ちびあんすも
banner
apricotplum131.bsky.social
ちびあんすも
@apricotplum131.bsky.social
幻想・奇譚・怪奇・推理とか。
ほぼ大好きな本についての記録
(時々、愛犬、おやつ🍪)
踏切の幽霊/高野和明

踏切での撮られたものは、何だったのか。怪奇事件を追う、雑誌記者松田の目を通して語られる、社会によって幽霊とされた彼女の人生。『幽霊』は、どこから生まれるのか。社会の狭間で息を潜め、笑うことを知らずに生きていた、彼女を探す旅には、大きな闇が待ち受けている。
November 8, 2025 at 7:28 AM
第三の警官/フラン・オブライエン

ループへと導く殺人事件から出現した、謎の声と警官たち。箱を開けても開けても出てくる、不条理な理。注釈の隅々まで注目すると、謎が謎を呼んでいく。どこから「わたし」が不条理な世界へ入り込んだのか。

訳者あとがきは、本編を読んだ後に読むことを推奨します。
November 5, 2025 at 1:23 PM
不死の怪物/ジェシー・ダグラス・ケルーシュ

1922年に書かれたとは思えない。古臭さを感じなかった。ホラー寄りのミステリー。千年以上続く、一族に取り付いた呪いを霊能力で暴く単純な怪物との対峙では終わらない。霊能力者の緻密な心理、化学的分析が、異界を多角的に見せている。
November 3, 2025 at 11:34 AM
時の家/鳥山まこと

時の地層の重なりが織り成す息遣い。静かに積もる住人の歴史。主人公がデッサンで描く、無人の家の歴史と重み。床の軋む音。柱の窪み。その一つ一つに、かつての人の思いが残されている。淡々と静謐に紡がれた文章から、その家が実在するような不思議な感覚に包まれた。
November 2, 2025 at 4:11 AM
鳥の夢の場合/駒田隼也

誰かひとりに乗り移ることも、俯瞰することも出来ない小説。一羽の文鳥の時間は、繰り返されるゆがみ。見る、見られる。目。どこから現実かの立ち位置が揺らしてゆく時間の流れは、滔々とは行かず。

この本は、レビューという形で世界観を語源化するのが非常に難しかった。自分の見えてる世界が、歪んだり、戻ったり進んだりする立ち位置。理解したものを素直に言葉に出来ないもどかしさがあった。
November 1, 2025 at 1:29 AM
何かが道をやってくる/レイ・ブラッドベリ

鏡に映る、もしもの未来。これからの未来を連れ去る邪悪なもの。過ぎ去った過去を後悔すれば、不敵に笑うカーニバルがやってくる。後悔しない生き方などないかもしれない。でも、後悔を受け入れる勇気は持つことができる。大きな背中の愛に震えた。
October 31, 2025 at 12:30 PM
火星年代記/レイ・ブラッドベリ

各エピソードは独立しているが、物語の空白をどう読み解くか、余白を残している。滅びゆくもの、新たに生まれるもの。それまでに根付いた文明が飲み込まれていく切なさに胸が締め付けられる。大地に染み込む小さな雨粒に、希望の名残をのせて。
October 26, 2025 at 9:14 AM
夢詣/雨宮酔

誰もが一度は経験する「夢を見る」こと。不穏の種を植え付けた夢の増殖が伝播していく過程。抑制された文章から伝わる恐怖の熱量は、読者の心をしなやかに蝕んでいく。夢の描写が映像的で、想像力を掻き立てる。
October 25, 2025 at 7:47 AM
とんこつQ&A/今村夏子

日常の風景から生み出された、人間関係の微妙なズレを描いた4作の短編集。常識という枠組みと個人の認識がどのようにズレるのか。居心地の悪さを生み出しているのか。そのズレは、自分を省みる鏡でもある。読んでいるあいだの違和感を通じて、奇妙なおかしみを感じる。
October 24, 2025 at 9:12 PM
遠い水平線/アントニオ・タブッキ

名も無き死者の名を追いながら、死者と生者との哲学の先へと連れていく。過去に置いてきた、自分の核との出会いと気付き。死者と生者が永遠に交わることの無い境界線の向こう側。その暗闇にひた走る先は、暗闇ではないのかもしれない。孤独とは、対話である。

これはミステリーと見せかけた、とても哲学的な小説だ。あくまでもわたしが感じたことを書いているので、読む人によって多様な理解が出てくる作品だと思う。何が正解かは分からない。でも、どれも間違っていない。
October 20, 2025 at 1:28 PM
香水/パトリック・ジュースキント
超人的な嗅覚を持つ主人公。自身は無臭であることが、常識や感覚の欠如を表しているのではと感じた。倫理観の欠如がもたらす孤独感。それに気付いていないことの怖さ。18世紀のパリの華やかさと腐臭の狭間で狂気にまみれ、香りに取り込まれ、読む者を狂気へと導く。
October 18, 2025 at 9:02 AM
スは宇宙のス/レイ・ブラッドベリ

しなやかな機微を駆け抜ける、強さと優しさ。子供の目で見える宇宙や不思議な世界は、怖くて愛おしい。忘れてしまっていたあの楽しさにもう一度会える短編集。SFと幻想が織り成す、ブラッドベリの目線が好きだ。「ぼくの地下室においで」の不気味さに心を奪われた。
October 18, 2025 at 12:36 AM
透明な夜の香り/千早茜(集英社文庫)

香りの記憶。匂いのささやき。心をざわつかせる、あてのない旅。遠く閉じ込めた記憶を連れて。研ぎ澄まされた感性が感じ取る人間の心理。薫りは、白と黒の全てが見える。文章から立ち昇る香りが語る一人ひとりの物語は、静謐で美しく、怖い。
October 16, 2025 at 11:32 PM
ソフィー/ガイ・バート

今にも破裂しそうな沈黙の中で、重く垂れ込めていく空気。たくさんの思い出は、姉と弟ふたりだけの記憶であり記録であり。握りしめた大切な鍵の使い道。無垢なる残酷さは歪みを湛え、崩壊の時を待ち続け。不穏を抱える無駄のない文章が、沈黙のラストを引き立てる。
October 13, 2025 at 9:21 AM
ゾティーク幻妖怪異譚/クラーク・アシュトン・スミス

遠い未来の幻視。退廃渦巻く常世の国ゾティーク。大いなる力に祈りを捧げ、星読む夕べの神秘と戦慄。瞬きのように時は過ぎ行く、その時まで。陰謀、魔法、争いの国を、人々は彷徨う。
17の物語は、一話一話が濃密で、短篇とは思えない深い余韻。
October 12, 2025 at 11:12 PM
バビロン行きの夜行列車/レイ・ブラッドベリ

見えないものを見ようとすること。心を揺さぶる冒険の解放は、寄る辺ない切なさの夜を連れてくる。各駅停車の幻想の夜をひた走る、ブラックでユーモラスな視点。読後は不思議な余韻に浸っていた。ブラッドベリにしか書けない妙技の短編集。
October 11, 2025 at 11:39 AM
ジャーナリングノートを書き始めた。
仕事が忙しく慌ただしい中で、どうしても理不尽な怒りをぶつけられたりすることがあり。仕方ないとはいえ、なんとなくモヤモヤと消化しきれないことが増えてきた。基本的に受け流すようにしているが、
①何故?
②自分なりの対策
を書き出すことによって、次に同じことがあった時の心構えや対処が即座に出来るようになった。しばらく続けようと思う。
October 11, 2025 at 9:14 AM
気だるい詩的な語り口。芸術家としてのマインドが根底にあり、揺らぐ現実の足元。現れては消えてゆく。知人たちの声。消火されず、くすぶり続ける芸術の炎。軌跡はゆらりと震えながら。
October 11, 2025 at 3:32 AM
光のとこにいてね/一穂ミチ

痛いほどの優しさに、夢を見るように生きていた日々がある。誰しも光があたるやわらかい場所があって。古びた団地で出会った私たち。歩幅が違っていたけれど、ちゃんと出会う人はいてくれた。ありがとう。救いのひかりはあたたかい。手の温もりをいつまでも。
October 7, 2025 at 1:40 PM
アルゴールの城にて/ジュリアン・グラック

絵画のような情景描写に囚われる。物語の不確率な曖昧さの微熱に立ち止まり。灰色のモノローグが時を歩む。沈黙の中に閉ざされた、多くの言葉たち。名も無きざわめき。熱のない淡々とした時間。
October 5, 2025 at 12:29 AM
秘儀/マリアーナ・エンリケス

背中の大きさで、色んな道を示してくれた、守るべき墓標の偉大さ。権力と金が蠢く亡者との対話の虚無感。大きすぎれば腹は減り、貪る力も大きくなる。閉ざされた世界の道は一方へ続き。目を閉じれば風を感じる。鍵の使い道。その選択肢は多様なる坩堝。
October 4, 2025 at 1:27 PM
スウェーデンの騎士/レオ・ペルッツ

数奇な運命が交差する。分岐点に降り立つ若者が選んだ、愛の裁き。小さな慈しみの、気高き祈り。運命は再び、別れ道。無垢な願いは父への愛。愛ゆえに、翻弄され、巡って行く。
September 28, 2025 at 9:29 AM
白い果実/ジェフリー・フォード

倒立する世界のきざはしで、貪る甘い夢の声。駆け巡る美酒に酔いしれた男は、上を仰ぎ飢え続け、膿んで滴り落ちてゆく。破裂せんばかりの欲望は歯止めを知らず。異分子たちのせめぎあい。聞け。万人声を。歌え。高らかに。
September 28, 2025 at 4:12 AM
椿實全作品

ムーランの煌々とした灯りに照らされる浅草。ぬらぬらと纏う妖し原始の静寂。玻璃に閉ざされた白々と冴える花、華、芭。暗転とひかりのせめぎあい。乾いた唇を潤す天井の雫。退廃的な香りに包まれた、古くて新しい扉の向こう側。
September 27, 2025 at 8:26 AM
MONKEY/オーイン・マクナミーという謎

魂というほど高尚ではないが、人間は弱くは無いのだ。流れ星が指差す天の国。内側に抱え込む傷口はじくじくと疼く痛みを抱え、それでも生きて歩く先にある燃える白い気高さは、暴力をまとい、上昇する。

一話一話が濃厚で、ざわりとしたザラつきが残る。美しさの欠片が眠る原石のような、重いけれどクセになる短編集。
September 26, 2025 at 1:08 PM