|vic isono
ジャマイカ商人達がブリッジタウンにやってきた日から一ヶ月ほど後、よく晴れた一月のある朝、アラベラ・ビショップ嬢は市の北西にある丘に建つ叔父の屋敷から馬に乗って走り出た。彼女は礼儀に則った距離をおいて後から速足で従う二人の黒人奴隷に付き添われ、最近まで病床にあった総督夫人を見舞う為に総督邸を目指していた。頂上近くのなだらかな草深い斜面で、彼女は反対方向に歩いて行く、背が高く痩身の、地味だが紳士らしい...
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March 20, 2024 at 10:33 AM