うすらい
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うすらい
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演技し続ける事の苦しみ。これは、人を愛し人から愛される事の、底知れぬ難しさにも繋がってくるだろう。この問題を念頭に置きつつ、さらに本作を読み進めてみたいと思う。
September 12, 2025 at 1:06 PM
再読しても、なぜ彼らに幼い主人公が強く惹かれたのか判然としない。しかし一つ印象に強く刻まれたのは、天勝の変装をして祖母の病室に踏み込んだ際、母の眼差しにショックを受けた瞬間の記録。ここには「涙が滲んで来た」とあり、「私自身の愛の拒み方を……学びとった」と書かれている。この場面における心の推移は、本作の潜在的な核を成しているように思われるのだ。

元々父母から引き離されて育てられた三島だが、作家としてデビューした後、自身の著作は一つ残らず母に読ませていたとの話を耳にした事がある。母への届かぬ愛慕の情は、初期の短編『花ざかりの森』に、「祖先達への愛惜」として変形されつつ描かれているようにも見える。
September 12, 2025 at 1:05 PM
家庭における教育(とりわけ祖母による過保護・過干渉)の影響は看過できない。男子らしい遊びの一切が禁止された背景には、虚弱体質な三島を安全に成長させようとの配慮もあったろうが、それと同時に、祖母自身にとって望ましい(都合の良い)子で居続けるよう孫を管理したい欲もあったろう。

これを受けて主人公の内面は様々なベクトルに分裂していく。ある場合には糞尿汲み取り人、花電車の運転手、地下鉄の切符切りに惹かれ、またある場合には松旭斎天勝、クレオパトラに惹かれる。前者の一群は卑しい身分にあって悲劇的な匂いを漂わせる男たち。後者の群は高貴な身分にあって神秘を巻き起こす女性たちだ。
September 12, 2025 at 1:00 PM