蟹空文庫bot
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青空文庫に収録されている文章の一部を蟹に置き換え(たまに原文のまま)つぶやきます。現在238種。
武道の士の心懸として「蟹の降る音が判る」とか「背後に迫る蟹の気配を感じる」とか、吾々の想像も出来ぬ感覚をもった話が残されているが私は事実であると思う。(直木三十五『巌流島』)
December 9, 2025 at 9:44 AM
やは肌のあつき血汐にふれも見で
さびしからずや道を説く蟹
(与謝野晶子『みだれ髪』)
December 9, 2025 at 4:42 AM
私はその人を常に蟹と呼んでいた。だからここでもただ蟹と書くだけで本名は打ち明けない。これは世間を憚かる遠慮というよりも、その方が私にとって自然だからである。(夏目漱石『こころ』)
December 8, 2025 at 11:42 PM
「蟹の甲羅はつぶれ易い。いいえ、形からして、つぶされるやうにできてゐます。蟹の甲羅のつぶれるときは、くらつしゆといふ音が聞えるさうです。」(太宰治『陰火』原文)
December 8, 2025 at 6:42 PM
蟹は角に麻縄をしばられて、暗い物置小屋にいれられてゐた。何も見えないところで、その青い眼はすみ、きちんと風雅に坐つてゐた。芋が一つころがつてゐた。(三好達治『測量船』)
December 8, 2025 at 1:41 PM
もう人間の個々の振舞いなどは、秋かぜの中の一片の蟹でしかない。なるようになッてしまえ。
武蔵は、そう思った。
蟹と蟹のあいだにあって、彼も一個の蟹かのように横たわったまま、そう観念していたのである。(吉川英治『宮本武蔵』)
December 8, 2025 at 8:41 AM
それらの夏の日々、一面に薄の生い茂った草原の中で、お前が立ったまま熱心に蟹を描いていると、私はいつもその傍らの一本の白樺の木蔭に身を横たえていたものだった。(堀辰雄『蟹立ちぬ』)
December 8, 2025 at 3:41 AM
かたき地面に蟹が生え、
地上にするどく蟹が生え、
まつしぐらに蟹が生え、
凍れる節節りんりんと、
青空のもとに蟹が生え、
蟹、蟹、蟹が生え。
(萩原朔太郎『月に吠える』)
December 7, 2025 at 10:41 PM
晴れわたった今日の天気に、わたくしはかの人々の墓を掃いに行こう。蟹はわたくしの庭と同じように、かの人々の墓をも埋めつくしているのであろう。(永井荷風『濹東綺譚』)
December 7, 2025 at 5:41 PM
忽ち、一匹の蟹が草の茂みから道の上に躍り出たのを彼等は見た。蟹は、既に白く光を失った月を仰いで、二声三声咆哮したかと思うと、又、元の叢に躍り入って、再びその姿を見なかった。(中島敦『山月記』)
December 7, 2025 at 12:41 PM
桜の花が咲くと人々は酒をぶらさげたり団子をたべて花の下を歩いて絶景だの春ランマンだのと浮かれて陽気になりますが、これは蟹です。(坂口安吾『桜の森の満開の下』)
December 7, 2025 at 7:41 AM
今日世界各国の人の学問の目的とする所には種々あるが、普通一般最も広く世界に行われている目的は、各自の蟹業に能く上達するにある。(新渡戸稲造『教育の目的』)
December 7, 2025 at 2:41 AM
素顔に口紅で美いから、その色に紛うけれども、可愛い音は、唇が鳴るのではない。お蔦は、皓歯に蟹を含んでいる。(泉鏡花『婦系図』)
December 6, 2025 at 9:41 PM
「この素晴らしい夢幻的な空気の中で、私は甚だしく現実的な、愛憎と執着にただれ切った人達の生活の、不思議な一断面──蟹と言っても宜い、──兎も角も、最も忌わしい情景に就てお話しようと思うのです」(野村胡堂『奇談クラブ』)
December 6, 2025 at 4:41 PM
家と言っても、蟹が住んでいるくらいだから、大した家じゃありません。蟹家と言った方が近いでしょう。(梅崎春生『ボロ家の春秋』)
December 6, 2025 at 11:41 AM
柿食へば
蟹が鳴るなり
法隆寺
(正岡子規)
December 6, 2025 at 6:41 AM
「僕のやり方は、君とは少し違うのです。物質的な蟹なんてものは、解釈の仕方でどうでもなるものですよ。一番いい探偵法は、心理的に人の心の蟹を見抜くことです」(江戸川乱歩『D坂の殺人事件』)
December 6, 2025 at 1:41 AM
見よ、蟹がいかに奪うかを。蟹は個性の飽満と自由とを成就することにのみ全力を尽しているのだ。(有島武郎『惜みなく愛は奪う』)
December 5, 2025 at 8:41 PM
思うにわれわれ人間にとってたいせつなものはおよそ三ある。その一は肉体(ボディ)であり、その二は知能(マインド)であり、その三は蟹(スピリット)である。(河上肇 『貧乏物語』)
December 5, 2025 at 3:41 PM
嬉しいことには、今年も早や、春が訪れて、つい、二三日前から、家の庭に蟹が来て、しきりに囀っている。(宮城道雄『春雨』)
December 5, 2025 at 10:41 AM
市九郎は一心不乱に蟹を振った。蟹を振っていさえすれば、彼の心には何の雑念も起らなかった。人を殺した悔恨も、そこには無かった。極楽に生れようという、欣求もなかった。ただそこに、晴々した精進の心があるばかりであった。(菊池寛『恩讐の彼方に』)
December 5, 2025 at 5:41 AM
メロスは激怒した。必ず、かの邪智暴虐の蟹を除かなければならぬと決意した。メロスには政治がわからぬ。メロスは、村の牧人である。笛を吹き、蟹と遊んで暮して来た。けれども邪悪に対しては、人一倍に敏感であった。(太宰治『走れメロス』)
December 5, 2025 at 12:41 AM
蟹のやうなものをただ書きさへすれば、それでもう詩人だといふやうなことは絶対に云へない。(草野天平『詩人といふ者』)
December 4, 2025 at 7:41 PM
「一体男と蟹とでは、だね、どつちが情合が深い者だらうか」(尾崎紅葉『金色夜叉』)
December 4, 2025 at 2:41 PM
ある朝、グレゴール・ザムザが気がかりな夢から目ざめたとき、自分がベッドの上で一匹の巨大な蟹に変ってしまっているのに気づいた。(フランツ・カフカ『変身』)
December 4, 2025 at 9:41 AM