杉本@むにゅ10号
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杉本@むにゅ10号
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主に国内ミステリ小説の感想を週に一冊くらいのペースで書きます。過去の感想は https://bit.ly/3Uz9GUK で公開しています。
≫第4話「掘り出された罪」では特命捜査対策室の係長、堺正嗣が無謀にも冴子に推理対決を挑む。無言のまま鈍器をふるい続けるような、あまりの叩きのめしぶりに可哀想になりました。フェアな手掛かり、謎解きの意外性と納得感のバランスという意味で第2話「名前のない脅迫者」が私的ベストかな。
December 21, 2025 at 10:05 AM
≫六話を収める連作短編集。作家になって初というあとがき付きで、各話のテーマや先行作品が語られている。第3話「三匹の子ヤギ」ではコンビニエンスストアの立てこもり事件というサスペンスフルな状況を描く。このシリーズらしい、長い歳月の経過がもたらず味わいという意味では第5話「死の絆」か。≫
December 21, 2025 at 10:05 AM
≫【!踏みこんだ記述になるが!】善人と悪人がきっぱり分かれている印象がある。ただ環境や巡り合わせが悪ければ、白もいつしか黒に染まっていく。長い雨が続き、部屋の片隅で知らずしらずのうちに黴が繁殖していくように。見えないものを想像し、おぞましいものから目を逸らさない勇気が要る。
December 15, 2025 at 9:30 AM
≫迷いなく六角は狡い手段も使い、見えない悪意を炙りだそうとする。ただ事実を知るためではなく、京の都から四方八方へ呪術的結界を張り巡らせるような推理が描かれる。機械的なトリックはどうしても不自然になりがちで、だからこそ無数の断片的な知識でリアリティを担保する方向へ進んだのか。≫
December 15, 2025 at 9:30 AM
≫福井県の舞鶴や神戸三宮へ六角たちは東奔西走する。シリーズ前作『431秒後の殺人』は今どき珍しい機械的トリックの使い手という印象が強かった。本作でも密室状況が扱われているが、大きな要素でない。異文化や言葉遊びを材とする暗号、情報技術の知識を活かした推理がちりばめられている。≫
December 15, 2025 at 9:30 AM
≫冷たい小雨が降り続く日、六角法衣店を森沢レミが訪れる。妹の形見である日傘の持ち主を探してほしいという。七年前、妹の聖奈は寄田峠で車ごと谷底へ転落した。その事故現場でみつかったものだという。六角聡明とカメラマンの安見直行が調査を始めると、行く先々で関係者が殺されていき。≫
December 15, 2025 at 9:30 AM
≫高校生になった亜紀、裕美、葉子にもスポットライトが当たる。まるで宇宙人じみた印象を受ける自閉症の子どもの心にどうすれば触れられるのか。ただ論理を操作するのではなく、自分の常識を捨てて可能性を総当たりする推理を要求される。他者の世界を知ることは自分という束縛から逃れることでもある。
December 7, 2025 at 9:47 AM
≫あらかじめシリーズの過去作を順番どおりに読んでいる必要がある。児童養護施設の七海学園に保育士として復帰すべく、北沢春菜はリハビリに励む。病院で偶然知りあったのは天堂文という小学生だった。人に慣れず、ときおり奇妙なことを口走る。予知や読心術めいた言葉をどうして口にできるのか。≫
December 7, 2025 at 9:47 AM
≫香屋の敵役であることに固執するトーマに父の死を巡る記憶が蘇り、徐々にきな臭くなっていく。強大な力に与えられる箱庭の幸せは本当に幸せか。親しい者たちを傷つけてまで生きることに価値があるのか。物語に学び、他者との衝突を通じて自分の居場所を省みる。そして新しい場所へ向かう。
November 23, 2025 at 10:48 AM
≫香屋たちがいる「平穏な国」のリーダーであるリリィと「世界平和創造部」を率いるトーマとが演説で激突することに。この世界の秘密を知り、すべてのプレイヤーたちの望みを叶える手段を知るトーマにリリィが敵うのか。秋穂が気を揉んでいるのに、なにやら暗躍する香屋は選挙には腰を引き気味で。≫
November 23, 2025 at 10:48 AM
≫美しい光景に満ちた映画を鑑賞したかのような印象が残る。謎そのものは自然な手触りで、現実にありそう。けれど、それを解こうとするとさまざまな可能性を考えなければならない。ひとつひとつの解釈に心が揺れ、後戻りできない変化を迎える。それは、変わらないものをみつけるまでの道程でもある。
November 17, 2025 at 8:46 AM
≫ハワイの叔父の家で少女がみつけた日記には、戦争に引き裂かれた男女が綴られていた。二人の結末を推理する「美しい雪の物語」。校舎から転落死したクラスメイト。遺された不思議な写真はどうやって撮影したのか「重力と飛翔」。カナダの雨林で大学生たちが、喋る狼に出会った記憶の謎に挑む表題作。≫
November 17, 2025 at 8:46 AM
≫美少女も登場するけど、終始シリアスな雰囲気。謎解きは用意されているものの仮説に過ぎず、日常が少しつずつ暴力的な別世界へと置き換えられていく不穏さに幻想小説の味わいがある。それは仮説検討をひねくりまわして見晴らしの良い場所を探す本格ミステリと同じコインの裏表なのかもしれない。
November 16, 2025 at 12:40 PM
≫高校生の大城鋭人は、行方不明になっていた同級生の中谷結樹から一枚のディスクを受けとる。『千年王国』というインディーゲームらしいが乗り気になれず、巡りめぐってそれをプレイした担任教師が姿を消す。消えた人々の手掛かりをつかむべく、鋭人は『千年王国』をプレイすることに。≫
November 16, 2025 at 12:40 PM
≫論理の桎梏に組み上げられた者たちは宿命から逃れることができず、謎解きは遅すぎる後悔に過ぎない。だからこそ「地の涯て[ランズ・エンド]」には作者の変化を感じた。ピースがひとつ違えば、別の誰かの視点で人生をみつめなおしたなら。きっと私たちはいつまでも未熟なまま、大人にはなれない。
November 9, 2025 at 9:07 AM
≫「千夜行」では複雑な血縁関係がもたらす愛憎が絡みあい、ワーグナーの調べとともに破局へ突き進む。未熟な子供たち、そして同じくらい未熟で情けない大人たち。ジグソーパズルのピースのように何気ない描写を詰めていき、完成したと思った途端に別の視点が示され、組み木だったとわかる。≫
November 9, 2025 at 9:07 AM
≫五編を収める短編集。言葉遊び、思い出に刻まれる美しい光景、生きることそのものが罪であるかのような切迫感がそろった表題作はこれぞ七河迦南と言う他ない。「魔法のエプロン」は母子家庭の深刻な境遇を描き、「わたしとわたしの妹」では微笑ましい小学生の日記から闇が滲みでる。≫
November 9, 2025 at 9:07 AM