田中宏明
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田中宏明
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ライター。好きなものは映画、音楽、頭脳警察、PANTA、伊藤蘭、フォルティウス(カーリング)。
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「ハード・トゥルース 母の日に願うこと」鑑賞。
イギリスの名匠マイク・リー監督の作品。
主人公のパンジーはひたすら不機嫌で文句ばかり言っている。家族の行動にもケチをつけるし、買い物に訪れた店やクリニックでも文句を言う。あまりに文句ばかり言うので不快なのを通り越して、笑ってしまうぐらいだ。
後半、彼女は自らの胸の内をぶちまけるが、明確な不機嫌の原因が明らかになるわけではない。最後も余白を残し観客の想像力に委ねる。カタルシスを望む観客に受けるような映画ではないが、人間や家族などについて深い問いを投げかけた作品なのは確かだ。
主演のマリアンヌ・ジャン=バプティストの演技が見事。
「ひとつの机、ふたつの制服」鑑賞。
台湾映画。1990年代、名門高校の夜間部に入学した女子生徒が、同じ机を共有する全日制の優秀な女子生徒と交流するドラマ。主人公のコンプレックスを背景に、友情、恋愛、そして成長を生き生きとテンポよく描く。
2人が同じ男の子を好きになるところなどありがちな話ではあるが、90年代のアイテムと学校内のヒエラルキーを巧みにドラマに織り込むことにより、魅力的なドラマに仕上げている。はるか昔に高校生だった身としてはノスタルジックで胸にグッとくるシーンも多い。
主役のチェン・イェンフェイ、共演のシャン・ジエルー、2人が恋する男子校生役のチウ・イータイがいずれも良い演技を披露。
「恋に至る病」鑑賞(昨日)。
斜線堂有紀の小説を廣木隆一監督が映画化。
内気で友人のいない男子高校生の宮嶺が、転校先の高校でクラスの人気者の女子・景と仲良くなるが、2人の周りで同級生の不審死があり、疑念が膨らんでいく。
序盤はピュアなラブストーリー風。それが次第にサスペンス的な雰囲気を帯びてくる。景は宮嶺にとってファムファタール。そこには悪女の様相も垣間見れる。彼女に翻弄されて、それでも心酔する宮嶺の姿は恐ろしくもある。
長尾謙杜と山田杏奈が好演。特に山田の得体の知れなさが目を引いた。
脚本に原作モノにありがちな消化不良の部分はあるが、風変わりなラブストーリーとして、なかなか面白い作品。
「ミーツ・ザ・ワールド」鑑賞。
金原ひとみの原作を松居大悟監督が映画化。
二次元の世界を愛する孤独な27歳の主人公が、新宿・歌舞伎町でキャバクラ嬢と出会い、違う世界を知って変わっていくドラマ。
対照的な2人が親しくなりルームシェアをする様子をコミカルに描写。推しについて速射砲のように話す杉咲花と、言葉少なながら厳しいことをズバリと言う南琴奈の演技が出色。周辺の人々もみんないい味を出している。後半はキャバ嬢の過去を巡って急展開するが、ラストは主人公に希望の灯をともして終わる。
ある種のファンタジー的な世界とも言えるが、それがこの映画の独特の魅力になっている。スタンダードサイズの映像も効果的。
「愚か者の身分」鑑賞。
西尾潤の同名小説を永田琴監督が映画化。脚本は向井康介。
半グレ集団で闇ビジネスをする3人の若者たちが、そこから抜け出そうと苦闘するドラマ。3人それぞれの視点からドラマを綴り、闇ビジネスの手口や事件の行方とともに、彼らが闇ビジネスに手を出す背景にある貧困、虐待などの問題をあぶり出す。
中盤以降は組織からの脱出に焦点を絞り、スリリングなドラマを展開。ド派手なアクションシーンも用意するなどエンタメ性も重視する。ラストはやや尻切れトンボの感があるが、総じてヤクザ映画の進化系として興味深い作品。何より北村匠海、林裕太、綾野剛の3人のキャスティングが秀逸。
「見はらし世代」鑑賞。
短編「遠くへいきたいわ」で注目された団塚唯我監督の長編デビュー作。カンヌ国際映画祭監督週間に選出。
姉と弟が、母を亡くして以来疎遠になっていたランドスケープデザイナーの父親と再会する家族ドラマ。3人の複雑な胸中をリアルかつ繊細にセリフに頼らずに描き出していく。同時に背景となる渋谷の街の再開発を描き、街の変化と家族の変化をリンクさせる。終盤はアッと驚く大胆な仕掛けを施し、独特の余韻を残す。粗削りなところもあるが団塚監督の才気を感じさせる作品。主演の黒崎煌代をはじめ、遠藤憲一、井川遥、木竜麻生らの演技も素晴らしい。
「ソーゾク」鑑賞。
高齢の母親の死をきっかけに勃発した遺産相続の騒動を描く。監督は「ケアニン」シリーズの脚本を手掛けた藤村磨実也。
仲が良かった長女、次女、弟夫婦の関係が遺産を巡るトラブルで次第に険悪に。それに死んだ長男の未亡人も加わって、さらに混乱が深まる。
ベタな話とも言えるが、相続の基本知識をしっかり押さえたハウツー映画の要素もあり、ユーモラスなタッチで綴られるので飽きることはない。
大塚寧々、中山忍、松本明子、有森也実ら芸達者揃いのキャストも魅力。単なるハッピーエンドで終わらないラストもいい。相続を身近に経験した人なら、身につまされそうな作品。
「おーい、応為」鑑賞。
葛飾北斎の娘、葛飾応為(お栄)の人生を大森立嗣監督が描く。
冒頭、いきなり夫の絵を見下し啖呵を切って離縁されるお栄。北斎のもとに戻っても父娘で罵り合う。だが、その反面、恋心を抱えた少女のような面も見せる。そんな多面的な彼女の姿がセリフ以外の部分でも巧みに表現される。
ひたすら絵に執着した北斎と、同じように絵に魅入られたお栄の生き様はまさに似た者同士。その内面を的確に表現した長澤まさみと永瀬正敏の演技が圧巻。たくましい生命力を感じさせる作品。
「夏の終わりのクラシック」鑑賞。
「冬のソナタ」のユン・ソクホ監督の映画。済州島の海辺の町で出会った中年の男女のドラマ。
恋愛映画的な要素はあるものの、むしろ過去の傷に苦しむ女性の生き直しのドラマといった感が強い。
話自体にさして新味はないけれど、主人公の過去に関係のあるクラシック音楽が効果的に使われるとともに、海辺の町の美しい風景を捉えた映像も魅力的で、なかなか良い作品に仕上がっている。
ふだんは明るくしゃべり倒すが、その裏で過去の傷に苦しむ女性をキム・ジヨンが好演。
「ホーリー・カウ」鑑賞。
チーズ職人だった父の突然の死によって、幼い妹とともに残された青年が、チーズ・コンテストの賞金目当てにチーズ作りに奮闘する。
よくある成長物語とはひと味違うドラマ。新人のルイーズ・クルヴォワジエ監督が、過剰な盛り上げや感情を刺激する場面をあえて排し、農村の暮らしを圧倒的にリアルに描く。牛の出産シーンや妹と2人だけのチーズ作りのシーンなどが素晴らしく、主人公をはじめ農村の人々のたくましさが伝わってくる。驚くべきことに演じているのは地元の演技未経験者たちだという。
シンプルな作りの小品ながら中身の濃い映画。フランスで大ヒットを記録したというのも納得。
「ジュリーは沈黙したままで」鑑賞。
同じテニスクラブに所属する選手が自殺し、自分の担当コーチが指導停止になって動揺する15歳の少女のドラマ。
タイトル通りに沈黙を続ける主人公に焦点を当てて日常を淡々と映す。そこからは主人公の揺れ動く心の内がリアルに伝わってくるのと同時に、不穏で緊張感にあふれた空気感が漂う。レオナルド・ヴァン・デイル監督の筆致には、共同プロデューサーを務めたダルデンヌ兄弟とも似たものを感じさせる。
主人公を演じたのは、新人のテッサ・ヴァン・デン・ブルック。テニス選手としても活躍しているそうで、テニスの腕が上手いのは当然としても、表情だけで主人公の心の内を表現する演技が見事!
「君の声を聴かせて」鑑賞。
2009年の台湾映画「聴説(Hear Me)」を韓国でリメイク。実家の弁当屋を手伝う青年と、水泳選手の妹を支える聴覚障がい者の女性とのラブロマンス。
構成は典型的な青春恋愛映画なれど、会話の大半を手話が占めるというのがユニーク。そこでは字幕が表示されるが、それ以上に話し手の表情の豊かさに心を奪われる。直接的なコミュニケーションの大切さを改めて思い知らされた。全体を包む温かく優しい空気感も心地よい。シーンを無音にすることで音のない世界を観客に体験させるなど、様々な工夫も施されている。3人の主要キャストの演技も瑞々しく、余韻を残す佳作に仕上がっている。
「THE オリバーな犬、(Gosh!!) このヤロウ MOVIE」鑑賞。
オダギリジョー監督・脚本・編集。NHKドラマの映画版。
狭間県警警察犬係のハンドラー・青葉一平は、相棒のオリバーがなぜか着ぐるみのおじさんに見えている。そんな中、先輩ハンドラーが現れ、失踪したスーパーボランティアに関する捜査協力を求めてくる……。
奇想天外でシュールな笑いが満載のドラマ。ただし、後半は不思議なドアをめぐるSFチックな展開に突入。よくもこんなことを考えるものだと、オダギリジョーの頭の中を覗いてみたくなった。
最大の見ものは超豪華キャストの怪演。それを見ているだけで楽しい。
「ファンファーレ!ふたつの音」鑑賞。
スター指揮者とその生き別れた弟のドラマ。
指揮者が弟と出会うのは白血病がきっかけ。骨髄移植のドナーを探す中で出会う。だが、お涙頂戴のドラマとは無縁。兄弟の葛藤と絆をユーモアを交えて生き生きと描く。
そこで効果を発揮するのが音楽。クラシックはもちろんジャズやシャンソンなど様々な音楽がドラマを盛り上げる。特にラベルの「ボレロ」の合唱演奏にトライするのが秀逸。ラストシーンも「ボレロ」の演奏で感動を誘う。
性格のまったく異なる兄弟を演じたバンジャマン・ラヴェルネ、ピエール・ロタンの演技も見事で温かで前向きなドラマに仕上がった。
「ザ・ザ・コルダのフェニキア計画」鑑賞。
ウェス・アンダーソン監督の新作。
ハチャメチャで敵が多く何度も暗殺未遂にあっている大富豪が、疎遠になっていた修道女の娘を後継人に指名し、巨大プロジェクト継続のための資金調達の旅に出る。
ベニチオ・デル・トロを主演に迎えてもウェス・アンダーソン節は全開。オープニングからラストまで独特の美意識に貫かれたおしゃれなシーンが続く。ルノワールやマグリットの本物の名画が部屋に飾られ、手榴弾の箱や短剣などのおしゃれな小道具も飛び出す。
ドラマ的には父と娘の葛藤と和解のドラマを軸にした冒険活劇で、アンダーソン監督お得意の人を食った笑いが炸裂。豪華俳優陣の競演も楽しい。
「Dear Stranger ディア・ストレンジャー」鑑賞。
真利子哲也監督のオリジナル脚本作品。日本人の夫と台湾人の妻。息子の誘拐事件をきっかけに、夫婦の秘密が浮き彫りになり崩壊していく。
全編ニューヨークロケで撮られたノワール調の映像が絶品。夫が研究する廃墟、妻が操る人形、故障した車のエンジン音なども効果的に使われ、不穏で、スリリングな世界を構築している。主演の西島秀俊、グイ・ルンメイのリアルな演技も見もの。
ただし、ラストは賛否が分かれそう。希望の灯をともすような結末にしたくなかったのはわかるが、個人的には曖昧模糊として消化不良気味だった。
風のマジム」鑑賞。
実話を基にした原田マハの小説を映画化。沖縄のサトウキビでラム酒を作る事業に挑戦し成功させた女性のドラマ。
定番のお仕事成功物語以外の何物でもないが、伊藤沙莉演じる主人公の純朴で直球真っ向勝負の小気味よさに加え、沖縄のおおらかで明るい風土のおかげで、実に心地よい映画に仕上がっている。母役の富田靖子、祖母役の高畑淳子も存在感たっぷりで、女三代のモノづくりの継承というテーマも見えてくる。観たらラム酒が飲みたくなるかも。
染谷将太、尚玄、シシド・カフカ、小野寺ずる、肥後克広、滝藤賢一らも好演。
「遠い山なみの光」鑑賞。
ノーベル文学賞作家カズオ・イシグロの長編デビュー小説を石川慶監督が映画化。1950年代の長崎と1980年代のイギリスを行き来しながら、長崎からイギリスに移住した一人の日本人女性の謎めいた過去を綴る。
広瀬すずと二階堂ふみ、2人が演じる一見対照的な女性が実は大きな共通点を持つことが明らかになり、やがて驚きの展開に突入する。1950年代の長崎の映像がどことなく異世界を思わせ、二階堂すずの演技もリアルさとはやや距離を置く理由が、その展開を目にして氷解した。
戦争の傷を克服してたくましく生きる女性のヒューマンドラマであるのと同時に、記憶を巡るミステリーでもある。
「侵蝕」鑑賞。
韓国のサスペンススリラー。前半は、幼い娘の異常な行動に憔悴していく母親を描く。20年後を描く後半は、特殊清掃の仕事をしている女のもとに新たな同僚が来たことから異変が起きる。
こちらの予想をことごとく覆すドラマ。ホラー的な妙味に加えサスペンスやバイオレンスアクションの色彩も加味。不穏でスリリングな作りはさすがに韓国映画。大団円になるかと思わせて、最後に後味の悪い結末を持ってくるあたりもいかにもという感じ。終盤やや運びが乱暴ではあるものの、新人監督コンビの作品にしてはまずまずよくできている。
少女時代のクォン・ユリをはじめ、クァク・ソニョン、イ・ソル、キ・ソユらも好演。
「ふつうの子ども」鑑賞。
「そこのみにて光輝く」「きみはいい子」に続いて呉美保監督と脚本の高田亮が3度目のタッグ。
小学生の普通の男の子が、同じクラスの環境問題に熱心な女の子が気になり、接近しようとして過激な環境活動に手を染める。
主人公の男の子をはじめ、子供たちの日常が生き生きと描かれる。手持ちカメラでアップを多用し、彼らの豊かな表情をスクリーンに刻む。どの子供も個性的で得難いキャラクターの持ち主。それを見ているだけで楽しい。
全編がコメディータッチの映画だが、子供たちの起こした行動が過激化してからは社会風刺的な側面もクローズアップされる。
最近の子供を主人公にした映画の中でも出色の作品。
「8番出口」鑑賞。
世界的ブームを巻き起こした人気ゲームを川村元気監督が映画化。
地下鉄の通路で出口が見つからず、同じ場所で無限ループを繰り返す男の不条理劇。
主要な俳優は二宮和也、河内大和、小松菜奈、花瀬琴音、浅沼成の5人だけ。短編映画で終わりそうなネタを、あの手この手で長編映画に仕立て上げるあたりは、さすがヒット映画のプロデューサーでもある川村監督。
ゲーム的な世界に、主人公と恋人の迷いのドラマを導入するあたりも巧み。それほど深いドラマではないが迷走劇の背景としては効果的。
絶対に観るべき映画とは思わないが、こういう世界が好きな人はハマりそう。
「海辺へ行く道」鑑賞。
三好銀の漫画「海辺へ行く道」シリーズを横浜聡子監督が映画化。
アーティストの移住支援をするなどアートで町おこしをする海辺の町が舞台。そこの中学の美術部員の奏介と彼の周囲にいる人々を3章立てで描く。
出てくるのはみんな変わった人ばかり。詐欺師カップル、創作に没頭するフリーター、海辺でランチを売る女……。町中では笑顔を見せたら失格という「静か踊り」が行われ、正体不明の野獣まで出現する。というわけで、全編がシュールな笑いの連続。それを通して芸術の自由さ、おおらかさを歌い上げる。
ユニークな役柄の俳優陣の演技も楽しい。
「この夏の星を見る」鑑賞。
コロナ禍で様々な活動が制限される中、オンラインで天体観測をする競技「スターキャッチコンテスト」を開催する中高生たちのドラマ。
天体に魅入られた中高生たちの奮闘ぶりが瑞々しく描かれる。彼らの天体にかける熱い思いが観る者の胸に響く。特に競技に関しては高揚感やワクワク感の作り方が巧みで、細かなルールなど知らなくてもつい引き込まれてしまう。映像的にも様々な工夫を凝らして観客を飽きさせない。終盤にはさらにスケールを広げた追跡劇が用意される。
桜田ひよりら中高生役の若い俳優陣も好演。
「大統領暗殺裁判 16日間の真実」鑑賞(昨日)。
1979年に起きた朴正煕大統領暗殺事件の裁判を巡るドラマ。
史実に大胆にフィクションを加味。主人公に型破りな弁護士を据え、彼が弁護する軍人との友情のドラマを構築。さらに冷徹な悪役として、のちに軍事クーデターを起こす全斗煥をモデルにした合同捜査団長を登場させて、スリリングでヒリヒリするようなドラマに仕立てている。
弁護士役のチョ・ジョンソク、被告役のイ・ソンギュン、合同捜査団長役のユ・ジェミョンがいずれも見事な演技を披露。
エンターティメントとして一級品のドラマであるのと同時に、軍事政権の非道さを浮き彫りにした社会派映画でもある。
「蔵のある街」鑑賞。
岡山県倉敷市を舞台にした青春ドラマ。
母が姿を消し自閉症の兄を持つ紅子の葛藤と、彼女を助けるために街で花火を打ち上げようと奔走する幼なじみの蒼と祈一の奮闘。3人の高校生の実にまっすぐで一生懸命な姿が印象に残る。
同時に、ご当地映画としてもツボを押さえた作りで、倉敷の街と人々の魅力が伝わってくる。地元出身の平松恵美子監督の手腕が見事。小品だが観終わって心が温かくなる。
3人の高校生役の山時聡真、中島瑠菜、堀家一希の演技もいい。