すわぞ
banner
suwazo.bsky.social
すわぞ
@suwazo.bsky.social
140字小説を書きます。『再掲』と付いてるものは、X(Twitter)でも前にポストしたものです。
X、mixi2、タイッツー等もIDは同じsuwazoです。
Pinned
吸血鬼と人間シリーズはこちらからどうぞ
吸血鬼「日本、なんか川の数多くない? 行動範囲めっちゃ狭いんだけど」
人間「故郷に帰れよ」

#吸血鬼と人間
陸地がすべて海に沈むことはなかったが、地上は殆どひたひたになってしまった。うっすらと水にひたっているのだ。もう人々はみな長靴か開き直って裸足で暮らしている。大地を包む薄い水の膜が夕焼けや月や星の光を反射する様は、あまりに美しくて、滅びゆく人類への餞のようである。
#140字小説
再掲です
December 6, 2025 at 10:21 AM
登山で足を滑らせて谷底へ落ちた。そこにたまたま人魚がいた。何万年か昔、ここが海だった頃に取り残されて石になって眠っていたのを、俺の出血を浴びて目覚めたのだ。「さっさと歩け」人魚の血を与えられて不死になった俺の最初の仕事は、彼(男だった)をおぶって海を目指すことだった。
#140字小説
December 6, 2025 at 5:36 AM
歌うゾンビを見たことがある、と彼は言った。森でさ。こっちを見もしないで、口からヒューヒュー音がしてて、それが歌だって気づいた。よっぽど歌が好きだったのかと思ったけどそうじゃなかった。それは子守唄だった。傍に鍵のついた木箱があって、中に弱った赤ん坊が入ってた。お前が。
#140字小説
再掲です
December 5, 2025 at 10:13 AM
天才は生まれつき神様からアプローチされてて、秀才や努力家はこっちから神様にアプローチしてると言えるんではないかな
December 5, 2025 at 8:51 AM
「お兄さん、この切符じゃ月までしか行けないよ」「ああ」「月には何にもないよ。中継駅しか。この切符じゃ火星にもフォーマルハウトにも行けないよ」「いいんだ」その客はその後もよく訪れ、月に行っては戻ってきた。聞いた話では、いつも中継駅の静かな待合室で本を読んでいるそうだ。
#140字小説
再掲です
December 4, 2025 at 9:46 PM
彼は幻想作家だった。彼の紡ぐ妖精の物語は人々を魅了した。もしかして本当に妖精を見たことがあるの? 問われると彼は「いや、僕は本物の妖精をこの目で見たことはないよ」と微笑む。むしろ君達こそ妖精を見てるんだよ。それは本当だった。彼こそが妖精の最後のひとりだったのだ。
#140字小説
再掲です
December 2, 2025 at 11:58 AM
幼い頃、不思議な友達がいた。空を飛んだり雷を落としたりできるのだ。今にして思うと、私があの子と遊ぶのをよく母は止めなかったものだ。「ママ! 友達ができたよ!」ある日、幼い娘が友達を連れて帰ってきて、わかった。優しい子だとよく知っていたからだ。かつて自分が友達だったから。
#140字小説
再掲です
December 1, 2025 at 9:54 AM
「先生、あの屋敷が壊されるそうですよ。先生が昔、連続殺人事件を解決された」「そんなこともあったな」「僕が助手になる前の事件ですよね。結局、一族みな絶えた」「いや、令嬢だけ生き残った。今は眠り姫だが」「眠り姫?」助手は首をかしげる。自分を僕と呼ぶ、全てを忘れた眠り姫が。
#140字小説
再掲です
November 30, 2025 at 10:05 AM
人間になりたい人魚姫は、浜辺に住む魔女の元を訪れました。「そりゃ簡単さ」と魔女。魔女の家にはちょうど人魚になりたい人間の娘も訪れていたのです。「下半身を交換すればいい」勿論そんな必要はありませんでした。二人は顔を見合わせて笑います。あなたと友達になりたかったの。
#140字小説
再掲です
November 29, 2025 at 10:15 AM
緑化は髪からはじまる。頭、顔、首と、体の上から下へどんどん侵食していく。「どうしてだと思う?」緑化を発病した隣家のお姉さんは言った。もう胸から上は緑色の葉だか蔓だかに包まれていた。「好きな場所に根をおろすためだよ。そこに歩いてゆくために」翌日、お姉さんは消えた。
#140字小説
再掲です
November 28, 2025 at 10:57 AM
「この鱗だけどうして色が違うの?」ヒトの子供の無邪気な問いに、老ドラゴンは「さてな」と笑う。まだ若かった頃、恋したヒトの女のために一枚剥いだのだ。削って粉にすれば難病を治す薬になるから。結局失恋したけれど、そのかわり女の子孫は何世代もに渡ってドラゴンの良き友となった。
#140字小説
再掲です
November 27, 2025 at 10:16 AM
引っ越し先の隣家の婦人の話では、森の奥の屋敷には『自分を吸血鬼だと思い込んでる』男が住んでいるのだそうだ。「でもいい人なのよ」と。後日屋敷を訪ねて伝えた。「君は自分を吸血鬼だと思い込んでる憐れな男らしいよ」「それでいいのさ。平和が一番」吸血鬼である友人は平然と答えた。
#140字小説
再掲です
November 26, 2025 at 10:10 AM
森で拾ったチビ竜は魔法をかけられた記憶喪失の人間だった。ふたりで旅してやっと魔法を解いたのに、元チビ竜は隠れたまま。「どうしたんだよ、人間に戻ったら俺の嫁にしてくれって言ってたろ」「なれないよ」やっと出てきたのは泣きっ面の青年だった。「じゃあ俺が嫁になればいいのか?」
#140字小説
再掲です
November 25, 2025 at 10:04 AM
うっかり怪我をして情けなくも人間に拾われてしまった。「儂は神に仕える神狐じゃぞ。大事にすれば神から褒美が貰えるぞ」と言いつつ、欲深な態度を見せればバチを当ててやろうと思っていた。なのに怪我が治った頃、「ご褒美にまた私に会いに来てよ」などと寂しげにほざく。これは参った。
#140字小説
再掲です
November 24, 2025 at 10:08 AM
久しぶりに図書館に通うようになって気づいた。幾人もいる司書の顔ぶれが毎回違う。なのに皆どこか懐かしい感じがする。「実はね」長身の司書が囁いた。「ここも予算がなくてね。自分たちで自分たちの世話をすることにしたのですよ」あなたは、僕が子供のころ憧れたあの本の中の……
#140字小説
再掲です
November 22, 2025 at 10:58 AM
魔王城にたどりつく。魔王はかつての幼馴染だった。こんなに憎まれていたとは思わなかった。「貴方様をお待ちしておりました」魔王は勇者に跪いて自害したのだ。「この城も魔物もすべて貴方様のもの。貴方様のために用意しました」陥れられた。仲間たちが、裏切り者を見る目で勇者を見る。
#140字小説
November 21, 2025 at 11:51 PM
「おれは我が民すべてをたばかると決めたのだ。それこそが民を守る唯一の方法ゆえに」即位した若き王は言った。「だから私を選ばれたのですね?」妃が問う。「共犯として」「共犯として」美しい夫婦だった。女の身で甲冑をまとった王と、男の身でドレスを着た妃と。明日を勝ちとるために。
#140字小説
再掲です
November 21, 2025 at 10:45 AM
「私はモッタイナイオバケだよ」とその幽霊は言った。「昔そこにあった家に嫁いできた。でもじき悪い病にかかった。家の者は皆もったいないもったいないと言って、死ぬ間際まで私をこき使った。雑巾みたいにぼろぼろになるまで使われ尽くした。だから私はモッタイナイって言葉が嫌い」
#140字小説
November 20, 2025 at 11:21 AM
月の夜、囚人達が大勢で大脱走した。鉄柵を乗り越え、一斉に同じ方向へ駆けていった。勿論すぐに一人また一人と捕らえられる。「なぜこんな無謀なことを?」警官の疑問は、最後の逃亡者の目的地で解けた。病院。あした大手術の娘に一目会いたい彼のために、仲間が体を張ったのだ。
#140字小説
再掲です
November 20, 2025 at 11:10 AM
昔ペテン師として死んだ男の名を言うと、妖精は顔をしかめた。「あの大嘘つきね」「やっぱり。あいつが妖精に会ったというのは嘘だったんだ」いいえ、と妖精は続けた。「彼の嘘は、後になって『妖精に会ったのは嘘だ』と言ったことよ。私たちを守ろうなんて思わなくてもよかったのに……」
#140字小説
再掲です
November 19, 2025 at 10:44 AM
ある朝とつぜんバス停が人間になっていた。「次のバスは15分後ですよ」物腰の柔らかな老紳士である。雨の日も晴れの日も24時間同じ場所に立っている。雨の朝、思わず傘をさしかけたら「バス停ですから必要ありませんよ。でもありがとう」と微笑まれた。笑い皺がキュートだった。
#140字小説
再掲です
November 18, 2025 at 11:09 AM
悪い姫様は喋ると口から大蛙が出る呪いをかけられ城を追い出されました。今は孤児達のねぐらに世話になっています。「一体何したの?」「こっそり勉強したら怒られたの。女の癖にと」姫様が語るとやっぱり蛙が飛び出ます。孤児達は大喜び。蛙は貴重な食糧で、しかも意外と美味しいのです。
#140字小説
再掲です
November 17, 2025 at 10:56 AM
浜辺で瓶詰めの悪魔を拾った。「出してくれたら願いを何でも叶えてやるよ」「悪魔なんぞ信用できるか。先に願いを叶えろ」「瓶の中にいる限り俺は力を使えないんだよ」俺は瓶詰め悪魔をねぐらへ持ち帰った。話し相手に飢えていたのだ。この無人島にもいつかは救助が来るだろう。それまで。
#140字小説
November 17, 2025 at 10:24 AM
「彼女の生まれた星は地球ほど豊かではなくて、同族同士で捕食しあうような所なんです。だから愛情表現も違うんです。抱きしめたりキスなんかしたら彼女は恐怖で錯乱しますよ」「じゃあどうすれば? 彼女の星の愛情表現は?」「歌うんです。遠く離れたところから。優しく冷静に」
#140字小説
再掲です
November 16, 2025 at 11:21 AM
「魔法なんて非科学的なものは信じませんよ」プンプン怒りながらロボット執事が言う。「貴方はロボットだものねえ」老婦人が微笑む。「でもあなたがそうして怒ったりするようになったのはやっぱりお隣の魔法使いに魔法をかけられてからよ」「友達になっただけです」「友達になる魔法をね」
#140字小説
再掲です
November 15, 2025 at 10:34 AM