1枚目はフィッシャー製T71。フィッシャーは同社製M10A1の最終生産分の300輌をT71/M36に改修しました。これらは極初期の量産車で、側面ボスが廃止されているのが特徴です。
2枚目はマッセイ・ハリス製M36。側面ボス付きのフォード製M10A1車体で、フットマンループはボスを避けて前寄りに取り付けられています。タミヤのキットはこの仕様です。マッセイ・ハリスはフィッシャー製M10A1も改修していますが、数は比較的少なかったのでは無いかと思います。
1944年夏にノルマンディで鹵獲された15cm歩兵砲搭載自走砲グリレH型。ドイツ第2装甲師団所属の車両。装甲板に描かれた3色迷彩は刷毛塗りのハードエッジパターンに小さな楔状の三角形をステンシルでスプレー描き。第21戦車師団だけでなく部隊を超えて砲兵車両にハードエッジ迷彩が採用されている。スプレー吹きも併用していることを見ると単純にコンプレッサーがなかったからという理由に帰することこともできない。
推測の域を出るものではないが、航空優勢を保てない状況で遠距離からの迷彩効果を高めるための措置だろう。
1944年夏にノルマンディで鹵獲された15cm歩兵砲搭載自走砲グリレH型。ドイツ第2装甲師団所属の車両。装甲板に描かれた3色迷彩は刷毛塗りのハードエッジパターンに小さな楔状の三角形をステンシルでスプレー描き。第21戦車師団だけでなく部隊を超えて砲兵車両にハードエッジ迷彩が採用されている。スプレー吹きも併用していることを見ると単純にコンプレッサーがなかったからという理由に帰することこともできない。
推測の域を出るものではないが、航空優勢を保てない状況で遠距離からの迷彩効果を高めるための措置だろう。
写真が砲弾発車時の空振でブレてしまっている。ハードエッジの迷彩が描かれた車体の国籍マークの十字がダブって見えるのは射撃の振動で車体も大きくスイングしているからだろう。
写真が砲弾発車時の空振でブレてしまっている。ハードエッジの迷彩が描かれた車体の国籍マークの十字がダブって見えるのは射撃の振動で車体も大きくスイングしているからだろう。
ジェリ缶はドイツ軍のジェリ缶をコピーしたイギリス軍のもの。サイズや仕様、プレスパターンも変えずに完コピして、戦場で敵味方同じものを使うという「汎用性」を重視したのが面白い。
牧草地にホルサグライダーの残骸が見える。一面に咲く白い小さな花はシロツメクサだろうか。
IWM (B 5345)
ジェリ缶はドイツ軍のジェリ缶をコピーしたイギリス軍のもの。サイズや仕様、プレスパターンも変えずに完コピして、戦場で敵味方同じものを使うという「汎用性」を重視したのが面白い。
牧草地にホルサグライダーの残骸が見える。一面に咲く白い小さな花はシロツメクサだろうか。
IWM (B 5345)
Bundesarchiv Bild 101I-493-3365-31
Bundesarchiv Bild 101I-493-3365-31
ノルマンディの海岸は遠浅の砂浜で揚陸艦が接岸できないため、上陸作戦に参加した車両は水深1mくらいから自力で走行できるように渡渉キットを装備している。
海岸沿いの家は別荘だろうか。内陸の素朴な石積みの農家と違って瀟洒な造り。
ノルマンディの海岸は遠浅の砂浜で揚陸艦が接岸できないため、上陸作戦に参加した車両は水深1mくらいから自力で走行できるように渡渉キットを装備している。
海岸沿いの家は別荘だろうか。内陸の素朴な石積みの農家と違って瀟洒な造り。
前日までの荒天でわずかな天候の回復の時間を狙って行われた上陸作戦の様子がよくわかる。霧が濃く光量不足の中でシャッタースピードを上げて撮ったフィルムの質感だ。
前日までの荒天でわずかな天候の回復の時間を狙って行われた上陸作戦の様子がよくわかる。霧が濃く光量不足の中でシャッタースピードを上げて撮ったフィルムの質感だ。
シャーマンDDのベースはシャーマンIII(M4A2)だろうか、車体のディテールが隠れてしまって自分の知識での解読はこれが限界。
シャーマンDDのベースはシャーマンIII(M4A2)だろうか、車体のディテールが隠れてしまって自分の知識での解読はこれが限界。
曇天なのか夕方なのか、光量が落ちた中で砲撃の瞬間を捉えるためにシャッタースピードを上げて撮影したものをフィルム現像の際に増感処理を行ったため、フィルムの粒子が荒れた感じに写真が仕上がっている。
モノクロフィルムの増感による「フィルムグレイン」がざらりとした戦場の臨場感を伝える。フラットな粒子が写真から物質感を奪い時間感覚を与える効果は、ロバート・キャパが写したノルマンディ上陸の有名な写真でも使われている。
曇天なのか夕方なのか、光量が落ちた中で砲撃の瞬間を捉えるためにシャッタースピードを上げて撮影したものをフィルム現像の際に増感処理を行ったため、フィルムの粒子が荒れた感じに写真が仕上がっている。
モノクロフィルムの増感による「フィルムグレイン」がざらりとした戦場の臨場感を伝える。フラットな粒子が写真から物質感を奪い時間感覚を与える効果は、ロバート・キャパが写したノルマンディ上陸の有名な写真でも使われている。
どちらの車両も砲塔に火災の影響があるようで塗装が判然とはしないが、シャーマンのハッチ周りのオリーブドラブがIV号戦車の車体前面のダークイエローと同じ明度に見えるところだ。カラーフィルムと違って白黒ネガでは埃と塗料の光沢で明るく写る傾向がある。
どちらの車両も砲塔に火災の影響があるようで塗装が判然とはしないが、シャーマンのハッチ周りのオリーブドラブがIV号戦車の車体前面のダークイエローと同じ明度に見えるところだ。カラーフィルムと違って白黒ネガでは埃と塗料の光沢で明るく写る傾向がある。
鋳造のドライバーフードのエッジ部分に塗料の光沢の反射が読み取れるが、車体の傾斜部分は白く砂埃をかぶっていて、これが白黒写真なら光沢なのか砂埃かは判然としなくなるだろう。3ピースの鋳造デフカバーの表面に製造時にディスクサンダーで均した切削痕が残っている。このデフカバーの辺りの塗装には光沢の反射が顕著ではないので、一見すると艶消しのようにも見えるが、履帯の金属の地肌も特に光って見えている訳ではないので、一概には判断できない。
鋳造のドライバーフードのエッジ部分に塗料の光沢の反射が読み取れるが、車体の傾斜部分は白く砂埃をかぶっていて、これが白黒写真なら光沢なのか砂埃かは判然としなくなるだろう。3ピースの鋳造デフカバーの表面に製造時にディスクサンダーで均した切削痕が残っている。このデフカバーの辺りの塗装には光沢の反射が顕著ではないので、一見すると艶消しのようにも見えるが、履帯の金属の地肌も特に光って見えている訳ではないので、一概には判断できない。
そうした経緯によるカラーポジと同一カットの白黒ネガの紙焼きを比較するとフィルムによる明暗の再現力がよくわかる。ハーフトラックのRAL7021で塗装された車体はカラーポジでは黒く沈んでいるが白黒ネガではラティチュードの広さにより明暗が平均化して明るめのグレーで拾われている。
そうした経緯によるカラーポジと同一カットの白黒ネガの紙焼きを比較するとフィルムによる明暗の再現力がよくわかる。ハーフトラックのRAL7021で塗装された車体はカラーポジでは黒く沈んでいるが白黒ネガではラティチュードの広さにより明暗が平均化して明るめのグレーで拾われている。
遠景の畑の明るい部分は収穫前(or刈取り後)の麦畑だろうか。冬小麦は7−8月下旬が収穫期になるのでその頃になると麦畑は金色に変わる。
遠景の畑の明るい部分は収穫前(or刈取り後)の麦畑だろうか。冬小麦は7−8月下旬が収穫期になるのでその頃になると麦畑は金色に変わる。
車体側面に描かれる国籍マーク(バルケンクロイツ)がアンテナケースがあるために分割して描くところまではよくある話なのだが、ケースの角度に沿って下半分が斜めに傾いて描かれてるのが、そうなってしまった感があってちょっと面白い。
車体側面に描かれる国籍マーク(バルケンクロイツ)がアンテナケースがあるために分割して描くところまではよくある話なのだが、ケースの角度に沿って下半分が斜めに傾いて描かれてるのが、そうなってしまった感があってちょっと面白い。
ドイツ軍の戦車はIII号戦車E/F型。カラーフィルムなのでマフラーの熱サビの具合などよくわかる。車体の塗装はデュンケルグラウ(RAL7021)だが、完全な艶消しではなく3分ツヤ程度。砲塔後部の傾斜面と車体後部の傾斜が塗料の光沢で明るく見えている。これがモノクロ写真だと車体後部は光沢面と認識できずに「巻き上げた砂塵でバルケンクロイツが霞んでいる」というキャプションがつくのだろう。カラーだとRAL7021は黒に近いグレーに発色する。
ドイツ軍の戦車はIII号戦車E/F型。カラーフィルムなのでマフラーの熱サビの具合などよくわかる。車体の塗装はデュンケルグラウ(RAL7021)だが、完全な艶消しではなく3分ツヤ程度。砲塔後部の傾斜面と車体後部の傾斜が塗料の光沢で明るく見えている。これがモノクロ写真だと車体後部は光沢面と認識できずに「巻き上げた砂塵でバルケンクロイツが霞んでいる」というキャプションがつくのだろう。カラーだとRAL7021は黒に近いグレーに発色する。
カラーポジは光によるトーンの変化を拾うので写真に写る色調の変化が大きく、色の濃淡と光の反射の違いを識別しやすい。
カラーポジは光によるトーンの変化を拾うので写真に写る色調の変化が大きく、色の濃淡と光の反射の違いを識別しやすい。
天候が違うので単純な比較はできないものの、モノクロネガフィルムのラティチュードの広さがわかる。カラーポジフィルムのように反射の強い部分が白トビせず、砲塔防盾のバッスル上面の塗装の光沢も明るい色調の中にディテールを失うことなく描写されている。砲塔のエッジの反射もグレートーンに収まっている。
AFVモデリングで支配的な「艶消し塗装」がモノクロフィルムの描写に習慣づけられたものだということに気がつく。
天候が違うので単純な比較はできないものの、モノクロネガフィルムのラティチュードの広さがわかる。カラーポジフィルムのように反射の強い部分が白トビせず、砲塔防盾のバッスル上面の塗装の光沢も明るい色調の中にディテールを失うことなく描写されている。砲塔のエッジの反射もグレートーンに収まっている。
AFVモデリングで支配的な「艶消し塗装」がモノクロフィルムの描写に習慣づけられたものだということに気がつく。
1940年5月、フランス北部のアルデンヌ地方だろうか。オチキスH39を写したアグファのカラーポジフィルムには塗装の光沢が捉えられているが、これはカラーフィルムが記録する質感だと思う。モノクロで撮影してもこのようには光沢が写らない。ラティチュードが広いモノクロネガフィルムには明るい部分も白飛びせずにそこそこのディテールが写せる。
写真を読む意識も注意が必要だ。カラーの白トビは「反射」と認識するように習慣づけられているが、モノクロでは同じ部分も「塗装の褪色かうっすら砂埃を被った」と読み取ってしまう。
1940年5月、フランス北部のアルデンヌ地方だろうか。オチキスH39を写したアグファのカラーポジフィルムには塗装の光沢が捉えられているが、これはカラーフィルムが記録する質感だと思う。モノクロで撮影してもこのようには光沢が写らない。ラティチュードが広いモノクロネガフィルムには明るい部分も白飛びせずにそこそこのディテールが写せる。
写真を読む意識も注意が必要だ。カラーの白トビは「反射」と認識するように習慣づけられているが、モノクロでは同じ部分も「塗装の褪色かうっすら砂埃を被った」と読み取ってしまう。
オチキス戦車は単砲身の21口径37mm砲SA-18のH38型(タミヤのキットは長砲身33口径SA38のH39型)
フィヨルドの小さな船着場なのだろうか。水辺に続く道に並ぶ丸太小屋の屋根に草が生えている。これはノルウェイでは一般的なものだという。
写真:IWM( N 229)
オチキス戦車は単砲身の21口径37mm砲SA-18のH38型(タミヤのキットは長砲身33口径SA38のH39型)
フィヨルドの小さな船着場なのだろうか。水辺に続く道に並ぶ丸太小屋の屋根に草が生えている。これはノルウェイでは一般的なものだという。
写真:IWM( N 229)
奥の建物は塗り壁に窓を白く縁どるフランスの田舎でよく見かけるスタイル。3軒それぞれ似ているようで窓周りの意匠のルールが微妙に違ってたりの三者三様で面白い。
街路の縁石はオチキス戦車の辺りに排水の溝蓋があるのか、そこに向かって路面に勾配がつけられ、雨水に濡れている。
奥の建物は塗り壁に窓を白く縁どるフランスの田舎でよく見かけるスタイル。3軒それぞれ似ているようで窓周りの意匠のルールが微妙に違ってたりの三者三様で面白い。
街路の縁石はオチキス戦車の辺りに排水の溝蓋があるのか、そこに向かって路面に勾配がつけられ、雨水に濡れている。
ベッカーの改造車両のうち小数は工場に残されていたのかパリ解放時の写真でも時々見かける。左の建物にはロレーヌ十字の旗。その隣の店はレストランであろうか。そんなに繁盛はしなかったのか現在は青果店に変わっている。
ベッカーの改造車両のうち小数は工場に残されていたのかパリ解放時の写真でも時々見かける。左の建物にはロレーヌ十字の旗。その隣の店はレストランであろうか。そんなに繁盛はしなかったのか現在は青果店に変わっている。
牽引する車両には自由フランス軍(Forces Françaises Libre,FFL)のロレーヌ十字が描かれている。ジャンヌ・ダルクの象徴でもあり、アルザス・ロレーヌがドイツに併合された時代にも国土回復のシンボルだった。フランス開放に参加した自由フランス軍兵士の多くは海外の植民地出身で1944年までパリを見たことのなかったという。
牽引する車両には自由フランス軍(Forces Françaises Libre,FFL)のロレーヌ十字が描かれている。ジャンヌ・ダルクの象徴でもあり、アルザス・ロレーヌがドイツに併合された時代にも国土回復のシンボルだった。フランス開放に参加した自由フランス軍兵士の多くは海外の植民地出身で1944年までパリを見たことのなかったという。