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【た/現パロ】

「逮捕」
腕を組んで仁王立ちした恋人が、帰宅早々にそんな物騒なことを言い出した。
「ただいま?」
「おう、おかえり」
「逮捕?」
問いかけながら靴を脱いで中に入り、リビングに向かうと恋人もその後ろをついてくる。怒っている気配はしないな、と口ーは首をかしげた。
「胸に手を当てて考えてみろよ」
そういう言い方ずるいって、と思うが、余計なことを言うとやぶ蛇になりかねない。が、そもそも心当たりがない。
「全然思いつかん」
言いながらキスをしようとすると、恋人は口ーの顔を思い切り押しのけて言った。
「そうか、つまりお前はそういう奴だったんだな」
「エーミール!?」
November 10, 2025 at 9:02 AM
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【せ/原作軸】

背伸びをする。10センチだけ。
身を屈める。10センチだけ。
「…ふ、くすぐったい」
自分の口からあんまりにたよりない微かな声が出たことに、ゾ口は小さく笑って口ーから顔を逸らした。
「ああ、そうだな」
返される声も、本当に微かな音をしていて、ゾ口はふるりと震えた。気恥ずかしさと、足元がふんわりと浮き上がるような心地よさとが混じり合う。
「ゾ口、もう一度」
己のおとこの柔らかな声音に、恋願う色を感じてゾ口は細く息を吐く。
「もう一度」
繰り返される言葉は、至近距離でなければ聞き取れないほど微かで甘い。思わず顔を向けると、また口ーが10センチだけ身を屈める。
November 8, 2025 at 12:39 PM
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【そ/原作軸】

外とウチとがはっきりしている、とゾ口はそんなことを考えながら、頬杖をついて男を眺めていた。
それは接し方にも眼差しにも、そして呼び方にも表れている。
「存外わかりやすい奴だな」
「あら、そう?ゾ口はそう思うの?」
口ビンにそう返されて口に出てたか、とゾ口は口元に手をやった。
「…んー、いや、ほら、呼び方から線引きがはっきりしてるから」
「ああ、屋号?」
「そう。クルーの奴らは呼び捨てだろ?」
「そう言われてみればそうね。ゾ口、あなた卜ラ男くんのことそんなに注意して見てるのね。今更警戒してるの?」
首を傾げて、こちらを面白そうに見る口ビンにゾ口は口籠る。
November 9, 2025 at 9:14 AM
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【し/原作軸】

白雨の中、手を引かれて口ーは走る。さらりと肌を濡らす雨、踏み出すごとに跳ねる水、空を見上げると、薄い雲を透かす太陽の光に細かな雨粒が煌めいていた。
視線を下す。雨に濡れて色を濃くした新緑が、一歩踏み出すたびに、りんと雫を落としていた。
「はは!」
少し前を走る男から、底抜けに明るい笑い声が上がった。
口ーは雨の中走るなんて、不愉快だと思っていた。濡れぼそる服が張り付く感覚も、濡れた肌も心地の良いものではない、と。
「ふ、はは、あはは!」
それなのに、気がつけば口ーの口からも笑い声が上がっていた。笑い転げるという言葉を体現するように、二人は走った。
November 6, 2025 at 12:26 PM
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【す/原作軸】

「好きだ」
口ーはその言葉を聞いて、目を見開いた。
視線の先には、青い海を背に立つ男が一人。彼は昇ってくる朝日を背に浴びながら、穏やかな表情でこちらを見ていた。
「おれは、お前のことが好きだ」
好き、の二文字だけならまだ逃げ場があったのに、続けて紡がれた言葉に他の解釈が絶たれる。口ーの頭の中は混乱で満たされた。
「返事はいらない。後悔したくなくて言った」
まるで波が寄せて返すことが当たり前だと説くように、神や仏の教えを静かに説くように、男は言葉を続けた。
「それだけだ」
朝日が男のシルエットを強烈に浮かび上がらせて、彼の左耳に揺れる金の飾りが眩かった。
November 7, 2025 at 10:49 AM
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【さ/原作軸】

「細雪だ」
小さくぽつりと漏らされた言葉に、口ーは空を見た。重く頭上を圧迫する灰色の空から、細い雨のような雪が落ちてきていた。
「ささめゆき?」
「こういう細かい雪のことだ。お前、雪の多いところの出身だろ、知らないのか?」
「知らねェな。雪は雪だ」
「文化の違い、ってやつか」
面白い、と着物姿の男は笑いながらくるりと番傘を回した。
潜入潜伏している国の文化は口ーにとっては物珍しく、ゾ口にとっては馴染みのあるものらしかった。口ーはこの男の出自に興味があったが、本人はどうでもよさそうだった。
「雪月花って言ってな、美しいものの一つに雪を数える文化があんだよ」
November 5, 2025 at 7:13 AM
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【こ/現パロ】

この思いが勘違いだなんて、そんなことあるはずがないのに!
ゾ口は猛烈に怒った。近年稀に見るほどにカンカンに怒った。
幼馴染である口ーが久しぶりにゾ口の家の隣にある実家に帰ってきた時は、あんなにも嬉しかったのに。今は怒りで顔が熱って、それなのに胸のどこが凍っていく。その冷たさが全身に広がるにつれ怒りは悲しさに変化していった。
「えっ」
目の前で上げられた間抜けな声にゾ口は顔を上げる。ばか、と罵ってやりたかった。でも、見上げたはずの相手の顔がぼやけていて声が出なかった。
ぽろ、と頬を何かが伝って地面に落ちる。薄く開いた唇にその何かが触れて、しょっぱいと思った。
November 4, 2025 at 3:57 AM
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【け/現パロ】

「ケナシツルツルスベスベ」
「は?」
四日ぶりに帰宅してきたひどい顔色の恋人に、ゾ口は怪訝さを隠しもしない声を上げた。
疲労困憊がひと目でわかる口ーが
ソファに沈み込み、普段なら一瞥もしないだろうバラエティをただ眺めている。
テレビ画面へ視線を向けるとトゲアリトゲナシトゲトゲというトゲがあるんだかないんだかはっきりしない虫の話題が出ている。
「ゾ口屋は全部ツルスベだから…」
何が「だから」なのか。優秀な恋人の脳みそがイカれてしまった。やはり過重労働は悪であるとゾ口は確信する。
「満足げなとこ悪いが、全然上手いこと言えてないからな?もう寝ろよお前」
November 3, 2025 at 2:41 AM
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【く/特殊パロ】

「苦界という言葉だけで、おれの地獄を一括りにするのはさぞかしテメェにとって都合がいいんだろうな」
鈍色の、刀のような瞳が強くこちらを睨め付ける。あまりに強い光が宿った視線に、口ーは呼吸を忘れかけた。
「金でテメェに体は売る。それでも心まで売った覚えはねェ」
だん、と踏み下ろされた裸足が口ーの顔の横にある。白くて、柔らかく美しい脚は、持ち主に自由がないことを知らしめている。
「舐めんじゃねェよ、お坊ちゃん」
苛烈な啖呵に、口ーは呆然と横たわったまま動けなかった。
いけすかない後継人の案内で訪れた茶屋であてがわれたのは、一番人気だという美しい蔭間だった。
November 2, 2025 at 12:12 PM
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【き/現パロ】

黄色い鯨が空を飛ぶ夢を見た。青い空、紺碧の夜空、茜色の夕暮れ、真っ白な雪景色。ありとあらゆる場所をその鯨は悠々と飛んでいた。気持ちよさそうに、楽しそうに、誇らしそうに。その鯨を、ゾ口は外から眺めている。鯨の主人はゾ口ではない。主人の意のままに泳ぐ鯨はやがて低く一度鳴いた。鯨がゆっくりと沈んでいく。
そんな夢を見た。
目を覚まして、ゾ口はカーテンを開けたままの窓へ視線を向ける。マットレスに沈んだまま見上げる空は少し柔らかな青。小さく息を吐く。
「おれの夢に出てきても仕方ねェだろ」
ゾ口は遠い遠い記憶の中、ほんの少しだけ航路を共にした鯨を宥めるように囁いた。
November 1, 2025 at 11:15 AM
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【か/現パロ】

「菓子?」
ゾ口はベッドの上で荒く息を吐き、ゴムを処理する口ーの顔を見た。汗と涙で視界が霞んで、ため息に似た息を吐きながら目を擦る。
「ハロウィンだ。菓子がなけりゃ悪戯するぞ、ってな」
「脅迫罪、恐喝罪、強盗罪で逮捕だな」
「おいそりゃねェだろ。イベントにかこつけた恋人の可愛いおねだりに向かって」
「可愛いおねだり、ってツラしてねェんだよなあ」
むっつりとしかめ面を作る恋人に手を伸ばし抱き寄せて、ちゅぷちゅぷと甘い音を立てたキスをしながら、ゾ口は笑う。
「それに菓子なんざ欲しくないだろ、本当は」
ピアスのついた耳たぶを口に含んで舐めながら、ゾ口は囁く。
October 31, 2025 at 8:54 AM
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【お/原作軸】

「音に聞くあだ波たァこのことか」
言葉の意味を理解できずに、口ーは指先から逃げていった金色のピアスの眩い光を目で追ってしまった。
新世界の入り口で、他とは毛並みの違う傷だらけの猫を見つけ、面白そうだと手を出した。そんな口ーに、猫は随分と興味がなさそうで、何故だか焦りに似た座りの悪さを感じたことに驚いてしまう。
「ソッチの筋じゃ随分と評判が悪いぜ、プレイボーイ」
睨めつけるように見上げてくるその目が、笑みによって細められているのを理解してぞわりと熱が肌を走る。
「一途じゃねェ男は嫌いなんだ」
とん、と胸の中心を押して、猫はするりと口ーの前から消えてしまった。
October 30, 2025 at 1:58 AM
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【う/原作軸】

浮き橋の上を歩くように足元が不確かな心地がした。
男に手を引かれて、ゾ口は深海をゆく艦の中をやっとの思いで歩く。己の手を引くのは、艦の長である男だ。男が向かう先は彼の部屋であり、もっと具体的にいうと、彼のベッドだ。
その寝心地をゾ口はとっくに知っている。
寝心地を知るきっかけは、なんだったか。飢えた獣の目が己を捉え続けるのが鬱陶しかったから、飢えを癒してやろうと、そんな気まぐれを起こしたからかもしれないし、そうではないのかもしれない。
そんな風にいわばドライに始まった関係だ。これは誰にも内緒の関係で、ただの性欲処理で、後腐れのないものだとゾ口は思っていた。
October 28, 2025 at 10:28 AM
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【い/原作軸】

いじらしく燃える炎のようだ。
涙で濡れて、それでも眩く煌めくひとつ星。乱れる呼吸もそのままに、口ーは柔らかな瞼に口付けた。唇の下、瞼の下で瞳が動く感触がして、口ーはそっと舌を這わせる。甘いような汗の味に動物のように喉が鳴った。
瞼から頬、鼻筋、その先へと口ーの舌と唇は短い旅をして、やがてゾ口の唇へと辿り着く。互いの荒い呼吸で湿り気を帯びる唇と唇が触れ合って、舌と舌が互いを求めるように絡み合う。
熱い。熱さが、心地いい。
吹き出す汗に互いの肌が湿り気を帯びて、ぴったりと張り合わされるように重なっていく。
口付けを終えて少しだけ体を起こす。
October 27, 2025 at 12:18 PM
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【あ/原作軸】

愛という言葉を贈られた瞬間、ゾ口は急速に世界が色づくのを感じて、大層驚いた。
目の前の男がじっとこちらへ注ぐ視線に戸惑いつつ、墨だらけの手が自分の頬に触れて唇をやわく押すのを受け入れてしまって、あれ、とゾ口は思った。
あれ、おれってこんな形をしていたっけ。
自分の体のことは自分が一番よくわかっている。そうでなければ技を研ぎ澄ませることができない。剣が鈍る。だから寸分の狂いもなくゾ口は自分の体のことを知っている、はずだった。
それなのに。
金色の瞳や自分よりも低い体温を持つ指先が、そっと肌や髪を撫でると、自覚していた強固な己のカタチがゆるりとほどけてしまう。
October 26, 2025 at 2:05 PM
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【え/原作軸・死ネタ】

「エンバーミング?」
「ああ。遺体を保存する技術だ。うまくやれば、ずっとその姿を残すことができる」
「へえ。お前の故郷じゃ一般的だったのか?」
「おれの故郷は土葬だったから。お前のところは?」
「おれのところは火葬だからな。聞いたことのない技術だ」
「そうか」
「んで?」
「なんだ」
「そのエンバーミングとやらをやってほしいのか?それともおれにしたいのか?」
「何の話だ」
「とぼけるなよ。お前は意味のないことを口にしないだろ。やりたいから言ってきたんだろ?おれかお前に」
「…許してくれるのか」
「死んだあとのことくらいお前に全部くれてやるよ」
October 29, 2025 at 9:57 AM
aksさんありがとうございます🥰
頭のてっぺんから足の爪先まで愛しているロさんだけど、特にお熱なところには💛ちゃんも群がってしまうようです…🤭
愛おしいのお言葉とても嬉しいです💓
💚のみっちりぎっちり重いのも"わかる"のお言葉嬉しい〜😭✨ゾくんはそんな重たい💚を軽々と抱えているんだ…🤗
壁から抜いてもらった後のロさんのお顔はきっと幸せそうな笑顔なのでしょう…よかったね☺️✨

aksさんのlaz50n_cあ〜こまとめ拝読しました🥰
どのお話のロゾも時に美しく、時に妖艶で、時に可愛らしさに溢れていて、拝読しながら幸せな気持ちでいっぱいになりました✨
特に『エンバーミングと有機物』と→
November 8, 2025 at 9:23 AM
laz50n_cってタグの文字列は【ロゾ 50音 ノベル チャレンジ】の意味です✌️
November 7, 2025 at 10:46 AM