ふるいはさみ
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ふるいはさみ
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はさみふたたび。
毎朝通る地下歩道で毎朝すれ違う若い男がいる。いつも人混みをすり抜けながら走っている。その男とすれ違うことを密かに愉しみにしていた。こちらに向かって走ってくる姿は少しガニ股でなんとなく飛脚が走っているように見えた。リアルな飛脚を見たことがないので勝手なイメージだけど。
今朝、その男の姿は見えなかった。小さな楽しみを奪われた気分でいたぼくを、小さなおじさんが早歩きで追い抜いていった。
December 18, 2025 at 12:41 PM
雪には雪の都合があって、ぼくにもぼくの都合がある。なかなかわかり合えない。こんなに明るい夜なのに。雲の上は流星たちが音もなく駆け回っているのだろう。ぼくの頭の上に重い雪が積もる。音もなく積もる。
December 14, 2025 at 1:10 PM
結局は溶けてなくなる運命を知りつつ雪は積もり続ける

#短歌
December 12, 2025 at 10:47 AM
飲みました。結構酔いました。帰ってきて雪かきをしています。どんなに酔ったところで現実を変えることはできません。でも現実を楽しくやり過ごすことならもしかしたらできるかも知れません。誰かがそのやり方を教えてくれるなら。
それでもまあ、雪は降ります。冬なので。
December 11, 2025 at 12:55 PM
夜に置き去りにされた月がどうにも他人とは思えなかったので連れて帰ることにした。ポケットのなかで月はやがて春のように溶けて、家に着く頃にはなくなっていった。次の夜は次の月を連れてくるのだろう。そしてぼくだけの月はぼくだけの記憶になった。

#散文
December 7, 2025 at 1:27 AM
羅針盤のない船に乗っている。四十にして惑わずとかいうけれど、そんな歳はとうの昔に過ぎているのだ。
そうやって使われることのない推進力が蓄積されて、やがて蒸発してしまう。結局俺はこいつさえあればどこにでも行けるようになるらしい。でも、どっちに向かえばいい?
December 6, 2025 at 12:47 PM
どこまでも行けると信じていた頃は
冬の奈落も怖くなかった

#短歌
December 5, 2025 at 12:41 PM
ぼくたちは時間を選ぶことはできないと思っているけれど、本当は違うのかもしれない。耳元の矢野顕子だけが未だ夜であると主張している。通勤途中のぼくはそれに同意したくてたまらない。生垣をひとつ飛び越える勇気があれば青空は味方になってくれるってわかっているのに、駅に吸い込まれるしかない足が思考の一歩前を歩いている。

#散文
December 2, 2025 at 8:22 PM
海辺の町は
風を鳴らして
小さな夜を
咲かそうとする
そのあたたかく
つめたい記憶
終わることない
ナインボールを
眺めるだけの
後悔なんて
パフェの大地に
埋めてしまえば
誰も責めたり
できないけれど
ぼくの苺は
打ちのめされて
海辺の町は
朝になっても
風は止まない
時は病まない

#七ならべ
December 1, 2025 at 8:38 AM
世界は日曜の深夜にリセットされる。そう信じていた。月曜の朝はこれっぽっちも過去を引き摺らない顔をしてやって来る。だからこの時間こそが転換点なのだと。
世界は新しくなるけれどぼくが新しくなるわけではない。そうやって世界とぼくの間に差が生じてゆく。ラジオを付けると存じ上げないアイドルさんが呟くようにしゃべっていた。あの眠れなかった夜も、知らないひとの呟きを聞いていた。
やがて放送休止の時間を迎え無音の世界がぼくをひとりにする。ぼくは世界で満たされることなく冷めたコーヒーを握りしめている。

#散文
November 23, 2025 at 5:53 PM
一年の半分近くが冬だから道を外してしまいたくなる

#短歌
November 20, 2025 at 1:14 PM
白くなることが怖かった。色がなくなると思っていたから。白は沢山ある色のひとつではなく思想だから、染まってしまえば自分を保つことはできない。
でも、そもそも保つ必要なんてなかったんだ。落ちてゆく体温がこんなに気持ちいい。喧騒が遠のき、幻想は走り出す。イヤホンからコールドプレイが流れてきた。

#散文
November 18, 2025 at 10:30 PM
電車で30分も揺られたら
季節の一つくらい飛び越えられるさ
November 17, 2025 at 11:23 PM
早朝のわずかな時間。音がほとんどないこの時間は自分の内面と向き合うのにちょうどいい。こころが凪いでいるのを感じながら戻るべき場所を確認している。砂浜で少しずつ落ちてゆく太陽を眺めているような、いずれはじまる永遠の夜が満たされたものであることを想いながら。
もうすぐ日の出。つかの間の夢がはじまる。
November 16, 2025 at 8:59 PM
ここは野球場だけど冬の間はクロスカントリースキーのコースになる。すでにそのためのポールが立てられていた。
避けられないものは受け入れるしかない。そうしてしまえばきっとこの冬も温かさを失わず生きてゆけるだろう。
November 16, 2025 at 9:32 AM
数日前、ぼくの町に松屋ができた。今日も道路に渋滞ができるほど混んでいる。吉野家ができたときもそうだった。それはまるで火山が噴火してするようで、それでも人々はいつか噴火していたことすら忘れてしまう。吉野家も今ではすっかり落ち着いている。火山の記憶は岩石に宿る。この喧騒は何に刻み込まれるのだろう。

#散文
November 16, 2025 at 7:55 AM
もう少しだけ
夢を見させて
欲しかったけど
もう時間だね
眠りにつくよ
雪に埋もれて
凍りつくまで
そらの蒼さが
目に染みるけど
いつかこの日を
思い出したら
ぼくの背中を
そっと揺らして
そしたら時は
また動くから
風に消された
おとぎばなしの
最後の行を
書き換えるから

#七ならべ
November 15, 2025 at 1:33 PM
屈託のない秋空が哀しい。あまりにも青く透きとおっていて、それが生への別れを紛らわせようとしているように感じてしまう。さまざまな後悔が雲のように浮かぶ。膨張し続ける宇宙の片隅が薄れてゆくように、振り向くとそこに今という一瞬はもういない。

#散文
November 15, 2025 at 4:44 AM
インフルエンザの予防接種を受けてきた。看護師は年によって注射の痛みが違うという。今年のは痛いよと。年によって違うのは確かにそう思うが今年の注射はさほど痛くなかった。
帰宅してしばらくして寒気がしてきた。おそらく副反応だと思うが、こんなにわかりやすい副反応はたぶんはじめての経験だ。ゆっくりできるはずの夜がただ横になるだけの夜になった。
November 13, 2025 at 10:39 AM
眠れぬ夜が
朝になります
どこまで夜で
どこから朝か
わからなくても
困らないけど
音を忘れた
街を背にして
ひみつの呪文
唱えるように
きみのなまえを
思い出します
やわらかなまま
溶けてしまった
淡い時間を
思い出します
陽が昇るころ
忘れてしまう
小さいうたを
口ずさみます

#七ならべ
November 9, 2025 at 7:05 PM
そういえば、さよならの文字はいつも黄色いペンで書いていた。目立つように、目立たないように。見送られる人になりたくなくていつまでもこの場所から離れられないでいる。消えてゆく記憶は大地がすべて飲み込んで、だから地球は涙色をしている。

#散文
November 9, 2025 at 5:59 AM
チャーリー・パーカーとポール・デスモンドの対談をYouTubeがおすすめしてきたので観ていたら泣けてきた。
何かを追い求め真摯に生きるって並大抵なことではなくて、そうは生きられない自分のための言い訳だけが上手になっていく。ことばを操ろうとして上手くいかなくて逃げ出して舞い戻って。ああ、ここが居場所だなんて思ってみたりしている。
パーカーは30代で亡くなった。彼がもう少し長生きしていたら、クスリを止められていたらジャズの景色は変わっていたのかもしれない。でもそんな妄想を広げるよりも目の前の言い訳を片付けることから始めよう。答えは未だ見つからないけれど、それがある方角だけはわかってるんだ。
November 8, 2025 at 2:02 PM
雪が頬にあたる感覚、そのやわらかさが帰ってきた。忘れたくても忘れられない記憶のように神経が反応する。ゆっくりと染み込んでくる彼らのつぶやきは輪唱のようにこだまして、スクランブル交差点の真ん中で生きる道を見失う。冬が、やってきた。

#散文
November 7, 2025 at 8:41 PM
立冬が遅れたバスを待っていた

#俳句
November 7, 2025 at 3:54 AM
22時の電車に揺られている。この世界はどこを切り取っても割り切れることがない。かといって円周率のようになにか適当なひとことで言いくるめることもできない。22時の電車にも終点はある。でも電車にとってそこが安住の地でないように、いつかは割れてしまう欲望がそこらじゅうに花を咲かせようとしている。

#散文
November 4, 2025 at 1:19 PM