母親の愛情を受け取りながら娘は成長し、やがて娘は自らが母親となり愛情を注ぎながら自らの娘を育てる。
当たり前のように受け渡されると思われている「母性」のバトンは幻想のようなものであり、渡すのも受け取るのも難しかった。
愛してやれなかった母と愛されたかった娘。その時々の環境、その他家族との関係性の状況により、いとも容易く「母性」は取りこぼされてしまうことが、母視点、娘視点での語りの齟齬によって明確になっている。
果たして、娘の死は事故か自殺か殺人か。母と娘と、それぞれの思いが絡み合い空回りするミステリー、凄みがありました。
#読書記録
#読了
私とは年齢も性別も違う田代さん(定年を迎えた元エリート男性)が主人公の物語。なのにとても刺さった。
彼が定年を迎えた後に居場所や生き甲斐や周囲との関係性に迷走する姿は、かつて、そこそこの学歴を持ちそこそこの企業で働きつつ家事も育児もこなし→こなしきれず体を壊してフェードアウトするように退職し→自分を取り戻したいと迷走していた私の姿だった。(私には不倫願望は無かったけれど笑)
爽快!とか解決!というスッキリ感がある訳ではないけれど、誰もが少しずつ形を変えて経験するであろう定年という時期における、厳しい現実と少しの優しい未来を見せてくれる物語でした。
#読書記録
#読了
平成とともに生まれ平成とともに去った「ブルー」と呼ばれる少年を中心に、彼と二つの事件との関わりとを紐解いてゆくミステリー。
平成時代の流行や社会問題などが描かれ、特に、本人の努力ではどうにもならない家庭環境の歪みにより社会から支援を受けられない状態にある子どもたちに、眼差しが向けられている。
果たしてブルーの行いは正しかったのか。もちろん正しくはない、ないけれど、その気持ちに寄り添いたいと思う心境に至らずにはいられなかった。
平成は私自身の人生の大部分を過ごしてきた時代であり一定の楽しさはあった。が、読んでいて辛い、重いテーマであると感じた。
#読書記録
#読了
アメリカ人著者が、日本人の価値観や気質などを分析した日本人論。
大変面白かった。小さい違和感や間違えはあるものの、大きな感覚としての日本人的性質は同意するし「欧米人はこの感覚がないの?」と驚くことも。
現代でも「日本人は英語も喋れない未開人」という外国人もあるが、この作品にはそのような見下しが感じられない。終戦時期にも関わらず、欧米目線では不可解な日本人が冷静に分析されている。
この世界の基準は一つではない。今もこれからも、社会・文化的背景や度量衡の異なる人々と付き合う時、我々はこのように理解されにくいものだ、と、よくよく注意してゆきたいと思う。
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#読了
「世界の恒久的な平和とはどのようにしてもたらされるべきか」これを世に問うたカントの哲学を、翻訳・解説した本。
物事を哲学的にたくさん考えて文章化したであろうこの考えを、私がサラッと読んだだけで深い理解ができる訳がなかった……
読んでいる間は「うんうんなるほど」と思いながら読んでいるのに、いざ感想を書こうとすると簡潔な言葉で表現することができない。
それでも、途中で何度も中断したり読み返しながらでも、全世界に平和がもたらされているとは言えない現代の今、この本を読めて良かったと思う。
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#読了
「黄色いカーディガンのわたし」が「むらさきのスカートの女」を観察してゆく物語。
わたしが異常者のように捉えていた女の観察が進めば進むほど、わたしの方の異常さに唖然とする。(途中まで、二人は同一人物で意識だけが分裂している状態であるのかと思っていた)(それほど、わたしは女の事を若干取りこぼしながらも熟知していた)
女と友達になりたくてもなれなかったわたし。歪んだ助け方をするわたしだから友達もいないし逃げられるのだろう。けれど自身の異常さに気づかないまま、わたしはこれからも狂気じみた日常を送るのだろう。
ゾッとしたけれど、面白かった。
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#読了
「普通の女の子」美咲と「東大生男子」つばさ。二人の恋が終わった先にあったのは、つばさを含む東大生男子集団が美咲を辱める事件でした。この事件に至るまでの彼らの環境と、事件後の周囲の反応や報道、被害者への二次加害の物語。
とても恐ろしかった。頭が良い人が悪い人に対して何をしても良いわけではない。加害者が保身にばかり奔走する姿と、それを支える家族と金の力の前での無力さに、絶望。
自分の常識と相手の常識とは異なる。現代日本の階層社会の中では、生い立ちの異なる人々の背景が見えない。分からない相手だからこそ、良識と想像力と優しさをと願います。
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重度障害者の女性の現状と、怒り。
背骨の湾曲する身体は常に不健康であり、それゆえに阻害されまくる人生におけるささやかな願望と、えげつない(けれども健常者ならやれてしまえる)願望。
私の想像以上の苦しみなのだろうと想像するけれど、私はきっと想像しかできていない。
彼女は私が羨むほどの大金を所有しているが、その大金は彼女にとっては気安く他人にくれてやるほどのものである。一方、きっと私は彼女が大枚をはたいても決して手に入れられないものを、無意識に手に入れ続けている。うまく言葉にできない。
内容は衝撃的ではあるが、短く、文章も読みやすい。
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・冬の謎解きと大掃除
・春の終わりの洗濯と選択
・夏休みの料理と推理
激務の独身刑事と彼の家事代行サービスを請け負うバイト大学生、2人が関わってゆく推理事件ものシリーズ。先日、1冊を読んで面白かったので、シリーズものの続き3冊を読みました。
ミステリー部分は読み応えあるし、警察関係者ではない大学生がこんなにも事件に遭遇し関係者となってしまうところにも面白さある。(コナンかな笑)
クールな印象だった大学生光弥が、優しく色々な人と関わり合いゆく方向に進んでゆくのは、なんかいいなあと思った。
刑事の怜との関係性も、曖昧ながらも心地良い。
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可愛く明るくポップな表紙&聞いたことあるタイトルだなあと気軽に読んだら、とんでもない重さだった。とても良かった。
他人からでは見えない、家族でさえも理解が難しい、本人にしか分からない状況を、それぞれみんなが抱えている。「どうにかしたい」「どうすればいいのか」と悩んだりもがいたり失敗したりした時でも、宙のごはん、美味しいごはんは、寄り添ってくれるし人を温めてくれる。
家族とは何かなんて、一言で語れるものではないけれど、少なくとも「一緒に美味しいご飯が食べられる」という要素があるんじゃないかな。ね、やっちゃん……
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