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湊 かなえ『母性』

母親の愛情を受け取りながら娘は成長し、やがて娘は自らが母親となり愛情を注ぎながら自らの娘を育てる。
当たり前のように受け渡されると思われている「母性」のバトンは幻想のようなものであり、渡すのも受け取るのも難しかった。
愛してやれなかった母と愛されたかった娘。その時々の環境、その他家族との関係性の状況により、いとも容易く「母性」は取りこぼされてしまうことが、母視点、娘視点での語りの齟齬によって明確になっている。
果たして、娘の死は事故か自殺か殺人か。母と娘と、それぞれの思いが絡み合い空回りするミステリー、凄みがありました。

#読書記録
#読了
August 22, 2024 at 3:25 PM
朝井リョウ『スペードの3』

「つかさファンクラブの美知代」「ファンクラブに途中から入ってきたメンバー」「ミュージカル女優のつかさ」それぞれの視点での物語。
自分らしくいるためや自分の居場所を守るために時に醜い言動をしながらも、自分自身が自分の人生の主人公でありたいと願いながらも、そうはなれない悲しさがあった。
実際には、私自身では経験したことのない人間関係だった。けれど、なぜか心に複雑な感情を感じたのは、私自身も「何もかも全てにおいて私は常に誰かに劣っている」という劣等感は幼少期から常に持っているからなのかな。

#読書記録
#読了
August 22, 2024 at 10:19 AM
森沢明夫『エミリの小さな包丁』

都会から逃げるように祖父の元にやってきたエミリは、海辺の町での人々との出会い、魚釣りと料理の腕前を上達させてゆく……素朴なようで贅沢に流れる時間の中で、エミリが自分自身を見つめ前へ進んでゆく物語。
夏の海、風鈴の音、大切に研ぐことで小さくなってゆく包丁。
美しい夏の中の、不器用で優しい人たちでした。

#読書記録
#読了
August 22, 2024 at 9:52 AM
内館牧子『終わった人』

私とは年齢も性別も違う田代さん(定年を迎えた元エリート男性)が主人公の物語。なのにとても刺さった。
彼が定年を迎えた後に居場所や生き甲斐や周囲との関係性に迷走する姿は、かつて、そこそこの学歴を持ちそこそこの企業で働きつつ家事も育児もこなし→こなしきれず体を壊してフェードアウトするように退職し→自分を取り戻したいと迷走していた私の姿だった。(私には不倫願望は無かったけれど笑)
爽快!とか解決!というスッキリ感がある訳ではないけれど、誰もが少しずつ形を変えて経験するであろう定年という時期における、厳しい現実と少しの優しい未来を見せてくれる物語でした。

#読書記録
#読了
July 17, 2024 at 8:41 AM
近藤史恵『歌舞伎座の怪紳士』

職場でのハラスメントにより退職→家事手伝いで引きこもりのような生活を送っていた久澄は、ひょんな事から歌舞伎やオペラなどを観に行くことになる。その魅力にどんどん引き込まれてゆく久澄が、必ずと言っていいほど劇場で出会ってしまう謎であり親切でもある老紳士との物語。
劇場で起こる不思議な事件の解決に、老紳士と久澄自身と久澄の過去とが混ざり合う。不思議と救いのような、背中を押してもらえるような感覚になった。
最後に、ひょんなことでも何でもなく、ちゃんと理由のある紳士の正体を知れて良かった。

#読書記録
#読了
July 17, 2024 at 2:01 AM
一穂ミチ『光のとこにいてね』

古い団地でのふとした出会いが、結珠と果遠、二人の運命の始まりでした。
幼少期から思春期、子どもを持ってからも、人生を生きていればままならないことはごまんとある、あるけれど。
ずっと互いを思いやる心と行動、その純粋さと美しさ、時にヒリつくような甘やかな気持ちに心震えました。
とても良かった。

#読書記録
#読了
July 6, 2024 at 4:58 AM
葉真中 顕『Blue』

平成とともに生まれ平成とともに去った「ブルー」と呼ばれる少年を中心に、彼と二つの事件との関わりとを紐解いてゆくミステリー。
平成時代の流行や社会問題などが描かれ、特に、本人の努力ではどうにもならない家庭環境の歪みにより社会から支援を受けられない状態にある子どもたちに、眼差しが向けられている。
果たしてブルーの行いは正しかったのか。もちろん正しくはない、ないけれど、その気持ちに寄り添いたいと思う心境に至らずにはいられなかった。
平成は私自身の人生の大部分を過ごしてきた時代であり一定の楽しさはあった。が、読んでいて辛い、重いテーマであると感じた。

#読書記録
#読了
June 18, 2024 at 4:36 AM
ベネディクト『菊と刀』

アメリカ人著者が、日本人の価値観や気質などを分析した日本人論。
大変面白かった。小さい違和感や間違えはあるものの、大きな感覚としての日本人的性質は同意するし「欧米人はこの感覚がないの?」と驚くことも。
現代でも「日本人は英語も喋れない未開人」という外国人もあるが、この作品にはそのような見下しが感じられない。終戦時期にも関わらず、欧米目線では不可解な日本人が冷静に分析されている。
この世界の基準は一つではない。今もこれからも、社会・文化的背景や度量衡の異なる人々と付き合う時、我々はこのように理解されにくいものだ、と、よくよく注意してゆきたいと思う。

#読書記録
#読了
June 13, 2024 at 3:34 AM
カント, 中山 元『永遠平和のために/啓蒙とは何か 他3編』

「世界の恒久的な平和とはどのようにしてもたらされるべきか」これを世に問うたカントの哲学を、翻訳・解説した本。
物事を哲学的にたくさん考えて文章化したであろうこの考えを、私がサラッと読んだだけで深い理解ができる訳がなかった……
読んでいる間は「うんうんなるほど」と思いながら読んでいるのに、いざ感想を書こうとすると簡潔な言葉で表現することができない。
それでも、途中で何度も中断したり読み返しながらでも、全世界に平和がもたらされているとは言えない現代の今、この本を読めて良かったと思う。

#読書記録
#読了
June 4, 2024 at 4:42 AM
近藤史恵『岩窟姫』

同じ事務所のアイドルが自殺した。
彼女を自殺にまで追い込んだイジメを行ったとされる蓮美が、無実の証明のために奔走し、真相にたどりつく物語。

とても面白かった。誰が敵か味方か。誰がどこまでの情報をわかっているのか。誰にどこまでの情報を提供するのか。
ミステリーとしては多少の予想はついてしまう展開ではあるものの、アイドルの実態と人間の心理との絡み合いは、ずっと目を離せない展開だった。

#読書記録
#読了
June 2, 2024 at 9:41 AM
今村夏子『むらさきのスカートの女』

「黄色いカーディガンのわたし」が「むらさきのスカートの女」を観察してゆく物語。
わたしが異常者のように捉えていた女の観察が進めば進むほど、わたしの方の異常さに唖然とする。(途中まで、二人は同一人物で意識だけが分裂している状態であるのかと思っていた)(それほど、わたしは女の事を若干取りこぼしながらも熟知していた)
女と友達になりたくてもなれなかったわたし。歪んだ助け方をするわたしだから友達もいないし逃げられるのだろう。けれど自身の異常さに気づかないまま、わたしはこれからも狂気じみた日常を送るのだろう。
ゾッとしたけれど、面白かった。

#読書記録
#読了
May 29, 2024 at 11:28 AM
姫野 カオルコ『彼女は頭が悪いから』

「普通の女の子」美咲と「東大生男子」つばさ。二人の恋が終わった先にあったのは、つばさを含む東大生男子集団が美咲を辱める事件でした。この事件に至るまでの彼らの環境と、事件後の周囲の反応や報道、被害者への二次加害の物語。
とても恐ろしかった。頭が良い人が悪い人に対して何をしても良いわけではない。加害者が保身にばかり奔走する姿と、それを支える家族と金の力の前での無力さに、絶望。
自分の常識と相手の常識とは異なる。現代日本の階層社会の中では、生い立ちの異なる人々の背景が見えない。分からない相手だからこそ、良識と想像力と優しさをと願います。

#読書記録
#読了
May 28, 2024 at 12:42 PM
前野 ウルド 浩太郎『バッタを倒しにアフリカへ 』

大規模な蝗害(バッタによる被害)を起こすサバクトビバッタの研究者による、アフリカはモーリタニアでの研究とトラブルと日常生活。
バッタの生態についてほどほどに語りつつ、昆虫学者として生きるとはどういうことなのかをメインに語っていたように思う。
とにかくその日々は面白く文章化されているけれど、実際は想像以上に大変な生活だったことだろうと思う。
そんな中、失敗しても困難にあっても夢を追いかけて努力を続けて進んでゆく、その姿はとてもかっこよかったです。
蝗害問題が解決に向かう事を切に願います。

#読書記録
#読了
May 22, 2024 at 7:58 AM
市川 沙央『ハンチバック』

重度障害者の女性の現状と、怒り。
背骨の湾曲する身体は常に不健康であり、それゆえに阻害されまくる人生におけるささやかな願望と、えげつない(けれども健常者ならやれてしまえる)願望。
私の想像以上の苦しみなのだろうと想像するけれど、私はきっと想像しかできていない。
彼女は私が羨むほどの大金を所有しているが、その大金は彼女にとっては気安く他人にくれてやるほどのものである。一方、きっと私は彼女が大枚をはたいても決して手に入れられないものを、無意識に手に入れ続けている。うまく言葉にできない。
内容は衝撃的ではあるが、短く、文章も読みやすい。

#読書記録
#読了
May 13, 2024 at 2:10 AM
森見 登美彦『ペンギン・ハイウェイ 』

「やあ、少年」と声をかける不思議なお姉さんと、声をかけられる研究熱心な小学生。街に突然現れたペンギンの謎を解こうとする、夏の物語。
少年は、様々なトラブルに遭い続けながらも飄々と研究を続ける姿勢がとても微笑ましかった。
けれど、しきりにおっぱいの事を考えるのは、微笑ましく思うどころか、ちょっと気持ち悪かった。
謎のペンギンとそれに関わる不可解な事象の数々。この不思議な現象について体系的に思考して謎解きする少年の真面目さと、夢のあるファンタジーが程よく混ざる物語、面白かったです。

#読書記録
#読了
May 9, 2024 at 4:58 AM
楠谷佑『家政夫くんは名探偵! 』
・冬の謎解きと大掃除
・春の終わりの洗濯と選択
・夏休みの料理と推理

激務の独身刑事と彼の家事代行サービスを請け負うバイト大学生、2人が関わってゆく推理事件ものシリーズ。先日、1冊を読んで面白かったので、シリーズものの続き3冊を読みました。
ミステリー部分は読み応えあるし、警察関係者ではない大学生がこんなにも事件に遭遇し関係者となってしまうところにも面白さある。(コナンかな笑)
クールな印象だった大学生光弥が、優しく色々な人と関わり合いゆく方向に進んでゆくのは、なんかいいなあと思った。
刑事の怜との関係性も、曖昧ながらも心地良い。

#読書記録
#読了
April 25, 2024 at 2:44 AM
町田そのこ『宙ごはん』

可愛く明るくポップな表紙&聞いたことあるタイトルだなあと気軽に読んだら、とんでもない重さだった。とても良かった。
他人からでは見えない、家族でさえも理解が難しい、本人にしか分からない状況を、それぞれみんなが抱えている。「どうにかしたい」「どうすればいいのか」と悩んだりもがいたり失敗したりした時でも、宙のごはん、美味しいごはんは、寄り添ってくれるし人を温めてくれる。
家族とは何かなんて、一言で語れるものではないけれど、少なくとも「一緒に美味しいご飯が食べられる」という要素があるんじゃないかな。ね、やっちゃん……

#読書記録
#読了
April 9, 2024 at 12:38 AM
鮭田ねね『ゆるギャル武にぃの堅物ロマンチスト彼氏』

堅物ロマンチスト×ゆるギャル。
事故チューは運命だったから、と、本当に付き合うようになったロマンチストな二人。
突然感は否めなかったけれど、ひたすらに可愛い二人は見ていてとても微笑ましかった&エッチシーンはとってもえっちでかわいかったです。
他の漫画のスピンオフ作品であった、と読んだ後に気づいたので、元の作品も読んでみたい。

#読書記録
#漫画
April 3, 2024 at 9:32 AM
小山璃子『ヴァージンレッド』

唇フェチ×美形な先輩
唇へのフェティシズム。
唇の形、感触、味、温度、湿度……をたっぷりと楽しみ合う二人を堪能できました。

#読書記録
#漫画
April 3, 2024 at 9:28 AM
楠谷佑『家政夫くんは名探偵! 』

激務の独身刑事と彼の家事代行サービスを請け負う若くて美しい大学生。
家事や事件を通じて交流する二人には、緊張のほぐれる瞬間や二人にだけ理解しうる感情の共有があった。
BLっぽいふわふわ感がもっとあるかな?と思いきや、しっかりとしたミステリーものでした。
シリーズものらしいので、続きも読みたい。

#読書記録
#読了
April 3, 2024 at 9:11 AM
森見 登美彦『四畳半神話大系』

バラ色のキャンパスライフを夢見る京都大学3回生。「入るサークルが違う別ルートの自分」が次々と並行世界に存在するものの、自分はやっぱり自分である事を繰り返す物語。
何者にもなれない自分を悲観しながらも、なんとか周りとよろしく楽しくはちゃめちゃに過ごす青春は、悲壮感の無い悲しさに溢れていて面白かった。そして既に手にしている事に気づく、ほんの少しの幸せも素敵でした。

#読書記録
#読了
March 30, 2024 at 8:43 AM
秋葉東子『グッドルッキング』

お互いの顔がお互いに好みすぎる、真逆の顔立ちの男二人のラブコメ。
お互いに心の中で「顔がいい」と、めちゃくちゃ褒め合う。すれ違いギャグからの直球ギャグ、ほんわか癒される、かわいい。
仕事上でも協力関係や理解を深めてゆく二人が、恋に落ちないわけなかった。
そんな二人が、心情を曝け出してからの加速がすごかった。
めちゃ面白かった。
顔がいいのは最強なのだ。

#読書記録
#漫画
March 29, 2024 at 8:14 AM
リュウジ『リュウジ式至高のレシピ 人生でいちばん美味しい! 基本の料理100 』

背伸びもせず、極端な手抜きでもない、ちょうど良い加減の家庭で取り入れやすい美味しそうなレシピ。
吹き出しのセリフを読むと、Youtubeでのリュウジさんの声で再生されます。
1ページの見開きで見やすい。
とても美味しそう。
今日は早速、ポテサラを作る予定です。

#読書記録
#レシピ
March 29, 2024 at 2:43 AM
ツバ ダエキ『花がら摘み』上・下

BL。オメガバース。
想いの伝え方が下手な攻め×自分に自信が持てない受け。
ずっと守りたかったし自分なら守ることができると思っていた菖蒲と、そんな菖蒲を理解しきれないまま大嫌いだと思っていたのにずっと忘れられなかった柊。
中高一貫校での数年間の関わりと、職場での再会を経てからの二人……オメガバース、フェロモンのせいに流される事を良しとせず抗いながら、自分の気持ちも相手の気持ちも大切に育んでゆく二人の物語。
とても良かった。
絵もとてもきれい。

#読書記録
#漫画
March 29, 2024 at 2:22 AM
梨木香歩『家守綺譚』

綿貫征四郎の著述として、自然の不思議な動植物たちや亡き友との交流が、短いお話で次々と語られる物語。
100年前の日本の風景の中で、非日常のような出来事が日常にある幻想的な世界、落ち着きと美しさがあって心地良かったです。

#読書記録
#読了
March 27, 2024 at 12:37 AM