海賊たちが自分を意識していない。
皆同じ。
そして下らない争いが生まれる。
皆が同じって、どこか安心するけどあまりにも揃っていたら、不気味だし不便だし楽しくない。
個性がどうの、統一がどうの……という事ではなくて、ただ人間の愚かさが垣間見えた。

子供ジムと大人のルーカスは、友人だが同志であり同僚であり、ジムには必要不可欠。
軽いファンタジーと思われがちだけど、個人の想いとモラル、大人の葛藤と子供との複雑な関係など、じっくり読むとなかなか深い。
へこたれない勇気と友情があればどんな困難も乗り越えられるんだ！
大人の世界ではバカにされがちだけど、子供の世界にはこういう要素が必要なのだ。

ここからが怒涛のストーリー。
いつの間にか、最終的にはゾロアスター教が絡んだ聖戦へとなるワケだが……

後書きから読みとるに、ディック本人は【ファンタジー】と言っているからＳＦ色が薄いのは当たり前。
しかし、私にとってディックはＳＦ作家。読んでいて「この物語、どこからＳＦになるんだ？」と思いつつもファンタジーを楽しんでいる。
ディックのファンタジックな創造力も、SF作品に値するくらいの衝撃だった。

こういった日常がリアルに、ややコメディチックに、真剣に語られている一冊。古書店物語は数あれど、ここまでリアルな物語は他に無いと思う。
ノンフィクションであってフィクションではないから文学的な言い回しやドカンとくる展開はないけど、ページを勧めてゆくと主人公と共に修行を治めている気がして（だだの想像）共感しっぱなし。