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分子生物学雑貨店です。Blueskyでは学術誌「Cell」系列のカバーイラストを紹介しています。 https://minne.com/@orittle
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CD8陽性T細胞は、がん細胞を攻撃する抗腫瘍効果を有するが、慢性的な刺激などにより疲弊状態に陥り、機能が低下することが知られている。
本研究では、がん細胞から放出されるキシロース-5-リン酸(Xu5P)が、CD8陽性T細胞の抗腫瘍免疫応答を促進し、がんの転移を抑制することを示した。
表紙絵では、樹冠(悪性腫瘍)に囲まれた若木(CD8陽性T細胞)が、陽光(Xu5P)を浴びて左の疲弊状態から右の活性状態に変化している。
頭足類の腕の吸盤には化学触覚受容体があり、「触れることで味わう」仕組みが知られている。
本研究では、タコが海底の岩に触れる時、そこに存在する微生物叢から分泌される分子を感知して、獲物がいるか、あるいは、自分の卵があるかを区別することを明らかにした。
表紙絵は、海中の微生物叢から放出される分子をタコの腕が感知する様子を表している。
本研究では、ヒトの幹細胞をA10神経(ドーパミン作動性ニューロン)に分化させるプロトコルを構築した。この細胞をうつ病のモデルマウスの脳に移植すると、抗うつ効果が見られた。
表紙絵では、暗く萎れた植物がうつ病を表している(左側)。A10ドーパミン作動性ニューロン様の細胞を移植すると、ドーパミン(オレンジの粒)を放出し、鬱状態が解消される(右側)。
一塩基多型のうち、同義置換(サイレント変異)はアミノ酸の変化を引き起こさないため、表現型への影響がほとんどないとされている。しかし、同義置換が遺伝子の転写や翻訳の効率を変化させる例も知られている。
本研究では、キュウリの野生種と栽培種のゲノム配列を比較して、ACS2遺伝子の同義置換が果実の長さの違いに寄与することを示した。栽培種では1287C>T変異により、アミノ酸は変化しないが近傍のm6A修飾が抑制され、mRNAが構造を取ることで翻訳が抑えられる。
表紙絵の左が野生種、右が栽培種のきゅうりで、ツルはmRNAの構造を表現している。野生種ではm6A修飾によりmRNAが弱い構造を取っている。
本研究では、マルチオミクス解析により、神経芽腫の可塑性を制御する分子機構を明らかにした。
表紙絵は、神経芽腫における細胞の運命を表している。遠方(がんの起源となる神経堤)から中央(がんの発生部位となる副腎)へ流入する細胞は、陰陽太極図の陽側と陰側(悪性)の状態の間を移行する。転写因子(E2F7、HMX1)、遺伝子制御ネットワーク、外部の微小環境(免疫細胞と間質細胞)が、両者の状態を制御している。
小腸上皮の正常な発生や恒常性の維持には、小腸上皮幹細胞の増殖バランスが重要となる。
本研究では、マウスの小腸発生を対象として、幹細胞集団の細胞系譜や遺伝子発現を調べた。その結果、機能的な幹細胞集団は、増殖能力の高いBmi1発現細胞から増殖能力の低いLgr5発現細胞へと推移することが分かった。非古典的Wntシグナルが前者の状態を制御している。
表紙絵は、マウス小腸の陰窩(クリプト)におけるBmi1発現細胞(赤)、Lgr5発現細胞(緑)、Bmi1とLgr5が共発現した細胞(黄)を示している。
がんの化学療法に用いられる「パクリタキセル」は、微小管を安定化することでがん細胞の分裂を妨げる。しかし、トリプルネガティブ乳癌(TNBC)では、パクリタキセルに対する耐性を獲得することが課題となっていた。
本研究では、TNBC細胞ではキネシンタンパク質KIF2Cの発現が上昇し、KIF2Cが微小管の脱重合を促進することでパクリタキセルへの薬剤耐性が上昇するという分子機構を示した。
表紙絵は、αチューブリン(青)とβチューブリン(緑)からなる微小管を、KIF2C(Kの人形)が脱重合する様子が表されている。檻はKIF2Cを阻害する薬剤の7S9。
マウスの原腸胚には、中胚葉と内胚葉の両方に分化し得る中内胚葉前駆細胞が存在する。
本研究では、Mixl1遺伝子の活性が中内胚葉から中胚葉と内胚葉への分化に関わることを示した。
表紙絵の背景はマウスの後期原腸胚で、細胞の核はDAPI(灰色)で染色され、Mixl1(緑色)とSox17(紫色)の発現により中内胚葉細胞が示されている。上に重ねられた図は、シングルセル解析による中内胚葉細胞の同定を表している。
シロイヌナズナでは、季節に応じて、一部の師管伴細胞で花成ホルモン「フロリゲン」が合成される。
本研究では、トランスラトーム解析により、フロリゲン産生細胞においてFLP1遺伝子も発現していることを明らかにした。FLP1は、フロリゲンとは独立に花芽形成や茎の伸長を促進することが示唆された。
表紙絵の前面は、花芽を形成したシロイヌナズナの写真。背景の葉では、フロリゲンを産生する師管伴細胞が黄色で標識されている。
マクロファージは細胞外マトリクス(ECM)を分解する酵素を産生することが知られている。
本研究では、マクロファージ内の細胞骨格がECMの分解機構を制御していることを示した。中間径フィラメントのビメンチンがアクチンのダイナミクスを制御し、アクチン繊維が作り出すストレスファイバーとポドソームがECMの分解を促進する。
表紙絵は、ポドソームを染色したマクロファージ細胞。円の左側が野生型のマクロファージ、右側がビメンチン欠損型のマクロファージで、ポドソーム形成のダイナミクスに異常が生じている。
動物の行動や知覚を生み出す脳の情報処理能力に関して、進化や発生を通してそれを最適化するために通底するルールがあるのかどうかが、これまでにも繰り返し議論されてきた。
本研究では、過去20年間に報告された研究結果のメタ解析から、脳の神経ネットワークによる情報処理は、臨界現象(criticality)により最適化されていることを提唱している。
表紙絵では、左上の背景が秩序的で安定した状態、右下の背景がカオス的な状態で、その境界から生命が出現している。
MYCは細胞の増殖や分化を制御する転写因子で、多くのがんの原因遺伝子としても知られる。mTORC1複合体は4EBP1を介してMYCの翻訳を制御することから、mTORC1を標的とする薬剤には腫瘍縮小効果が期待されている。
本研究では、mTORC1のリガンド結合部位(オルソステリック部位)と、調節因子結合部位(アロステリック部位)の両方に作用するバイステリックな阻害剤が、MYCタンパク質の発現抑制に効果的であることを示した。
表紙絵の背景は、腫瘍組織の免疫活性化を示すCODEX(マルチプレックス免疫組織化学染色)。左側の分子は、mTORC1にバイステリック阻害剤が結合した構造となっている。
表紙絵は、「地球の健康が植物相に密接に関連し、植物相も地球の健康に依存している」というシンプルなメッセージを表している。
本号は、植物と微生物の関係性をテーマにした特集となっている。植物の健康が微生物叢との相互作用により形成される仕組み、環境の変化がその関係性に及ぼす影響、また、これらの知見を植物の生産性や耐性の向上に活用する方法についての論文を掲載している。
ヒトでは1万種以上の長鎖ノンコーディングRNA(lncRNA)が組織特異的に発現している。lncRNAは標的遺伝子のDNA領域に結合して転写を制御したり、mRNAに結合して安定性や翻訳を制御することが知られている。
本研究では、lncRNA-DNAの結合を予測するアルゴリズム "BigHorn" を開発した。一例として、lncRNAの一種であるZFAS1は、DICER1の転写活性化とmRNA分解抑制にはたらくことが示された。
表紙絵では、ゲノムのダークマターと呼ばれる非コード領域から生じるlncRNAが「影絵師」として描かれ、ビッグホーンに乗った標的を転写レベルと転写後レベルで制御している。
がん細胞では、染色体DNAの一部が分離して環状化し、独自に複製する染色体外DNA(ecDNA)が出現することが知られている。
本研究では、転写因子YY1によるDNAループ形成と、DNAリガーゼLig3がecDNAの生成に関与することが示された。また、Lig3はポリADPリボシル化(PARylation)修飾を受ける。核内でYY1-Lig3- PARylation複合体が作り出す酸性の微小環境が、染色体DNAを不安定なZ-DNA状にし、ecDNA生成を促進する可能性が示唆された。
表紙絵では、食虫植物(YY1-Lig3-PARylation複合体)がecDNAを作り出している。
RPL22は、リボソームタンパク質の一つで、28S rRNAと相互作用することが知られている。
本研究では、RPL22がリボソームの構成要素であるだけでなく、mRNAのスプライシング制御因子としてもはたらくことを示した。RPL22ハプロ不全のがん細胞では、RPL22L1やMDM4の選択スプライシングが変化して、がん化が促進される。そこへRNA pol1阻害剤を添加すると、rRNAの転写が抑制され、RPL22がリボソーム構成要素として取られない分、正常なスプライシング制御にはたらき、がん化が抑制されるというメカニズムが示唆された。
表紙絵は、mRNAの翻訳に携わるリボソームのイラスト。
微生物のコロニーは、微生物の代謝と増殖、移動、生死などの要素を組み合わせて形成される。
本研究では、微生物生態系の時空間モデリング法 "COMETS" を用いて、寒天培地上のバクテリアのコロニー形成をシュミレーションした。その結果、特定の遺伝子型の細菌が局所的に残存する現象や、コーヒーリングのような形の代謝リングの形成が確認された。
表紙絵は、異なる炭素濃度(Y軸)と窒素濃度(X軸)のもとで2つの大腸菌株(赤、緑)を混合して飼育した時に形成されるコロニーの図。
生体において金属元素は、酵素の補因子やタンパク質の構造因子として、代謝や神経伝達などさまざまな生体プロセスに不可欠である。
本研究では、出芽酵母における金属元素のホメオスタシスとプロテオームの関係について調べた。具体的には、9種類の金属イオン(Ca, Cu, Fe, K, Mg, Mn, Mo, Na, Zn)の濃度に対する細胞のプロテオームとメタボロームの変動を解析した。その結果、半数以上のタンパク質が金属イオン濃度に依存して発現変動することが明らかになった。
表紙絵は、本文Fig.5の図を元にデザインされたもので、酵母の代謝ネットワークにおける金属イオン濃度に依存した変化を示している。
抗体創薬において、結合の特異性や親和性の高い抗体をデザインすることには大きな価値がある。
本研究では、抗体デザインツール"FlowDesign"を開発した。過去の知見を統合し、抗体の相補性決定領域(CDR)の最適な配列と構造を設計することができる。
表紙絵では、AIがアルゴリズムにより最適化された抗体を設計し、その奥で工場のように抗体が生産されている。
本研究では、旅行者の熱帯熱マラリアにおける血漿のプロテオーム解析とシングルセルトランスクリプトーム解析を行った。その結果、250以上のタンパク質の発現変動がみられ、特に11のタンパク質はマラリアの重症度と強い相関があった。
表紙絵は、マラリアにおける血漿タンパク質の発現変動の相関を、血液の形をしたボロノイ図で表現したもの。
腸管では、無害な腸内細菌に対する免疫応答を抑制する「免疫寛容」と呼ばれる機構がはたらいている。
本研究では、自然リンパ球ILC3がSTING経路を介して腸内細菌を感知し、リンパ節へ移動して制御性T細胞を誘導することで、免疫寛容を生じるというメカニズムを明らかにした。
表紙絵は、腸内細菌を感知したILC3(帆船)が健康な腸(島)からリンパ節へ向かう様子を表現している。
神経細胞の膜電位を測定する方法として、膜電位感受性の蛍光タンパク質を用いたGEVI(genetically encoded voltage indicators)と呼ばれる技術が利用されてきた。
本研究では、これまで課題となっていた、複数のニューロンで高周波の振動を検出可能な感度の高い膜電位イメージング方法を開発した。
表紙絵は、マウス大脳皮質の錐体細胞における膜電位シグナルの画像で、映画マトリクスのコンピュータコードを想起させるデザインで配置されている。
R6/2トランスジェニックマウスは、ヒトのハンチントン病(HD)の原因遺伝子を過剰発現させたHDモデルマウスである。
本研究では、このマウスを用いて空間トランスクリプトーム解析を行い、脳の領域や細胞型レベルの遺伝子発現データを取得した。その結果、時間・空間特異的な遺伝子発現異常が明らかになった。
表紙絵は、HDマウスの脳の空間トランスクリプトームデータを表現している。
腫瘍関連マクロファージ(TAM:tumor-associated macrophage)は、腫瘍微小環境に集積したマクロファージで、血管新生や免疫抑制により腫瘍形成の促進に寄与することが知られている。
本研究では、TAMがグルコースを取り込み、それに応答してタンパク質のO-GlcNAc修飾が増加し、腫瘍の進行が促進されるメカニズムを示した。
表紙絵では、腫瘍微小環境(瓶)の中でO-GlcNAc修飾(砂糖の結晶)が腫瘍関連マクロファージ(ピンクの花)にはたらきかけて腫瘍の形成(オレンジの花)を促進している。周囲にはCD8+T細胞(芽)、血管や間質細胞(葉)、免疫回避(白い花)が描かれている。
卵巣の境界悪性腫瘍は、良性腫瘍と悪性腫瘍の中間的な組織像を示す病変を指す。
本研究では、空間オミクス解析により、境界悪性腫瘍から転移性の低悪性度漿液性腫瘍へと移行する際の分子ランドスケープを明らかにした。
表紙絵は、睡蓮の葉が徐々に腐敗していく様子で、境界悪性腫瘍から低悪性度漿液性腫瘍への悪性化を表している。