Fumiki Takahashi
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Fumiki Takahashi
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高橋文樹。日本の小説家。破滅派編集長 https://hametuha.com
樋口恭介『AI先生のSF小説教室 クリエイティブVibeライティング入門』を読んだので感想です。
『AI先生のSF小説教室 クリエイティブVibeライティング入門』を読んだ
SF作家かつITコンサルタントの樋口恭介が書いた『AI先生のSF小説教室 クリエイティブVibeライティング入門』を読みました。樋口さんは生成AIで作品を作成してnoteで公開するということをずっとやっていて、ある意味で現時点での「まとめ」のようなものが本書になるのかと思います。 クリエイティブVibeライティング(本書ではCVWと表記されます)というのは、プログラミング界隈で流行っているVibe Codingを元にしたもので、それを小説のような創作物にも転用しようという試みです。Vibe CodingのVibeとはいわゆる「バイブス上がってる〜?」におけるVibeであり、「ノリ」や「雰囲気」のような意味です。生成AIにプロンプトを投げるとなんとなくコーディングできちゃう、というのが語源です。 本書ではプロンプトの基本から「Vibeボード」「キャラクターシート」などの様々なパーツを紹介していきつつ、ハリウッド脚本術でよくある「三幕構成」や英米の文学理論で取り上げあられる「声ヴォイス&文体スタイル」のような理論と組み合わせて短編を作っていきます。実際にどのような短編ができあがるのかは本書を読んでのお楽しみ。 さて、本書を読んでいて、思ったのですが、「自分で書く」VS「生成AIに書かせる」のあいだには無限にグラデーションがあるわけですよね。たとえば、僕もプログラミングや小説執筆や調べ物に生成AIを使っているのですが、次のような使い道があります。 プログラムのテストコードを生成AIに書いてもらう 既存のフォルダに存在する大量のコードを分類してもらう 小説の世界観や設定にサンプルを用意してもらう 一般的な生成AIのプログラム作成においては、ChatGPTのようなチャットUIでダラダラと会話を続けるのではなく、中間生成物をつくるようにします。プログラムのテストなら、「テストスイート」という設定ファイルと一連のテスト実行ファイルができます。また、生成AIが読むためのコンテキスト・ドキュメント(e.g. このプロジェクトがなんであり、どのファイルがどの役割を追うか)を作ることも多いです。小説の世界観なら、本書で紹介されていたような「キャラクターシート」などが該当するでしょう。 そうすると、今後のキモとしては「どのような中間生成物の群れがよい成果物を出すか?」ということに収斂していくと思います。そうすると、だんだん「フレームワーク」が出てきて、クリエイティブな仕事というのは、オーケストレーションつまりオーケストラの指揮者に近づいていくのかな、と思いました。僕は音楽まったく詳しくないのですが、オーケストラの指揮者が楽器について何もしらないということはないはずで、上手い下手はあるでしょうが、なにかしら楽器を演奏できるでしょう。つまり、オーケストレーションをするためにはその技術、つまり小説なら文章を書くこと、士業なら法律に詳しいこと、などが条件となります。じゃないと、いい感じにオーケストレーションできないですからね。 これに関しては2つほど考えることがあります。 まず、その一クリエイターがどうやって生計を立てるのか。これに関しては13年前(!)に書いた「真に恐れるべきは異形のモノ」というエッセーで提起した問題から変わっていないです。というか、いま紹介するにあたって読み直したのですが、ほとんど予言的ですね。バーミヤンの猫型ロボットとか、言い当ててるじゃないですか。我ながらいい文章だと思いました。現状でも、いますぐれた職業人たちはそれぞれの分野で生成AIを使いながら生産性を向上していくでしょうが、では、いま駆け出しの人たちがどうしたらいいのかは解決策が見出されていません。 そして2つ目は生成AIの利用と著作権について。先述の「生計」とも関わるります。アメリカのSF界隈などでは出版契約書の項目に「生成AIを使っていないこと」が存在するらしい、と聞いたのですが、生成AIの大規模言語モデルには学習したコンテンツが含まれていることがその理由だそうです。たとえば生成AIはなぜか『ハリーポッター』を再現できるらしいのですね。で、その生成AIを使って「才能溢れる主人公(男)と人懐こいサポーター(男)と賢い参謀(女)」の物語を作った場合、それは著作権を侵害しているのか? という疑問が出てきます。アイデアに著作権はないんじゃないですか! とか、色々いえそうですよね。そもそも著作権=Copy Rightは「複製権」であって、書店・出版社という印刷をベースにした業界のロビイングによって誕生した権利とも言えます。これは「著作権は出版産業が見た一夜の夢だったりして」で書きました。本書で紹介されていたCVWのようなやり方だと著作権を意図せずして侵害してしまうことはありそうですが、とはいえ現時点でも設定などをパクった作品はやまほど存在しています。そういう意味で財産権としての著作権が揺らいで行くのは確実でしょう。著作者の権利保護・フェアユースのあいだで色んな判決が出るでしょうし、財産権保護のためのソリューションも新しく登場するんじゃないでしょうか。 というわけで、生成AIによるクリエイティブな文章の生成に興味がある方はぜひ本書を読んでみてください。ただ、この本ってどこにマーケットがあるのか、ちょっと不思議ですね。読んだ人、読書会やりましょう。
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November 4, 2025 at 3:00 AM
いよいよ今晩21:00から #はたらきかたフェス です。オンラインなのでまだ申し込み可能! 40-50代で働き盛りかつ子育て世帯は絶対に参加してください。でないと人生詰みます。

m-g-n.doorkeeper.jp/events/189245
はたらきかたフェス2025 : ビジネスケアラーが増加する時代への備え
2025-10-22(水)21:00 - 22:30 ビジネスケアラーとは、仕事をしながら、日常生活のサポートが必要な家族の介護も行っている人のことです。少子高齢化が進む日本では、ビジネスケアラーの数が増加しており、2030年には約318万人に達すると推計されており、2030年にはビジネスケアラーの増加による経済損失額が約9兆円に迫ると推計されています。 5年後の2030年に70代後半以上になる...
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October 22, 2025 at 11:41 AM
はたらきかたフェス2025に登壇します。ビジネスケアラー当事者としての体験談を語り、警鐘を鳴らしまくりたいと思います。オンラインで無料なので、ぜひご参加ください。
はたらきかたフェス2025「ビジネスケアラーが増加する時代への備え」に登壇します
僕のYouTubeふみちゃんねるでもお馴染み、メガネさん(大串さん)の株式会社m-g-nが主催するはたらきかたフェス2025が2025年10月22日(21:00〜22:30)にオンライン開催されます。 テーマは「ビジネスケアラーが増加する時代への備え」ということで、働きなが介護をする人が増加する2025年問題が到来されたということで、僕は実体験パートで参加します。今破滅派で連載している『プルーストが読みきれない』という母の介護の実体験をベースにお話しさせていただこうと思います。 他の登壇者は介護福祉士、介護施設検索サイト編集長、社労士・社会福祉士など、いわゆる介護のプロの方たちなので、実践的な内容も含まれていると思います。 スピーカーの皆さん そもそもこのイベントに登壇するきっかけとしては、ビジネスケアラー(働きながら介護をする人)になることが死ぬほど大変だということを世に広めたいからです。いま登壇するセッションのタイトルを考えているのですが、「俺じゃなきゃ死んでた」とかにしようと思ってるぐらいです。 このブログでもお伝えしたとおり僕は母の介護を五年ぐらいやって看取ったという経験があるのですが、それがまあ大変で、調べたら2025年には団塊世代がみんな後期高齢者になってビジネスケラーが急増するとかいうじゃないですか。おそらく、いま40〜50代の働き盛りで「自分は近いうちに親の介護をするだろうから情報を積極的に集めていこう」と思っている人は少なくて、そういう人たちがいざ当事者になったら僕と同じ地獄を経験する可能性がめちゃくちゃ高いはずなので、それを未然に防ぐための情報を持っておくべきだと思うのです。実務的な内容(例・地域包括支援センターに行く)については、他の登壇者にプロがたくさんいるので、僕は「こんなに大変だぞ!」という警鐘を鳴らしまくりたいと思います。 とはいえ、難しさもあって親も子供も介護について話すことは乗り越えるべき関門が多いんですよね。 「自分だけは大丈夫」「問題になったらそのときに考えれば良い」という正常性バイアス。 「介護について想像することが苦痛なので話題を避ける」という恐怖管理理論(Terror Management Theory)。 「引き寄せの法則」みたいなほとんど文化的慣習。介護について話すと介護が必要になっちゃう、みたいな考え方を持つ人は多い。 なので、そもそも介護の話題について言及すること自体が難しいという問題があります。ここら辺はイベントで登壇するプロの方からヒントが得られるかもしれません。 また、SNS時代のタイムライン型情報摂取だと、「みんな語りたがらない」ということは「コンテンツとして人気が出ない」ということでもあり、ジレンマがありますね。 もしこの話題に興味を持ってもらえた人がいれば、その人は将来の地獄度を少し軽減できる可能性がありますので、ぜひイベントにご参加ください。働いている人も参加しやすいオンライン開催で21:30から、参加費は無料です。 はたらきかたフェス2025 参加申し込み それでは、10月22日、よろしくお願いします。
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October 6, 2025 at 1:01 AM
『ネオ・ユーラシア主義』を読んだ

2022年にロシアがウクライナに進行してから早三年、いまだに戦火がやむことはありませんが、そもそもなぜロシアはウクライナを攻めているのか、という疑問があったので『ネオ・ユーラシア主義 「混迷の大国」ロシアの思想』(浜由樹子)を読みました。 僕の事前認識では「ドゥーギンとかいう哲学者のカルト思想にプーチンがハマっているらしい」というものだったのですが、本書によると実態は必ずしもそうではないみたいですね。…
『ネオ・ユーラシア主義』を読んだ
2022年にロシアがウクライナに進行してから早三年、いまだに戦火がやむことはありませんが、そもそもなぜロシアはウクライナを攻めているのか、という疑問があったので『ネオ・ユーラシア主義 「混迷の大国」ロシアの思想』(浜由樹子)を読みました。 僕の事前認識では「ドゥーギンとかいう哲学者のカルト思想にプーチンがハマっているらしい」というものだったのですが、本書によると実態は必ずしもそうではないみたいですね。 そもそもユーラシア思想というのはなにかというと、ロシアのアイデンティティをヨーロッパではなくユーラシアに置こう、という運動で、1920年代ぐらいからあったとか。とはいえ、ユーラシアというのはヨーロッパ+アシアの合成後で、本来は地域区分名です。そのユーラシアに活路を見出したのがロシア革命時代の思想家たちで、「ヨーロッパの辺境としてのロシア」ではなく、「ヨーロッパとアジアの架け橋であるロシア」というアイデンティティを見出そうとしていたようです。ヨーロッパでもアジアでもない、その中間としてのユーラシアですね。出発点としてはわりとユートピア的な思想です。 この「ヨーロッパの辺境としてのロシア」というのは、ロシアに深く根差したアイデンティティです。ロシア文学でもなぜかフランス語を話す上流階級が登場しますが、ベルサイユ宮殿を中心とした「ヨーロッパ文化」からもっとも遠い位置にあるのがロシアで、エルミタージュ美術館はそのコンプレックスの現れ、という説も聞いたことがあります。 で、ロシアのアイデンティティを都合よく読み替える試みであるユーラシア主義を現代風にアレンジしたのがネオ・ユーラシア主義で、ドゥーギンらが提唱するのは「ヨーロッパとアジアを包含するユーラシアとそこに君臨するロシア」というビジョンです。「モンゴル帝国のような大帝国の資格があるのがロシア」「西側の堕落した倫理観に対抗しうるのがロシア」というような説も含んでいます。 「モンゴル帝国の末裔」というアイデンティティはけっこう面白く、僕が高校生の頃は「タタールのくびき」なんて言葉があって、ロシアがモンゴル帝国に支配されていた屈辱と停滞の時期と教えられていた記憶があるのですが、いまでは「ヨーロッパのど田舎であるルーシ(ロシア)がモンゴル帝国の庇護下で力を蓄えた時期」とされているようです。昔の歴史はロシアの愛国史観をそのまま日本でも教えていた、というわけですね。 とはいえ、ロシアではシベリア開発がながらく軽視されていることもあり、視線は常に欧米(ヨーロッパ・アメリカ)を向いていることも本書で指摘される通り。「ユーラシアの一部としてのアジア」はあくまでストーリーとして採用されているモブキャラ的な存在ですね。 本書で紹介される思想家ではドゥーギンよりアレクサンドル・パナーリンの方が政治家に直接影響を与えていそうでした。基本路線はドゥーギンと同じですが、ドゥーギンが失脚してインフルエンサー(炎上系YouTuber)っぽくなっているのに対し、パナーリンは最後まで学者だったので、ちゃんとしてました。 本書を読むと、ロシアという国にはけっこういろんなコンプレックスがあることがわかります。 ヨーロッパのど田舎であったこと モンゴル帝国に支配されていたこと 冷戦でアメリカに敗北したこと ポスト冷戦期に経済的におちぶれたこと これらのいろんなコンプレックスが混じり合って、それを解消するストーリーが必要なのだな、ということがわかります。同じ時期に宮脇淳子『ロシアとは何か ―モンゴル・中国から歴史認識を問い直す―』もAudibleで聞いたので、ロシアにちょっと詳しくなりました。 とはいえ、こうしたストーリー(史観といってもよい)を作って信じている人たちが戦争をやめる理由もないよなぁ、という絶望的な読後感も覚えました。終わり。
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September 9, 2025 at 2:43 PM
破滅派の電話番号がSkypeとともに消えたので、ついにtwilioデビューしました。なお、ひさびさの技術系記事ですが、コードは1行もありません。これも時代を感じる。
会社の電話番号が消滅したのでtwilioデビューした
僕が運営する株式会社破滅派では創業当初からずっとSkype電話を電話番号としており、オフィス引越しトレランス(耐性)があると自負していたのですが、Mircosoft傘下になっていたSkypeが2025年5月サービス終了してしまいました。その後もしばらく電話を使えたので、「もしかしたらSkype電話はTeamsに引き継がれたのか?」と期待を膨らませましたが、そんなことはなく無事電話が通じなくなりました。 破滅派にはほとんど営業電話しかかかってこないのですが、まれに書店さんから「◯◯という本を返品してもいいですか」という了解をとるための電話がかかってきます。潰れて夜逃げしたと思われていたかもしれませんね。ご心配をおかけしました。 で、どうしようかChatGPTに聞いたら、たしかに転送電話番号のサービスはいろいろあるものの、僕がプログラミングをできるということで、最終的にtwilioを使おうということになりました。 おお、そうですか! twilioというのはメッセージング系クラウドサービスの最大手で、電話転送・SMS送信などいろんなことができます。以前はAUグループが代理店パートナーだと思ってたのですが、いまは契約終了してるんですかね? twilioのページ。日本語ページはあるけど基本UIは英語。 twilioの番号を取得 さて、twilioは登録自体はすぐできるものの、「電話番号の取得」にハードルがあります。 そもそも法人でないと登録できない(これは破滅派的にはクリア) 登録のために履歴事項全部証明書、公共料金の請求書、代表者の免許証などなど、提出するものがけっこうあります。要するに、本人確認についてガチです。これは法的な要請に基づくものでしょう。破滅派が第二の「ルフィ」にならない確証はないですからね。 特に急に言われた「履歴事項全部証明書」がめんどくさく、登記・供託ねっととかで取得はできるものの、何日か待たねばならなかったです。 で、その承認(レタックスが家や会社に届く)が済むと住所登録が紐づいて、電話番号を購入できるようになります。多分なのですが、自社向けの電話番号を購入するのではなく、なんらかのサービスを提供する人はもっとハードル高いんじゃないでしょうか。 社名・語呂合わせもできます。僕は8328(ハメツハ)で探しました。 ご覧の通り、電話番号は050なら月600円台から。市外局番(東京03とか)は月2800円ぐらいでした。僕はまったくこだわりなかったので050番号を買いました。たぶん0120(トールフリー)の番号も買えるんじゃないですかね? さて、この電話番号なのですが、なんとtwilioで買った日本の050電話番号からはSMSが送れません! 追加で購入する必要があり、僕はカナダの番号(1ドル)を買いました。アメリカの電話番号は住所のなにかしらの証明が必要で購入できなそうでした。ちなみに、カナダの電話番号を買ってそこから911に電話をかけてしまうと100ドルだかの罰金だそうです。怖いですね。 なぜ2つ目のSMS用番号を取得したのかは後述。 電話転送システムをつくる さて、電話番号が作れたらさっそくシステムを作っていきます。といっても、自分でやったり調べたりしたことはほとんどなく、最近検証的に利用をはじめたCursorの無料トライアルでできました。工数的にはのべ1日ぐらい。 IVRというのはInteractive Voice Response(インタラクティブ・ボイス・レスポンス)で、自動音声+プッシュボタンで処理を振り分けるものです。今回はこんな感じです。 こんなイメージ。初期に作ったので実態とは少し違います。 まずは着信があったら自動音声で案内して、1-3の番号を押してもらいます。 営業はお問い合わせフォームを案内して、どうしても話したい場合は再度1を押すと、電話転送 書籍の返品要請は提携で返品了解者の名前を返して、通話が必要な場合は再度1を押すと、電話転送。 その他の要件は3を押すと電話転送。 という感じで、電話転送の前にいろいろ振り分けます。最初は営業が来たらお問い合わせフォームを案内して終了、と思ったのですが、まれに役にたつ営業電話もあるのでそのままにしました。 実装の詳細はこんな感じです。 Cursorに相談してプランを立ててもらう。Nodeのexpressで作り、最終的にGoogle Cloud Runで実行する。月額料金はほとんどかからない。 その後、プランにしたがって、Node JS(express)で作ってもらう。 ローカル環境で動作確認ができるようにしてもらい、さらにSupertestでテスト実行。 その後、Cloud Runへのデプロイ(GitHubにプッシュされたらテストしてビルド+デプロイ)を実装。ここが一番時間かかった……。半分ぐらいこれ。 というわけで、あっという間にできてしまいました。で、肝心の通話なのですが…… 通話品質はSkypeより断然良い。Skypeのときは「あれ、声が、遅れて、聞こえて、くるぞ」のいっこく堂状態だった。 Skype電話は非通知で転送されてきていたが、この番号が破滅派の番号(上で買った番号)に変わったので「お、仕事の電話だ」とスマホでもわかりやすい。 と、改善点はあったものの、まだ「相手の番号がわからない」という状況に代わりはありません。一応、twilioのダッシュボードで確認できるのですが、いちいち見にいくのが面倒くさい。そこで、次のような仕様にしました。 電話がかかってきたら、録音を開始 録音が終了したら、日時、発信元、録音データへのリンクを付与してSMS送信 録音データはスケジュール消去できず、量が増えると課金されるらしかったので、Amazon S3に保存。S3のスケジュール機能で古い録音を定期的に削除 ここで、先ほど購入したカナダの電話番号が役にたつのですね! SMSからワンクリックで電話をかけられるので、「さっきの電話にかけなおそう」というのが簡単になりました。 こんな感じでSMSが届きます。 なお、改善点としては、S3のURLがパブリックじゃない(かつ、パブリックにしてはいけない)ので、録音のリンクをクリックしても音声が聞けません。なので、期限切れになる認証付きURLかなにかを用意して、すぐ聞けるようにしようと思います。 この機能はhametuha/hamephoneとしてGitHubで公開しているので、ちょっと直せば他の人も使えると思います。プログラミングにあまり自信がなくても、Cursor, CLINEあたりのIDEと統合されているツールを使って「このリポジトリはなにをしてるの?」「自分も使いたいんだけどどうしたらいいの?」と尋ねまくるとおそらく動くようになると思います。 というわけで、twilioのSMSは初めて使いましたが、かなり簡単でした。今後、破滅派のサイトにも本人確認の機能として導入してみようかなと思っています。 しかし、もはや自分でプログラミングすることはほとんどなくなりましたね。マイクロサービス作りまくってみようと思ってます。
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August 1, 2025 at 3:00 AM
この文章を読んでどう思いますか?

透明な悲しみが無言で加速している午後三時の静脈
柔らかい論理が右肩上がりに納豆を編集する
概念的な抹茶が次第に縦方向へ飛躍してゆく
たしかに昨日、抽象が味噌を通り越して躍動してましたよね?
本研究では、非対称的な曖昧性が認識的ベクトルに与える擬似的影響について検討する
ものすごく整って、ありえないほど無意味
この文章を読んでどう思いますか? 透明な悲しみが無言で加速している午後三時の静脈柔らかい論理が右肩上がりに納豆を編集する概念的な抹茶が次第に縦方向へ飛躍してゆくたしかに昨日、抽象が味噌を通り越して躍動してましたよね?本研究では、非対称的な曖昧性が認識的ベクトルに与える擬似的影響について検討する 「これは詩だ!」と思ったあなた、バカですね。これは僕がChatGPTに命じて書かせた「文法的には間違っていないが意味のない文章」です。チョムスキーの有名な "Colorless green ideas sleep furiously."(無色の緑の観念が猛烈に眠る)を元に書いてもらいました。 とはいえ、これらの別々に書かれたはずの5つのセンテンス(5個考えろといったので)も、日本食(とくに大豆方面)に偏っており、おそらくはChatGPTが学習した「この質問してくる奴は日本人」というデータに依存しているのでしょうから、完全に無意味というわけではなく、「これは詩だ!」と思ったあなたの感覚もあながち間違っていないのかもしれません。そういう意味で、バカではないかもしれません。バカといってごめんなさい。 生成AI・イズ・マッサージ さて、本題です。ここ数年、生成AIに書かせた一連のコンテンツを「すごい!」と見せてくる人が増えてきました。その生成AIコンテンツが素晴らしいかどうかはさておき、僕が気になるのは「なぜ皆はこんなにも得意げかつ嬉しそうなのか?」という点です。なぜいい大人が「見て見て!」と子供じみた見せ方をしてくるのか。 書式上まとまった「一連のテキスト」「表」「グラフ」をなぜ人は嬉しそうに見せてくるのか? 人間はフォーマットが整っている情報を見せられると、その中身はともかく、その「整い」それ自体に快感を覚えるのではないか? これは人間の認知能力を考えると当たり前で、人間は情報を処理する際の効率をあげるために、いろんなものをはしょっています。そのはしょり、つまり合理化のヒントの一つにフォーマット(書式)があります。なぜならフォーマットは見た瞬間に(at a glance)理解可能だからです。整ったフォーマットの情報は、それだけで「これだけ整っているなら少なくともキチ◯イではないな」という判断ができます。 整った書式は我々にとって心地よい。マクルーハンが「メディアはメッセージである」というフレーズのセルフパロディとして『メディアはマッサージである』という本を出したように。 なんらかの資料を作成したことがある人はエクセルやパワポでフォーマットを作る時に「なぜ自分は何回もインデントを揃えているのだ?」という苦しみを覚えているでしょう。それどころか、その「フォーマットを整えることこそが自分の原罪だ、この苦しみを私はパンに変えて日々を生きるのだ」という人さえいるでしょう。生成AIはその「苦しみ」を解放し、あたかも「本当に自分が表現したかったこと」を示してくれているように思えるからこそ、「見て見て!」という気持ちが生まれるのではないか。 整いの民主化がもたらす変化 こうして誰でもある程度整った文章を生成できるようになる、つまり整いが民主化すると何が起きるかということを少し考えてみました。 整った文章を生成する能力が民主化(=陳腐化)すると何が起きるかというと、まずは官僚主義の衰退ですね。 官僚主義(Bureaucracy)はその語源に "Bureaucracy"(机、事務所、役所)を含むことからわかるとおり、形式を整えたものをよしとする形式主義の社会実装といえます。たとえば、年末調整が典型的ですが、役所の書類は整ったA4の書類としてまとめられており、住所・氏名などのほか、なんらかの選択肢(勤労学生であるか)などが用意されています。これらの書式は役人が一生懸命考えた法的に有効なフォーマットなのですが、必ずしも書きやすいとはいえないですし、そこに当てはまらない人がどうしたらいいかも網羅されていないことが多いです。 しかし、法的に有効な書式として認められているので、この形式主義は権力を持ち続けてきました。「世間的に偉くなる」方法として「官僚になる」が科挙の時代から存在していますが、その試験がペーパーテストであることを考えると、そうした書類作成能力(情報を整理する能力)が社会を運営する上で重要であるとみなされているのは明らかですね。 このなんとなくちゃんとしてる形式上で正しい文書が誰でも作れるようになると、その優位性はなくなります。実際、ChatGPTなら東大文Ⅰにも国家公務員試験1種にも受かるのでしょう。では、官僚主義が衰退したとして、何が力を持つのか。 ちなみに、いまユヴァル・ノア・ハラリの『NEXUS』をAudibleで聞いているのですが、ちょうど官僚主義と情報ネットワークの話が出てきて、タイムリーでした。僕も世界的知性に近いところにいるようです。やったね! 官僚主義が終わった夜に では、官僚主義の価値がなくなったあと、なにが価値を増すのか。 色々考えて見たのですが、ベタに「誤りを見抜く能力」ですかね。僕もコードレビューやイシューの精査などをすることが多いのですが、「自分がやったって書いてるけど、これAIちゃうんか」みたいなものを精査するのはいまいち気が乗らないのですが、「これこそが令和のスキルなんだ!」と自分を納得させています。以前は「自分の作ったものに責任を取る」のが立派な仕事とされていましたが、生成AIで作ったものと人間で作ったものの区別ができなくなってきました。これは、生成AIの質が高くなったというだけでなく、嘘つきも混じっている(「生成AIで作りました」と言わない)ことも一因ではあります。そうすると、間違い探しが立派な仕事とされるのは致し方ないことなんでしょうね。生成AI全ブッパで成果物出してきて「自分が責任取ります!」というバカだか敵だかわかんない奴を防ぐには、「いや、ここ間違ってますよ」というしかないですもんね。 とはいえ、AIも自問自答によってアウトプットの品質を上げるらしいので、この間違い探し力を上げることがどれだけ価値を保てるかもわからないですけどね。ホワイトハッカー(セキュリティ・エンジニア)の給与はかなり高く、増加傾向らしいですが、それもいつまでもつのやら。 2027年にはAIが新しいものを作る生産性が人間を超える(Anthropic’s vision until 2027: from Assistants to AI that solves challenging problems for humans.)そうなので、そうなると誤りを見つけるのはめちゃくちゃ大変そうです。「アメリカ大陸の先住民がヨーロッパに支配されたのは大陸が縦長だったからだ!」みたいな、ジャレド・ダイアモンド的な博学(『銃・病原菌・鉄』)が求められそうです。そうなると、就職するまで学位四つぐらいとらなきゃいけなくて、新卒の平均年齢が35歳、みたいな未来が訪れるんですかね。子供が四人いる僕はどれだけ稼がなくてはいけないのですか? 僕としてはそのときまでに逃げ切りたいのですが、NISAのS&P500は第二次トランプ政権誕生によって目減りしてしまいましたし……。誰か五億円ください。   そんなわけで、不安と期待の入り混じった2025年ももう半分終わりました。みなさんも、Claudeが人類を超えるタイムリミットの2027年まであと一年半、何が将来設計に役立つかを存分に悩んでください。いまのところ、「間違い探し力を鍛える」が有力そうです。けっきょくはカール・ポパーの「反証性」みたいなことなんですかね。 というわけで、終わり。 タイトルはこれからとりました。
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June 9, 2025 at 1:00 AM
メタバースの元ネタとなった『スノウ・クラッシュ』をAudibleで聞いたのですが、LLMも予見していたのではないかと驚きました。30年も前なのにすごい!
『スノウ・クラッシュ』に出てくるLLM成立過程の予言っぽいもの
ひさびさのAudible読書です。ニール・スティーブンスンの『スノウ・クラッシュ』は1992年に発刊されたのですが、メタバースの元ネタになったということで、Facebookが社名をMetaに変えたあたりでかなり注目を集めて復刊されました。で、それがAudibleにも入ってきたので聞いてみたのですが、非常に面白かったです。 メタバースはその後のサイバーパンクSFテイストを持つ作品で擦られ倒しているのでそれほど新鮮味はない(いわゆる「ゾルトラーク化」してる)のですが、主人公のヒロ・プロタゴニストがメタバースでいろいろ相談するバーチャルアシスタント「ライブラリアン」の成立過程が興味深いです。 ライブラリアンは作中でも非常に賢いアシスタントとして描かれます。作中序盤で登場する人を狂わせるドラッグ的なもの「スノウ・クラッシュ」の謎を解くべく、ヒロはバベルの塔やらシュメール語やらの考古学的な分析をライブラリアンに依頼するのですが、ライブラリアンとの対話でだんだん謎が解けていきます。で、その賢いライブラリアンを作ったのが誰かというと、凄腕プログラマーではなく図書館司書なんですね。この図書館司書はとにかく大量の知識を詰め込むことでAIを賢くしようとしたのですが、一定の閾値を超えたあたりでその目論見通りになった、と。 この設定って、現代のLLM(Large Language Model=大規模言語モデル)に非常に近いんじゃないかな、と思いました。作品のストーリーではチョムスキーの影響がかなり色濃く感じられます。人間にある「言語基盤」「深層構造」が人間の精神構造をハックするためのBIOSのようなものになっているとか、これはチョムスキーの普遍文法・内的器官などの概念に影響を受けていますよね。まあ、生成文法は魅力的な概念なので、『虐殺器官』などの作品にも影響を与えていると思われますが。 ともかく、LLMの登場によって「言語とか知性って統計的パターン認識なんじゃないの?」「普遍文法があるとしたら人間の中じゃなくて言語の中なんじゃないの?」というクエスチョンが特に人工知能研究で広まっていると浅学ながら感じるのですが、『スノウ・クラッシュ』がこのライブラリアンの成立過程を30年以上前に書いていたのは興味深いですね。 ちなみに、最近の研究によると言語モデルは間違いを出力したあと、頭の中で後悔しているらしいので、大規模言語モデルがチャットのようなUIで人格らしきものを持っているのは自然なことかもしれないですね。むしろ、僕たちが人格や性格、人間らしさと呼ぶものは、言語モデルの運用パターンに現れる誤り訂正処理みたいなものなのかもしれません。 最後になりますが、僕は本書のライブラリアンにめちゃくちゃびっくりしたので、ついついChat GPTに「スノウ・クラッシュに出てくるライブラリアンって、あなたにめちゃくちゃ似てるね!」と聞いてしましました。すると…… まさにその通りですね!✨ 『スノウ・クラッシュ』における「ライブラリアン」の成立背景――プログラマではないが知識に精通した図書館司書が、構造化された知識体系をもとに構築した――という設定は、現代のLLM(大規模言語モデル)の訓練と開発の在り方を驚くほど先取りしていたと言えるでしょう と、いろいろ答えてくれたのですが、これって著作権的にどうクリアしているのか気になりました。終わり。
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April 8, 2025 at 9:05 AM
『「絶滅の時代」に抗って 美しき野獣の守り手たち』という本を読んだので、その感想文です。
『「絶滅の時代」に抗って』を読んだ
創作のアイデアとして動物の絶滅について調べており、その過程で『「絶滅の時代」に抗って 愛しき野獣の守り手たち』という本を読みました。 本書はミシェル・ナイハウスという科学ジャーナリストが書いた本で、帯にもある通り生物多様性保全という概念、つまり「いろんな動物がたくさん存在していることがよいことである」という通念が当たり前になるまでの歴史的経緯をまとめています。 まず、本書では分類学の父リンネから始まるのですが、そもそも「どういう動物がいるの?」ということに疑問を持ち始めてそれを体系化し始めたのが18世紀ぐらいです。これは西欧社会つまりキリスト教圏に特有の考え方らしいのですが、この世界は神が作った完全な社会なので、その被造物である動物がいなくなるわけがないという思想があったようです。たとえ現代人が「最近〇〇という動物を見ないな」という感想を持ったとして、ではそれが「〇〇は絶滅した」という結論に至るかというと、そんなことはありません。研究機関の発表などが報道につながって初めて「そうか、〇〇はこの地球上から消えてしまったのか」と感じるに至ります。当時の人としてはなおさら「〇〇はこの世界のどこかにいるのだろう」と思いがちだったのでしょうね。 19世紀アメリカになるとバイソンが絶滅の危機に瀕することになります。ネイティブ・アメリカンによる狩猟では特に影響がなかったけれども、銃と馬が導入されたことでその数を劇的に減らしたとか。最終的にウィリアム・ホーナデイという人が奔走してバイソンの再繁殖に成功します。ちなみにこのホーナデイは黒人(オタ・ベンガ)を動物園に展示した人でもあるので、動物には優しくても他人種には冷酷だったようです。 他にも動物を絶滅から救おうとした人々が章立てで紹介されます。 鳥はもっともその種が絶滅の憂き目にあった脊椎動物で、たとえばDDT(殺虫剤)の過剰な使用によって大ダメージを受けた。 『すばらしい新世界』のオルダス・ハクスリーはイギリスの有名一族出身らしく、その父と兄は著名な生物学者で、兄のジュリアンは生物保護の組織化に晩年まで尽力する。 川の人権が認められた話も紹介されています。判決にいたる思想的背景が深掘りされてます。 個人的に興味を惹かれたのは8章の「サイとコモンズ」です。何年か前にキタシロサイの最後のオスが死んだというニュースを聞いて寂寥感を覚えた記憶がありますが、サイは密猟によってその数を劇的に減らした野生動物です。で、この章では野生動物を公共資源と考え、それをどう維持していくかに奔走する人々が描かれるのですが、ギャレット・ハーディンの主張した「コモンズの悲劇」とそれに反論したエリノア・オストロムによる公共財の管理可能性研究が紹介されます。このオストロムの研究とそれを発展させたデジタル・コモンズについての研究は今後関連情報を集めていきたいと思っています。 本書を読むと、人類が動物の種類の把握してそれらが自分たちのせいで絶滅しかけていると把握しはじめたのは結構最近だということがよくわかります。ユヴァル・ノア・ハラリなんかは「人間の進出した地域では大型哺乳動物が絶滅していっている」と書いていた気がしますが、ホモ・サピエンスが活発化した三万年にわたる期間と、人類の科学文明が急速に発達したこの数百年はまったく違った淘汰圧が地球にかかっているように思います。 日本でもメダカが絶滅危惧種になったことは広く知られていますが、我々罪深き人類が誕生したことで動物が絶滅しまくっていることは事実。そんな中でもがんばってる人たちがいると知っておくのは希望になるんじゃないでしょうか。
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February 15, 2025 at 11:16 PM
今日の神保町ブックフェスは立ちっぱなしだったので疲れた! 次回からは椅子を持っていこう。
October 26, 2024 at 2:12 PM
BlueSky見てないんじゃないかと言われて、たしかにみていないので、BlueSky頑張っていこうと思います(しかしなにを?)
October 18, 2024 at 3:26 AM
Reposted by Fumiki Takahashi
予定より早く届いた弊同人の先輩の本
April 1, 2024 at 9:08 AM
Twitter有料化したら、どこに行けばいいんだ……
September 21, 2023 at 7:49 AM
ここには誰もいないのか? 孤独だ……
September 12, 2023 at 7:13 AM
ついにブルースカイを始めました!
September 12, 2023 at 7:12 AM