ちくま文庫の『泉鏡花集成５』の書影が流れてきて気づいたことには、『高野聖』は別格として、ここに収められた短篇すべて大好物なので、この一冊だけでも鏡花作品のベストアルバム

ミシマ生誕100周年に夢中になりすぎて、ゴーリーの100歳の誕生祝いにデオクレティアヌス

『柴田元幸翻訳叢書 アメリカン・マスターピース 古典篇』
エドワード・ゴーリーの絵本でそのお名前を知った10代の頃から、そこに描かれる題材に惹かれて訳書やエッセイを手にしてきた翻訳家。そんな柴田先生の愛読されるアメリカ文学の珠玉短篇で編まれたアンソロジーシリーズ。“古典篇”と題された本書の装幀を飾るのは、ピューリタンが降り立った始まりの地ニューイングランドの海沿いを偲ばせる景色。巻頭を飾るナサニエル・ホーソーンの「ウェイクフィールド」は、たった10ページの箱庭に築き上げられた驚異的な文字の世界。それはまるで、19世紀の弁証法的な枠組みを踏襲しながら20世紀の実存主義を予見するかのような文学体験

日本語の多彩な修辞のなかで、花の終りを表す言葉も四季折々

花咲き誇る春、桜は吹雪いて散り

月明りの秋、菊は晨暉に舞い

雪根付く冬、薔薇は毒牙に枯れ

雨続きの夏、睡蓮は散華することもなく闇に沈む

最愛の文学作品『豊饒の海』が、三島由紀夫の遺作でもある連想から、各巻の物語を雪月風花にうつろう花仕舞いに見立てるイメージにて