十又 水青@300字小説書いてます
@tomasui.bsky.social
とまた すいせい と読みます。絵を描いたり短編小説書いたりレビュー書いたりしてます。
「昔の怪獣はな、もっとみんなでまとまって敵を倒してたんだ。
だけど、人気商売って要素が入ってきてから状況は変わった。
いかついビジュアル、カッコよいビジュアル、賢い頭脳、身体の強さ、強い特殊能力を持つ怪獣は人々から恐れられ、同時に愛された。人間からプレゼントをもらって生活できるぐらいに、だ。
だけど、俺みたいにビジュアルも頭も強さも能力もよくねぇ怪獣は見向きもされねぇ。怪獣の中に人気という格差が生まれてから、団結もなくなっちまったのさ」
異形の者は鬼殺しを勢いよく飲む。俺は励ます。
「貴方にもきっといいとこありますよ。お名前は何て言うんです?」
「ナメクジ怪獣ナメクッラ」
「ごめん無理」
だけど、人気商売って要素が入ってきてから状況は変わった。
いかついビジュアル、カッコよいビジュアル、賢い頭脳、身体の強さ、強い特殊能力を持つ怪獣は人々から恐れられ、同時に愛された。人間からプレゼントをもらって生活できるぐらいに、だ。
だけど、俺みたいにビジュアルも頭も強さも能力もよくねぇ怪獣は見向きもされねぇ。怪獣の中に人気という格差が生まれてから、団結もなくなっちまったのさ」
異形の者は鬼殺しを勢いよく飲む。俺は励ます。
「貴方にもきっといいとこありますよ。お名前は何て言うんです?」
「ナメクジ怪獣ナメクッラ」
「ごめん無理」
February 29, 2024 at 11:01 AM
「昔の怪獣はな、もっとみんなでまとまって敵を倒してたんだ。
だけど、人気商売って要素が入ってきてから状況は変わった。
いかついビジュアル、カッコよいビジュアル、賢い頭脳、身体の強さ、強い特殊能力を持つ怪獣は人々から恐れられ、同時に愛された。人間からプレゼントをもらって生活できるぐらいに、だ。
だけど、俺みたいにビジュアルも頭も強さも能力もよくねぇ怪獣は見向きもされねぇ。怪獣の中に人気という格差が生まれてから、団結もなくなっちまったのさ」
異形の者は鬼殺しを勢いよく飲む。俺は励ます。
「貴方にもきっといいとこありますよ。お名前は何て言うんです?」
「ナメクジ怪獣ナメクッラ」
「ごめん無理」
だけど、人気商売って要素が入ってきてから状況は変わった。
いかついビジュアル、カッコよいビジュアル、賢い頭脳、身体の強さ、強い特殊能力を持つ怪獣は人々から恐れられ、同時に愛された。人間からプレゼントをもらって生活できるぐらいに、だ。
だけど、俺みたいにビジュアルも頭も強さも能力もよくねぇ怪獣は見向きもされねぇ。怪獣の中に人気という格差が生まれてから、団結もなくなっちまったのさ」
異形の者は鬼殺しを勢いよく飲む。俺は励ます。
「貴方にもきっといいとこありますよ。お名前は何て言うんです?」
「ナメクジ怪獣ナメクッラ」
「ごめん無理」
俺は目が覚めると、上下左右真っ白い空間の中にいた。
「気が付いた?」
目の前にローブを羽織った女がいた。
「ここはどこだ? あんたはだれだ? 俺は……心臓を撃たれたのになぜ死んでいない?」
質問をしまくると、女は突然俺を抱きしめた。
「貴方は夢をかなえて。孤児院を建てるんでしょう?」
「なぜそれを知っている」
「車の中で聞いたわ」
「お前をロールスロイスに乗せた覚えはねぇけどな……」
「とにかく、生きて。そして私の分まで夢をかなえて」
「ボス!」
部下の声で俺は目を覚ます。
胸元を見ても銃創はない。
辺りを見渡す。
ロールスロイスのエンブレムが転がっていた。
胸元を銃弾が貫いていた。
「気が付いた?」
目の前にローブを羽織った女がいた。
「ここはどこだ? あんたはだれだ? 俺は……心臓を撃たれたのになぜ死んでいない?」
質問をしまくると、女は突然俺を抱きしめた。
「貴方は夢をかなえて。孤児院を建てるんでしょう?」
「なぜそれを知っている」
「車の中で聞いたわ」
「お前をロールスロイスに乗せた覚えはねぇけどな……」
「とにかく、生きて。そして私の分まで夢をかなえて」
「ボス!」
部下の声で俺は目を覚ます。
胸元を見ても銃創はない。
辺りを見渡す。
ロールスロイスのエンブレムが転がっていた。
胸元を銃弾が貫いていた。
February 28, 2024 at 10:57 AM
俺は目が覚めると、上下左右真っ白い空間の中にいた。
「気が付いた?」
目の前にローブを羽織った女がいた。
「ここはどこだ? あんたはだれだ? 俺は……心臓を撃たれたのになぜ死んでいない?」
質問をしまくると、女は突然俺を抱きしめた。
「貴方は夢をかなえて。孤児院を建てるんでしょう?」
「なぜそれを知っている」
「車の中で聞いたわ」
「お前をロールスロイスに乗せた覚えはねぇけどな……」
「とにかく、生きて。そして私の分まで夢をかなえて」
「ボス!」
部下の声で俺は目を覚ます。
胸元を見ても銃創はない。
辺りを見渡す。
ロールスロイスのエンブレムが転がっていた。
胸元を銃弾が貫いていた。
「気が付いた?」
目の前にローブを羽織った女がいた。
「ここはどこだ? あんたはだれだ? 俺は……心臓を撃たれたのになぜ死んでいない?」
質問をしまくると、女は突然俺を抱きしめた。
「貴方は夢をかなえて。孤児院を建てるんでしょう?」
「なぜそれを知っている」
「車の中で聞いたわ」
「お前をロールスロイスに乗せた覚えはねぇけどな……」
「とにかく、生きて。そして私の分まで夢をかなえて」
「ボス!」
部下の声で俺は目を覚ます。
胸元を見ても銃創はない。
辺りを見渡す。
ロールスロイスのエンブレムが転がっていた。
胸元を銃弾が貫いていた。
そのバーでは変わったカクテルを出していた。
カクテルの表面にラテアートのように絵が描かれているのだ。綺麗な絵や可愛い絵が描かれている。絵柄も様々で、そのどれもが熟練しているように見えた。
絵描きの端くれである俺も一つ注文してみる。
しばらくしてカクテルが届いた。そこには俺の絵柄そっくりに、可愛い女の子が描かれていた。
「すごいなマスター。俺の絵柄まんまコピーしてるじゃん」
マスターにそう言うと、マスターは渋い顔してこう答えた。
「このカクテルに浮かび上がる絵は10年後の貴方の絵なのです。つまり貴方は10年後も……」
──画力が変わらないということ。
その日、俺は筆を折った。
カクテルの表面にラテアートのように絵が描かれているのだ。綺麗な絵や可愛い絵が描かれている。絵柄も様々で、そのどれもが熟練しているように見えた。
絵描きの端くれである俺も一つ注文してみる。
しばらくしてカクテルが届いた。そこには俺の絵柄そっくりに、可愛い女の子が描かれていた。
「すごいなマスター。俺の絵柄まんまコピーしてるじゃん」
マスターにそう言うと、マスターは渋い顔してこう答えた。
「このカクテルに浮かび上がる絵は10年後の貴方の絵なのです。つまり貴方は10年後も……」
──画力が変わらないということ。
その日、俺は筆を折った。
February 27, 2024 at 10:34 AM
そのバーでは変わったカクテルを出していた。
カクテルの表面にラテアートのように絵が描かれているのだ。綺麗な絵や可愛い絵が描かれている。絵柄も様々で、そのどれもが熟練しているように見えた。
絵描きの端くれである俺も一つ注文してみる。
しばらくしてカクテルが届いた。そこには俺の絵柄そっくりに、可愛い女の子が描かれていた。
「すごいなマスター。俺の絵柄まんまコピーしてるじゃん」
マスターにそう言うと、マスターは渋い顔してこう答えた。
「このカクテルに浮かび上がる絵は10年後の貴方の絵なのです。つまり貴方は10年後も……」
──画力が変わらないということ。
その日、俺は筆を折った。
カクテルの表面にラテアートのように絵が描かれているのだ。綺麗な絵や可愛い絵が描かれている。絵柄も様々で、そのどれもが熟練しているように見えた。
絵描きの端くれである俺も一つ注文してみる。
しばらくしてカクテルが届いた。そこには俺の絵柄そっくりに、可愛い女の子が描かれていた。
「すごいなマスター。俺の絵柄まんまコピーしてるじゃん」
マスターにそう言うと、マスターは渋い顔してこう答えた。
「このカクテルに浮かび上がる絵は10年後の貴方の絵なのです。つまり貴方は10年後も……」
──画力が変わらないということ。
その日、俺は筆を折った。
この世界に転生してきて驚いたことがある。
毎日月の色が変わるのだ。
一昨日は緑、昨日は青、今日は赤だ。
なぜ月の色が変わるのか?
色は光を反射して、吸収しやすい色としにくい色の相互効果で決まる。この世界の月は毎日吸収しやすい色としにくい色が変わるのではなかろうか。だとしたら、その技術を応用すれば、透明になれるマントとか作れるかもしれない。
そう私はあれこれ考えるが、実際はどうなのか分からない。どうもこの世界の人はのんきなもので、月の色がなぜ変わるかを深く調べようと思った人がいないらしい。
でもまあ、気持ちはわかる。
だって綺麗だし、毎日楽しいもん。
それだけで十分だよね、正直。
毎日月の色が変わるのだ。
一昨日は緑、昨日は青、今日は赤だ。
なぜ月の色が変わるのか?
色は光を反射して、吸収しやすい色としにくい色の相互効果で決まる。この世界の月は毎日吸収しやすい色としにくい色が変わるのではなかろうか。だとしたら、その技術を応用すれば、透明になれるマントとか作れるかもしれない。
そう私はあれこれ考えるが、実際はどうなのか分からない。どうもこの世界の人はのんきなもので、月の色がなぜ変わるかを深く調べようと思った人がいないらしい。
でもまあ、気持ちはわかる。
だって綺麗だし、毎日楽しいもん。
それだけで十分だよね、正直。
February 26, 2024 at 10:02 AM
この世界に転生してきて驚いたことがある。
毎日月の色が変わるのだ。
一昨日は緑、昨日は青、今日は赤だ。
なぜ月の色が変わるのか?
色は光を反射して、吸収しやすい色としにくい色の相互効果で決まる。この世界の月は毎日吸収しやすい色としにくい色が変わるのではなかろうか。だとしたら、その技術を応用すれば、透明になれるマントとか作れるかもしれない。
そう私はあれこれ考えるが、実際はどうなのか分からない。どうもこの世界の人はのんきなもので、月の色がなぜ変わるかを深く調べようと思った人がいないらしい。
でもまあ、気持ちはわかる。
だって綺麗だし、毎日楽しいもん。
それだけで十分だよね、正直。
毎日月の色が変わるのだ。
一昨日は緑、昨日は青、今日は赤だ。
なぜ月の色が変わるのか?
色は光を反射して、吸収しやすい色としにくい色の相互効果で決まる。この世界の月は毎日吸収しやすい色としにくい色が変わるのではなかろうか。だとしたら、その技術を応用すれば、透明になれるマントとか作れるかもしれない。
そう私はあれこれ考えるが、実際はどうなのか分からない。どうもこの世界の人はのんきなもので、月の色がなぜ変わるかを深く調べようと思った人がいないらしい。
でもまあ、気持ちはわかる。
だって綺麗だし、毎日楽しいもん。
それだけで十分だよね、正直。
Q 次の文章には下ネタの単語が9つ隠れています。
「最近、性の乱れが目立つようになりましたな」
「けしからんことです。また、巡回しないとなりませんな」
「上司はなんだかんだ言って、コキ使いますからな」
「それにしても電車遅いですな」
「運行が遅れているようです。しかも、運賃この間より上がってますからな。まったくけしからん」
「そういえばあそこのカフェ、ラーメンがあるらしいですな」
「あ、なるほど。だから、『三万個限定で特製のキーホルダーがもらえる』という広告があったのですな」
「飴もくれますし、サービスの良い店ですよな」
「おっ、パイン味の飴のことですよな? まったくいい店ですとも」
「最近、性の乱れが目立つようになりましたな」
「けしからんことです。また、巡回しないとなりませんな」
「上司はなんだかんだ言って、コキ使いますからな」
「それにしても電車遅いですな」
「運行が遅れているようです。しかも、運賃この間より上がってますからな。まったくけしからん」
「そういえばあそこのカフェ、ラーメンがあるらしいですな」
「あ、なるほど。だから、『三万個限定で特製のキーホルダーがもらえる』という広告があったのですな」
「飴もくれますし、サービスの良い店ですよな」
「おっ、パイン味の飴のことですよな? まったくいい店ですとも」
February 25, 2024 at 8:03 AM
Q 次の文章には下ネタの単語が9つ隠れています。
「最近、性の乱れが目立つようになりましたな」
「けしからんことです。また、巡回しないとなりませんな」
「上司はなんだかんだ言って、コキ使いますからな」
「それにしても電車遅いですな」
「運行が遅れているようです。しかも、運賃この間より上がってますからな。まったくけしからん」
「そういえばあそこのカフェ、ラーメンがあるらしいですな」
「あ、なるほど。だから、『三万個限定で特製のキーホルダーがもらえる』という広告があったのですな」
「飴もくれますし、サービスの良い店ですよな」
「おっ、パイン味の飴のことですよな? まったくいい店ですとも」
「最近、性の乱れが目立つようになりましたな」
「けしからんことです。また、巡回しないとなりませんな」
「上司はなんだかんだ言って、コキ使いますからな」
「それにしても電車遅いですな」
「運行が遅れているようです。しかも、運賃この間より上がってますからな。まったくけしからん」
「そういえばあそこのカフェ、ラーメンがあるらしいですな」
「あ、なるほど。だから、『三万個限定で特製のキーホルダーがもらえる』という広告があったのですな」
「飴もくれますし、サービスの良い店ですよな」
「おっ、パイン味の飴のことですよな? まったくいい店ですとも」
「魔女のなり方を教えてください。父親を殺した相手に復讐がしたいんです」
同僚の葬式。
同僚の娘が魔女の私に頭を下げてそう言ってきた。
「今の貴方に魔女の才能はないよ。貴方には人を何とも思わない残酷さがない」
そう返すと、彼女はまた丁重に頭を下げて帰った。
後日、別の同僚が亡くなったので葬式に出た。
また、あの娘がいた。娘は私に近寄ってきた。
「実は貴方の同僚を殺したの、私なんです」
「なぜそんなことを?」
「だって、そうすれば貴方にまた会えるでしょう? 残酷さの証明もできる。さぁ、魔法を教えてください」
「……合格だよ」
こうして私は弟子をとることになった。
同僚の葬式。
同僚の娘が魔女の私に頭を下げてそう言ってきた。
「今の貴方に魔女の才能はないよ。貴方には人を何とも思わない残酷さがない」
そう返すと、彼女はまた丁重に頭を下げて帰った。
後日、別の同僚が亡くなったので葬式に出た。
また、あの娘がいた。娘は私に近寄ってきた。
「実は貴方の同僚を殺したの、私なんです」
「なぜそんなことを?」
「だって、そうすれば貴方にまた会えるでしょう? 残酷さの証明もできる。さぁ、魔法を教えてください」
「……合格だよ」
こうして私は弟子をとることになった。
February 24, 2024 at 2:29 AM
「魔女のなり方を教えてください。父親を殺した相手に復讐がしたいんです」
同僚の葬式。
同僚の娘が魔女の私に頭を下げてそう言ってきた。
「今の貴方に魔女の才能はないよ。貴方には人を何とも思わない残酷さがない」
そう返すと、彼女はまた丁重に頭を下げて帰った。
後日、別の同僚が亡くなったので葬式に出た。
また、あの娘がいた。娘は私に近寄ってきた。
「実は貴方の同僚を殺したの、私なんです」
「なぜそんなことを?」
「だって、そうすれば貴方にまた会えるでしょう? 残酷さの証明もできる。さぁ、魔法を教えてください」
「……合格だよ」
こうして私は弟子をとることになった。
同僚の葬式。
同僚の娘が魔女の私に頭を下げてそう言ってきた。
「今の貴方に魔女の才能はないよ。貴方には人を何とも思わない残酷さがない」
そう返すと、彼女はまた丁重に頭を下げて帰った。
後日、別の同僚が亡くなったので葬式に出た。
また、あの娘がいた。娘は私に近寄ってきた。
「実は貴方の同僚を殺したの、私なんです」
「なぜそんなことを?」
「だって、そうすれば貴方にまた会えるでしょう? 残酷さの証明もできる。さぁ、魔法を教えてください」
「……合格だよ」
こうして私は弟子をとることになった。
婦人は、静かな微笑を浮かべていた。
「不思議なこともあるもんだ。死人が会いに来るなんて」
婦人と向かい合わせに座っている男はコップ一杯の酒を飲む。
「心配しなくてもお前の葬式は無事終わったよ。お前にはさんざん迷惑をかけたな。酔っ払ってグラスを投げつけた日もあったっけな。あの時は悪かった。俺、一人でも頑張って生きていくよ」
男は、静かに婦人に笑い返す。
「お前が最期に作ってくれた野菜炒めを今まで冷凍していたんだ。今から食べるよ」
男は野菜炒めを口に入れる。
しばらくして、男は痙攣してうめき始めた。そして、机につっぷして、動かなくなった。
婦人は、静かな微笑を浮かべていた。
「不思議なこともあるもんだ。死人が会いに来るなんて」
婦人と向かい合わせに座っている男はコップ一杯の酒を飲む。
「心配しなくてもお前の葬式は無事終わったよ。お前にはさんざん迷惑をかけたな。酔っ払ってグラスを投げつけた日もあったっけな。あの時は悪かった。俺、一人でも頑張って生きていくよ」
男は、静かに婦人に笑い返す。
「お前が最期に作ってくれた野菜炒めを今まで冷凍していたんだ。今から食べるよ」
男は野菜炒めを口に入れる。
しばらくして、男は痙攣してうめき始めた。そして、机につっぷして、動かなくなった。
婦人は、静かな微笑を浮かべていた。
February 23, 2024 at 1:03 PM
婦人は、静かな微笑を浮かべていた。
「不思議なこともあるもんだ。死人が会いに来るなんて」
婦人と向かい合わせに座っている男はコップ一杯の酒を飲む。
「心配しなくてもお前の葬式は無事終わったよ。お前にはさんざん迷惑をかけたな。酔っ払ってグラスを投げつけた日もあったっけな。あの時は悪かった。俺、一人でも頑張って生きていくよ」
男は、静かに婦人に笑い返す。
「お前が最期に作ってくれた野菜炒めを今まで冷凍していたんだ。今から食べるよ」
男は野菜炒めを口に入れる。
しばらくして、男は痙攣してうめき始めた。そして、机につっぷして、動かなくなった。
婦人は、静かな微笑を浮かべていた。
「不思議なこともあるもんだ。死人が会いに来るなんて」
婦人と向かい合わせに座っている男はコップ一杯の酒を飲む。
「心配しなくてもお前の葬式は無事終わったよ。お前にはさんざん迷惑をかけたな。酔っ払ってグラスを投げつけた日もあったっけな。あの時は悪かった。俺、一人でも頑張って生きていくよ」
男は、静かに婦人に笑い返す。
「お前が最期に作ってくれた野菜炒めを今まで冷凍していたんだ。今から食べるよ」
男は野菜炒めを口に入れる。
しばらくして、男は痙攣してうめき始めた。そして、机につっぷして、動かなくなった。
婦人は、静かな微笑を浮かべていた。
「餓鬼は修羅や 黒く刹那に曲げろ」
「乞う 受難しろ 闇から疾く抉る 雷ぞ」
ああ、またこの声だ。
黄昏時のあぜ道。最近この道を通ると、どこからともなく謎の呪文が聞こえてくるのだ。
気味悪くなって足早に逃げる。
「餓 は 羅や 黒く 那に曲げろ」
「乞う 受 しろ 闇から く抉る ぞ」
呪文が途切れ途切れになってきた。
「 は 羅や 黒く に曲げろ」
「乞う 受 しろ から く抉る ぞ」
呪文が遠ざかる。
このまま逃げ切ろうと思った時、僕はこの呪文の真の意味に気づいた。
そして、髪を振り乱して疾走した。
「 は や く に げろ」
「 う しろ から く る ぞ」
「乞う 受難しろ 闇から疾く抉る 雷ぞ」
ああ、またこの声だ。
黄昏時のあぜ道。最近この道を通ると、どこからともなく謎の呪文が聞こえてくるのだ。
気味悪くなって足早に逃げる。
「餓 は 羅や 黒く 那に曲げろ」
「乞う 受 しろ 闇から く抉る ぞ」
呪文が途切れ途切れになってきた。
「 は 羅や 黒く に曲げろ」
「乞う 受 しろ から く抉る ぞ」
呪文が遠ざかる。
このまま逃げ切ろうと思った時、僕はこの呪文の真の意味に気づいた。
そして、髪を振り乱して疾走した。
「 は や く に げろ」
「 う しろ から く る ぞ」
February 22, 2024 at 8:05 AM
「餓鬼は修羅や 黒く刹那に曲げろ」
「乞う 受難しろ 闇から疾く抉る 雷ぞ」
ああ、またこの声だ。
黄昏時のあぜ道。最近この道を通ると、どこからともなく謎の呪文が聞こえてくるのだ。
気味悪くなって足早に逃げる。
「餓 は 羅や 黒く 那に曲げろ」
「乞う 受 しろ 闇から く抉る ぞ」
呪文が途切れ途切れになってきた。
「 は 羅や 黒く に曲げろ」
「乞う 受 しろ から く抉る ぞ」
呪文が遠ざかる。
このまま逃げ切ろうと思った時、僕はこの呪文の真の意味に気づいた。
そして、髪を振り乱して疾走した。
「 は や く に げろ」
「 う しろ から く る ぞ」
「乞う 受難しろ 闇から疾く抉る 雷ぞ」
ああ、またこの声だ。
黄昏時のあぜ道。最近この道を通ると、どこからともなく謎の呪文が聞こえてくるのだ。
気味悪くなって足早に逃げる。
「餓 は 羅や 黒く 那に曲げろ」
「乞う 受 しろ 闇から く抉る ぞ」
呪文が途切れ途切れになってきた。
「 は 羅や 黒く に曲げろ」
「乞う 受 しろ から く抉る ぞ」
呪文が遠ざかる。
このまま逃げ切ろうと思った時、僕はこの呪文の真の意味に気づいた。
そして、髪を振り乱して疾走した。
「 は や く に げろ」
「 う しろ から く る ぞ」
Reposted by 十又 水青@300字小説書いてます
執筆が行き詰まった時や物語に色を加えたい時に役立つ「34のプロンプト」とは?
https://gigazine.net/news/20240222-transformative-prompt/
https://gigazine.net/news/20240222-transformative-prompt/
執筆が行き詰まった時や物語に色を加えたい時に役立つ「34のプロンプト」とは?
著作がピューリッツァー賞フィクション部門の最終候補に入ったこともある作家のケリー・リンク氏が、執筆に行き詰まった際に役立つ34のアドバイスを語っています。リンク氏はこれらのアドバイスを「変革的なプロンプト」と呼称しており、執筆中の物語に合うアイデアを抜粋して適用したり、固まった視野を広げたりすることができます。
gigazine.net
February 22, 2024 at 12:00 AM
執筆が行き詰まった時や物語に色を加えたい時に役立つ「34のプロンプト」とは?
https://gigazine.net/news/20240222-transformative-prompt/
https://gigazine.net/news/20240222-transformative-prompt/
花女。
僕のクラスの花村さんはそう呼ばれている。その時々に応じて自分の感情に合わせた花を手渡してくるからだ。
たとえば彼女をからかうと、ごぼうの花を渡してくる。花言葉は「いじめないで」だ。こんな感じで花村さんは特殊なコミュニケーションをとっている。
ある日、花村さんが僕にシロツメクサ(クローバー)を渡してきた。花言葉を調べてみる。「私のものになって」と書かれている。
これは、愛の告白だろうか。休み時間、ウキウキして、教室を出る。階段のところに来た時、誰かから背中を押され、転げ落ちた。後ろを振り向くと、花村さんがいた。
その後、僕は、クローバーの花言葉には「復讐」もあることを知った。
僕のクラスの花村さんはそう呼ばれている。その時々に応じて自分の感情に合わせた花を手渡してくるからだ。
たとえば彼女をからかうと、ごぼうの花を渡してくる。花言葉は「いじめないで」だ。こんな感じで花村さんは特殊なコミュニケーションをとっている。
ある日、花村さんが僕にシロツメクサ(クローバー)を渡してきた。花言葉を調べてみる。「私のものになって」と書かれている。
これは、愛の告白だろうか。休み時間、ウキウキして、教室を出る。階段のところに来た時、誰かから背中を押され、転げ落ちた。後ろを振り向くと、花村さんがいた。
その後、僕は、クローバーの花言葉には「復讐」もあることを知った。
February 21, 2024 at 1:29 PM
花女。
僕のクラスの花村さんはそう呼ばれている。その時々に応じて自分の感情に合わせた花を手渡してくるからだ。
たとえば彼女をからかうと、ごぼうの花を渡してくる。花言葉は「いじめないで」だ。こんな感じで花村さんは特殊なコミュニケーションをとっている。
ある日、花村さんが僕にシロツメクサ(クローバー)を渡してきた。花言葉を調べてみる。「私のものになって」と書かれている。
これは、愛の告白だろうか。休み時間、ウキウキして、教室を出る。階段のところに来た時、誰かから背中を押され、転げ落ちた。後ろを振り向くと、花村さんがいた。
その後、僕は、クローバーの花言葉には「復讐」もあることを知った。
僕のクラスの花村さんはそう呼ばれている。その時々に応じて自分の感情に合わせた花を手渡してくるからだ。
たとえば彼女をからかうと、ごぼうの花を渡してくる。花言葉は「いじめないで」だ。こんな感じで花村さんは特殊なコミュニケーションをとっている。
ある日、花村さんが僕にシロツメクサ(クローバー)を渡してきた。花言葉を調べてみる。「私のものになって」と書かれている。
これは、愛の告白だろうか。休み時間、ウキウキして、教室を出る。階段のところに来た時、誰かから背中を押され、転げ落ちた。後ろを振り向くと、花村さんがいた。
その後、僕は、クローバーの花言葉には「復讐」もあることを知った。
酒場に妖精が入っている瓶があった。
瓶の中の妖精は「ある朝起きたら突然瓶の中に入っていて、しかも特別な魔法がかけられているせいで外に出られなくて困っている」と言っていた。
瓶にかけられた魔法を解くことは、魔法使いの俺には簡単にできそうだった。呪文を唱えて数分もすれば魔法は解けて、瓶から妖精が出てきた。
喜んだ妖精は、俺に酒をおごってくれた。その夜は飲みに飲みまくった。
朝起きると、妖精は再び瓶の中に入っていた。どうしたのか、俺は聞く。妖精は手で顔をおおいながら答えた。
「どうして瓶の中に入っていたか、思い出したわ。前もこんな感じで酔っ払った末に入ったんだわ……」
瓶の中の妖精は「ある朝起きたら突然瓶の中に入っていて、しかも特別な魔法がかけられているせいで外に出られなくて困っている」と言っていた。
瓶にかけられた魔法を解くことは、魔法使いの俺には簡単にできそうだった。呪文を唱えて数分もすれば魔法は解けて、瓶から妖精が出てきた。
喜んだ妖精は、俺に酒をおごってくれた。その夜は飲みに飲みまくった。
朝起きると、妖精は再び瓶の中に入っていた。どうしたのか、俺は聞く。妖精は手で顔をおおいながら答えた。
「どうして瓶の中に入っていたか、思い出したわ。前もこんな感じで酔っ払った末に入ったんだわ……」
February 20, 2024 at 11:22 AM
酒場に妖精が入っている瓶があった。
瓶の中の妖精は「ある朝起きたら突然瓶の中に入っていて、しかも特別な魔法がかけられているせいで外に出られなくて困っている」と言っていた。
瓶にかけられた魔法を解くことは、魔法使いの俺には簡単にできそうだった。呪文を唱えて数分もすれば魔法は解けて、瓶から妖精が出てきた。
喜んだ妖精は、俺に酒をおごってくれた。その夜は飲みに飲みまくった。
朝起きると、妖精は再び瓶の中に入っていた。どうしたのか、俺は聞く。妖精は手で顔をおおいながら答えた。
「どうして瓶の中に入っていたか、思い出したわ。前もこんな感じで酔っ払った末に入ったんだわ……」
瓶の中の妖精は「ある朝起きたら突然瓶の中に入っていて、しかも特別な魔法がかけられているせいで外に出られなくて困っている」と言っていた。
瓶にかけられた魔法を解くことは、魔法使いの俺には簡単にできそうだった。呪文を唱えて数分もすれば魔法は解けて、瓶から妖精が出てきた。
喜んだ妖精は、俺に酒をおごってくれた。その夜は飲みに飲みまくった。
朝起きると、妖精は再び瓶の中に入っていた。どうしたのか、俺は聞く。妖精は手で顔をおおいながら答えた。
「どうして瓶の中に入っていたか、思い出したわ。前もこんな感じで酔っ払った末に入ったんだわ……」
「ようこそ、嘘の博物館へ」
髭を生やした紳士が丁重に礼をする。
「ここでは古今東西の様々な嘘を展示しております」
近くを見ると、男の子が母親に作り笑いをしている絵があった。隣にあるネームプレートを見る。
「宿題をやったという嘘」
こんな感じで色んな嘘が展示されていた。不倫、脱税、神はいるという嘘なんてのもあった。
しばらくいくと、右手に赤い扉があった。開けようとすると、紳士が止めてきた。
「そちらの部屋に入るのはご遠慮ください。ワケあって展示していない嘘もあるのです」
紳士は少し開かれたドアを閉める。閉める直前に、ネームプレートがかすかに見えた。
「嘘の博物館が存在するという嘘」
髭を生やした紳士が丁重に礼をする。
「ここでは古今東西の様々な嘘を展示しております」
近くを見ると、男の子が母親に作り笑いをしている絵があった。隣にあるネームプレートを見る。
「宿題をやったという嘘」
こんな感じで色んな嘘が展示されていた。不倫、脱税、神はいるという嘘なんてのもあった。
しばらくいくと、右手に赤い扉があった。開けようとすると、紳士が止めてきた。
「そちらの部屋に入るのはご遠慮ください。ワケあって展示していない嘘もあるのです」
紳士は少し開かれたドアを閉める。閉める直前に、ネームプレートがかすかに見えた。
「嘘の博物館が存在するという嘘」
February 19, 2024 at 2:18 PM
「ようこそ、嘘の博物館へ」
髭を生やした紳士が丁重に礼をする。
「ここでは古今東西の様々な嘘を展示しております」
近くを見ると、男の子が母親に作り笑いをしている絵があった。隣にあるネームプレートを見る。
「宿題をやったという嘘」
こんな感じで色んな嘘が展示されていた。不倫、脱税、神はいるという嘘なんてのもあった。
しばらくいくと、右手に赤い扉があった。開けようとすると、紳士が止めてきた。
「そちらの部屋に入るのはご遠慮ください。ワケあって展示していない嘘もあるのです」
紳士は少し開かれたドアを閉める。閉める直前に、ネームプレートがかすかに見えた。
「嘘の博物館が存在するという嘘」
髭を生やした紳士が丁重に礼をする。
「ここでは古今東西の様々な嘘を展示しております」
近くを見ると、男の子が母親に作り笑いをしている絵があった。隣にあるネームプレートを見る。
「宿題をやったという嘘」
こんな感じで色んな嘘が展示されていた。不倫、脱税、神はいるという嘘なんてのもあった。
しばらくいくと、右手に赤い扉があった。開けようとすると、紳士が止めてきた。
「そちらの部屋に入るのはご遠慮ください。ワケあって展示していない嘘もあるのです」
紳士は少し開かれたドアを閉める。閉める直前に、ネームプレートがかすかに見えた。
「嘘の博物館が存在するという嘘」
地獄には刃でできた桜があった。
その木からは花びらの形をした小さい刃が舞い降りる。地獄の罪人は、それを自らの身が傷つかぬように拾い上げて集めるのだ。桜吹雪の時期なんか、それこそ地獄絵図という有様だ。
「本当の桜はただただ綺麗なんだがな」
「そうなの? 俺日本生まれじゃないからよく知らねぇや」
「ああ、物語の世界の産物かと思うぐらいだぞ」
そこから俺は仲のいい罪人に桜の良さを喧伝する。そいつは興味津々に俺の話を聞いてくれた。
その後、そいつは無間地獄に落ちた。現世に行く人を騙して自分が現世に行こうとしたらしい。「俺は、ただ、本当の桜が見たかっただけ」と語っていた。
その木からは花びらの形をした小さい刃が舞い降りる。地獄の罪人は、それを自らの身が傷つかぬように拾い上げて集めるのだ。桜吹雪の時期なんか、それこそ地獄絵図という有様だ。
「本当の桜はただただ綺麗なんだがな」
「そうなの? 俺日本生まれじゃないからよく知らねぇや」
「ああ、物語の世界の産物かと思うぐらいだぞ」
そこから俺は仲のいい罪人に桜の良さを喧伝する。そいつは興味津々に俺の話を聞いてくれた。
その後、そいつは無間地獄に落ちた。現世に行く人を騙して自分が現世に行こうとしたらしい。「俺は、ただ、本当の桜が見たかっただけ」と語っていた。
February 18, 2024 at 8:35 AM
地獄には刃でできた桜があった。
その木からは花びらの形をした小さい刃が舞い降りる。地獄の罪人は、それを自らの身が傷つかぬように拾い上げて集めるのだ。桜吹雪の時期なんか、それこそ地獄絵図という有様だ。
「本当の桜はただただ綺麗なんだがな」
「そうなの? 俺日本生まれじゃないからよく知らねぇや」
「ああ、物語の世界の産物かと思うぐらいだぞ」
そこから俺は仲のいい罪人に桜の良さを喧伝する。そいつは興味津々に俺の話を聞いてくれた。
その後、そいつは無間地獄に落ちた。現世に行く人を騙して自分が現世に行こうとしたらしい。「俺は、ただ、本当の桜が見たかっただけ」と語っていた。
その木からは花びらの形をした小さい刃が舞い降りる。地獄の罪人は、それを自らの身が傷つかぬように拾い上げて集めるのだ。桜吹雪の時期なんか、それこそ地獄絵図という有様だ。
「本当の桜はただただ綺麗なんだがな」
「そうなの? 俺日本生まれじゃないからよく知らねぇや」
「ああ、物語の世界の産物かと思うぐらいだぞ」
そこから俺は仲のいい罪人に桜の良さを喧伝する。そいつは興味津々に俺の話を聞いてくれた。
その後、そいつは無間地獄に落ちた。現世に行く人を騙して自分が現世に行こうとしたらしい。「俺は、ただ、本当の桜が見たかっただけ」と語っていた。
怪物が見えるようになった。
その人が読んできた本がゴーレムとなり、その人の背後にたたずんでいるのだ。
学級委員の岩井君の後ろには、アニメみたいな絵を表紙にしたラノベでできたゴーレムがいる。
明るくて鬱陶しい日野先生の後ろには、『残業しないではやく帰るコツ』みたいなビジネス書でできたゴーレムがいる。
僕の憧れの天谷さんはどんなゴーレムがいるんだろう。ひょっとしたら、僕と同じような本読んでるのかな。
天谷さんが向こうから歩いてきた。背後を見ると、今まで見たことない、奇妙で、まがまがしい形のゴーレムがいた。背筋が震えた。本のタイトルを見る。
『ドグラ・マグラ』『黒死館殺人事件』『虚無への供物』
その人が読んできた本がゴーレムとなり、その人の背後にたたずんでいるのだ。
学級委員の岩井君の後ろには、アニメみたいな絵を表紙にしたラノベでできたゴーレムがいる。
明るくて鬱陶しい日野先生の後ろには、『残業しないではやく帰るコツ』みたいなビジネス書でできたゴーレムがいる。
僕の憧れの天谷さんはどんなゴーレムがいるんだろう。ひょっとしたら、僕と同じような本読んでるのかな。
天谷さんが向こうから歩いてきた。背後を見ると、今まで見たことない、奇妙で、まがまがしい形のゴーレムがいた。背筋が震えた。本のタイトルを見る。
『ドグラ・マグラ』『黒死館殺人事件』『虚無への供物』
February 17, 2024 at 3:51 AM
怪物が見えるようになった。
その人が読んできた本がゴーレムとなり、その人の背後にたたずんでいるのだ。
学級委員の岩井君の後ろには、アニメみたいな絵を表紙にしたラノベでできたゴーレムがいる。
明るくて鬱陶しい日野先生の後ろには、『残業しないではやく帰るコツ』みたいなビジネス書でできたゴーレムがいる。
僕の憧れの天谷さんはどんなゴーレムがいるんだろう。ひょっとしたら、僕と同じような本読んでるのかな。
天谷さんが向こうから歩いてきた。背後を見ると、今まで見たことない、奇妙で、まがまがしい形のゴーレムがいた。背筋が震えた。本のタイトルを見る。
『ドグラ・マグラ』『黒死館殺人事件』『虚無への供物』
その人が読んできた本がゴーレムとなり、その人の背後にたたずんでいるのだ。
学級委員の岩井君の後ろには、アニメみたいな絵を表紙にしたラノベでできたゴーレムがいる。
明るくて鬱陶しい日野先生の後ろには、『残業しないではやく帰るコツ』みたいなビジネス書でできたゴーレムがいる。
僕の憧れの天谷さんはどんなゴーレムがいるんだろう。ひょっとしたら、僕と同じような本読んでるのかな。
天谷さんが向こうから歩いてきた。背後を見ると、今まで見たことない、奇妙で、まがまがしい形のゴーレムがいた。背筋が震えた。本のタイトルを見る。
『ドグラ・マグラ』『黒死館殺人事件』『虚無への供物』
「熊さん、その扇お気に入りだね」
三郎がそう言うと、熊さんは仰ぐ手を止める。扇には貝殻を2枚合わせたような花びらをした、桃色の花がいくらか描かれている。
「これはな、馴染みの遊女が身請け前にくれたんだ。無愛想なやつでな、俺が笑わせようとしてもピクリとも笑わなんだ。俺のこと、心底嫌いだったんだろうなぁ。扇まで氷みてぇに冷たく感じやがる」
「……熊さん、その花、胡蝶蘭だよ」
「それがどうした?」
「桃色の胡蝶蘭の花言葉、知ってっかい?」
「なんだい?」
「『貴方に惚の字です』」
「どうせ色恋営業だろ馬鹿野郎め。気にするだけ無駄でぇ」
早口でそう言いながら、熊さんは手で涙を拭っていた。
三郎がそう言うと、熊さんは仰ぐ手を止める。扇には貝殻を2枚合わせたような花びらをした、桃色の花がいくらか描かれている。
「これはな、馴染みの遊女が身請け前にくれたんだ。無愛想なやつでな、俺が笑わせようとしてもピクリとも笑わなんだ。俺のこと、心底嫌いだったんだろうなぁ。扇まで氷みてぇに冷たく感じやがる」
「……熊さん、その花、胡蝶蘭だよ」
「それがどうした?」
「桃色の胡蝶蘭の花言葉、知ってっかい?」
「なんだい?」
「『貴方に惚の字です』」
「どうせ色恋営業だろ馬鹿野郎め。気にするだけ無駄でぇ」
早口でそう言いながら、熊さんは手で涙を拭っていた。
February 16, 2024 at 9:00 AM
「熊さん、その扇お気に入りだね」
三郎がそう言うと、熊さんは仰ぐ手を止める。扇には貝殻を2枚合わせたような花びらをした、桃色の花がいくらか描かれている。
「これはな、馴染みの遊女が身請け前にくれたんだ。無愛想なやつでな、俺が笑わせようとしてもピクリとも笑わなんだ。俺のこと、心底嫌いだったんだろうなぁ。扇まで氷みてぇに冷たく感じやがる」
「……熊さん、その花、胡蝶蘭だよ」
「それがどうした?」
「桃色の胡蝶蘭の花言葉、知ってっかい?」
「なんだい?」
「『貴方に惚の字です』」
「どうせ色恋営業だろ馬鹿野郎め。気にするだけ無駄でぇ」
早口でそう言いながら、熊さんは手で涙を拭っていた。
三郎がそう言うと、熊さんは仰ぐ手を止める。扇には貝殻を2枚合わせたような花びらをした、桃色の花がいくらか描かれている。
「これはな、馴染みの遊女が身請け前にくれたんだ。無愛想なやつでな、俺が笑わせようとしてもピクリとも笑わなんだ。俺のこと、心底嫌いだったんだろうなぁ。扇まで氷みてぇに冷たく感じやがる」
「……熊さん、その花、胡蝶蘭だよ」
「それがどうした?」
「桃色の胡蝶蘭の花言葉、知ってっかい?」
「なんだい?」
「『貴方に惚の字です』」
「どうせ色恋営業だろ馬鹿野郎め。気にするだけ無駄でぇ」
早口でそう言いながら、熊さんは手で涙を拭っていた。
20××年、不況が続く出版社は奥の手を解禁した。阿片本だ。その本には阿片が内蔵されている。その匂いを吸って作品を読むと、作品の中にトリップできるのだ。
阿片本は大いに売れた。売れ行きが増せば増すほど、警察も大量増員され、大きな社会問題になった。しまいには、とうとう警察の中にも常用者が現れた。どいつもこいつも都合のいい妄想ばかりに入り浸って、現実にかえってきやしない。ああ、この国はどうなってしまうのだろう。まったく、世も末だ……。
……そんな内容の書かれた阿片本を持って、倒れている男がいた。どいつもこいつも都合のいい妄想に入り浸って、現実にかえってきやしない。
阿片本は大いに売れた。売れ行きが増せば増すほど、警察も大量増員され、大きな社会問題になった。しまいには、とうとう警察の中にも常用者が現れた。どいつもこいつも都合のいい妄想ばかりに入り浸って、現実にかえってきやしない。ああ、この国はどうなってしまうのだろう。まったく、世も末だ……。
……そんな内容の書かれた阿片本を持って、倒れている男がいた。どいつもこいつも都合のいい妄想に入り浸って、現実にかえってきやしない。
February 15, 2024 at 7:26 AM
20××年、不況が続く出版社は奥の手を解禁した。阿片本だ。その本には阿片が内蔵されている。その匂いを吸って作品を読むと、作品の中にトリップできるのだ。
阿片本は大いに売れた。売れ行きが増せば増すほど、警察も大量増員され、大きな社会問題になった。しまいには、とうとう警察の中にも常用者が現れた。どいつもこいつも都合のいい妄想ばかりに入り浸って、現実にかえってきやしない。ああ、この国はどうなってしまうのだろう。まったく、世も末だ……。
……そんな内容の書かれた阿片本を持って、倒れている男がいた。どいつもこいつも都合のいい妄想に入り浸って、現実にかえってきやしない。
阿片本は大いに売れた。売れ行きが増せば増すほど、警察も大量増員され、大きな社会問題になった。しまいには、とうとう警察の中にも常用者が現れた。どいつもこいつも都合のいい妄想ばかりに入り浸って、現実にかえってきやしない。ああ、この国はどうなってしまうのだろう。まったく、世も末だ……。
……そんな内容の書かれた阿片本を持って、倒れている男がいた。どいつもこいつも都合のいい妄想に入り浸って、現実にかえってきやしない。
荒廃した地球に、骨になった君が横たわっている。
23世紀、地球は謎のウイルスに襲われた。ウイルス自体はペストやコロナと似たようなものだが、大きな特徴がある。そのウイルスにかかって死んだ人の周りにいると、あらゆるものを溶かしてしまうのだ。人体すら全部溶かして殺してしまう。防護服とマスクをつけていればある程度は防げるらしいが、どうやら長く接しすぎたようだ。
つけていたマスクが溶け始めてきた。
マスクが溶けて唇が露出した瞬間、僕は君にキスをした。ゴツゴツしていて、柔らかい感覚はもうなかった。唇が溶け始めた。
「愛してる」
喋れなくなる前に、最後の言葉を呟く。最期まで、ずっと一緒にいようね。
23世紀、地球は謎のウイルスに襲われた。ウイルス自体はペストやコロナと似たようなものだが、大きな特徴がある。そのウイルスにかかって死んだ人の周りにいると、あらゆるものを溶かしてしまうのだ。人体すら全部溶かして殺してしまう。防護服とマスクをつけていればある程度は防げるらしいが、どうやら長く接しすぎたようだ。
つけていたマスクが溶け始めてきた。
マスクが溶けて唇が露出した瞬間、僕は君にキスをした。ゴツゴツしていて、柔らかい感覚はもうなかった。唇が溶け始めた。
「愛してる」
喋れなくなる前に、最後の言葉を呟く。最期まで、ずっと一緒にいようね。
February 14, 2024 at 7:31 AM
荒廃した地球に、骨になった君が横たわっている。
23世紀、地球は謎のウイルスに襲われた。ウイルス自体はペストやコロナと似たようなものだが、大きな特徴がある。そのウイルスにかかって死んだ人の周りにいると、あらゆるものを溶かしてしまうのだ。人体すら全部溶かして殺してしまう。防護服とマスクをつけていればある程度は防げるらしいが、どうやら長く接しすぎたようだ。
つけていたマスクが溶け始めてきた。
マスクが溶けて唇が露出した瞬間、僕は君にキスをした。ゴツゴツしていて、柔らかい感覚はもうなかった。唇が溶け始めた。
「愛してる」
喋れなくなる前に、最後の言葉を呟く。最期まで、ずっと一緒にいようね。
23世紀、地球は謎のウイルスに襲われた。ウイルス自体はペストやコロナと似たようなものだが、大きな特徴がある。そのウイルスにかかって死んだ人の周りにいると、あらゆるものを溶かしてしまうのだ。人体すら全部溶かして殺してしまう。防護服とマスクをつけていればある程度は防げるらしいが、どうやら長く接しすぎたようだ。
つけていたマスクが溶け始めてきた。
マスクが溶けて唇が露出した瞬間、僕は君にキスをした。ゴツゴツしていて、柔らかい感覚はもうなかった。唇が溶け始めた。
「愛してる」
喋れなくなる前に、最後の言葉を呟く。最期まで、ずっと一緒にいようね。
「やっと地球に帰れるな。家族に会うのが楽しみだ」
艦長はコックピットの中で明るい笑顔を浮かべた。
22世紀のある日、とうとうウラシマ効果が対策された。宇宙時計である。
速い宇宙船の中では時間の経過が遅くなり、地球との間に年齢差が生まれてしまう。しかし宇宙時計を使うと、宇宙船の中でも地球と同じように年を取れるのだ。なんて素晴らしい発明。
「そうですね」
僕も笑い返す。
艦長は知らない。そんな素晴らしい発明なんか、とっくの昔に壊したことを。貴方が家族のもとに帰れないように、何度もハンマーを振り下ろしたことを。僕が艦長のことを狂おしいほど好きなことを。
──宇宙船が変わり果てた地球に着く3日前の事。
艦長はコックピットの中で明るい笑顔を浮かべた。
22世紀のある日、とうとうウラシマ効果が対策された。宇宙時計である。
速い宇宙船の中では時間の経過が遅くなり、地球との間に年齢差が生まれてしまう。しかし宇宙時計を使うと、宇宙船の中でも地球と同じように年を取れるのだ。なんて素晴らしい発明。
「そうですね」
僕も笑い返す。
艦長は知らない。そんな素晴らしい発明なんか、とっくの昔に壊したことを。貴方が家族のもとに帰れないように、何度もハンマーを振り下ろしたことを。僕が艦長のことを狂おしいほど好きなことを。
──宇宙船が変わり果てた地球に着く3日前の事。
February 13, 2024 at 3:29 AM
「やっと地球に帰れるな。家族に会うのが楽しみだ」
艦長はコックピットの中で明るい笑顔を浮かべた。
22世紀のある日、とうとうウラシマ効果が対策された。宇宙時計である。
速い宇宙船の中では時間の経過が遅くなり、地球との間に年齢差が生まれてしまう。しかし宇宙時計を使うと、宇宙船の中でも地球と同じように年を取れるのだ。なんて素晴らしい発明。
「そうですね」
僕も笑い返す。
艦長は知らない。そんな素晴らしい発明なんか、とっくの昔に壊したことを。貴方が家族のもとに帰れないように、何度もハンマーを振り下ろしたことを。僕が艦長のことを狂おしいほど好きなことを。
──宇宙船が変わり果てた地球に着く3日前の事。
艦長はコックピットの中で明るい笑顔を浮かべた。
22世紀のある日、とうとうウラシマ効果が対策された。宇宙時計である。
速い宇宙船の中では時間の経過が遅くなり、地球との間に年齢差が生まれてしまう。しかし宇宙時計を使うと、宇宙船の中でも地球と同じように年を取れるのだ。なんて素晴らしい発明。
「そうですね」
僕も笑い返す。
艦長は知らない。そんな素晴らしい発明なんか、とっくの昔に壊したことを。貴方が家族のもとに帰れないように、何度もハンマーを振り下ろしたことを。僕が艦長のことを狂おしいほど好きなことを。
──宇宙船が変わり果てた地球に着く3日前の事。