読書録
読書録
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犯罪、また一般の人の心にも棲んでいる心理の小さな闇についても触れられており、様々な知識を得られ知識欲が満たされた。
公平さは欠いてはいないものの、ほとんどの犯罪において加害者の多くが男性で占められている点にも触れられており、今後はこの点が社会課題になるであろうと思われる。
ただ一部気になった点があり、それは「女性の犯罪は(マスコミ等に)寛容に迎えられるため男性の犯罪率が高くなる」との言及である。前後の文の論理的整合性が合っていないのみならず、昨今(加害者複数の場合に男性が圧倒的に多くとも少数の女性の方がピックアップされるという)報道の「男消し」が話題になっているので如何なものであろうか。
一昨日読んだ本
『面白いほどよくわかる!犯罪心理学』内山絢子監修、西東社
近年「犯罪心理学」という単語を聞くことが増えたものの、実際はどんなことを研究しているのかなどなど、知らないことだらけで興味を持ったため手に取った。その後でタイトルとイラストのフランクさから「実際の研究から離れた大衆迎合的な内容だったらどうしよう?」と心配になったが杞憂であった。また同時に、以前、警察官が職務質問の対象とする人の基準には明確な差別があると聞いたことがあったので、同様に差別的な内容であったらという不安もあったが、全体的には偏りはほぼなく公平な研究判断が行われていた。
先日読んだ本
『杜甫詩選』黒田洋一編、岩波文庫
400p近いボリュームがあり、また(だからこそ知識を求めて読んだのだが)漢詩の知識などがなく面白さがいまいちわからなかったため、読み始めてから読了までに3日を要してしまった。漢詩の面白さはわからず、教養としても身につかないままではあったが、杜甫の詩の巧みさ、完成度は無知の身にもひしひしと伝わってきた。
驚いた点は、当時の社会(政治)への批判の詩が少なくなかったことである。杜甫は罪のある廷臣を庇ったことを咎められているが、こういった批判は許されていたのであろうか。
個人的に好きだった詩は後半の、自然を詠んだもの。杜甫の卓越した描写力がわかる。
先日読んだ本
『サンショウウオの四十九日』朝比奈秋、新潮社
とある特殊な事情を持つ一卵性双生児が、これまた特殊な出生の伯父の訃報を受け、四十九日を迎えるまでを描いた物語。
序盤で話に出てくる人間の数とその場にいる人間の数とが合わず、また視点が頻繁に入れ替わっていたため困惑したが、焦らすことなく二人の事情が描かれたため比較的ストレスは少なく済んだ。
タイトルは作中に描かれるモチーフからのもの。自らを陰と陽になぞらえて考えるシーンは面白かった。全体としてはぼんやりとした感触のまま終わってしまったのが残念。
最近読んだ本
『罪と罰』第一巻〜第三巻 ドストエフスキー、岩波文庫
主人公·ラスコーリニコフが、貸金業の老齢女性とその妹のリザヴェーダを手にかけ、自らの才覚への失望と罰とに怯えながら暮らすさまを描いた作品。第一巻第二巻とも、読者はラスコーリニコフの視点に立たされて「自らの罪がよそにバレているのかいないのか」という点でハラハラさせられはするもののあまり大きく話が動くことはなく、面白さがいまいちわからなかった上、内容が内容だけに「これは文学なのか?」という疑念も生じたものの、第三巻の終章、さらにその最後の数ページで劇的に話が動き、「なるほどこれは確かに文学かもしれない」と納得させられた。
先日読んだ本
『文豪どうかしてる逸話集』進士素丸、KADOKAWA
以下ブクログと同文
タイトル通り、高名な文豪たちの面白エピソードを集めた1冊。エピソードとともにその人物の代表作2〜3作品程度も紹介されており、そのあらすじがユーモラスに書かれていたため、これまであまり興味の持てなかった作家(の作品)でも、「これ気になる」「読んでみたい」と思わされたので、文豪や古典作品にあまり興味が持てないという人にもおすすめできる1冊かもしれない。
個人的には志賀直哉の「骨董品を買いに行く」話と内田百閒の「錬金術」のエピソードが特に面白かった。
立ち回るのが正解であるのか、非常に難しいテーマであると感じた。
いえあっさりとその会話の記憶を失って自らで決めたものと思い込んで、最も対話すべき存在であるはずの自らの子供たちとの交流の時間すら失ってまでもけちけちと時間を「倹約」し、子供たちからも自由な時間を取り上げ、何も気付かないままにモモに戦いを強いてまた気付かぬままに救われ、それを認識することもないのであろう大人たちの様子が大変情けなく感じられる。子供の時分に読んでいればモモに共感しながら読み進めることができたのだろうか。
また私は現在比較的自由に時間を使える立場にあり、当作品を読みながら自らの幸福さを再確認させられたが、一方時間に追い立てられている人々も生活のためという部分が大きいであろうから、どう
今日読んだ本
『モモ』ミヒャエル・エンデ、大島かおり訳、岩波書店
言わずと知れた名作であるが、何だかんだと今まで縁がなかったものの近年度々随所でおすすめ本として挙げられていたため、この機会に読んでみることにした。
時間を「倹約」しているつもりで時間泥棒に時間を奪われる大人、それに巻き込まれていく子どもたちを救うため、モモが一人立ち向かい世界を救うまでの話。
前評判通り現代社会への鋭い批判が織り込まれており、児童文学に属する作品でありながら、大人の身でも読み応えが感じられた。しかしながら大人の身で読むと、時間貯蓄銀行の外交員と名乗る怪しげな男たちにまんまと乗せられ、そういう仕組みになっているとは
人生の悲哀を描くが虚無や深い嘆きに陥ることはない、チェーホフの筆致の見事さがここにも現れており、短く読みやすいながらもエッセンスの詰まった作品群であると言えよう。チェーホフに初めて触れる人におすすめの作品である。
今日読んだ本
『可愛い女 犬を連れた奥さん』チェーホフ、神西清訳、岩波文庫
国内で翻訳出版されているチェーホフの本は読み尽くしたと思っており、この本も読んだつもりでいたが、いずれの作品にも既視感がなかったので初読であったかもしれない。
お互いに別の伴侶を持ちながら運命的に惹かれ合う男女を描いた「犬を連れた奥さん」、お互いに魅力を感じながらもそのタイミングの噛み合わない男女を描く「ヨーヌィチ」、伴侶を次々と亡くし、その度に別の相手に惹かれ影響され、知人の子供を見守る立場に落ち着く「可愛い女」を収録。
いずれも様々な人生とその悲哀を描いているが、どこかユーモラスであり喜劇的なものも感じる。
いわゆる「ネトウヨ」の言うような「日本の伝統」はむしろそれらのより古い伝統を無視し踏みつけるものでありそぐわないなどと批判しており安心ができた。
対談の中で筆者は「哲学者は易しい言葉で話すべき」とした持論も展開しており、そのせいであろうか、本書は徹頭徹尾読みやすくわかりやすかった。
先日読んだ本
『日本の伝統とは何か』梅原猛、ミネルヴァ書房
以下ブクログと同文

日本の復帰すべき「伝統」について論じた(複数の講演内容をまとめ巻末に対談も付け加えられた)1冊。
学生時代に梅原猛の評判をよく耳にしていたが、意識して読んだことがなかったため気になり手に取った。
タイトルから、(前評判から安全であろうとは思われたが)「ネトウヨ」と呼ばれる人々がよく口にするような「古き良き日本」評が飛び出すのではないかと不安も感じていたが、決してそのような内容はなく、日本の仏教特有の「草木国土悉皆成仏」の考え方に基づき、生命の循環を重視した、今で言うところの持続可能性に着目して述べており、
個人的には本書が出版されて(2017年)からの物価高騰がハッキリと分かり切なくもなった。いちごが1パック200円以下で手に入ることはもう無いであろう……それを思えば表題の「1ヶ月食費2万円」も怪しくなってしまうのだが、ともあれ、近年においても旬野菜は比較的安価で栄養が豊富であるため、節約に、野菜を摂るために、参考にできる1冊ではあろう。
今日読んだ本
『おひとりさまのあったか1ヶ月食費2万円生活 四季の野菜レシピ』
おづまりこ、KADOKAWA
表題の通り、四季折々の野菜を使い健康的かつ安価なレシピを紹介している。自分は購入するのでないレシピ本からは、食材どうし、または食材と調味料の新たな組み合わせパターンを求めて読むのだが、その意味では本書からは得られるものがあまりなかった。目新しかったのは大根+トマト缶→カレーの流れくらいであろうか。とはいえ全ページ作者のやさしい絵柄で漫画で表現されており親しみやすく、料理の初心者でもハードルが低いのではないだろうか。
本書の内容密度に対して読後異常な疲労感があった。
一方、
・人間にはヘビを警戒する機構がある
・カマキリにおけるハリガネムシと同様、人間の行動(心理)をあやつる寄生虫も存在する
・鉄分を過剰に吸収させる(結果として循環器の不調をきたし早死させる)遺伝子が存在する
などの知識と、人間にはなぜ思い込みが存在するのか(なぜ思い込んでしまうのか)に関しての知見が得られたのは収穫であったと感じる。
著者は本書を書いている現在学長に推されているとのことでもあり、本書を鑑みても文章能力を磨いてほしいと切に願う。
今日読んだ本
『モフモフはなぜ可愛いのか』小林朋道、新潮新書
表題を含め、第三者(Twitterフォロワー?)から寄せられた、「人間」という生物に関する様々な問いに、動物行動学/進化心理学の研究者である著者が答える1冊。
著者いわく「動物行動学の基本であるから」とのことだが、全ての問いに対して「その方が自分(の遺伝子)の生存繁殖に有利になるから」という結論で結ばれており、そこに至るまでの推論も、研究者でなくとも想像がつく仮説やネット上に転がっている程度の知識がほとんどであまり面白いと思える部分がなく落胆した。
文章も(おそらく後書きで語っていることが祟っているのであろう)読みにくく、
筆者は哲学者ではないが、本書に書かれる内容は哲学的示唆を含み合理的であり、恐らくは心理学という隣接的テーマを研究領域とし、また実際にカウンセラーとしてクライエントの心理に触れる中で得られた知見に基づいているのだろう。
筆者が「認知の歪みを取り払った後に触れるべき思想(作品)の条件」として挙げるものから本書は外れてはいるものの、充分に合理的かつ日々への警句を含むものであり、将来(の自身の精神や立ち居振る舞い)を案じる者、また逆に全く不安を感じていない者にも読まれるべき良書であると感じる。
昨日読んだ本
『狂気へのグラデーション』稲垣智則、東海大学出版部
筆者が「自らの中にある狂気を忘れないように」認めた手記をまとめたもの。地元図書館ではエッセイ等の棚に置かれていたが内容としては現代哲学といって差し支えないように思う。読み始める前の期待として、フーコーなどに触れ狂気と正気の狭間について論じられるものかと思ったが、実際にはそういった哲学的な「狂気」の話ではなく、どちらかと言えば近年ネットに頻出する「𓏸𓏸歳までに××しないと(あるいは年齢については触れられずただ××しないと、として書かれることもある)狂う」といった言説に現れる「狂い」への対抗であるように思われ、より身近に感じられる。
昨日読んだ本
『民俗の原風景 埼玉 イエのまつり·ムラの祭り』大舘勝治、朝日新聞社
たまたま書棚で目にし、面白そうだったので手に取った。
埼玉県内の民俗行事を調べ民俗学的考察を加えた上でまとめている。取り上げられる祭りはどれも埼玉県内のものだが、ねぷたなど県外に関連する行事等がある場合はそれにも触れられている。
ことさらに特別な単語などが使われることは少なく、全体としては民俗学に明るくなくともわかりやすく読みやすかった。一方やはり専門用語も皆無というわけではなく、巻末に用語解説があるがこれは巻頭にあった方が良いのではないかと感じる。
個人的には田の神去来信仰という概念を初めて知り楽しく読めた。
それがまた独特の面白さ親しみやすさを作り出してはいるが、テンポが悪く読むのにやや骨を折る原因にもなっている感がある。
全体としては読みやすくわかりやすく親しみやすく、民俗学に興味を持っているが取っ掛りが掴めない人、日本の神々に興味のある人、民俗学を学んでいたがブランクのある人にもオススメの1冊である。
今日読んだ本『笑う神さま図鑑』川副秀樹、言視舎
日本各地のユニークな神(仏を含む)さまを集めている。載っている神(/仏)はいずれも独特でありながら親しみやすく、かといって過度に下品な好奇心に基づく話などもなく、読みやすくわかりやすかった。軽い読み物のつもりで手に取ったが、庚申像や道祖神、石神、地蔵や稲荷に大口真神などと民俗学において主として取り上げられる神々を網羅しており、部分的にではあるが大学民俗学の復習が楽しくできた。
写真がモノクロであるのと、上手くモノクロへの変換編集がされておらず何が映っているのかわからないものが多かった点だけ残念。また各項目に3回程度は筆者のセルフツッコミがあり、
意見を深めており、非常に論理的合理的であった。
一点だけ批判するならば、筆者は「憲法九条は自衛権についての言及がなくわかりにくいので、自衛権の有無、有るならばその発動条件についてしっかり書くべきであり、その意味で改憲が必要である」と書いているが、改憲となれば現行憲法では都合の悪い部分を政治家に取って都合の良いように変えられる可能性が非常に高く、危険であると思われ賛同できない。
全体として難しい単語やわかりにくい言い回しや文構造などがなく、読みやすくわかりやすかった。
昨日読んだ本
『戦争倫理学』加藤尚武、ちくま新書
パレスチナ侵攻、ウクライナ侵攻など、世界各地で未だ絶えない戦争の数々を、もっと高解像度で理解したく読んだ。
目次の時点で小林よしのりを引用していることがわかり、筆者の意見、引いては本書全体の信頼性について危惧したが、読み進めてみると小林よしのりの述懐に強く批判的な立場を取っていたのでそれ以降は安心して読めた。
戦争(武力行使)容認派、無差別主義、憲法九条反対派、いわゆるネトウヨ……といった人々からは受け入れられないであろうが、国際法·国連憲章·国際条約·憲法、また知識人の著述など、人文学的な知を集積し、また実際の紛争からもそれらを見つめ直して