楽しい思い出も幸せな思い出もたくさんあるしそばにいてくれなきゃとても寂しいのに一緒にいると何だか負い目や引け目を感じてとても息苦しかったのがトモロウにとっての家族ということなら、どうすればその苦しさから解放されるんだろうか。答えはおそらく悲しい時に一緒に泣いて楽しい時に一緒に笑ってくれる相手を見つけることなんだけど、過去の経験から自分の気持ちなんて誰にもわかってもらえないと考えていてそもそも自分でも自分がわからなくて困るほどトモロウの感情って混沌としてるんだよな…

ここでトリックスター元型についてざっくり。

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トリックスターにはそのつもりは全くなくてむしろ自分を生み出した子どもの不安や恐怖を取り除こうという動機で頑張ってくれてるんだけど、その場を引っ掻き回すことは得意でも壊されないように守るのはどうしようもなく苦手だから世界についても自分自身についても変わることを恐れてる子どもにとってトリックスターは悪魔にしかならないだろうな。

ところで幼少期のトラウマから元型としてのトリックスターが生まれることもあるそうだけど、自由で破壊的な性格を持つトリックスターが得意なのは変化をもたらすことであって何かを守ることには全く向いてない元型なので不安や恐怖から自分を守ろうとしてる子どものことを逆に苦しめ傷つけてしまうそう。

ゲッコーモンは自分のことを「トモロウの子ども」と表現することがあるけど、それが何を意味するかといえば「トモロウの未熟さ」や「トモロウの秘めた可能性」ということでもある。ゲッコーモンと喧嘩するのはトモロウが「なんて自分はダメなやつなんだろう」と自分に不満を持っていてそれゆえに自信を無くしてる状態という見方もできる。居心地の悪い理由はトモロウの自信のなさで、ゲッコーモンを信じないからトモロウに悪いことが起こるならそれはトモロウがゲッコーモンだけでなく自分自身のことすら信じられなくなってるということ。ゲッコーモンの前では誤魔化しが効かないのでそれがさらに浮き彫りにされる。

ゲッコーモンはヤモリだからトモロウが離れ離れになった自身の家族のことを強く心配していたことも生まれた理由の一つではあるんだけど、それ以外にもトモロウが自分の置かれた立場についてどう感じてるかということも表してるのかもしれない。ゲッコーモンがトモロウの目の前に現れたのは自宅でのことだしその時はゲッコーモンに対する印象は最悪だったので自分の家でさえ居心地が悪かったということだろうか。グローイングドーンでの暮らしも赤の他人との共同生活やクリーナー稼業にまだ慣れてないし自分のドジで共同生活者を散々困らせてるので肩身も狭いし。

フレアモンの炎によってレアモンがデリートされただけでなくゲッコーモンも幼年期に退化させられてることも忘れてはいけないな。カイトは明らかにゲッコーモンをターゲットにしてるのでゲッコーモンもまたトモロウの中の余計な感情と見做されてる。ゲッコーモンはトモロウの「余計なことするな」という言葉に「自分は余計なんかじゃない」と怒っていて、返答としてはかなりズレてるんだけどそこに「余計な感情はいらない」というやつが出てきてしまったのでゲッコーモンの素体になった感情は一体どんなものでそれはトモロウにとって本当にいらない感情だったのか、今まで向き合わなかった分までトモロウは本気で考えなきゃいけなくなったな。

ヘドロは夢の中だと基本的に自分の感情と向き合いたくないところに現れるものだけど、不潔なものは見て見ぬ振りするよりも綺麗さっぱり掃除した方が精神衛生的には間違いなくいいのでその為にはきちんとその感情に向き合う必要がある。臭いものに蓋して終わり、じゃ掃除にはならないので。さてそのレアモンはというとフレアモンによって「汚物は消毒だ」されちゃったけど、廃棄物に由来するヘドロを跡形もなく燃やすのは「余計な感情は必要ない」というカイトからキョウへ向けたメッセージとも取れる。カイトのいうキョウの余計な感情とはグローイングドーンのファミリーに見せる愛や優しさのことらしい。

このほかにもヘドロというのは心の底に沈んでる、普段は好ましくないものとして抑圧されている負の感情がこれといった形になりきらずにドロドロとして黒く濁った汚いものとしてかろうじて目に見えてる状況ということらしい。これが意味するのは「良くないものと思い込んで閉じ込めてきた感情は実は適切に表現できてないせいで正しく相手に伝わってなかっただけ」ということ。これが当てはまるのはトモロウなんだけどもしかしたらトモロウは自身の情動の処理や言葉での自己表現がものすごく苦手なんじゃないかな。主観では「どうして伝わらないの？」と思うことが客観的に見て「何言ってんの？」となるなら多分そういうこと

カイトの方は豪雨のような無慈悲で残酷なキョウこそがキョウのあるべき姿だと思ってんのかもしれんね。

ゲッコーモンの望むことはトモロウに認めてもらうことのようなので受け入れてあげたら受容されたと理解して意外とおとなしくなりそうだけど、それまではヤモリらしくけたたましく大騒ぎ大暴れするだろうなと思って見てたんだよな。それ以上に大波乱だった。しかもトモロウの「お前（ゲッコーモン）のe-パルス全部あいつ（ファングモンピアスだったプニモン）にぶつけろ」って、ただ「プニモンをデリートしろ」という意味だけじゃなかったかもしれないことに気づいてしまって凄く辛い。「他人に迷惑かけるような感情なら初めから人間の中に存在しない方がいい」くらいの意味があったんじゃないかな。

ゲッコーモンを指してトモロウが言い放った「生まれてこなければよかった」という呪いの言葉は、もとはトモロウ自身に向けられていたものなんだろうな。「お前なんか」「あんたなんか」と誰に言われたわけでもなく、自分のせいで大好きな誰かを不幸にする世界に耐えきれなくなって厭世的になったあたりで「俺なんて生まれてこなければよかったのかな」と漠然と思い始めたような感じなんだろうけど。自分でかけた呪いは自分でなきゃ解けないけど、何がそのきっかけになるやらな。

現在の五行星の火の人の声優は『ゼノブレイド2』のメツと同じ人で、しかも割とアレな感じなんで「そういうのはもういいだろ」という気持ちになってる。

トモロウは自分に親身にしてくれた年長者に対しては「仲間や家族のことを大切に思うならそれと同じくらいあんた自身のことも大切にしてほしい」と思うことが多いみたいだけど、アスカのことがあるからそう思うようになったものの自分でそれができてるかといえばそうじゃないんだよな。むしろ自分で自分を殺してしまってる。

トモロウとアスカが両親と離れ離れになってた理由も両親が国民保護省に連行されたからというのが不穏ではあるのだけど、トモロウを養うためにバンドも高校も辞めることになったアスカに対する負い目がトモロウには多分にあったんだろう。ただでさえトモロウは特異体質の持ち主で後ろ指差されやすいからそれこそ「俺のせいで」みたいな。実際のところはどうしようもなく運が悪いだけだけどそれで割り切れるほどトモロウは冷淡でも大人でもないし。

デジモンはたとえ自身の死を望まれたところで自分の中にある生存本能には逆らえないんだけど、それはそれとして自分を生み出したトモロウから自分の存在を呪われるってゲッコーモンにとってそれこそ死ぬほど悲しいことだし、そもそもゲッコーモンってトモロウの「自分自身に対して正直でありたい」とか「自分を尊重・容認してほしい」って感情から生まれてるので、自分自身の中にあるその気持ちをトモロウは心にもない言葉で自分から否定したことにもなるんだろうなと。周りから自分のやることなすこと否定され続けたからトモロウ自身も自己を肯定できなくなってしまったんだろうけど、だからこそ幾重にもなんか悲しい

「こいつは主人公のことを憐れんで生かしてやってるのに」とか「生かしてもらってる立場でなんて勝手な」みたいな感想が出てくる時点で全体主義やファシズムに相当毒されてると思うが、そういった感想をなんの衒いもなく出してくるならその自覚はないんだろうな。