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かべうちする咲紅

@yomitainarakake.bsky.social

なぜかさも三木に転げ落ちつつある現状を置いておくところ。架空のカップリングに対する妄想をとても含みます。

フォローしたり外したり、どうぞお気になさらず。

書くものは限られてるけど読むものは幅広く…とてもよく頻繁にふぁぼらせていただいております…

詳細と住処
https://lit.link/sakikuryo

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かべうちする咲紅

@yomitainarakake.bsky.social

（5-7p／全7p）

＊＊＊

　それからである。
　孫兵の部屋が毎日のように、下級生で賑わうようになったのは。
　最初は子ネズミの彼が時折訪ねるだけだったのだが、誰かがどこかで話を聴きつけてきたらしい。忍たまの口に戸は立てられないのだ。壁に耳あり障子にメアリー。
　――伊賀崎先輩のお部屋って毒虫がたくさんいるんでしょ？　あぶないから入っちゃダメって聞いたことあるよ。でも約束を守るなら伺ってもいいんだって！　約束ってなに？　ジュンコさんやキミコさん、大山ご兄弟とか……とにかく、みんなをびっくりさせないこと。じゃあ、そーっと伺うのがいいね。ぼくら忍者のたまごだもの！　忍び足もヒソヒソ話もできるようでなくっちゃ。昨日つかまえた蝶々の模様、見てくださるかな？　裏山で見かけたトカゲのお話も、聞いてくださるかも――。
　今日も今日とて後輩がやってくる五年い組の長屋。中庭へ通りかかったのは三反田数馬である。数馬は下級生の背中越しに、いましがた戸を開けた孫兵へ笑いかけると、洗いたての包帯を両腕いっぱいに抱えながら「今日も繁盛しているね」と言った。

「キミたちも孫兵に用事？」
「はいっ」
「三反田先輩こんにちは」
「こんにちは。生物に触れたあとはきちんと手を洗ってね」
　今日は何を教えていただこうかな。どんなお話を聞かせてくださるんだろう。キミコさんの脱皮のお話とか聞きたいよね。……一応ひそめているつもりなのか、顔を寄せ合う忍たまたちの声を足下に聞きながら、数馬は目配せをする。それを受け取った孫兵はちょっと不機嫌そうにした。わざとらしいくらいだった。
「数馬、なにか言った？」
「えー？」
「やっぱり言ったよね」
「あ、もう医務室に戻らないと」
「……僕は竹谷先輩じゃあないんだけど」
　ぎこちない手つきで後輩の頭巾を撫でる、孫兵の目元のほんのり赤いのを見て、数馬はそうっと誰にも気付かれず笑った。ネズミもヘビもタマゴだって、肩書きに懐くわけ

December 15, 2025 at 4:35 PM

かべうちする咲紅

@yomitainarakake.bsky.social

孫兵とモブ後輩の話wipこれでおしまい（1-4p／全7p）
※成長if＋2年
※竹孫と言えば竹孫の気配がある気がすると思っている

お付き合いありがとうございました。後ほど修正してぴくしぶにも載せます。

印刷された本の本文の体裁で画像化されたテキストです。
付記に「竹谷先輩卒業後の孫＋モブ後輩（竹孫と言えば竹孫）」、「無断転載・利用・AI学習禁止」と記載されています。
画像情報：generated by 文庫ページメーカー / Photo by Eugene Golovesov on Unsplash / フォント：源暎こぶり明朝

以下は本文の内容です。

（続き）

　明くる日は休日だった。
　日課の餌やりを終えた孫兵が部屋で書物を読んでいると、にわかに廊下が騒がしくなった。なんだろうねとわずかばかり、首元のジュンコへ目配せをする。なにかしらねえと言いたげにジュンコも舌を出し入れし、孫兵にしな垂れかかる。障子に映った背の低い影から、声のかかるのを、ふたりはじいと待った。
「失礼します！　いいい、いが、伊賀崎先輩はいらっしゃいますか！」
「あまり大きな声を出さないで。ジュンコたちが驚くだろう」
「あっ」
　もうしわけありませ……と語尾が消えてゆく。孫兵はジュンコにしか聴こえない溜息を吐いた。ここは確かに忍たま長屋の一室だけれど、無闇に刺激すべきではない虫、トカゲ、ヘビたちが寛いでいる場所だって、理解しているんだろうか。忍術学園の忍たまが、まさか知らない筈はないのだけれど。
「……どうぞ」

言いながら孫兵はぱたんと本を閉じ、立ち上がってするりと戸を引いた。ぴゃあっと声が上がったかと思うと、廊下に立っていたのは件の二年生である。汚れをようく落とされたおかげか、制服は、目の覚めるような青が晴れた日によく映える。彼は両手で大事そうに子ネズミを籠ごと抱え、なにか言いたげに、しかし言い出せず、もじもじと、口を開いたり閉じたり、顔を上げたり下げたり、しばし繰り返した。
（昨日の今日でわざわざ来るなんて）
　いったいなんの用だろうか。孫兵は首を捻った。
　一方、ジュンコには首を捻るべきことはないらしい。悠然とした態度で、主人の肩へとその身を預けている。何も判っていないふうの子ネズミが時折ごそごそと、物音を立てるのにも、彼女はまるで興味がなさそうであった。ありがとうございましたと勢いよく頭を下げた後輩に、主人が目を瞠ったときだけ、ほんのちょっと片目を開けてやれやれと人間たちを眺めた。
「三反田先輩に言われたんです。ほんの小さな傷でも、生物に噛まれたり、引っかかれたりしたら危ないんだよって」
「うん、まあ……一年生でも習っていると思うけど」

「うっ。そっ、それでぼく、考えたんです。この子ネズミと――」
　やっぱりお別れしますとでも言うんだろう、孫兵が身構えたのは無理もないことだった。そういうのを散々見てもきたし、聞いてもきたから、落胆する心積もりがあった。
「――先輩のジュンコさんみたいに！　仲良くなりたいんです！」
　どうすればいいか教えてくださいっ！
　見上げてくる潤んだ瞳に、もう孫兵は、叫ばなくても聴こえるだなんて言えなかった。

　あ、もしかして。
（こういうことだったんだろうか）
　あのひとが僕たちに大きな掌でそうっと触れるとき、このやわらかな前髪を、世界でもっとも瑞々しいもののように感じたのだろうか。孫兵はどくどくと脈打つこめかみに在りし日の木洩れ日をなぞって、一度ゆっくりと瞬きをした。たくましくてやさしいひとの影は見当たらない。きっと睫毛の裏側へ潜り込んでしまったのだろう。瞼を開けるとそこには、朝の白っぽい風に吹かれて、後進の青い輪郭が光っていた。

「……いいよ」
「そうですよねダメですよね。ごめんなさい朝から押しかけて……って、ええっ！」
「だから、いいよ。入りなよ」
「い、いいんですか？」
「言っておくけど、少し散らかっているからね。あまり周りの子たちにちょっかいをかけないでくれるなら」
　戸口に立ったままで孫兵は肩越しに、部屋を軽く振り返った。部屋の奥に並ぶ大小の籠から、かさこそ、かたかた、きいきい、ぱたた、さまざまの音と気配が漏れ聴こえている。そのうちの幾つか、あるいはほとんどは、見知らぬ客人を威嚇し、危険だぞと、おれには毒があるのだから近付いたらいけないぞと警告するための仕草なのだ。彼らにとって毒とは、本当のところ最後の一手だから。
「その子にとっては天敵も多いし。約束できる？」
　ぶんぶんと首を縦に振って頷いたので、彼に抱えられた子ネズミはいくらか目を回したようだった。

December 15, 2025 at 4:35 PM

かべうちする咲紅

@yomitainarakake.bsky.social

（5-6p／全6p）

「……すみませんでした」
　ぼく、あのカエルが毒を持ってるなんてちっとも知らなくて。ひととおりの処置を終え、落ち着きを取り戻した医務室で彼は頭を下げる。保健委員会を預かる三反田数馬は手元の包帯から目線を柔らかく上げて、お礼なら孫兵にねと言った。
「伊賀崎先輩に、ですか？」
　思わずきょろりと辺りを見回す。当の孫兵はいつの間にか居なくなっていたようで、医務室には彼と数馬、それから戸のそばに、あの子ネズミの籠が様子を見守るようにして控えていた。籠を目の高さまで持ち上げて、中を覗き込む。心なしか泥汚れの落ちたように思えるその姿は、自分の状況を分かっているのかいないのか、真新しい餌を手にチュウ？　と鳴いている。
「孫兵は生物のことをとてもよく理解してる。美しさと同じだけ、その危険性もね。毒虫野郎って呼ばれてるのは聞いたことあると思うけど」
　つい頷いてから、慌てて彼はあの、その、と取り繕った。
「あはは、いいんだよ。本人にはほめ言葉じゃない？　それだけの覚悟のうえで、ジュンコや毒虫たちと関わり続けているってことだから。それが他人を遠ざける

ことになるとしてもね」
　わかる？
　彼は素直に首を横に振った。
「……あいつも不用意に後輩を危険に晒すのは本意じゃないんだよ」
　案外それでああいう物言いをするのだったりしてね、たぶん無自覚だけど……ああこれ、僕が言ってたって内緒ね？

　夜更かしせずに寝るんだよと帰されてきた自室の前で、クラスメートに「入らないの？」と声を掛けられるまで、彼は胸元に籠をぎゅうっと抱いて立ち尽くしていた。

※もう少しだけつづく

December 14, 2025 at 4:37 PM

かべうちする咲紅

@yomitainarakake.bsky.social

孫兵とモブ後輩の話wip　4話目
（1-4p／全6p）

※竹孫前提のつもりが若干あるけど竹谷先輩は全然出てこない
※モブ後輩は火薬委員会です
※次あたりでラスト

印刷された本の本文の体裁で画像化されたテキストです。
付記に「竹谷先輩卒業後の孫＋モブ後輩（竹孫と言えば竹孫だが竹谷は出てこない）」、「無断転載・利用・AI学習禁止」と記載されています。
画像情報：generated by 文庫ページメーカー / Photo by Eugene Golovesov on Unsplash / フォント：源暎こぶり明朝

以下は本文の内容です。

（続き）

「ひとまずこれで足りるはずだよ」
　腕の中の子ネズミを見詰めていた彼は、ぱっと顔を上げた。
　倉庫から出てきた五年い組・生物委員会委員長代理の伊賀崎孫兵は、小ぶりな籠を小脇に抱えている。それを見て彼はぎこちなく、しかしぺこりと頭を下げた。ああよかったな、おまえのお家が用意できそうだよと手元に笑いかける。チュ、ヂヂッ、と彼あるいは彼女は声を上げて首を傾げた。
「そういえば、この子はどこで？」
「それが、さっき裏山で――」
　しゃがみこんだ孫兵が片膝を付き、こちらへ、と手を差し伸べる。指先の仕草はごく丁寧に、優美さを含んでさえいる。
　不思議なもので、先ほどまでどこか怯えた様子さえあった子ネズミは、自然に彼の腕から抜け出して孫兵の手の中へ。籠の中へおさまると、居心地を確かめるように籠の中であちこち、走ったり、匂いを嗅いだりしている。そのさまをまじ

まじと見つめながら、彼はかくかくしかじか、裏山での一件を口にした。散歩していたらきれいな沼地を見つけたこと。夢中で生き物を観察していたこと。大きなカエルに食べられそうになっていた子ネズミを、咄嗟に抱えて、そのまま学園まで走って帰ってきたこと。
　ひとしきり説明しているうちに小さな籠は手の内へそうっとおさまり、伊賀崎孫兵は竹細工の隙間から、青い制服の皺と汚れを静かに見ていた。けれども彼は自分の話と籠の中身に夢中だったから、それにはちっとも気付かなかった。
「――というわけなんです！」
「そうか」
　そこで彼は目の前の先輩の、大きな目のふちで睫毛がゆっくり上下するのを見た。
「キミは子ネズミを助けたと思っているかもしれない」
　だけど、と声が続くので、彼はそうですと頷く隙を持てなかった。
「あのカエルは餌にありつけなくて、飢え死にしたかもしれないな」
　生物に関わるとはそういうことなんだよと、伊賀崎孫兵は静かに言った。叱る

ような調子もなく、瞳は籠の中に何を見ているのか分からなくて、山の斜面をそうっと降りる時の、風のざわめきのようなうねりだけ湛えていた。
　彼は、きゅうになにもかも恥ずかしくなった。思わず俯く。顔が熱を持つのがわかる。籠を持つ指の先がぎゅうと震えて、子ネズミが尻尾をわずかに揺らしたようだった。
（怒鳴って叱ってくれたらずっと楽なのに）
　火薬の扱いを誤ったときの委員長なんかもこういう感じだ、と彼は思う。普段から声を荒げるひとではないけれど、貴重で危険なものなのだからと眉を下げた顔を見たときの、つま先から冷たいものが上ってくる感覚に似ているし、もっとずっと突き放されているような心地もする。何か言い訳をしたい気持ちで口をはくはくと開けてはみたけれど、どれも言い訳にしかならないものだとわかって、唇と視線が飼育小屋前をうろうろ彷徨うだけになった。じわじわと熱いものが瞼のふちに込み上げてくる。
「とはいえ、よく訓練されたネズミは忍者にとっても頼れる存在だ。キミも一度関わったからには最後まで……、……」

先輩の言葉が途切れたことは彼にも判った。上級生が考え込んだように自分を見上げている。そこまでは彼も潤んだ視界で理解したけれど、それがどうしてなのかはもうよく分からなかった。溢れてくる涙がみっともなくて、籠を片手で持って、もう片腕で目元をごしごしと擦る。
「……ねえ。そのカエルってどんな色だった？」
「ズビッ。……ど、んなって」
　先輩の顔色がみるみるうちに変わった。

　彼はむんずと腕を掴まれると、軽々と籠を取り上げられ、そのまま飛ぶような速さで医務室まで連行された。そこから鬼の形相の保険委員会委員長代理に身ぐるみ剝がされ全身を井戸で洗われて、それらしい傷のないことがわかるまで、彼はただただ為されるがまま、上級生と駆け付けた校医と飛んできた生物委員会顧問の間でしきりに交わされる言葉を端の方だけ掴まえてどうにか状況から振り落とされないようにするのがやっとだった。
　解放される頃にはとっぷり日が暮れて、外はすっかり暗くなっていた。

December 14, 2025 at 4:37 PM

かべうちする咲紅

@yomitainarakake.bsky.social

もう12月だから来年の手帳使っていいじゃん！ということに気づいてうきうき

December 14, 2025 at 12:46 PM

かべうちする咲紅

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（5/全5p）
※竹孫のつもりが多少はあって書いてはいる

た。それがどうしてなのかと問うてみたことはない。
（訊ねたところで、あのひとは答えをご自分の内にも持っていらっしゃらないだろう）
　だからたぶん、八左ヱ門は一度も孫兵に『自分のように』とは言わなかった。

※まだ続く

December 13, 2025 at 5:04 PM

かべうちする咲紅

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成長if＋2年／孫兵と後輩の話wip
すーごく途中から途中まで（1-4p/全5p）

※竹孫と言えば竹孫（ここが最大値）
※次回またモブ後輩くんのターン

「…………、ジュンコ」
　すまないけれどと囁くと、彼女は孫兵の首をぐるりと回ってＵターンし、飼育小屋の所定位置へとその身を収めてとぐろを巻く。出入り自由な籠とは果たして、管理が行き届いていると言えるかどうか、それはさておくとして。この二年ほどで、大きさ美しさをぐんと増した彼女が、その気になれば小動物などひと思いに呑んでしまえるのは事実であった。
　毒蛇がしめやかな仕草で住処へ帰るさまは、下級生の興味を引き、また、頑なな警戒心に綻びを生むには十分だったようだ。
「怪我は」
「……ハッ！　い、いえ」
　訊ねられているのに気付くまでたっぷり三秒要した二年生は、無いと思います、と腕の内側をいくらか孫兵へ見せた。
　そういう意味ではないんだけれどと孫兵は、目線を一度足下へ流し、あの……？　と狼狽えた声へ応ずるようにして、またその大きな目を持ち上げた。睨んだつもりもないが、二年生をひいっと驚かすにはどうも、足りすぎるらしかった。

「子ネズミか」
　どうも元気そうだねと腕の中を覗き込む。泥や砂、葉や蔓なんかこびりついてべとべとの忍び装束の胸元で、胡椒の粒のような目をした生き物がチュウチュウ、と声を上げた。まるで問いかけに応じたようだ。もう少し清潔にして確かめなければならないが、ちょっと見たところは、なにか目立つ傷を負った感じはなさそうである。かろうじて青と分かる制服の肩のこわばりが、ほっとしたように緩んだのを孫兵は見て取った。
「……いっ、いがさきせんぱい！」
　この子の飼い方を教えていただけませんか！
　叫ばなくても聴こえるよと孫兵は言い掛けたが、拾った生物を自分に押し付けていかないだけ、上出来なようにも思うのだった。

　飼育小屋の前に下級生と子ネズミを待たせ、自分はがさごそと、倉庫の中を探す。目当てのものを見つけた孫兵は棚からそれを取り上げて、軽く埃を払った。とは言っても、そう昔に用意されたものじゃない。八左ヱ門が残していった飼育用の籠の一つは、小ぶりで簡素だがしっかりとした作りで、子ネズミの当面の住処に十分耐えうるように思わ

れた。
「それにしても、ずいぶん高いところに仕舞っていたんだな」
　これじゃあ後輩たちが使えないじゃないかと孫兵は元あったところを見上げて、――ああ、だから、と腑に落ちる。
（勝手に生き物を増やさないように、わざと、下級生では手の届かない棚の上段へ……）
　己がその筆頭であったことはそれこそ棚に上げるとして。この小さな籠一つの中、あるいは飼育小屋、倉庫そのもの、すっかりまるで、先達の懐であるように孫兵には思われた。常にいろんな匂いと音がするのに不思議と落ち着くところ。てんでバラバラな生き物たちが妙なバランスで暮らしているところ。隙間に陽の差すところ。触れれば木のわずかに軋むところも。
（あれであのひとは、どこからどこまで、思惑でいらっしゃるのか分からない）
　すべて天然で為しておられるようにも思うし、それがあんまりなので、もしやすっかり計算づくなのかと時折は勘繰ってしまうほどだ。自分が一年の頃から付き合いのある孫兵にとっては、あんなに大きくて、がしりとして、なんなら粗野でガサツな印象を持たれかねないひとなのに、しかし大ぶりな動作から威圧を感じたことはちっともなかっ

December 13, 2025 at 5:04 PM

かべうちする咲紅

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編み物の練習がてらマント？をつくってみたよ（ほんとうに四角く編んで紐で結んだだけ）

3枚目はマントを交換してみたよ

三木ヱ門と左門のもちぴこが、それぞれ紫と緑のニットマントを羽織っている写真。二人並んで正面を向いている。

緑の服を着た左門が紫のマントを、紫の服を着た三木ヱ門が緑のマントを羽織っている写真。

December 11, 2025 at 1:10 PM

かべうちする咲紅

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竹谷先輩卒業後の孫兵とモブ後輩の交流／2話目
※ものすごく途中
※成長if＋2年

ゆえに孫兵は自分が、かつての八左ヱ門と同じ肩書きを得たところで、かのひとと同じにならないことに何の疑問も抱いたことはない。
　自分と竹谷先輩は人間という種こそ同じでも、ただそれだけで、まるで別の個体なのだから。たしかに、生き物へ向ける目線と熱量は近しいものを感じていたけれど。
「飼育小屋に何の用だ？」
（でもきっとあのひとなら、後輩にこういう目はさせないんだろう）
　孫兵はぴくりと震えた下級生の目尻をみとめ、凪いだ感情の裏で冷静にそう思った。
「実技の授業用の虫なら、明日先生に届ける手筈になっているけど」
　しゅるしゅると毒蛇のジュンコが孫兵の首にもたれかかり、舌を出し入れする。そのわずかな動作が、あまり面識のない二年生の目をぎゅうっと引きつけて、余計に縮こまらせた。別におどかしてやろうという気もないのだが。
　――せめてもう少しニコニコしましょうよお、スマイルスマイル！　……と、委員会の後輩に言われたのは二日ほど前のことである。曰く、真顔の伊賀崎先輩は迫力があるから、一年生が怖がって生物委員会に近寄ってくれないと。そうでなくても危険な生物が多くて遠巻きに見られがち、普段から仕事が多くてヘムヘムの手も借りたい、そんな

状況下で、新入生を確保できないのは愛する生物たちのためにも困る。困るのだが、じゃあいつもジュンコに向けるような微笑みを……と言われてやってみれば、「やっぱりやめてください」とストップがかかる次第である。どうしたものかなあ、と緑色の頭が四つ並んで首を傾げるのを見て、人のやりたがらない委員会にこれだけ後輩が集ったのは、やはり竹谷八左ヱ門というひとの功績だったのだろうと孫兵はひとりしみじみ考えた。そしてそれを、殊更にプレッシャーだとか、どうして同じようにできないんだろうとか、そんなふうには感じなかった。竹谷先輩が慕われたのは、竹谷先輩だからである。いまの生物委員会の後輩たちだって、肩書きや役割に懐いていたわけじゃない。自分だってそうだ。
　同じ種だからといって、同じように生きるわけではないことを彼は重々承知している忍たまだったから、『竹谷先輩のように』とは考えもしなかった。
　反対に八左ヱ門のほうからも在学中、生物の正しい飼育方法や美味しいレシピを除いて、『自分と同じように』を求められたことはなかったと孫兵は記憶している。

「誰か、散歩に出ていた子がいたかい」

時は今に戻って、孫兵は飼育小屋の中を覗き込んだ。いるべき生き物たち（学園の所有か個人所有かに関わらず）がいるべき場所に休んでいるのを確かめる。
「……みんないい子にしてるな」
　毒トカゲが兄弟喧嘩をしている様子もなかったので、孫兵は小屋から視線を外して、先ほどから一向に返事のない二年生へ顔を向けた。
「手伝いも見学も歓迎するけど、今日はもう暗くなるから――」
　と、そこで、ようやっとこの下級生がなにか丸く小さくうずくまったものを泥にまみれた腕の中へと抱え込んでいることに気が付いた。

December 2, 2025 at 4:38 PM

かべうちする咲紅

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竹谷先輩の卒業後に後輩に慕われていく孫兵の話になる予定の何かをちょっとだけ書き始めてみた。
※ものすごく途中
※まだモブ後輩しか出てこない
※成長if＋2年 #文庫ページメーカー https://sscard.monokakitools.net/pagemakers/bunko/bunko_bg.php

印刷された本の本文の体裁で画像化されたテキストです。
付記に「竹谷先輩の卒業後の孫兵とモブ後輩（wip）」、「無断転載・利用・AI学習禁止」と記載されています。
画像情報：generated by 文庫ページメーカー / Photo by Eugene Golovesov on Unsplash / フォント：源暎こぶり明朝

以下は本文の内容です。

　泥に塗れた両手を見て、どうしよう、と気付いたのは学園に着いてからだった。
　彼は忍術学園二年生のトレードマークである青い忍装束をすっかり汚してしまっていた。けれど彼が途方に暮れていたのは、洗濯が大変だなあとか、同室に悪いなあとか、綺麗好きの先輩には叱られるかもとか、そういうことではなく。泥まみれになった原因の、腕の中の生き物のことだった。

　裏山まで散歩に出かけたのは、委員会後のちょっとした気晴らしだった。学園の中でも日常の仕事の少ない委員会にいるのに、彼が気晴らしを必要としたのは、今年から入ってきた一年生が生意気に思えて、むしゃくしゃとしていたためであった。二年生になったらすぐ、先輩になれると思っていたのだけれど、実際にはちっとも敬ってもらえている感じがしない。あいつ生意気じゃないですかとこぼす彼に、三年は組の二郭伊助は苦笑いを浮かべるばかりで、四年い組の池田三郎次はニタニタとした。
　生物委員会に入ればよかったなあ、歳の近い先輩がいっぱいいて楽しそうだし。そんなことを思いながら彼が春の裏山をうろうろ、ふらふらしていると、ちょっとした沼地のようなところへ出た。木々の茂るのに隠されていて気付かなかったが、小さくとも綺

麗な池に水草が浮かんで、カエルや小魚、湿地を好む生き物の住処になっているらしい。忍術学園の広大な裏山はとても二年生に全容を把握できる代物ではなかったので、彼はこんな場所があったなんてと驚きもしたし、喜びもした。しばらく夢中で辺りを観察して回るうち、地下足袋と制服は元の色がわからないところまで泥だらけになってしまった。
　それにしてもそろそろ帰らなければと空の色を確かめて、彼がふっとまた池の周りに視線を戻すと、ひときわ立派なカエルがぎょろりと大きな目で、獲物に狙いを定めていた。視線の先を辿る。近辺の穴ぐらから出てきたのか、子ネズミがちょろちょろと走り回っているところだった。
　あっと思う間にカエルが舌を伸ばす。
　それを、咄嗟に遮るようにして彼は子ネズミを抱え上げて、一目散に学園へと走った。

　どうしたのそんなになって～！　と声を上げるへっぽこ事務員にはヘヘヘと笑って返し、手が塞がっていたので、入門表に代筆してもらう。裏山で転んだの？　ちゃんと保健委員さんに見てもらってにぇ、なんて言い残す背中を見送ったあとで、彼はよおし！

と意気揚々、上級生の長屋に足を向けた。
（この子をどうすればいいか教えてもらわなくっちゃ！）
　泥だらけの子ネズミを懐に確かめて、一歩。
　うん？　と何かに気が付いた。
　すっかり今までの癖で――彼は今日に限らずとも生き物に縁があって、時折先輩に教えを乞うことがあった――六年生の長屋へ行こうと思ったけれど。自分の制服が青色になったということは、みんな学年がひとつ上がったということで、いちばん上の学年だった人たちは学園を旅立ってしまったということだ。
（そっか、）
「たけやせんぱい、いらっしゃらないんだ……」
　途方に暮れてぽつん、思わずこぼす。胸元の子ネズミがちゅう、と返事をしたようだった。

　飼育小屋を遠巻きにおそるおそる、様子を伺う。
　すでに日が傾き始めていたから、生物委員会も活動を終えてしまったのか、あたりに

は委員らしき人影も見当たらない。時折、物音や鳴き声を伴って虫や爬虫類の気配が小屋の中から感じられるばかりだ。彼はがっかりしたのと同じくらい、ほっとした心持ちでそっと小屋に近づく。
（直接は聞けなくても、似たような生き物が、どんなふうにお世話をされているか分かれば……）
　そんなつもりで小屋をひょいっと覗いたのと同時、後ろからぬうっと影が差して彼は口から魂が出そうになった。
「飼育小屋に何の用だ？」
　ぷるぷるおそるおそる振り向けば、カエルより大きなぎょろりとした目の六年生が、首に蛇を巻き付けて立っていた。

November 30, 2025 at 3:14 PM

かべうちする咲紅

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これはもちぴこを取ってくれた友人が「火薬っぽいから田村先輩すきかなと思って…」と添えてくれたお菓子。

左門と三木ヱ門のもちぴこが、画面右側のお菓子の袋を覗き込んでいる写真。お菓子の袋には「花火玉」「豆菓子が入っています（実際の火薬ではありません）」と書いている。

左門と三木ヱ門のもちぴこが、花火の玉をイメージしたお菓子の容器を眺めている写真。左門は口がへの字にムッとしており、三木ヱ門は口角が上がっている。

November 26, 2025 at 11:39 AM

かべうちする咲紅

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なんかふたりともちょっと同じ方向に首傾いててかわいい

左門と三木ヱ門のもちぴこが並んだ写真。正面から見て右側に二人ともやや首が傾いている。

November 26, 2025 at 11:34 AM

かべうちする咲紅

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持つべきものはオンクレが得意な友人（ありがとうありがとう感謝感謝かわいい）

November 22, 2025 at 3:19 PM

かべうちする咲紅

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（5-8p/全8p）

左門は目を白黒させながら咄嗟に大きく開けた口の端をわなわな、ふるふる、ぴくぴくとさせて声にならない声をあわあわと上げてそれから、
「そんな……こと……な、なく、は、ない、のかも、しれず……」
　一言、一言、飛び出たものの輪郭をおのれで探るように音にしてから、得心がいった。そうか、これは、そういうこと、なのか？

　さて本当に驚いたのはいよいよ潮江のほうである。
　後輩の真っ赤な顔は、たしかに赤いが先ほどまでとは別の赤で――潮江は紅の色の違いが分からんと言って同室に叱られたことを思い出した――ははあ、どうも本当に幾分かはそういうことらしいが、あんまりいじらしいので揶揄うような気は湧かなかった。冗談のつもりで軽率なことを言ってしまったものだ。
「そ、……うか、いやスマン。不用意な発言だったな」
「いっ、いえ！」
　潮江先輩が謝られるようなことではありません！　と左門は首をぶんぶん横に振る。なまじ髪に癖がないので勢いよくしなる。そのまま首ごともげそうな勢い

を、いいから、落ち付け、と肩に手を置いて宥めてやる。
「まあその、なんだ。俺はそういうことの機微はよくわからんが」
「へ？」
「は？」
「あっいえなんでもありません続けてください」
　急に真顔で首を傾げた左門を訝しく思いつつ、潮江は言葉を続ける。
「あー、いや、つまりだな、知っての通り忍者には『三禁』というものがあるわけだが」
「存じています」
「…………、俺はおまえが羽目を外すとは思っとらん」
「は、い？」
「とはいえ、今日のように委員会活動に支障があれば、次は裸で外に摘まみ出すからな。いいか神崎」
「ヒッ」
「うまくやれ」

「は……、は！？」

　解放された左門がてくてくと長屋へ向けて歩いていると、長屋は長屋でも四年生の長屋の前に辿り着いていた。いやはやタイミングの良い方向音痴音もあったものだ。話の展開に迷う書き手には実に都合が良い。そんなメタはさておいて、ちょうど長屋の一室から、三木ヱ門が出てきたところだった。
　片手を障子に残したままで三木ヱ門は左門に気付くと、寄せた眉根で何か言おうと口を開いた様子だったが。それよりわずか、左門がせんぱい、と呼んで駆け寄るのが早い。切羽詰まった声だ。
「田村先輩、あの、」
「……なんだ。お説教は終わったのか？　短く済んだじゃ」
「ああ、もう！　耳貸してください！」
「った、オイ引っ張るな！」
　左門はぐいと背伸びをして三木ヱ門の胸ぐらや頭巾なんかを引っ張ると、片方の耳に顔を寄せてなるべく潜めた声でこしょこしょと言った。こういうとき矢羽

音が使えればよいのだろうがいかんせん三年生の自分では。背も届かない、代わりにこうやって距離を詰めても、遠ざけられたりしないと思えばうまくやれそうな気がほんのすこし湧いた。
「――――と、いうわけなんです」
「嘘だろ」
「にわかには信じがたいのですが」
「じゃあなにか、潮江先輩と、立花先輩は、あれほど仲睦まじく見えるのに、この六年間で一切の進展がなくていらっしゃると」
「ぼく、てっきり、お二人はよい仲でいらっしゃるのだとばかり」
「ああ、ああそうだろうとも、私もだ左門。私もそう思っていた」
「田村先輩、どうしましょう」
「どうもこうもない！　私たちが口を出す話では、ああだが、うう、しかし、どうしよう左門～！」
　……ともすると鬼の委員長よりはよっぽど、うまくやっているという見方ができなくはないのかもしれなかった。

November 19, 2025 at 4:17 PM

かべうちする咲紅

@yomitainarakake.bsky.social

さも三木以前と文仙未満
ほぼ左門と潮江先輩が話してるだけ。これでおしまい。
（1-4p/全8p）

印刷された本の本文の体裁で画像化されたテキストです。
付記に「さも三木wip」、「無断転載・利用・AI学習禁止」と記載されています。
画像情報：generated by 文庫ページメーカー / Photo by shell_ghostcage on pixabay / フォント：源暎こぶり明朝

以下は本文の内容です。

　目をぱちくりとしたのは潮江である。
　彼の立場から見れば、いつまでも手が掛かる後輩ふたり、田村三木ヱ門と神崎左門がどこでなにを掛け違っていがみ合う結果になっているのかは、すっかり解ると言わないまでも、まあそれなりに明らかなのだった。心底きらいですっかり何もかもがいやだという同士だったなら、こういう事態にはなるまい。どっちも、相手に、自分をよりよく見せたいような態度でさえある。そういうのを嫌っているとは言うまい。田村だっておまえがいるから張り合うんであって、いなけりゃいないで張り合いがないんだぞと――自分が日々誰かと衝突していることは棚に上げながら――言ってやるのは容易かったのだけれど。
　おれに言われても腹落ちはせんのだろうなあ、と思えばとりあえず、ぽりぽりと鼻の頭を掻くくらいしかちょっとできなかった。
「田村が、そう言ったか？　おまえなんか嫌いだ、と」
「……いいえ」
「おまえは田村を嫌っとるのか」
「ちがっ」

「ちがうよなあ」
　それくらいは解かっていると言葉の外に、潮江は左門の頭をぽすん、ぽすんとやって、そのままわしゃくしゃと撫ぜた。うわ、わわ、と左門は為されるがままになる。ふうっと鼻から息を吐くと潮江は、鬼にあるまじきやわらかな呆れの滲んだ顔付きになったが、頭をぐいぐいやられている左門のほかに誰も通りかからないので、眉間の皺も目の下の隈も幾分薄いのを、誰も（当人も）知らないのだった。
「おれでも解っていることを、田村が知らんとも思えんが、なあ」
「う。そう、でしょうか」
「あいつにとっちゃ、いちばん近い後輩なんだ。神崎が入ってきたときから、田村はおまえをよく見ているぞ」
「……」
「そうは思わんか？」
「……い、いえ」
「おまえも素直に言ってやりゃあいい」

先輩を手伝いたいんです、とでも、心配だから僕にもやらせてください、とでも。潮江はやれやれと左門の頭から手を退けて、うん？　と顔を覗き込んでやった。幾分、顔は不満げだったが、目にいっぱい溜め込んでいたものはこぼれきったのか乾いたのか、だいぶ普段の神崎左門だった。

「……僕が素直になんと言っても、どうせ聞いてくださらないではありませんか」
「そうとも限らんぞ。あれで情に厚いやつだ」
　そうだろうか。左門は首を捻る。どうも今日の潮江委員長は比較的寛容であらせられるが、あんまりいつまでも口ごたえしていると、またゲンコツを食らいかねないのでそれくらいに留めておく。いささか――頷きがたいところではあるが、三木ヱ門がちっとも左門を気に掛けないのかどうかで言ったら、むしろ目敏いくらいであるのは左門も否定はできないのだった。
　肩を並べた隣の席の、斜め下からじいと耳のあたりを見ると、すぐ「どうした」と声が飛んでくる。大抵なにか訊こうとしていた左門は一瞬、あれっと思って、いつも少しだけ間が空いてしまううち、目を開けたまま寝るなよと小突かれる。

それが気に掛けられているからだと言われたら、嫌われていない証左だと言われたら、それは。
（それは……）
　左門は自分の中にそれらしいことばを探し歩いてみたが、なんと表したらいいのかは判らなかった。
（ただ、ああいうときの田村先輩の目を見ると、なんだかムズムズする）
「しっかし、フフ。なあ神崎」
「ハイ」
「さっきから聞いているとおまえ、まるで田村に懸想して」
「わあーーーーっ！」
「うわーーーー！？」
「ヘムウーーーーーーッ！？」
　声を上げたのは左門である。びっくりしたのは潮江である。すこし遠くで、眠りを妨げられてしまって可哀そうなのがヘムヘムである。
「な、わ、うわ、そ、そそそそそんな」

November 19, 2025 at 4:17 PM

かべうちする咲紅

@yomitainarakake.bsky.social

さも三木（未満）の喧嘩の経緯を利いてる潮江
※すごく途中の途中

言ったのだ、手にどうも怪我をしているらしく見えたから。そうしたら三木ヱ門は顔を真っ赤にして怒って、おまえのような方向音痴に持たせてやれる荷物があるかと言って、左門の抱えていた包みすら強引に取り上げてしまった。結局そのときは潮江が、いい鍛錬になるとか言って、後輩たちの手分けしていた荷物をまとめて背負ってしまったのだが。
「それで？　今日のはそもそもなんだったんだ」
「今日は……」
　今日も今日とて学園長の思い付きに巻き込まれた一年は組と、山のような宿題に手を抜くことを知らない一年い組は、委員会室に顔を見せた時点から疲労が見え隠れしていた。委員長が実習で遅れてくる間、少しでも作業を進めたいと思えばこそ、三木ヱ門は団蔵の字の大胆すぎるのを指摘してやったり、左吉の質問に答えてやったり、兎角せわしない。それならと左門が、三木ヱ門の前に積まれた帳簿の一冊へを伸ばせば、ぴしゃりと跳ね除けられて「そんなことはしなくていい」と。
「それで俺が来てからも、小競り合いを続けていたわけだな」

「……申し訳ありませんでした」
「まったくだ。このバカタレ」
「あだっ」
　潮江は目線を庭の先へ放り投げたまま、左門の頭を軽く叩いた。後頭部から軽くつんのめった左門は、しかし、そのまま俯いてしまって、どうしたと覗き込んだ潮江のほうがぎょっとした。大きな目に、こぼれそうなものを押し留めて赤い顔をしていたものだから。最初のゲンコツはいざ知らず、そんなに痛くしたつもりはなかったのだが。自分と違ってまだ丸みの見てとれる背中を、咄嗟にさすり、潮江はスマンと謝ろうとした。
「た……」
「ん？」
「たむらせんぱいは、ぼくのことがお嫌いなんでしょうか」
　きらいになってしまわれたんでしょうか。
　不安げに寂しげに漏れたものは、普段の、揺るぎなき決断力に溢れた表情からは想像しがたい具合なのだった。

November 18, 2025 at 4:05 PM

かべうちする咲紅

@yomitainarakake.bsky.social

さも三木すごく途中の途中
※左門と潮江先輩が喋ろうとしてるだけ
※あとで文仙の気配がする話になる予定はある

声を出すのと顔を上げるのと口を開けるのとを、舌を噛みそうになりながら無理にやったなら、視線の先には呆れた感じに下がった眉があった。なんだあその間の抜けた返事はと、半分ひそめて半分しかめたような目が雄弁に語っていた。
「う、潮江せんぱい、あの」
　ところが説教の前に、されたのは手招きだ、ちょいちょい、と。
「……？」
　左門は一瞬、そろばんの方へ目をやった。反射的に、これは池か、匍匐前進かと思ったのだ。
「算盤はいい。帳簿も置いてこっちへ来い」
　あれ、そういえば先ほどまでの怒気が感じられないぞ。左門がそう思ったのは促されて廊下へ腰掛けてからである。しかしそこで楽観的に考えるほど、左門も潮江との付き合いが浅くはない。
　庭の側へ投げ出した足の、放っておけば暖かな陽気にぷらぷらと動いてしまいそうなのを、腿に手を置いてなるべく大人しくさせながら、左門は隣を盗み見た。地面へ伸びる足首の太さが自分とは違うのだった。潮江は足のうえで手を組み、

上体を乗り出して中庭の向こうを眺めているようだ。何かあるのかと左門は素直に視線を追ったが、誰がいるでもなく、のどかな風に庭木がわずかそよいでいる。
「そんなに田村が気に食わんか？」
「……」
　潮江のいない側へ、思わず目線を逸らす。

November 17, 2025 at 3:34 PM

かべうちする咲紅

@yomitainarakake.bsky.social

ありがとう石巻〜またくるよ。せっかくだから会期中にもう一回くらい来たいよ。

近くの橋から石ノ森萬画館を眺めた写真。夕暮れ時で、画面左側はまだ青空だが、右側の雲には西日が当たっている。右側に川が流れている。写真手前には左門と三木ヱ門のぬいぐるみが写っている。

November 3, 2025 at 8:53 AM

かべうちする咲紅

@yomitainarakake.bsky.social

駅から萬画館まで10分ちょっとくらい？

道中もレトロな建物が素敵だったり、街のあらゆるところに仮面ライダーやサイボーグ009がいて、このへん詳しい人はもっと楽しいと思う。

特別展だけで疲れもあって退散してきたけど、常設展も観にまた来たいな。

石巻駅の駅舎入り口の写真。ステンドグラスと屋根の上の装飾にサイボーグ009が使われている。

石巻の街並み。商店の2階の壁に石ノ森章太郎作品のキャラクターが大きく描かれている。

November 3, 2025 at 8:23 AM

かべうちする咲紅

@yomitainarakake.bsky.social

「缶バッチのラインナップにいない会計委員の後輩たちを匂わせよう」と思ったのでこうなりました…………
色鉛筆なんていったいいつぶりに触っただろうか

色鉛筆で着色した潮江と田村の缶バッジ。潮江の背景には一年生の制服と同じ模様を青で描いてある。田村の背景は淡めの黄緑色。

November 3, 2025 at 8:13 AM

かべうちする咲紅

@yomitainarakake.bsky.social

展示も楽しかったし缶バッチも作ったし、空いてたのでカフェもするっと入れたし美味しかった。普通に常設メニューのパスタとかも美味しそうだったな。3連休ラストの午後なんて逆に近隣の人しかいないわよね……

石巻の落乱原画展の展示。ワク線を破るくだりの原画が展示されている。原画を展示している壁そのものにも、ワク線を破る伊作・雑渡・小平太らのコマが大きくレイアウトされている。

落乱原画展スタンプラリーの台紙、ワークショップコーナーで作成した缶バッチ（潮江・田村）の写真。

落乱原画展のカフェの写真。カレー（伊作のモナカつき）、利吉モチーフのチョコレートパフェ、土井先生の顔が描かれたコーヒー。

November 3, 2025 at 8:08 AM

かべうちする咲紅

@yomitainarakake.bsky.social

石巻の原画展行ってきた！
原画の線がすごい綺麗で、修正の跡もあまり見当たらないことにぷるぷる震えました。ここはトーンだけどこれトーンじゃなくて線引いてるんだ…とか…

石巻の落第忍者乱太郎の原画展の展示の一部。原作裏表紙のカラー絵の原画6枚を写している。

原画展の展示の一部。壁に原作の白黒原画、手前のディスプレイ棚にさまざまな種類の手裏剣、棒手裏剣が展示されている。

November 3, 2025 at 8:00 AM

かべうちする咲紅

@yomitainarakake.bsky.social

さも三木wip
委員会中に大喧嘩して潮江先輩に怒られる話
※ここにはないけど、あとから若干の文仙要素が含まれる予定

に文次郎が口を開いたとき、誰より呆気に取られたのは三木ヱ門だった。
「本日の委員会は終いだ。神崎、おまえはここに残れ」
「ハイ……」
「どうした田村、妙な顔をして」
「さっ、差し出がましいようですが委員長。まだ本日の予定の半分も終えられていないのでは」
「そこまで理解していて、なんだってそう神崎に構う」
「う……」
「団蔵、左吉」
　急に自分たちへ矛先が向き、返事ともつかぬ素っ頓狂な声を上げたのは一年生の二人である。
「おまえたちは田村を送り届けてやってくれ、真っ直ぐに長屋までだ。射撃場にも武器庫にも寄り道させるなよ？」
　二人はこくこくこく、と勢いよく無言で頷いた。声は意外と優しいけど、かえってこわくってチビりそうだ！　と団蔵は思った。僕らに送り届けられるなん

て屈辱に違いない、田村先輩の顔が見られない！　と左吉は思った。
　こうまで言う潮江会計委員長も珍しいと言えば珍しく、ここに取り残されて自分はいったいどうなってしまうのだ？　と左門はぶるり、震えた。こういうときの癖で咄嗟に三木ヱ門の顔色を窺ってみたけれど、頭を冷やしてこいと通達された彼はそそくさと後輩を伴っていなくなってしまったので、何もわからなかった。

October 27, 2025 at 12:46 PM

かべうちする咲紅

@yomitainarakake.bsky.social

あらためまして本日は忍FESお立ち寄りいただいたり、原稿応援していただいたり、お話してくださったり、本当にありがとうございました～！

やっと出られた忍FES、やっと出せた本だったので、「さも三木を求めてくださる方が実在する」を我が目で確かめられて本当に感無量でした。

そもそもは「自分の読みたい話は自分で書くんだ！」の気持ちが第一というスタンスですが、私の読みたい話を読みたいと思ってくださる方がいるのはとても有難い…うれしい…今日うれしいしか言ってない…。
まだ読みたい書きたい話がいっぱいあるのでがんばるぞ！

添付は無配にしていた「推しカプの好きなところ書きなぐりペーパー」です。

October 19, 2025 at 3:15 PM

かべうちする咲紅

@yomitainarakake.bsky.social

ビッグサイトにしかない空気だいすきだ〜〜〜

東京ビッグサイトの写真
手前にピースした手が写り込んでおり、薄いグリーンのネイルをしている

October 19, 2025 at 7:56 AM

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