#神魔は破獄の刃となりて
■神魔は破獄の刃となりて

SNS上で連載させてもらっている、毎回ついったの投票結果で展開が変わる、魔王ダムサダールと融合した巫女シヴィルのお話。
#153 で中断してるので、そろそろ続きを書かなければ……(´゚艸゚)∴頑張って完結させたい……!

(#1~#141)
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(#142~)
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September 17, 2025 at 5:05 PM
#神魔は破獄の刃となりて
【23-A】
「騎士どもはいずれ再びお前を――
 我らを追って再び現れよう。
 いくら雑魚とはいえその度に相手をしてやるのも骨が折れる。
 故に、まずは兵を揃えるのだ」

《私たちに力を貸してくれる兵が、いますでしょうか》

「いくらでもいるさ。使い捨てても文句も言わぬ忠実な兵がな」

もっとも近い『死』の気配を頼りに、魔王は鬱蒼たる森を抜け、陽が完全に上ったころ、ようやく目的の場所にたどりついた。

その場所は――
今は管理するものもなく、野ざらしの骨が無数に転がる荒れはてた墓地であった。

《うっ…!》

さしもの気丈な少女も、その惨い様子に、思わず声を上げた。
April 28, 2024 at 11:39 PM
#神魔は破獄の刃となりて
【86-A】
魔王にとって、無二の親友であった者の名前だった。

……懐かしい名だ。

魔王は、遠い昔、その名を持つ友と、酒杯を酌み交わした夜のことを思い出した。
それはアインファ全土への侵攻を始める、その前夜。

『アイン』

『どうした、ダムサダール』

『貴様は、構わぬのか』

『何がだ?』

紅の衣を身に纏った青年が、無遠慮に訊き返した。

数多の魔物たちを統べる、ダセス城の主・魔王ダムサダールと、対等の立場で話ができる唯一の存在。
それがその青年、アインフェルドであった。

そして、驚くべきは――

『貴様は、我が配下・七将で唯一の、人間だ』
July 9, 2024 at 11:32 AM
#神魔は破獄の刃となりて
【117-C】
「俺ぁヴァレスってんだ。
 この森を抜けようとしたんだが、出れなくなっちまって、途方にくれてたところさ」

男は陽気で人懐っこい口調でそう名乗った。

「あんたらも見た感じ、御同輩のようだな。
 だが、こんな危険な場所に、若いお嬢さん――
 と、小さなお嬢ちゃんの二人連れとは、珍しいな」

「誰がお嬢ちゃんだと!?
 わらわはこう見えても――」

男の言葉に、反論しようとするリンディ。
August 10, 2024 at 8:28 AM
#神魔は破獄の刃となりて
【105-B】
そこには――
薄闇の中、アレアが無表情に佇んでいた。

「アレアさん!」

否――
感じられる気配は、穏やかな彼女のものではあり得ない。

今の彼女を支配しているのは――

「アルマンド伯爵……!」

「……ほう。
 儂のことを知っていたか」

アレアの唇からこぼれた呟き。

その声は、アレアのようでありながら、年老いた男のようでもあり、邪悪な意思をみなぎらせたおぞましい幽鬼のようにも響いた。
July 29, 2024 at 12:30 PM
#神魔は破獄の刃となりて
【44-A】
「いえ、さすがに、それは申し訳なく……」

「ご遠慮なさらず。
 むしろ、寂しい一人暮らしの家ですもの、泊っていって下さると嬉しいわ」

アレアにそう言われては、さすがに断るのも忍びない。

「そ、それでは、お言葉に甘えて……」

《……やれやれ……》

魔王の呆れ声。

居間で寛ぎながら、食事の後片付けをしているアレアの様子を見ていると、魔王が語りかけてきた。

《あのアレアという女、妙だとは思わぬか?》

《そうでしょうか?》

《知り合ったばかりの旅人に、家に招待するばかりか寝泊まりまでさせるとは》

《とても親切な方だとは思いますが……》
May 25, 2024 at 8:50 AM
#神魔は破獄の刃となりて
【137-B】
「おお……!」

「なるほど、いくら森の中を彷徨っても、出る道が見つからねえわけだぜ」

背後でシヴィルの様子を見守っていたリンディとヴァレスも、その様子を目の当たりにして呟く。

《交代だ、後は任せる》

魔王は再びシヴィルにそう告げると、あっさりと沈黙した。

「ありがとう、トレンティス」

丁寧に礼を述べるシヴィルに、トレンティスは再び変化を悟って、

「やはり、あなた様は――」

そう言葉にしかけて、続く言葉を飲み込む。
詮索をしないでいてくれた魔王への、それは彼女なりの感謝でもあった。

「――いえ。
 ご幸運を、お祈りいたします」
September 2, 2024 at 9:52 AM
#神魔は破獄の刃となりて
【74-B】
「貴方の言う通り。
 私は今、後悔しています。
 守るべき時に、守りたい人達を、守ることすらできぬ力のない自分を。
 それを良しと、守られる立場に甘えてきた自分を」

短剣を構え、シヴィルは宣言した。

「故に私は、リドリスの巫女として
 この身に換えても、貴方を滅ぼします!」

いかに『リッチ』となった者同士とはいえ、相対するゼルゼレイは強大な暗黒の術を修めた、四百年以上を生きる死霊術師。
まともに戦って勝てる相手ではないことは承知の上だ。

(勝機は、そう、ただ一点!)

ゼルゼレイの体内にある神剣!
その柄に、手をかけることさえできれば!
June 26, 2024 at 6:43 AM
#神魔は破獄の刃となりて
【74-A】
「――アレアさん!」

いまにもゼルゼレイに突きかかろうと身構えていたアレアを、シヴィルが押しとどめた。

そして、アレアの手元にそっと触れ、その手に握りしめていた短剣をすっと奪い取ると、彼女を護るように、その前に立つ。

「下がっていてください。
 あの者は、私が斃します」

「非力な貴様ごときが、この私を斃すだと?」

ゼルゼレイの、カカカッ、という耳障りな哄笑。

「英雄の血、女神の血。
 いかにその血を引こうとも、貴様は所詮ただの小娘。
 魔王陛下が蘇りし時、滅ぼす使命を帯びながら、争いを嫌うあまり、戦う術すら学んでこなかった愚かな貴様が!」
June 26, 2024 at 6:38 AM
#神魔は破獄の刃となりて
【81-A】
ゼルゼレイの部屋にアレアを残し、扉を抜けて薄闇の支配する地下通路へと出る。

その前に、再び、あの白い影が現れた。
道に迷っていたシヴィルをこの部屋に導いた幽霊。

「ふん、貴様か」

白い姿は、シヴィルに――もっとも、中身は魔王だが――に向かって恭しく頭を下げた。

「礼ならば、小娘が目覚めている時にするがいい。
 それに、同じように妻を導いて、檻から小娘を助けさせたのも、貴様であろう」

見透かしたその言葉に、白い姿は微笑んだように見えた。

(死してなお、愛しき者を護り導き、正しきを為そうとするか。
 人間にも、面白い奴がいるものよ)
July 3, 2024 at 8:05 AM
#神魔は破獄の刃となりて
【102-A】
《もう一度、ゼルゼレイの資料を見てみましょう。
 まだ、全てに目を通せたわけではありませんし》

《諦めの悪い奴め。
 たかが一宿一飯の借りがあるだけの――
 それも、こちらを騙すつもりだった相手であろう。
 なぜそこまで必死になるのだ?》

《きっと、ご縁ができてしまったから、でしょうか。
 知り合い、事情を知ってしまったからには、できる限り力になってあげたいのです》

《――ふん、我には解らぬ考え方だな》
July 26, 2024 at 10:00 AM
#神魔は破獄の刃となりて
【32-B】
「ダムサダールは滅びた。
 我は後継者として、その全ての権能を引き継いだのだ」

「そんな……
 ではわらわは、四百年も……
 帰らぬ主を待ち続けていたのか……」

少女の姿をした冥龍――
否、冥龍として生を受けたその少女が、呆然と呟く。

「再び逢いまみえた時は、必ずわらわを妻とすると……
 あの言葉は、嘘だったというのか……!」
May 8, 2024 at 9:50 AM
#神魔は破獄の刃となりて
【91-B】
女は階下の騒ぎを聞いて怯え、隠れていたらしい。
唐突に部屋に入って来た人物に一瞬悲鳴を上げたものの、それがまだ若い娘と知って、すぐに落ち着いた様子だ。

「ど、どなた様でございましょう?」

「我はアレアの友人だ。
 ここの主に逢いたいのだが、どこに居るのだ?」

その容姿に見合わぬ尊大な口調と、アレアの友人、との名乗りから、相手を貴族の娘と勘違いしたのだろう。
女は恭しく頭を垂れ、答えた。

「主……と申されますと、旦那様……
 アルマンド伯爵様でございましょうか」
July 14, 2024 at 12:32 PM
#神魔は破獄の刃となりて
【87-B】
『あの時、オレの命は、召喚された魔人――お前に喰われて消えるはずだった。
 だが――

 なぜか、お前はオレを生かした。
 代わりに、オレを贄に召喚儀式を行った、領主や取り巻きどもを皆殺しにして』

『あれは中々に愉快だった。
 恐怖に顔を歪めて、悲鳴をあげて逃げまどう虫けらどもを、一匹ずつ追いつめて、潰していくのはな』

『なぜオレだけ殺さなかった?』

『貴様には怯えがなかった。
 贄にされる己の運命にさえ、興味を失ったかのように。
 そんな者を殺して、何が愉しいのだ?』
July 10, 2024 at 10:09 AM
#神魔は破獄の刃となりて
【41-B】
「元はアルマンド伯爵家の別荘地だったのですが、保護を求める避難民たちを受け入れているうちに、いつしか……」

「アルマンド伯爵様は、慈悲深いお方なのですね」

「……ええ……」

なぜか、アレアは言葉を濁した。

「と、もうすっかり暗くなりましたね。
 シヴィルさんもお疲れのことでしょう。
 一応、この先に交易商向けの酒場と宿もありますが……
 良ければ、我が家にお越しくださいませんか?」
May 22, 2024 at 12:29 AM
#神魔は破獄の刃となりて
【136-A】
(ここでも、奴の名をまた聴くことになるとはな。
 アインフェルド――)

魔王は、遠い昔、肩を並べて共に日々を過ごした友の姿を思い浮かべた。

(確か、あの女騎士――アデュラも言っていたな。
 ダセスからウェルドナンへとやって来た四人のうち一人がそう名乗ったと)

四人のうち一人が、シヴィルに斃された死霊術師ゼルゼレイ。
残る三人が――

『長身の、やたら綺麗な顔をした男と、仮面で顔を隠した女――
 そして、子供だ。

 優男は、ロレルナン。
 仮面の女は、ダミアと名乗っていた。
 で、ガキの方は――
 
アインフェルド様、とか呼ばれていたな』
September 1, 2024 at 9:48 AM
#神魔は破獄の刃となりて
【73-A】
「巫女様、エセリオに、何が…?」

突如争い始めたゼルゼレイとエセリオの様子に、唖然としてアレアが訊ねてきた。

(彼女には、魂たちが見えていないのだわ)

「彼は私たちを守ろうとしてくれているのです」

「あんな姿になっても……?
 エセリオ、貴方は、まだ……」

(今のうちに、神剣を見つけなければ。
 でも、この部屋に、隠せそうな場所は……)

その時、ふとシヴィルは閃いた。
『聖物鑑定』の魔法を使えば!

儀式用の聖具が穢れていないかを判定するために、神殿では日常的に用いられていた魔法だが、聖なる力が強いものほどより強く光り輝く。
June 25, 2024 at 7:25 AM
#神魔は破獄の刃となりて
【107-B】
「ゼルゼレイは『反魂呪詛』を用いて、アレアさんの身体にあなたの魂を埋め込み、 融合させた。

 そう、本来なら、アレアさんの意識は完全に消え、あなたは自由にその身体を使えるはず。
 しかし、一年の時を経ても、アレアさんの意識は残ったまま。
 あなたは今も、彼女の意識が弱まった時――気を失った時や、眠った時しか表に出てこれない。

 ……違いますか?」

「小娘、貴様……何が言いたいのだ?」
July 31, 2024 at 4:27 AM
#神魔は破獄の刃となりて
【59-A】
「どうして貴女がここに?」

解放されたシヴィルからの問いに、

「この屋敷は、元々私の家ですもの。
 そして、この檻には――
 私の夫が、入っていたのですから」

答えるアレアの表情は、地下の薄闇の中でもなお暗く澱んで見えた。

「どういう……ことなのです?」
June 9, 2024 at 7:25 AM
#神魔は破獄の刃となりて
【114-A】
「これから……」

シヴィルがそう口にしかけたところで、魔王が念話で口を挟んだ。

《そのことだが、我から提案がある》

無論、アレアには聞こえていない、
言葉を途中で飲み込んだシヴィルを訝しげに見つめるアレアを後目に、

《かつての我が居城、ダセスへ行きたいのだ》

《ダセス城……》

《あれから四百年が経ったが、現在どうなっているのか気にかかる。
 残る他の七将たちの動向も含めてな》

言いながら、魔王は考えていた。
ダセスに行けば、いくつかの疑問に、答えが出るような気がする。

《私も、御使い様やリンディがいたその場所に、行ってみたいです》
August 7, 2024 at 11:35 AM
#神魔は破獄の刃となりて
【123-B】
「わかりました、ヴァレスさん。
 一緒にダセスまで行きましょう。
 でも――」

「ああ。
 心配しなくても、俺ぁあんたらの信義を裏切るようなマネはしねえよ。

 さて、休憩もできたし、話もまとまったんなら、さっそくこの森を出る方法を考えねえとな。
 もう六日もここを彷徨っててな。
 いいかげん俺も、ここの風景は見飽きたぜ」

「そんなに……!」

「あんたらも知らずに来たようだが、下手したらここからは一生出られんかもしれんぜ」
August 16, 2024 at 8:40 AM
#神魔は破獄の刃となりて
【96-C】
《兄様――ゼノヴィスが、
 遠い昔に、そう教えてくれたのです》

そう呟き、シヴィルは哀しげに笑った。

書棚から、読み込まれた本、巻物を抜き出す。
シヴィルはその中から一冊を選び、目を通し始めた。

《それは魔術言語で記されたものだぞ。
 まさか読めるのか?》

《いえ、全く……》

照れ笑いを浮かべる少女に、魔王は嘆息した。

《手のかかる奴め。
 やむを得ん、我が読んでやる》
July 19, 2024 at 10:09 AM
#神魔は破獄の刃となりて 【143】 公開しました(≧∇≦)/
今回も皆様の選択肢投票次第で次回の流れが決まりますので、ぜひぜひ読んで投票してやってくだされ☆-(ノ゚∀゚)八(゚∀゚ )ノイエーイ☆
#神魔は破獄の刃となりて
【143】
シヴィルは少し考えて、

《真正面から堂々と行きましょう。
 ダセス城は御使い様が治めていた城。
 本来の主が帰還するのですから》

《ほう》

魔王はシヴィルの大胆な意見に驚いたようだった。

《小娘、お前もずいぶんと肝が据わってきたものだな。
 やはり、我との『融合』の影響か?
 それとも――》

そう言いかけて、少しの沈黙の後、言葉を続けた。

《だが、城の中に待つ者が我の配下とは限らぬぞ?
 あのヴァレスとやらの言うように、
 奴の狙う『仇』とやらかもしれぬ》

《ええ。なので、もう一つ手を打ちます》
January 5, 2025 at 11:35 AM
#神魔は破獄の刃となりて
【6】
《我は奴の御使いなどではない!》

魔王にとって、戦女神リドリスは宿敵も同然。
英雄ウェルドナンに己の神剣を与え、魔王を討伐させるように仕向け、戦いが終わった後も、魔王の魂を永年、天の獄に縛り続けた忌まわしき神であった。

「いいえ、あなた様はリドリス神の御使い。
 私にはわかります」

《貴様ごとき小娘が知った口を――》

と、魔王のその言葉が止まる。

《まあよい、それより、我を手にするのだ。
 追手にむざむざ殺されたくなければな》

少女は言われるがまま、魔王の宿る剣の柄を握ると、剣から光が溢れ出す!

《さあ、見てみようではないか、我らの敵を》
April 17, 2024 at 6:45 AM
#刺さる人に届け一次創作祭り
面白そうなタグなので便乗させていただいて……

ついったの投票機能を使って、読者の皆様に選択肢を選んでもらいながら進行するストーリー #神魔は破獄の刃となりて をSNS上で連載しております。

むか~し滅ぼされた魔王様が、復活して戻ってきたら、配下だった連中がいらんことやってる感じなので、カチコミに行く、みたいな感じの話になっております(雑な説明

皆様の投票次第で結果が変わるので結末がどうなるやら、書いてる僕にもさっぱりわかりませんが、よかったら読んでやっていただいて、投票に参加していただけると嬉しいです(人´∀`).☆.。.:*・゚よろおね❤
February 1, 2025 at 2:00 PM