遠野(ささがき)
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遠野(ささがき)
@tonoa0122.bsky.social
うちの子の設定を呟くだけ。FF1&3&14他マイキャラ愛。
一次創作(名義:ささがき)で字を書いたり絵を描いたりしています。
カクヨム→
https://kakuyomu.jp/users/sasagaki51/works
個人サイト→
https://colourless-moon.whitesnow.jp/

Skeb: https://skeb.jp/@sasagaki51
 だけど、どうして自分はいないみたいに話すのだろう。
 寝具のこすれる音がして、背中が藁の詰まった布団に沈み込む。
 シンは重たい瞼を開けようとするが、視界はほんのわずか。
 その隙間から見上げたアロウの顔は、ひどく悲しそうな目をしていた。
 あたたかい布団に包まれて、意識は急速に夢の世界へと吸い込まれていく。
(どうしてそんな目をしてるの…)
 シンの問いは、暗くなる視界とともに消えていった。
December 5, 2025 at 5:04 PM
 そう言って、アロウはシンの脇に腕を差し込んで抱え上げた。眠さに勝てなくなったのか、今度はシンの抵抗も薄かった。
「勉強する時間だっていくらでもあるさ。急がなくていい」
「……アロウがずっと教えて」
「え」
「ずっと……年取るまで……」
「……シン。」
 アロウの肩に、シンの頭が沈む。夢とうつつのはざまにいるのだろう、返事はなかった。
「俺くらいの奴はいくらでもいる。お前はこれから、もっといろいろな人に出会うんだ。」
 ふわふわと揺れる感覚。シンは軽々と運ばれていく。
(やだ。いやだ)
「きっと明日も明後日も、その先もずっと楽しいことがある」
 アロウの声は優しかった。
December 5, 2025 at 5:04 PM
呆れたアロウが何気なく聞くと、シンがうとうとしながら返事をする。
「だって、仕事もお買い物も、べんきょう、も…全部…ぜんぶ楽しい…終わんないで…」
切実な声がアロウの耳を打つ。
シンにとって、これまでの毎日は一日中痛みに耐えるだけのような、代り映えのない日々だった。新しいものばかりに触れる日々は、極彩色で夢のようだった。
 アロウはシンの横にかがみこむと、そっと手を取る。
「それならきっと、明日だって楽しい。」
 シンの指の先についたチョークの粉を、優しくふき取っていく。
「お前はこれから、年取ってよぼよぼになるまで今みたいな生活をずっと送るんだ。飽きるくらい。」
December 5, 2025 at 5:03 PM
Reposted by 遠野(ささがき)
おしながきも再掲!よろしくお願いします〜〜!!
December 3, 2025 at 5:47 PM
シンは慣れないながらも、一生懸命社会のルールを覚えようとしている。
「今日は、最近頑張ってたからご褒美。ほんとはダメだけど。内緒な」
アロウは微笑んで、シンの頬にそっと手を伸ばす。
少しひんやりとした手が、するりと撫でていった。
柑橘のすうっとする匂いと、甘い花の香りのする手だった。
「ちゃんと肩までつかって温まれよ」
そう言ってアロウは風呂場を出ていった。
「なにそれずるい…」
アロウがふいに見せるやわらかな笑顔と、予想もつかないご褒美。
あとには入る前から湯あたりしたかのような、真っ赤な顔のシンが残されたのだった。
December 3, 2025 at 3:24 PM
「お前ほんとに……」
苦い顔のアロウはため息をつくと、腰のポーチを開く。
湯桶を持ってくると湯舟に浮かべ、布巾を敷いて取り出したものを載せた。
「ほら、これは食べていいぞ」
それは本物のミカンだった。
シンがこの前初めて食べた、ちょっとすっぱくて、甘い果実。
「えっ…!?た、たべていいの?」
「いいよ」
あっさりと言われてシンがうろたえる。
「お、お行儀悪い…とか言うんじゃないの?何かの罠??」
「まあお行儀は悪いけどな」
「じゃあダメなんでしょ?」
上目遣いで見上げられて、アロウは笑う。
「普段ちゃんとお行儀よくしてたら、たまにはちょっと羽目を外す日があっていい」
December 3, 2025 at 3:19 PM