冬の蠅/梶井基次郎
女生徒/太宰治
春琴抄/谷崎潤一郎
銀河鉄道の夜/宮沢賢治
眠れる美女/川端康成
城の崎にて/志賀直哉
砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない/桜庭一樹
ティファニーで朝食を/カポーティ
ライ麦畑でつかまえて/サリンジャー
ロリータ/ナボコフ
衝撃だった。吉田喜重の映画に、僕は完全に、胸を打たれてしまった。鏡や窓枠、木の枝の隙間などを乱用した、計算的な、緻密なパズルのように組み立てられ、余白の美を感じさせる、斬新な構図。窃視症的なカメラワーク。現在と過去が交錯し、生きている人と、死んでいる人、現在の人と、過去の人を会話させる時空構造。愛と革命の物語。文学的で、切実なセリフ。僕が求めていた映画は、これだと思った。
イメージの氾濫、悪夢のような時空間。澁澤龍彦は『映画は、本質的に非合理の表現』としていたが、まさに、この映画は非合理そのものだ。
衝撃だった。吉田喜重の映画に、僕は完全に、胸を打たれてしまった。鏡や窓枠、木の枝の隙間などを乱用した、計算的な、緻密なパズルのように組み立てられ、余白の美を感じさせる、斬新な構図。窃視症的なカメラワーク。現在と過去が交錯し、生きている人と、死んでいる人、現在の人と、過去の人を会話させる時空構造。愛と革命の物語。文学的で、切実なセリフ。僕が求めていた映画は、これだと思った。
イメージの氾濫、悪夢のような時空間。澁澤龍彦は『映画は、本質的に非合理の表現』としていたが、まさに、この映画は非合理そのものだ。
自伝。僕は「悪童日記」をまだ読んだことがないが、この「文盲」という題名に惹かれてこの本を手に取った。人生を時系列順に細かく記述するのではなく、小さな記憶の断片が集積されている。僕は文体が好きだった。淡々としたリズムだが、淡白ではない。透き通った詩情が漂っている。なんでも読み、作った「お話」を語って聞かせるのが好きな幼少期は、作家になるべくしてなったと感じさせる。そして、難民としてスイスに行き着き、母語ではなくフランス語で書くことになる経緯。故郷を離れ、一度「文盲」になった著者は、フランス語で書くことをこう述べる。
『ひとりの文盲者の挑戦なのだ。』
自伝。僕は「悪童日記」をまだ読んだことがないが、この「文盲」という題名に惹かれてこの本を手に取った。人生を時系列順に細かく記述するのではなく、小さな記憶の断片が集積されている。僕は文体が好きだった。淡々としたリズムだが、淡白ではない。透き通った詩情が漂っている。なんでも読み、作った「お話」を語って聞かせるのが好きな幼少期は、作家になるべくしてなったと感じさせる。そして、難民としてスイスに行き着き、母語ではなくフランス語で書くことになる経緯。故郷を離れ、一度「文盲」になった著者は、フランス語で書くことをこう述べる。
『ひとりの文盲者の挑戦なのだ。』
youtu.be/w3giWDYxPTI?...
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『こおろぎはコーコーと夜をいっぱいにして鳴いていたが、耳をすますと時々は、思いつめてぎゃらりぎゃらりと鳴いた。鳴き出しの音はコーと冴えているのだが、ぎーらぎーらとなり、ぎららぎららと狂おしくせつない。』
『こおろぎはコーコーと夜をいっぱいにして鳴いていたが、耳をすますと時々は、思いつめてぎゃらりぎゃらりと鳴いた。鳴き出しの音はコーと冴えているのだが、ぎーらぎーらとなり、ぎららぎららと狂おしくせつない。』
魔女、魔術文化が色濃く残る国ルーマニアにおける呪文に注目し、ルーマニアの歴史や文化背景の解説を交えつつ、言語学者の著者がその呪文を分析していく。参考文献の多さなど、学術的に真摯でありながら、エッセイのように軽やかな筆致で読みやすく、面白い。「痛いの痛いの飛んでいけ」など、呪文は意外にも僕らの生活にも潜んでいることが知れる。個人的には「ことばが呪文として成立しうるには最低限どうあるべきか」についての考察が面白かった。この本を読むと、呪文や魔術がそんなに遠いものに感じず、むしろ僕らに近いものであるように思えた。
魔女、魔術文化が色濃く残る国ルーマニアにおける呪文に注目し、ルーマニアの歴史や文化背景の解説を交えつつ、言語学者の著者がその呪文を分析していく。参考文献の多さなど、学術的に真摯でありながら、エッセイのように軽やかな筆致で読みやすく、面白い。「痛いの痛いの飛んでいけ」など、呪文は意外にも僕らの生活にも潜んでいることが知れる。個人的には「ことばが呪文として成立しうるには最低限どうあるべきか」についての考察が面白かった。この本を読むと、呪文や魔術がそんなに遠いものに感じず、むしろ僕らに近いものであるように思えた。
カスパー・ハウザー - Wikipedia share.google/wi6n0k2fYvpS...
カスパー・ハウザー - Wikipedia share.google/wi6n0k2fYvpS...
ノーベル文学賞を受賞したハントケの実験演劇。ハントケ自身は「言語拷問」と述べている。この劇は言語への執拗な拷問、ハントケの言語批判である。舞台裏を見せるメタ構造、演劇の休憩時間にも音声を流すなど、前衛的である。証明や効果音、細かい所作まで戯曲に示されていて、精密機械のように緻密なハントケの劇の設計がある。カスパーは初め「ぼくはそういう前に他のだれかだったことがあるような人になりたい」という文しか話せない。言語を習得したカスパーは心身ともに秩序だっていくが、言語によってどんなことも秩序だってしまう。普段何気なく言語を使う僕らが見失うものがここにはある。
ノーベル文学賞を受賞したハントケの実験演劇。ハントケ自身は「言語拷問」と述べている。この劇は言語への執拗な拷問、ハントケの言語批判である。舞台裏を見せるメタ構造、演劇の休憩時間にも音声を流すなど、前衛的である。証明や効果音、細かい所作まで戯曲に示されていて、精密機械のように緻密なハントケの劇の設計がある。カスパーは初め「ぼくはそういう前に他のだれかだったことがあるような人になりたい」という文しか話せない。言語を習得したカスパーは心身ともに秩序だっていくが、言語によってどんなことも秩序だってしまう。普段何気なく言語を使う僕らが見失うものがここにはある。