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つかさ

@harutoomi.bsky.social

ロイアイのワンライ過去お題チャレンジ。
お題は警護

大佐中尉でできてない。
ロイアイ味は薄めのような。まあでも仲良し感はある気がしなくもない。
わりと原作の距離感ってこんな感じじゃねって気もする。

警護って何ですかとリザが聞いた時、ロイは大事な人が傷つかないように守ることだよと言った。それはまだ彼が父の弟子だった自分のことだ。
「私もそうなりたいです」
　リザの言葉に、ロイは眉尻を下げた。
「どうかな……。そういうのは、年上で男の僕の仕事なんじゃないかな」
「どうしてですか」
　リザは戸惑う。だってお母さんみたいなものでしょうと、その時のリザは思ったのだ。お母さんはリザが怪我したりしないように、教えてくれたし、注意してくれた。手当もしてくれた。それは大事に守ることとは違うのだろうか。
　リザの戸惑いにロイはぎこちなく微笑む。
「まあ、確かに女の人でも警護の人はいるかもしれないね。女性軍人もいるし」
「私、ちゃんとできます。手を引いたり、階段で気をつけたり、そういうことでしょう？」
　ああと、ロイは破顔した。どこかほっとした顔で。
「そっか。そうだよね。子どもとかを守りたいってことだね。うん、リザはそういうのが似合うと思うよ」

　もちろん、今のリザは当時の自分の勘違いを分かっている。警護の対象は社会的地位のある人物であり、日常で子どもを守ることを警護とは言わない。
　誰かを守りたいと、父の葬儀の日に彼が言った

ものともまた違う。それでも全部がリザの中では分かちがたく結びついている。
　世話を焼き、気にかけること。人のためにつくすこと。要人を守ること。
　リザの提出した警護案に、大佐は文句を言いたそうな顔をした。だけど実際には、ホークアイ中尉は優秀だなと彼は言った。皮肉だろうか。
「訂正がありますか」
「いいや。完璧だよ。文句のつけようがない」
　承認のサインをして大佐はリザに書類を返す。
「これでいい」
　言葉とは裏腹に、大佐は文句を言いたそうな顔をしたままだ。
「警護対象はあなたです」
「わかってるよ。……おとなしくする」
「よろしくお願いします」
　多分、とリザは思う。彼が似合うと言い、彼女自身が当時考えたような、子どもの手を引き、段差に気をつけてやる、そんなことをリザがしようとしていたなら、彼はあの時のような柔らかな顔で彼女を見たのだろう。
　けれど今のリザの仕事は本来の意味での警護だ。
　疲れが残らないように、予定外のことがないようにと気を配ることも、リザは己の仕事だと思っているけれど。
　似合うとあの時この人が言わなければ、自分は軍人にならなかっただろうか。
　リザはすぐその考えを振り払った。無意味な仮定だ。多分、それはあまり関係がなかった。リザは自分で選んできた。ただひとつの背中を追いか

けて。
　警護すること。世話を焼くこと。そのふたつはリザの中で分かちがたく結びついている。おそらくは人のためにつくす、ということも。
「あなたが悪いんです」
　小さく言ってみたけれど、当の本人には聞こえていまい。聞こえていたとしても意味が分からないだろう。
　リザは踵を返した。ドアノブに手を伸ばしたところで、ふと魔が差す。
「私に警護は似合いませんか」
「君以外にお守りされる気はないよ」
　随分とあっさりした答えだった。
　おもり、と口の中でリザは呟く。わだかまってもやもやしていたものが霧散して、代わりに軽くて温かなものがすとんと胸に落ちてきた。警護すること。世話を焼くこと。どちらも同じだ。

　ホークアイ中尉はマスタング大佐のお守りである。

October 9, 2025 at 2:04 AM Everybody can reply

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つかさ

@harutoomi.bsky.social

嫉妬戦で中尉が大佐をヤッてたら人柱の数合わせどうすんのかってやつ、その場合はアムスト少佐がブラッドレイに刺し倒されて、プライドの触手拘束になったんじゃなかろうかと、やおら。
絵面的にも戦力的にも、大佐が中尉の命を選択してくれて良かったね感（ひでぇ

October 8, 2025 at 11:50 AM Everybody can reply

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つかさ

@harutoomi.bsky.social

中尉の言ってた処刑云々、大佐がどう思ってるのかはよく分かんないとこもあるんよね。しかし最初から死ぬのは構わないって価値観は出してるし、中尉が死ぬのは嫌だけど、自分が殺されるのは仕方ないって態度だし、大佐も同意見というか、大佐から言い出してんのかなって思うが。（ところであそこで中尉が撃った結果、人柱足りないでお父様の野望頓挫になる…？）
個人的に処刑までは行かんやろと思うし、まあイシュヴァール政策とかの方向でできることをする方が健全だと思うが、大佐的には良いのだろうか。世間が許すなら良いのか？あんまり自罰的なところはないけど。覚悟だけの話？

October 7, 2025 at 11:47 AM Everybody can reply

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ぴのーすたー

@pn04.bsky.social

ナガセさん、セスも好みだそうす…ラルフ大佐やクラーク中尉もタイプだったはず…‪( ◜௰◝ )‬
逆に京や八神、Ｋ'といった若者はダメダメとのこと…

October 4, 2025 at 3:07 PM Everybody can reply

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つかさ

@harutoomi.bsky.social

ロイアイのワンライ過去お題チャレンジ
お題はマスカレード
大佐中尉で付き合ってない。
まあなんだ…雰囲気で流していただければと……。

印刷された本の本文の体裁で画像化されたテキストです。

画像情報：generated by 新書ページメーカー / Photo by LunarSeaArt on pixabay / フォント：さらら明朝Regular

以下は本文の内容です。

　日が沈んでからそう時間が経ってもいないのに、窓の外の宵闇はべったりと黒く、ガラスに映るのはシャンデリアに照らされたホールの中ばかりだ。紳士淑女の皆様の衣装を飾る宝石や金糸銀糸が、それにさらなる輝きを添える。照明が届きにくい壁際には楽団がいて、彼らの持つ楽器が時折にぶい銀に光っていた。
　会話の邪魔にならない静かな音楽が今は奏でられている。ささやき交わす人々は、皆目元を覆う仮面をつけていた。建前上、正体を探る質問は禁止されている。とはいえ招待されているのだから、参加者のおおよそは推測がついた。
　彼はここに表向きは社交場のつきあいで参加していた。パートナー同伴となっていたのだが、会場についてからは別行動をしている。それでも目の端に彼女の姿を捉えてはいた。
　まっすぐに伸びた背筋。頭上からの光に輪郭をにじませる金髪は背に流している。首の詰まったドレスは体にぴったりと沿ってその輪郭を浮かび上がらせていた。顔を隠していても男の視線を集めている。
　肩に伸ばされる手を交わし、かけられる声に微笑んだ唇で答え、彼女はきびきびと近づいてきた。女性的な衣装にそぐわない潔い動きが、余計に衆目を集めているのかもしれない。
　花束のなかに差し込まれた銀のナイフみたいに目立っていると、彼はどこかで読んだ文章を思い出す。とはいえそんなことを考えるのは、彼女の殺傷能力を知る故だろうという気はした。
　横手からかけられた言葉をお愛想でかわすと、

彼は彼女に顔を向けた。無視されるかなと思ったけれど、正面に立った彼女は指を彼の胸元に伸ばす。先程どこかのご令嬢がふれたせいか、ポケットチーフがややよれていたのを直してくれる。
「ありがとう」
「いえ」
「ここは空気がこもる。少し外に出よう」
　テラスにと思ったが、彼女は廊下にと言った。こんなところ狙われてもいないよと言えば怒られるのだろう。彼は素直に廊下に出る。
　体を寄せて互いに廊下に人気がないことを確認しながら、頬をくっつけるようにしてひそひそと話す。参加者の確認。誰と誰が親しそうか。あるいはそうでもなさそうか。交わされた合図はなかったか。連れ立って消えたふたりはいないか。
「それは、今、我々が該当するのでは？」
「同じように気にしている誰かがいたら、噂になるかもしれないな」
「お偉方は中尉など記憶されていないでしょう」
「君は目立つ」
「あなたのせいでは？」
　そんなことはと言う代わりに、彼は口元を斜めにした。仮面越しに彼女の目が少し険しくなる。真っ黒な仮面は縁に細かな装飾が彫り込まれていたが全体としてはシンプルなもので、留めの紐だけが濃い赤だ。
　もったいないなと彼は思った。目元を隠していても、形の良い鼻だとか唇だとか、彼女は十分にその美しさをうかがわせていたが、けれど苛烈な感情を押し殺す冷たい眼差しが、彼にとっては一

番の魅力だ。
　仮面にうがたれたアーモンド型の窓から、薄茶色の目が彼を見ている。
　彼女も彼の目を見つめた。金色の仮面は黒でアラベスク模様が描かれている。酷薄にも子供っぽくもなる黒い目を隠されると、彼は随分空々しく見えた。
　唇がそばにある。
　その気になればこの唇はいくらでも甘い言葉を吐くだろう。そのくせ絶対に約束はしないのだ。嘘つきなら嘘つきなままでいればいいものを。目を見てしまったら、嘘だろうが本当だろうがついていくしかなくなる。
　そろそろ戻りましょうと彼女は体を離した。そうだなと彼は同意して、ふたりは移動する。
　目元を仮面に隠して。口元には微笑みを浮かべて。
　隠されたものの魅力を知るのが自分だけであればいいと、彼も彼女も思っていた。

October 2, 2025 at 7:57 AM Everybody can reply

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めこ

@rr---702.bsky.social

え、いやだ！！！いーやーだーー！！
脱衣！抱擁！暗転！みたいなのはないんですか？私の頭の中だけで展開してるんですかこれは？
ただの部下の女をステの大佐は「中尉いいい！！！あばばばばば！！目を開けろ！！ぎゅ！！！」しちゃうんですか。

まあでも私は前回紅蓮の女になってしまったので今後セリム坊ちゃまvsキンがじっっくり描かれるならありがたく拝む🙏

October 1, 2025 at 11:39 PM Everybody can reply

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結城

@aori.bsky.social

そもそもジャグンソとの戦闘経験のあるピレス・フェレイラ中尉（ともうひとりの少佐）を補佐につけようとした上層部の命令を一蹴し、ジャグンソに負けたことを「共和国の恥晒し」と後衛に回したモレイラ・セザル大佐の判断ミスが致命的だったということなんだろうなあ。
おそらくとても有能だったはずの士官が極端な理想主義によって切り捨てられ、最終的にはあのような最期を遂げねばならなかったという悲劇。

September 30, 2025 at 1:14 AM Everybody can reply

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つかさ

@harutoomi.bsky.social

ロイアイのワンライ過去お題チャレンジ。
お題は氷菓子。
今になって調べましたが、主にアイスであって、かき氷は入れないひともいる様子。まあありで。よろしくぅ。
大佐中尉で付き合ってて仲良し。

印刷された本の本文の体裁で画像化されたテキストです。

画像情報：generated by 新書ページメーカー / Photo by Krystal Ng on Unsplash / フォント：源暎こぶり明朝

以下は本文の内容です。

「かき氷は作れますか？」
　やおらのリザの言葉にロイはまばたきをする。なんとなく外に目をやった。
　ぎらりと擬音をつけたくなるような夏の日差しが、窓際を白く光らせている。今年の夏は過酷に熱く、さらには結構湿度も高い。外に出るのも億劫だという話をしたあとのことだ。
「やってみないとわからないが」
　言いながら脳内を錬成式がめぐる。氷は作れる。ただ、求められているのはかき氷である。しゃりしゃりとした食感に、ひんやりと喉を滑り落ちる感じ。食べたくなる。
　錬金術用の手帳をちぎると、ペンを走らせた。
「水分は取り出せるとして。結晶化……」
　ぶつぶつ言っていると、横から皿を差し出される。メモを置いて手を添えた。パリッと音を立てて連成光が走る。
「あら」
　こんもりと氷が盛られている。いいですねと持ち上げたリザは台所に向かったが、すぐに戻ってきた。
「すいません、これ固まっちゃったみたいで」
「え？　ああ、そうか」
　細かい粒を錬成したつもりだったが、同時に作ったのでひと塊になってしまったらしい。しまったなとロイは頭をかく。それから錬成陣に視線を落とした。
　基本は間違っていない、と思う。
　考え込んだ。すぐそばに答えがありそうなのに、なんだか外側を回るばかりでたどり着けない。ぐ

るぐるぐるぐる思考は回る。進めないまま同じところをなぞる。それなのに思考を止められない。
「大佐」
　声をかけられて、冷たい手で顔をはさまれ横を向かされた。思わず首をすくめそうになるが、手のひらの体温はすぐに馴染んだ。ロイの顔に両手をあてて、リザはのぞき込むように顔を近づける。
「一回離れましょう」
「ああ……。そうだな」
　メモをしまう。確かに経験上、空回りしている時はうまく行かない。別のことをしたほうがいい。
「とはいえ、やっぱり外に行く気にはなれないですよねぇ。……ああ、氷、お風呂に入れちゃいます？」
「一緒に入るかい？」
　馬鹿ですか、と睨まれた。

　過酷な日々が過ぎ、朝夕はほっとするような涼風が吹くようになった。とはいえ昼間はまだ暑い。特に動いているとすぐ体温が上がって││という話をしていると、そうだとリザが両手を合わせた。
「大佐、氷を作って下さい」
　このくらいの、と両手で彼女は四角を描いた。それでいつだかかき氷を作ろうとして失敗したことを思い出す。結局あのあとは特に考えてはいない。今なら思いつくだろうか。
　思考の半分くらいで錬成陣を練りながら、ともあれ頼まれた氷を作った。ありがとうございますと、満足そうに頷いたリザは席を外す。だからロ

イは錬成陣をながめながら、かき氷について考えた。水の結晶を薄い状態のまま、他のものとは凍りつかないようにする方法。
　ごとんと重い音がして顔を上げると、何やら鉄製の機械が机に置かれた。大きなハンドルが目立つ。
　リザは真ん中に氷の塊をはめ込み、上部のねじを回して固定すると、下部のスペースにグラスを置き、横の目立つハンドルを回し始めた。紙をかくようなこすれる音がして、グラスの中に氷の破片が降り積もる。
「かき氷？」
「そうです」
　言いながら至極真面目な顔で彼女はハンドルを回した。降り積もった氷の破片がこんもりと盛り上がる。
「私がしようか」
「そうですね。お願いします。私はジャムを持ってきますから」
　立ち上がって、ロイはハンドルを回した。それほど重くない。勢いのまま回して、氷の削れる音を聞く。お祭りの屋台でみたかもしれない。懐かしさはどこかくすぐったかった。
　いちごのジャムは果肉感がかなり残っていた。かき氷に乗せると、汁気はじんわりしみこんで、いちごがごろごろと氷の上に残る。
「かき氷の錬成は思いつかない」
　机を見ながらため息混じりに呟いた。別にあなたひとりで全部する必要はないでしょうとリザは言う。ロイは顔を上げた。視線を受けて、リザは

ため息をつく。
「そうでしょう？　ちなみにジャムはご近所の方にもらったものです。かき氷機はイベント用のやつです。レベッカが都合してくれて」
「削るのは楽しかったよ」
「わかります」
　リザはかき氷にスプーンを差し入れて、しゃくりと音を立て氷といちごをすくった。口に入れると目をぎゅっとつむる。
「ん、おいしい」
　ロイもスプーンを手に取った。ひとりで全部する必要はない、という言葉を胸の中で繰り返してみる。多分それは期待されていないということとはまた違うのだ。
「格好つけたかったんだよ。多分」
　言いながらかき氷をいちごと食べる。しゃりっと音を立てて崩れた。甘くて冷たい。氷は意識する間もなく舌で溶けて、冷えた舌で残ったいちごの果肉を潰すとわずかに酸味がある。あっという間に食べられそうだ。
「別にそんなの必要ないですよ」
　リザはかき氷に視線をあてながら言う。
「私はあなたと食べたかっただけなので」
　銀色に光るスプーンの上に、溶けかけててろりと艶を見せる氷の塊。
　夏の名残をふたりは味わう。

September 26, 2025 at 5:58 AM Everybody can reply

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rǒm

@romrompurin29.bsky.social

キッズ時代、ホークアイ中尉が大佐が殺されたと知って何もかも諦めるシーンにメチャメチャメチャメチャ興奮して冗談抜きで鋼の錬金術師19話を毎朝学校行く前に見ていたことのある異常者

September 25, 2025 at 5:40 PM Everybody can reply

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つかさ

@harutoomi.bsky.social

ロイアイのワンライ過去お題チャレンジ
お題は寝相
できている大佐中尉。甘いぞ！なかよし。いちゃついてはいない。

印刷された本の本文の体裁で画像化されたテキストです。

画像情報：generated by 新書ページメーカー / Photo by Jeong Eun Lee on pixabay / フォント：源暎こぶり明朝

以下は本文の内容です。

　休日の午後の日差しは、まどろみを誘う穏やかさだ。窓際ではカーテンがゆったりと下がり、ソファーではブラックハヤテ号が寝息を立てている。
　リザは台所に立っていて、手伝いを断られたロイは食卓でぼんやりとしていた。
　昨日の夜に錬金術関連で思いついたことがあったのだ。ただのアイデアであるそれの実現性を、あれやこれやと考える。
「抱え込んでるの、可愛いですよね」
　不意の声に顔をあげると、いつの間にかリザが立っていた。ロイはまばたきしてリザを見る。食卓にお茶を置いた彼女は、ずいぶんと柔らかな表情をロイに見せた。
「寝てる時の話です」
　ロイは目を泳がせた。ふたりはそういう関係で、だからこそ休日を一緒に過ごしている。確かに彼女はロイの寝ている姿を知ってはいるだろう。
　カップの中身は紅茶だ。司令部のものとは比べ物にならない香りがふんわりと湯気とともに立ち上っている。ロイは砂糖を入れると、砂糖入れをリザの方へと押しやった。
（……可愛い？）
　あからさまに好意で選ばれた言葉は否定もし辛い。
「そう、かな」
「そうですよ。ご存知なかったんですか。ぎゅうって抱え込んで」
　どこか歌うような、機嫌の良い口調だ。
　確かにロイは枕を抱えて眠るときがあった。知らない人間の前では大丈夫だけれど、彼女の前で

は気が緩んでしまったのかもしれない。
「甘えが出てしまうのかな」
「そうなんでしょうね。幸せそうっていうか、すごくくつろいだ顔で、もう胸がぎゅっとなります」
　愛おしいと言葉のはしから伝わってくる。やや細めた目も、ほころんだ唇も深い慈愛に満ちていた。
　座った彼女は砂糖入れを引き寄せる。少しだけ砂糖を入れて真ん中に戻した。ロイはそれを引き寄せ、砂糖を入れる。
「……ありがとう」
「え？　ああ、お茶ですか。何だかぼーっとしてますね、大佐」
「うん、ちょっと考え事をしていたから」
「そうなんですね」
　相槌をうつ彼女の視線は部屋の隅にむいていた。なんだろうとロイは振り返る。ソファがあって、ブラックハヤテ号が寝ていた。さっきまでくわえていたぬいぐるみを抱え込んでいる。
　抱き枕みたいに。
　前足でぎゅっと抑え込んで。
（ああ……。そういう）
　気恥ずかしくなって、ロイは頬をかいた。
　視線を落とすと紅茶が揺れている。砂糖入れがそばにあったから、砂糖を入れた。
「うん、可愛いな。確かに」
「はい」
　微笑んだリザは、ふと目を見開いた。紅茶色の目はまっすぐにロイに向けられる。
「大佐もでしたね。あの寝相」

「止めてくれ」
　頬にあった手でそのまま口元を覆ったロイは目を伏せた。リザの笑い声が小さくはじける。
「いいじゃないですか。甘えが出てくれるなら嬉しいです」
　忘れて欲しいと思ったけれど、ひどく優しい言い方だったから、からかっているわけではないのだろう。ロイは上目遣いに彼女をうかがう。
　頬杖をついたリザはじっとロイを見ていた。
　午後のやわらかな日差しを受けた白い頬と、金色の髪。ふせぎみのまつ毛も金色だ。
　さっきの視線より随分と甘かった。
　また別の気恥ずかしさがロイを襲う。ごまかすように紅茶を飲んだ。
　胸に広がるものはひどく甘い。
　明らかに砂糖の入れ過ぎだった。

September 22, 2025 at 5:43 AM Everybody can reply

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つかさ

@harutoomi.bsky.social

ロイアイワンライ過去お題チャレンジ
お題はパジャマ
大佐中尉で付き合ってない。大佐は出てこない。女子Sパジャマパーティ。
エドウィン含む。

印刷された本の本文の体裁で画像化されたテキストです。

画像情報：generated by 新書ページメーカー / Photo by Heather Ford on Unsplash / フォント：UDデジタル教科書体

以下は本文の内容です。

　見覚えのある姿にリザは目を見張る。リザの横を歩いていたレベッカは、喋り続けたまま数歩行き、口を止めた。振り返る。
「どうしたのよ」
「ちょっと知り合いが」
　声が届いたわけでもないだろうに、駅から出てきた少女はリザの方に顔を向けた。目と口が少し開く。荷物を抱えたまま、小走りにやってきた。
「リザさん！　お久しぶりです」
「こんにちは、ウィンリィちゃん」
「リザ、こちらは？」
「ああ、エドワードくんの幼馴染で装具技師のウィンリィちゃん。こっちは私の同僚で」
「レベッカ・カタリナです。はじめまして」
「ウィンリィ・ロックベルです。はじめまして」
　装具技師なんだすごいわねー。いえいえそんな、おでかけですか？　うんカフェに行こうと思って。カフェ！　いいですね！　えー、一緒に来ちゃう？
　初対面にもかかわらず、なんだか気さくに話を弾ませるふたりにうっかりリザは置いてけぼりにされた。
「ちょっと！」
　リザはレベッカの服の裾を引っ張る。
「ウィンリィちゃんにも都合があるんじゃないの？」
「うん、だから聞いたのよ？」
　レベッカはあっけらかんと言う。
「まあでもイーストシティに用事があってきたんだもんね。忙しいか」
　にこにこ聞いたレベッカに、ウィンリィは苦渋に満ちた顔を見せた。
「うっ……。でもそれはどうにか……。夕方なら……」
「あ、これは本当に来たいんだ。わかるー。私も田舎の方にいたもん。お店とか行きたいけど敷居高いよねー。いいよ、おねーさんと行こう行こう。時間こっちで合わせるし。夜は何時までいける？　あ、いっそ

泊まる？」
「泊ま……！」
「あの、ウィンリィちゃん、レベッカに乗せられることは」
「えええええ、いいなぁあ。私パジャマパーティとか憧れてて。そういうのするんですか、やっぱり？」
「もちろんよ！」
　リザはレベッカをにらんだが、レベッカは目配せをよこすばかりである。
　だって、とウィンリィと別れたあとレベッカは語った。私だって憧れてたのよ、パジャマパーティ！　だけど士官学校じゃ無理だったし、軍人になったらいつ呼び出し来るかわかんないし、ともかくなんか、そういうの全然なかったじゃない！！　いいじゃない、年下の子に見栄くらいはったって！！
　わからなくもないとはリザも思った。リザだって田舎娘である。漠然と都会の生活に憧れはあった。そして現実はそうそう憧れどおりには行っていない。せっかくならこの機会にと、思わなくもなかった。

「背徳の味がする」
　シュークリームを頬張りながらレベッカは言う。わかる、とリザは思ったが口に出すのは控えた。初めてなのを見抜かれたら恥ずかしいな、などと思ってしまったからである。
　パジャマ姿で甘いものを食べるとか。
　背徳はひどく甘美だ。
「あとは？　やっぱり恋バナかな」
「するんですか！」
　ウィンリィの顔が輝いている。肌もつやつやで、白地に小さく柄の入ったパジャマも可愛らしい。リザは普段はさっぱりとした綿の無地のパジャマだが、なんとなくサテンのパジャマを購入して袖を通した。レ

ベッカもいつもはＴシャツにジャージのくせに、やたらと飾りのついた派手な色のパジャマ姿である。
「恋バナねぇ。言っといてなんだけど、そういうのは地元にいた頃のほうがしたわね」
　そうねとリザもレベッカの言葉に相槌を打つ。
　恋愛未満の他愛もない噂話みたいなのは、士官学校入学前のほうが多かった気がする。だんだん現実的な物が入ってきたり、具体的な人が入ってきたりで、楽しみでは口には出しづらくなった。大人になるということは、不自由になるということだ。
「そうですね、学校で話してたかも。お泊りではなかったかなぁ。まあ、私が小さい頃はお泊りになると、エドとアルばかりでしたけど。あいつら錬金術の話しかしないし」
「わかるわ」
　思わずリザは言った。
「延々錬金術の話するわよね」
「そうそう、こっちは置いてけぼりなのに。もうずーっと話してます。リザさんも錬金術師に知り合いが？」
「ええ、昔ね。ちょっと」
「今も錬金術の話ばかりなの？」
　レベッカが口を挟む。そーですね、とウィンリィは少し視線を宙に浮かせた。
「アルはそんなことないし。エドも他の人がいるときはそうでもないんですけど。でも私とふたりになると、相変わらず錬金術の話ばっかですよ。もう本当に錬金術バカで」
　あははと頭の後ろに手を回して笑うウィンリィに、レベッカはにやついた笑みを見せた。
「それは意識しちゃってるって話じゃないの」
「意識？」
「普段はそうでもないのに、ふたりきりになると錬金術の話はじめるんでしょ？　意識して何言いたいのか

わかんなくなるのよ」
「そうなの？」
「いやなんであんたが食いつくのよ」
　思わず前のめりになったリザに、レベッカは呆れた視線を向ける。いやそのエドワードくんよねと曖昧に言いながら、リザはウィンリィを見た。ウィンリィは両手で頬をおさえて、そんなとかもごもご言っている。
「あー可愛い！　もうね、絶対そうだって。意識しちゃうわよ。お年頃だもん」
　レベッカはどうしてか自分の身体を抱きしめるようにして言った。もしかするとウィンリィを抱きしめたかったのかもしれない。我慢したのだろう。
「いやでも、ただ慣れてるっていうか、気が緩んで錬金術の話しちゃうのかもしれないですよね……」
　頬を抑えていた手を半端に下ろしてウィンリィが言う。リザも頷く。
「そんな周囲に気を使うタイプなの？」
「そん……なことはないですけど。でも」
「ほらほらー」
　レベッカはにやついて、クッキーを口に放り込み、ホットミルクをいれたマグを持ち上げる。リザも表情を作るとマグを持ち上げた。ミルクはほんのりした甘さが優しい。
　レベッカはたとえばこういう態度に心当たりはないのかと、ウィンリィに訓えを垂れはじめた。ウィンリィはそれにいちいち頷いている。
　リザは自分のパジャマをなんとなく眺めた。
　ふたりきりになると錬金術の話をはじめるあの人は、綿とサテンとどちらが好きだろう。
　聞いたら動揺してくれるだろうか。
　とはいえ、そんな勇気はまだないから、多分自分はまだまだ綿のパジャマを着るだろう。
　レベッカはまだ得意げに話している。

September 9, 2025 at 11:54 PM Everybody can reply

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とおい

@tooi2501.bsky.social

大佐と中尉のやおいたるや伝説なのだが　結界師は正守の有能な副官と、ズケズケいってくる春日さんがそれぞれ別にいるの、なんか潔癖

良守と春日さんもちょっとエドのポジションと思うとおもしろい　正守と似た者同士でいったら春日さんだから……

September 9, 2025 at 4:30 PM Everybody can reply

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SkyMarine26

@skymarine26dett.bsky.social

コウ・ウラキ少尉…ガンダム試作３号機の無断使用等の罪に問われ懲役一年（後にガンダム開発計画そのものが軍の公式記録から抹消されたため罪状消滅。北米オークリー基地へ転属）

エイパー・シナプス大佐…ガンダム試作３号機の接収、艦艇の私物化、命令無視等の軍規違反により死刑

アルファ・Ａ・ベイト中尉、ベルナルド・モンシア中尉、チャップ・アデル少尉…ティターンズへ転属

チャック・キース少尉…北米オークリー基地へ転属

September 7, 2025 at 9:12 AM Everybody can reply

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つかさ

@harutoomi.bsky.social

ワンライ過去お題チャレンジ
お題はルール
大佐中尉でつきあってる。甘いか？

印刷された本の本文の体裁で画像化されたテキストです。

画像情報：generated by 新書ページメーカー / Photo by Priscilla Du Preez on Unsplash / フォント：源暎こぶり明朝

以下は本文の内容です。

　仕事中は恋人としてのふるまいは禁止ですとリザが言った時、ロイは素直に賛成した。公私の別はきちんとすべきだし、外聞もよろしくない。親しい連中には知られてもいいのではないかと思ったが、気恥ずかしいというリザの気持ちもわかる。
　眉尻を下げてちょっと目をそらす彼女の表情が可愛かったから、どうでも良くなったとも言う。
　しかし、彼女の要求は案外厳しかった。
　ふたりきりの軍用車のなか、「なあ、リ」と言いかけただけで「仕事中です」とぴしりと跳ねられた。
「うかつに口を滑らさないよう、ふたりきりのときでも気をつけるべきだと思います。ルールは守りましょう」というのが彼女の弁である。まあ、それはそうだなとは思った。
　仕事の目処がたったふたりきりの執務室ではこうだった。
「どうかな、仕事帰りに食事でも││」
「お断りします」
「え、なんで」
　つきあってるのにという心の声は、凛とした眼差しの前に心から出すことが叶わなかった。
「部下のふるまいとしては不適切でしょう。ルールです」
「仕事の後ならプライベートでは？」
「今この場でプライベートのお約束はできかねます」
　けんもほろろである。
　がっかりしながら仕事を片付けた。それじゃあお疲れと帰ろうとすると、送りますと彼女は追っ

てきた。
「今日は個人の車で来ているんだが」
「存じてます」
　気持ち早口に言う彼女の顔を見て、なんとなく感じるものがあったから、ロイは素直に送られた。家の前で車を止めた彼女はひどく物言いたげで、車を降りたロイは運転席の窓を叩いた。
　彼女は少し扉を開ける。
「忘れ物ですか？」
「プライベートの時間だろう？　食事でもどうかな」
「……よろこんで」
　最初からＯＫしてくれれば良いのにと思ったが、そうやって律儀にルールを守ろうとする彼女が可愛らしかった。

　腹が痛い。思わずうめいたら、大佐、と抑えた声で呼びかけられた。ロイは目を開く。
　よかった、とささやきが耳に届いた。
「気分はどうですか。手当は終わっています」
　リザは目に涙をためていた。決壊寸前でそれをこらえている。どうした、と聞こうとして記憶が蘇った。鋭い爪を伸ばすホムンクルス。倒れたハボック。
「ハボックは？」
「隣で寝ています。無事です」
　横をむこうとしたが体がひどく重かった。ゆっくりと首だけを傾ける。隣のベッドにいるのは確かにハボックらしい。ほっとする。
　頬に触れるものがあった。ロイは目線を戻す。ゆっくりとロイの頬をなでる女の指先は冷えてい

た。
（これは）
　ルール違反にはならないのだろうかとちらりと思う。まあロイは手術着だし、ここは病室だ。プライベートかもしれない。
　しかし傍らの椅子に座ったリザは軍服姿だった。
「中尉、心配をかけた」
「本当です」
　頬に触れていた手が離れていく。目元に力がはいったせいか、リザの目から涙があふれた。次々と。ぱたぱたとシーツに落ちる。そういえば顔が結構近い。
　ロイに触れていない方の彼女の手は、ロイの掛け布団の裾を握りしめている。手を伸ばして彼女を抱きしめたくなったけれど、体を動かすのはまだ怖かった。
　手は動く。リザの手をなでようとしたけれど、位置がうまくあわなくて、彼女のひじを軽く叩くだけになる。
　リザは頭を下げた。布団にほとんど押し付けそうな勢いだが、ぎりぎりで触れてはいない。
「申し訳ありませんでした」
「ああ。……まあ、それは後でな」
　言いたいことはあったが、せめて体を起こしてからだ。ひどく眠かった。体の奥がぼんやり熱い。おそらく薬でごまかされているだけで、きっと痛みがあるのだろう。寝るのが回復の近道だ。
「寝るよ」
「はい」
　顔を起こしたリザは、ロイの顔をのぞき込んだ。

ずいぶん近い。目が赤かった。まつげはまだ濡れている。薄茶の目の色がすきだなと、ロイはまじまじ彼女を見た。
　けれど目はまぶたの後ろに隠された。
　前髪がさらりと落ちる。唇に触れるぬくもり。
「……ルールは？」
　つい聞いた。
　リザはまばたきする。それから視線を露骨にそらした。
「何事も例外はつきものです」
「……なる、ほど」
　いたた、と小さく呟く。笑いそうになって、思わず体に力が入ったらずぐんと痛かった。しばらく注意したほうが身のためだろう。
「おやすみなさい」
　優しく言われた。
「おやすみ」
　ロイは目を閉じる。体は重くベッドに沈む。先程の痛みの余韻がまだ残っていた。じんわりと熱い。けれど眠りが脳を浸していく。
（例外ねぇ）
　それはずるくないかと思ったけれど、きまり悪そうな顔が可愛らしかったので、ロイは気にしないことにした。

September 5, 2025 at 1:40 AM Everybody can reply

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つかさ

@harutoomi.bsky.social

ワンライ過去お題チャレンジ
お題はさくらんぼ
大佐中尉でできている。いちゃいちゃはしていない。いや、行間ではしてるけども。

印刷された本の本文の体裁で画像化されたテキストです。

画像情報：generated by 新書ページメーカー / Photo by Reuben Mcfeeters on Unsplash / フォント：源暎こぶり明朝

以下は本文の内容です。

　大したことではないとロイは思う。
　先月何度か夜の店に行っていたのだ。期待した情報が上がらなかったので、もう行かないことにした。わざわざそれを司令部で口にしたのは、確かに軽率だったかもしれないとは思う。多少後ろめたかったせいかもしれない。
　指名していた嬢はエリザベスという名の金髪の可愛い子で、大変甘えるのが好きな娘だった。
「君は妬きもしないだろうけど」
「つきあいもお仕事でしょう。そもそもこんなところで話さないでください」
「仕事なんだからいいじゃないか」
　リザは大変冷淡な目をした。これは怒らせたなと、正直に言えば思ったのだ。
「いや、まあ……。気をつけるよ」
　ロイは膝の上で手を握った。失敗した気がしたが、大したことではないとそれを打ち消す。
　リザは公私の別はきっちりつけるタイプである。昼間不愉快なことがあったからといって夜まで引きずることはないだろう。
　今日は彼女は早上がりだから、夕食をごちそうしてくれる約束である。

　悩んだ末にロイはワインを買って行った。ドアをあけたリザはいらっしゃいと笑顔だった。ロイはどきどきしながらワインを渡す。笑顔は珍しい。昼間喧嘩をしたことは気にしてませんという表明だろうか。むしろ気にしているからこその笑顔ではないだろうか。
　夕飯はトマトのパスタである。デザートがあるので軽めにしようかととリザは言った。

「これ、暗殺者のパスタって言うんですよ。トマトを炒めながら作るので、すごく跳ねちゃって」
「美味しいよ」
　心から言った。煮詰めてあるのかコクのあるトマトは旨味があり、辛味があるのも食欲をそそる。パスタが焦がしてあるので香ばしい香りがするのもいい。
　軽めと言いながらスープもある。さらにデザートもあるならきっと許してくれたのだろうとロイは心からの笑顔になった。
　穏やかに食事は進む。せっかくだから手土産のワインも開けた。皿を下げたリザはパイを机に置く。ざくりと切ると、鮮やかに赤い果肉がのぞいた。あまずっぱい匂いもする。
「チェリーパイです」
　その言い方にどきりと胸が鳴った。ロイは笑顔をキープする。
「美味しそうだ」
　皿に一切れ乗せると、どうぞとリザはロイに差し出した。フォークで小さく切り分け、ロイはそれを口に運ぶ。
「うん、うまい」
「良かった」
　リザも切ったものを口に運ぶ。
「ところで知ってますか、大佐。チェリーには毒があるんです」
　会話の矛先が何やら不穏な気がしたが、とりあえずロイは笑顔をキープした。
「種類によってってことかい？」
「種にあるんですよ。……あら、あたり」
　リザは舌を出した。さくらんぼの種が乗っている。ロイはぎょっとしてフォークを取り落とした。

「噛まなければ平気です。そもそも微量なので人間には問題ありません」
「ああそう││なんだ」
「ええ、小動物……。犬には気をつけた方が良いんですけど」
「犬か」
「ええ、犬には毒です。回数を重ねれば」
「やっぱり君まだ怒ってるだろう？」
「何がですか」
　リザはフォークをケーキに振り下ろす。パイ生地がくしゃりと潰れた。はみ出す赤い果肉。
「怒ってません。別に。私、自分が妬いているとかそういうのを上手に出せないのはわかっています。ベタベタする子にあなたが喜ぶのだって自由です。そんな風に振る舞えばいいのかもしれないけど」
「リザ」
　泣かせた気がした。ロイは立ち上がる。リザは顔を上げる。その目は涙に濡れておらず、ただひたすらに険しい。
　猛禽類のようである。
　薄茶の目が底光りする。
「大佐、食事の途中です」
「そうだね……」
　座った。切り分けたチェリーパイがまた皿に載せられる。
「怒ってはいないんだな？」
「ええ、自分の至らなさが情けないだけです」
「君は素晴らしい人だ。何も不足はない。悪いのは私だ」
「でも甘えて欲しいって思ったんでしょう」
　リザはチェリーパイを食べる。ソースのついた

唇の端を親指で拭った。
「種はね、５つ入れました」
「……あたるとどうなるんだい？」
「特にどうもなりません。人が食べても問題ないんですよ」
　言いながら食べる。ロイも大人しくパイを口にした。さっきまでは美味しかったのに、今は味がしない。どきどきする。仕込まれたさくらんぼの種。
（犬には毒？）
　ちらりとロイはリザを見る。彼女は黙々とパイを口に運んでいる。胸にわいたのはいじらしさだった。彼女は自罰的なタイプだ。それなのに不満を匂わせた自分がいけなかったとロイは思う。
「もういい。もういいよ、リザ。私が悪かった」
「そんなこと」
「パイは全部私が食べる。君はもう頑張るな」
　リザは手を止めた。ロイを見る眉尻が下がっている。
「ごめんなさい」
「いいんだ」
　ロイは優しく微笑む。
　チェリーパイはまだたっぷり残っている。無理は駄目ですとリザは言って、ふたりは結局パイを分け合って食べた。食べきれなかったホールの半分は、翌朝に分け合った。

August 30, 2025 at 8:34 AM Everybody can reply

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呉

@kurevrooom.bsky.social

おれは大佐と中尉がすきやで…

August 30, 2025 at 1:49 AM Everybody can reply

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#63 大掃除・勇み足・禁欲・ごちそう | ロイアイ版ワンドロ・ワンライ - つかさ@通販は🐯の小説シリ - pixiv

オタクくん

@brnr888.bsky.social

男女カプだとダントツでロイアイが大大大好きなんだけどガキの頃中尉のことが好きすぎるあまり大佐に嫉妬してたことあるなんなら今もしてる

August 28, 2025 at 12:01 PM Everybody can reply

つかさ

@harutoomi.bsky.social

支部にSSまとめを投下。
ワンライ過去お題とワドパレの2つで加筆はなし。
どれもつきあってはいない。
大掃除は中佐少尉時代のちょっと切ないめのやつ
勇み足は大佐中尉でブレダ視点。わちゃっとしてる。
禁欲は中尉が熱中症になるやつ
ごちそうは大佐が胃痛で不憫なやつ
www.pixiv.net/novel/show.p...

副官になってから、ようやく取れたまとまった休みだ。リザは外泊届を寮に出して、朝早くから汽車に乗った。実家の片付けをするためだ。覚悟したほど家のありさまはひどくはなかった。外観的にはほぼ変わりない。内部は全体にほこりがうっすら積もっていたので、窓を開けてまわる。士官学校に入る時

www.pixiv.net

August 26, 2025 at 5:44 AM Everybody can reply

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かもんず

@chikamon0817.bsky.social

ハガレソで大佐と中尉が人名の頭文字で暗号をやり取りするシーンめちゃくちゃ好きで。仕事人として完成されたバディとして成熟したカップルとして共犯者として…な感じで。スタゼノにもこれやってほしい〜
いや、この人達ならティーンの頃にこれくらい軽くやってのけてるな。

August 25, 2025 at 6:10 AM Everybody can reply

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