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トランプ民主主義破壊トラッカー

アメリカの民主主義に脅威となるトランプの行動をトラッキングするWEBができていた。 Trump Action Tracker 5つのカテゴリーに分かれて登録されている。 1.民主主義組織、団体、法律、連邦組織の毀損、解体など2.批判の抑止、情報操作3.抗議運動や人権の抑止、トランプや近親者や仲間への金銭的な便宜、汚職4.科学、環境、健康、芸術、教育への攻撃5.攻撃的な外交方針、国際環境の不安定化、国家主義 詳細はAboutページに説明がある。…
トランプ民主主義破壊トラッカー
アメリカの民主主義に脅威となるトランプの行動をトラッキングするWEBができていた。 Trump Action Tracker 5つのカテゴリーに分かれて登録されている。 1.民主主義組織、団体、法律、連邦組織の毀損、解体など2.批判の抑止、情報操作3.抗議運動や人権の抑止、トランプや近親者や仲間への金銭的な便宜、汚職4.科学、環境、健康、芸術、教育への攻撃5.攻撃的な外交方針、国際環境の不安定化、国家主義 詳細はAboutページに説明がある。 カテゴリー別に件数を確認したり、実際の活動内容を確認することができる。なお、現在の問題行動の合計は、1,510件であり、もっとも多いのは「1.民主主義組織、団体、法律、連邦組織の毀損、解体など」の627件、次いで「5.攻撃的な外交方針、国際環境の不安定化、国家主義」の452件となっている。 フィルターをかけたり、検索したりすることができ、行動の内容を確認することもできる。毎日、YouTube、TikTok、Podcastで放送もしている。イギリスのChristina Pagel教授を中心としたボランティによって運営されている。
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SNS介入を2つの尺度で整理した論文

「A dual typology of social media interventions and deterrence mechanisms against misinformation」( )は、SNSへの介入を、プラットフォームの介入手段と抑止メカニズムの2つの尺度で分類することを提案した論文である。 それぞれの尺度は下記のようなものとなっている。…
SNS介入を2つの尺度で整理した論文
「A dual typology of social media interventions and deterrence mechanisms against misinformation」( )は、SNSへの介入を、プラットフォームの介入手段と抑止メカニズムの2つの尺度で分類することを提案した論文である。 それぞれの尺度は下記のようなものとなっている。 ・プラットフォームの介入手段 削除:コンテンツやアカウントの削除や一時停止 情報提供:コンテンツに関する情報、背景、警告などを利用者に提供 削減:拡散の抑止コンテンツのリーチや可視性を制限 複合:複数の介入手段を単一の戦略で適用。 マルチモーダル:コンテンツ、アカウント、コミュニティなど複数のレベルに対して行う包括的な抑止策。 ・抑止メカニズム ハード:即時的強制的な抑止 ソフト:説得による抑止 状況型:制限による抑止 統合型:単一の対象(コンテンツ、アカウント)に対して制限と説得を併用。 ミックス:2つ以上の抑止策を混合。 この他に認知性(利用者が見た時に視認できる程度)もある。表にすると下記のようになる。 正直、抑止メカニズムと介入はだいぶ同じことを言っているような気がするのですが(そのせいでほぼ対角線上に並んでいる)、これまでは介入手段を個別に語ることが多かったので全体的に見て、なにを目的として、どのような対策を行うべきかという検討には2軸の整理は役立ちそうな雰囲気を感じた。
inods.co.jp
イスラエルの認知戦の体制

 イスラエルはかねて認知戦には力を入れている国である。とくに世界中のメディアや言論界、学術界、政界を監視し、反ユダヤ主義に圧力をかけ、政治的なイスラエル・ロビーを組織し、支援してきた。2023年10月のハマスのテロから始まったガザ攻撃、対ヒズボラ攻撃、対イランに対しても、強力な宣伝工作を行なっている。その実態の一端はいくつもメディア報道されている。 米国のインフルエンサーを組織化する「エステル計画」…
イスラエルの認知戦の体制
 イスラエルはかねて認知戦には力を入れている国である。とくに世界中のメディアや言論界、学術界、政界を監視し、反ユダヤ主義に圧力をかけ、政治的なイスラエル・ロビーを組織し、支援してきた。2023年10月のハマスのテロから始まったガザ攻撃、対ヒズボラ攻撃、対イランに対しても、強力な宣伝工作を行なっている。その実態の一端はいくつもメディア報道されている。 米国のインフルエンサーを組織化する「エステル計画」  まず対米世論誘導工作に関しては、たとえば『エルサレム・ポスト』2025年10月1日付記事「イスラエルのエステル計画の内幕~司法省提出書類が明かす有償インフルエンサー作戦」が興味深い。  同記事によれば、イスラエル政府が複数の民間の広報・コンサルティング企業を使って米国のインフルエンサーを利用する工作を行なっていたことが判明している。その中でも新しい工作として、米デラウェア州のブリッジズ・パートナー社が行なった米国のSNSインフルエンサーを組織・管理・利用する「エステル計画」という作戦がある。同社はイスラエル人コンサルタントが、2025年6月に登記した会社で、つまりはこの工作のために設立された“会社”である。  計画では、各インフルエンサーがインスタグラム、TikTokその他のプラットフォームで月間約25~30件のコンテンツ投稿を行なう。イスラエルのコンテンツ発信者と連携し、米国のマーケティング代理店との提携拡大なども予定されていた。こうした工作により、イスラエルが創るナラティブで米国のメディアとデジタルチャネルを飽和させる。予算は数百万ドルという。他にもParscale社、Havas社(ドイツ)が協力している。  実際、ネタニヤフ首相は9月26日、ニューヨーク市で米国のインフルエンサーのグループと会談し、関係強化に言及している。 ディアスポラ問題相が主導する米国での世論工作  2024年6月の記事だが、『ニューヨーク・タイムズ』の「イスラエルは密かに米国を標的にしている。ガザ戦争に影響力を持つ議員キャンペーン」も詳しい。  同紙によると、米国でのイスラエルの世論工作を主導したのはリクード所属のディアスポラ問題相であるアミハイ・シクリである。彼はもともと強硬派だが、こうした世論工作の必要性をかねて公言しており、2013年のハマスのテロの直後に、イスラエル議会の承認で工作を推進した。実行のために民間IT企業に広く募集がかけられ、同年10月中旬に最初の会議がもたれた。とりまとめ役はテルアビブの政治マーケティング会社であるStoic社で、ディアスポラ問題省から計画に約200万ドルが支出されたという。  工作は同年10月中にまずはXで始まった。その後、Xだけでなく、Facebookやインスタグラムで米国人に成りすました数百の偽のアカウントを使用して、親イスラエル的なコメントを投稿した。特に力を入れたのは、米国議会に対イスラエル軍事支援予算を通すことを目的とした工作で、民主党議員のサイトなどを中心にそれを促すコメントを投下している。  人工知能を活用したチャットボットであるChatGPTが多くの投稿を生成するために使用され、また、親イスラエル的な記事を特集した3つの偽の英語ニュースサイトを作成したという。  同時期の英紙『ガーディアン』の「イスラエルの文書が示す、ガザ戦争をめぐる米国の世論形成に向けたイスラエル政府の広範な取り組み」(2024年6月24日)も詳しい。  同記事では、やはり前出のディアスポラ問題相アミハイ・シクリが主導して、イスラエルの資金を使って米国の大学のパレスチナ擁護運動を封じたり、あるいは米国の法律における反ユダヤ主義を強化するために暗躍したりした様子が解説されている。シクリは少なくとも約860万ドルをロビー活動に投じ、世論の枠組み変更を主導したという。  イスラエルによる世論誘導工作は、比較的わかりやすい手口だが、それでもそれなりに効果もある。たとえば、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)への悪いイメージを狙ったデマの拡散などで、さすがにUNRWAが下記のように正式に抗議・非難している。 「イスラエル、UNRWAに対する偽情報キャンペーンを継続」(2024年12月04日、UNRWA)  上記によるとイスラエル政府は、世界中の都市の看板などの商業広告や、複数のウェブサイトでの有料Google広告を使用して、UNRWAに対する偽情報キャンペーンを強化しているとのこと。このUNRWAの主張は事実で、欧州議会のリリースでも引用されている。 イスラエルの情報機関とデジタル誘導工作  イスラエルのデジタル影響工作は、以上のようにかねてからの政治的宣伝工作の延長でディアスポラ問題省が中心になって進められているが、各情報機関も手の込んだ工作を行なっている。大枠で言えば、友好国の圏内で反ユダヤ主義言説を封じる工作はディアスポラ問題省が主導するが、それ以外の圏、とくにパレスチナやアラブ圏、イランなどを相手に偽装した情報誘導工作を行なうなどの秘密工作は、情報機関が担当している。  以下、イスラエルの情報機関の概要と、その中でデジタル誘導工作に関係するサイバー部門、心理戦部門などを紹介する。 軍の特殊部隊・情報部隊 軍事情報部(アマン)  イスラエル国防軍(IDF)ではインテリジェンス活動がきわめて重視されており、参謀本部と並ぶ重要部局として「軍事情報部」(通称「アマン」)がある。  軍の情報活動を統括するセクションで、隷下に下記がある。 ▽情報部隊(通称「ハマン」) 情報作戦を統括する部隊。 ▽第8200部隊 通信傍受を主任務とした信号情報(シギント)機関だが、昨今は特にサイバー戦に力を入れている。米国の国家安全保障局(NSA)と深く連携しており、米メディアなどに稀に出る報道により、ハマスやヒズボラの幹部などをハッキングで特定・追跡していく作業で両者は協力していることがわかっている。 ▽第9900部隊 偵察機や衛星などによる画像情報(イミント)機関。 ▽第504部隊 スパイを送り込む人的情報(ヒューミント)機関。 ▽特殊作戦部 IDF特殊部隊を運用するセクション。隷下に下記の部局がある。   ※第81部隊   秘密工作に使用する技術開発を担当する機関。   ※参謀本部偵察部隊(通称「サイェレット・マトカル」)   対テロ・ゲリラ戦特殊部隊。   ※情報センター  これらのうち、サイバー工作を主導するのは第8200部隊だが、心理戦はハマン、情報センター、第504部隊、サイェレット・マトカルなども行なう。  じつはアマンにはもともと心理戦の専門セクションとして「認知作戦センター」(通称「マラト」)という機関があった。アラビア語話者を中心に集められ、主にパレスチナ社会での認知戦を専門とした機関だったが、現在はこの機関は廃止され、上記したアマンの部隊・機関およびIDFの偵察部隊・情報部隊に広くその任務が付与されている。 イスラエル国防軍の特殊部隊と心理戦  イスラエル国防軍(IDF)で情報活動を行なう部隊は多い。特にガザやヨルダン川西岸、レバノンなどでの対パレスチナ戦、対ヒズボラ戦などで敵地潜入偵察活動を任務とする特殊部隊は、同時に情報活動も行なう。なかでも最強なのは前述したアマン隷下のサイェレット・マトカルだが、それ以外の参謀本部隷下にも特殊作戦に秀でた部隊は多い。  中でも強力なのが、IDF中央司令部第98空挺師団の指揮下で運用される「第89コマンド旅団」(通称「オズ旅団」)で、同旅団の隷下には対テロ専門部隊「第217部隊」(通称「デュブデバン」)、空挺潜入偵察部隊「第212部隊」(通称「マグラン」)、長距離潜入偵察部隊「第621部隊」(通称「エゴス」)がある。  これらの部隊は潜入偵察と同時に、やはり現地での心理戦を行なっているとみられる。デジタル影響工作を本格的に行なっているのは、前述のようにおそらく第8200部隊、ハマン、情報センターらと思われるが、それ以外のこれらの軍の部隊にもアラビア語と現地事情に通じた隊員が多いため、そうした工作にも参画しているケースがあるかもしれない。 モサドの認知戦機関「ラップ」  イスラエルの情報機関といえば、有名なのが対外情報機関「モサド」である。  首相直属の情報機関で、その地位は高い。スパイ活動の大元締めで、正規要員数は非公開だが、約7000人程度とみられる。  モサドの内部部局での筆頭は海外での情報収集を担う「ツォメット」で、次いで秘密の破壊活動を統括する「カエサリア」、海外潜入監視部隊「ケシュト」などがある。心理戦はいずれの部局でも工作員が展開するエリアで実施しているが、その他にも、規模が小さいながら心理戦の専門部局もある。「ロハマ・サイコロジット」という秘密セクションで、頭文字から「LAP」(ラップ)と通称されている。  ラップはとくに仮想敵国での偽情報プロパガンダや、標的を絞った偽情報仕掛け工作を行なっているようで、デジタル影響工作はまさに最重要任務となっていると推測される。 その他の機関の情報活動  その他にもパレスチナなどで潜入工作をしている機関は数多い。主なものが以下で、彼らはそれぞれ潜入対象への心理戦も行なっているとみられる。 ▽シンベト 首相直属の治安・情報機関。イスラエル国内およびヨルダン川西岸やガザなどのパレスチナ地域を担当する。 ▽国境警察対テロ特殊部隊(通称「ヤマス」) 国家安全保障省隷下の治安機関「国境警察」(通称「マガブ」)所属の特殊部隊。 ▽国境警察特別警察部隊(通称「ヤマム」) 国境警察所属のヨルダン川西岸地区専門の人質救出部隊。 ▽警察第33部隊(通称「ギデオニム」) 一般警察所属の対テロ特殊部隊。 デジタル工作の民間企業  イスラエルの特徴として、民間にデジタル系ハイテク企業が多いことがある。前述した対米インフルエンサー工作でも民間企業が実行役になっていたが、必ずしもイスラエル政府の下請けばかりやっている企業だけではない。  政府の統制外で不正に活動する企業の興味深い例が、英紙『ガーディアン』のこちらの記事にある。 「ハッキングと偽情報チームが選挙に介入していることが明らかになった」(2023年2月15日)  これは「ジョージ」との偽名で活動する元イスラエル特殊部隊工作員が運営する「チーム・ジョージ」というグループで、もう20年以上前から各国の30以上の選挙での不正な誘導工作で活動してきたという。チーム・ジョージの現在のビジネスは、ハッキングと、不正なSNS選挙誘導工作である。チーム・ジョージとイスラエル政府の情報工作機関の関係は不明だが、こうした存在はおそらく氷山の一角だ。他にも情報関係のビジネスを行なっているイスラエル企業であれば、イスラエル政府と連携しているところは少なくないと見ていい。 国家サイバー局  デジタル影響工作ではないが、イスラエルは政府を挙げてサイバー防衛に非常に注力している。それを担っているのが首相直轄の国家サイバー局(INCD)である。 INCDの公式サイトはこちら  イスラエルの国家サイバー局の特徴は、官民の協力関係の濃密さにある。イスラエルはとくに軍とデジタル先進企業の関係が濃密だが、国家サイバー局はサイバー防衛の面で民間企業と密接に協力しているほか、サイバー防衛技術の開発でも大規模な支援体制を構築している。こうした面が、イスラエルのサイバー戦の強さに繋がっているが、この協力関係はむろんサイバー防衛に限らないだろう。 対イランのデジタル破壊工作「プレダトリー・スパロー」  2025年6月、イランに対するイスラエルの空爆が開始されるとほぼ同時に、イランに対するサイバー攻撃が実行され、イランの銀行サービスが混乱した。ハッカー・グループはその翌日、イランの仮想通貨取引所「Nobitex」を攻撃した。これらのサイバー攻撃によって、イラン政府は国内のインターネット完全遮断に追い込まれた。  このデジタル破壊工作を実行したハッカー・グループは「プレダトリー・スパロー」(捕食性スズメ)である。2021年よりイランのインフラなどを攻撃している親イスラエルのハッカー集団で、おそらくイスラエル工作機関のフロントだが、組織的背景の詳細はわかっていない。 大規模な対イランの認知戦  2025年10月、イスラエルによる対イラン認知戦の興味深い例が報道された。イスラエル紙『メーカー』『ハーレツ』などで報じられたものだが、ここではそれらをまとめたパキスタン英字紙『ドーン』の記事「イスラエルに資金提供されたキャンペーンは、イランの君主制への回帰を推進する」(2025年10月4日)を紹介したい。  それによると、イスラエルは偽のアカウントを利用して、イランでパーレビ王朝の復活を煽動するデジタル影響工作を推進しているという。AI技術を駆使し、ディープフェイクや偽ニュースなども活用した作戦とのことだ。  イスラエルは対イランの認知戦をかなり大掛かりに行なっている。その手法の全体像については、トロント大学マンク国際問題研究所の研究グループ「シチズンラボ」が詳細なレポート「我々は言う【君たちは革命を望んでいる】プリズンブレイク~イラン政権打倒を狙ったAI活用の影響工作作戦」(2025年10月2日)を発表しているので、興味ある方はぜひご一読をお薦めしたい。  なお、同レポートでは前述の民間選挙介入ビジネスグループ「チーム・ジョージ」および同じような民間グループ「アルキメデス・グループ」について、イスラエル工作機関と過去に関係があり、現在も関係が深い可能性が高いことに言及されている。
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「健全な歴史」のナラティブと戦う「Save Our Signs」とは

まだ撤去されていない看板の記録 米国の有志たちによって2025年初夏に立ち上げられた草の根運動「Save Our Signs(直訳:我々の看板を守れ)」が、人々の関心を集めながら順調に発展している。 このプロジェクトは、トランプ政権が発表した大統領令14253号に対する危機感から生まれたもので、具体的には「撤去される前に撮影した、国立公園などの看板や展示の写真」を収集し、歴史的な記録としてアーカイブ化することを目的としている。今回は、この活動の詳しい内容や背景、現状などについて説明していきたい。…
「健全な歴史」のナラティブと戦う「Save Our Signs」とは
まだ撤去されていない看板の記録 米国の有志たちによって2025年初夏に立ち上げられた草の根運動「Save Our Signs(直訳:我々の看板を守れ)」が、人々の関心を集めながら順調に発展している。 このプロジェクトは、トランプ政権が発表した大統領令14253号に対する危機感から生まれたもので、具体的には「撤去される前に撮影した、国立公園などの看板や展示の写真」を収集し、歴史的な記録としてアーカイブ化することを目的としている。今回は、この活動の詳しい内容や背景、現状などについて説明していきたい。 大統領令14253号(Restoring Truth and Sanity to American History)とは? 大統領令14253号とは、トランプ政権が2025年3月に署名した大統領令「Restoring Truth and Sanity to American History(直訳:米国史における真実と健全さの回復)」のことだ。これは米国から「不適切な(反米的な)歴史観を排除し、誇らしい歴史観を取り戻すこと」を目的としている。第一次トランプ政権の際に立ち上げられた1776委員会(歴史教育に関する諮問委員会)の理念を継承するものと言ってよいだろう。 より端的に説明するなら、この大統領令は「米国の歴史をネガティブに伝えるのではなく、偉大な米国の歴史をポジティブに伝えよ」という政府からの通達である。この大統領令に従う形で、全米の連邦管理地の文化的施設(たとえば国立公園、史跡、博物館など)に設置されている看板や展示物の内容が全面的に見直されることとなった。 いまのところ撤去や変更の対象となっているのは、主に「奴隷制度」「先住民に対する迫害」「戦時中の日系人収容」など、米国にとって不名誉な(うしろめたい/反省点の多い)歴史に関するものだが、中には「気候変動」に関するものなども含まれている。 アーカディア国立公園、ジャマイカベイ野生動物保護区、スミソニアン博物館などの施設では、すでに解説パネルや看板の撤去が行われたことが確認されている。そして当然のことながら、多くの歴史専門家家団体、環境団体、人権団体などは、このような動きが「米国史のホワイトウォッシュ」「歴史の改ざん」「不都合な史実の隠蔽」「言論の自由の侵害」などにあたると批判している。 「Save Our Signs」の目的と内容 このような背景で生まれた「Save Our Signs」プロジェクトの目的は極めて単純明快だ。全米の国立公園局の管理下となる領域に設置された看板など、「いまは残されているが、大統領令14253号によって近いうちに撤去される可能性のある文章」の写真を収集し、アーカイブとして保管し共有しようという取り組みである。(ここで言う「領域」には、国立公園、国定史跡、国定記念物、国立記念碑、国立戦場跡、国立トレイル、国立湖岸、その他の公共の土地が含まれている) このプロジェクトは市民参加型で、該当する場所を訪問した市民なら誰でも、標識や展示物、プラカードなどに記された「解説の文章」の写真を撮影し、プロジェクトのポータルサイトに投稿することができる。アーカイブに残せる画像は「人物が写りこんでいない写真」「文字をはっきり判読できる写真」という条件が記されているが、画像サイズなどの細かい指定はないので、一般の市民でも気負わずに参加できるだろう。ただし投稿者は、自分の投稿した写真がパブリックドメインとなる(=自由に再利用できる)ことを承諾する必要がある。 公式サイトの説明によると、同プロジェクトのリーダーは図書館職員、歴史研究者、データ専門家たちで、主な拠点はミネソタ大学となっているようだ。「Save Our Signs」の活動について、同サイトでは次のように述べられている。 ・真の歴史とは、ただの「幸せな物語」ではありません・米国の400か所に及ぶ公園局は「米国の歴史を正しく管理し、それを全米国民が学べるようにする」という法的義務を果たすために、たゆまぬ努力を続けてきました・国立公園から消されてしまうかもしれない標識や展示物、文章を、コミュニティのアーカイブとして保存するという私たちの取り組みにご参加ください・税金で制作された看板は、公共の財産です・「全米国民の物語」を守るため、私たちは迅速に行動しなければなりません現在のところ、どのような場所で撮影された写真が届いているのかは、同プロジェクトのウェブサイトで確認できる。場所のリストだけでなくマッピングされた表示もあるため、その活動が全米の各地に広がっている様子も地図上で見られるようになっている。 ただし実際に投稿された写真は、現在のところ(2025年10月8日執筆)まだ閲覧できない。当然ながら、このプロジェクトは投稿された画像を無条件に公開しているわけではないからだ。(まったく審査をしないまま公開すれば、たとえばAI生成による偽画像などの悪質な投稿が混ざってしまう可能性もある。また投稿者が「人物が写りこんでいること」に気付かぬまま投稿した写真が公開されれば、プライバシーの侵害にも繋がるだろう) そのためSave Our Signsでは「2025年9月17日までに収集(投稿)された写真を、10月13日までに公開する」というスケジュールが発表されている。つまり9月17日が「アーカイブ公開のための一旦の区切り日」として設定されている。とはいえ完全に募集が終わったわけではない。Save Our Signsでは現在も写真の投稿を受け付けており、その写真は追って公開されることになる可能性が高い。 現在のプロジェクトの様子と「集まった写真」 2025年の初夏に開始された「Save Our Signs」の活動は、2025年8月末の時点で約5000枚の写真を集めていた。その後も順調に投稿が寄せられ、9月17日(いったんの締切日)までに集まった写真は10,000点に達したと報じられている。また公式サイトの2025年10月5日付のリストによると、これまでに集まった写真の数は10,917点となっている。ただし、これらの中には内容が重複している写真もあるだろう。また「10月13日までに公開されるアーカイブ」に掲載できる写真が、実際に何点となるのかはまだ分からない。 それでも投稿のリストは圧巻だ。まだ現物の画像は見られないものの、全米に点在する358カ所の著名な重要施設で写真が撮影されたことが分かる。このリストによると、投稿された写真の数が最も多かったのは、ニューヨークのエリス島(隣島にある自由の女神像やエリスアイランド国立移民博物館含む)の447点だった。そしてフィラデルフィアのインディペンデンス国立歴史公園(独立記念館含む)401点、サン・アントニオ・ミッションズ国立歴史公園297点が続いている。いずれも米国の歴史を学ぶうえで欠かすことのできない、非常に重要な施設だ。(ちなみに自由の女神像、インディペンデンス国立歴史公園、サン・アントニオ・ミッションズ国立歴史公園は、すべてユネスコ世界遺産に登録されている) 「米国における日系人の扱い」の記録についても、ベインブリッジ島日系アメリカ人排除記念碑から17の写真が投稿されている。「いやいや待ってくれ、米国と日系人の歴史を学ぶ場所といえばJANM(全米日系人博物館)が最も重要な施設だろう。ここでは一枚も撮影されていないのか?」と不思議に思われた方のためにお伝えしたい。幸か不幸か、JANMの展示施設は大規模な改修のために2025年1月から休館している(2026年再開予定)。つまり大統領令14253号を受けた見直しや撤去が行われるよりも前に、展示物の公開そのものが休止していた。そのため「消されてしまいそうな看板を、いまのうちに撮影してアーカイブ化しよう」というプロジェクトの対象には入らなかった、ということになる。 一方、気候変動に関する解説文はどうだろうか?たとえば先日は「アーカディア国立公園から、いつのまにか10の解説パネルが撤去されていた」というニュースが報じられたばかりだ。この解説パネルはユニークな形式のもので、国立公園の訪問客に対し「トレイルから外れないで」などの呼びかけをするのと同時に、山頂における気候変動の影響、生態系への配慮の重要性などについても教えてくれる内容だった。 しかし米内務省の副報道官Aubrie Spady(元Fox Newsのジャーナリスト)は、この解説パネルについて「わざわざ税金を使って国民を怖がらせようとする、偏った煽動的な文章」だとコメントし、撤去の必要性をほのめかす発言をした。その後、当該パネルは撤去されたことが報じられている。Save Our Signsのリストによると、このアーカディア国立公園からは2025年10月5日までに54点の写真が投稿されている。問題の解説パネルが、撤去される前のアーカイブ化に「間に合った」のかどうかも、10月13日までには確認できるだろう。 政府による「健全な歴史」のナラティブとの戦い 第一次トランプ政権の1776委員会は、主に「学校教育(特に公立校)における歴史観」に注目し、米国の偉大さを讃えるものに変えようとしていた。一方、今回の大統領令14253号は「国立公園や博物館などの公共空間に掲示される説明」の大規模な撤去や見直しを求めている。 誰もが目にする公共の場から、歴史的な記録や学術的な説明が消去されれば、それが市民の情報リテラシーの低下に繋がることは言うまでもないだろう。そして自国の歴史上のネガティブな側面を丸ごと削除する(解説を撤去する)という行為は、単に「過去の間違いから学べる機会」を奪うだけでなく、都合よく改変されたナラティブを拡散するのに好都合な下地づくりにもなってしまう。 このような取り組みが政府主導で進められる中、Save Our Signsは「消されそうな記録」「自国にとって都合の悪いエピソード」「当時の自国に対する批判的な視点」などの盛り込まれた文章を、いまのうちに残そうとしている。その信念や意義についてはさておき、アーカイブの効果については様々な意見がありそうだ。
inods.co.jp
アメリカ1984 ガザの和平案とNSOグループの米への売却

2025年10月10日、イスラエルのITメディアCALCALISTは、イスラエルのNSOグループが米国の投資家に売却されることを報じ、すぐにTechCrunchが同グループに確認を取ったうえで記事を公開した。 NSO to be acquired by U.S. investors, ending Israeli control of Pegasus maker - CALCALIST maker NSO Group confirms acquisition by US investors - TechCrunch…
アメリカ1984 ガザの和平案とNSOグループの米への売却
2025年10月10日、イスラエルのITメディアCALCALISTは、イスラエルのNSOグループが米国の投資家に売却されることを報じ、すぐにTechCrunchが同グループに確認を取ったうえで記事を公開した。 NSO to be acquired by U.S. investors, ending Israeli control of Pegasus maker - CALCALIST maker NSO Group confirms acquisition by US investors - TechCrunch 買収したのはハリウッドのプロデューサーであるロバート・シモンズで、数千万ドルの取引である以上のことは明らかにされていないが、同誌の取材によれば、本社と中核事業はイスラエルに留まり、イスラエル政府機関の監視下に置かれ続けるという。 NSOグループは国際的に活躍する(悪い意味で)スパイウェアのベンダであり、これまで何度となくさまざまな国家の検閲や弾圧、ジャーナリストの盗聴、人権侵害に加担したと糾弾されてきた。アメリカでは2021年にブラックリストに入り、製品供給が禁じられている。これまでイスラエル政府は同社のスパイウェアを政府の監督下におき、販売先を制限することで外交の武器として利用してきた。つまり、イスラエル政府の要求に応じるならばスパイウェアを売ってやってもいい、という交渉を行ってきた。それほどに魅力的な威力のあるツールなのだ。 Metaのレポートからわかる外交兵器としてのサイバー兵器 このことから考えると、ガザの和平案の発表とNSOグループの売却になんらかの関係があるのではないかと勘ぐりたくなる。トランプ政権がイスラエルの要求に応じる代わりにNSOグループのスパイウェアを手に入れた、という可能性だ。さらにタイミングを合わせたかのように、サイバーセキュリティ・インフラセキュリティ庁(CISA)やアメリカ国土安全保障省(DHS)はサイバーセキュリティ担当者を含む多数の職員が、移民・関税執行局(ICE)、税関・国境警備局(CBP)、連邦保護局(FPS)、つまり移民排斥担当に異動となった。 Homeland Security Cyber Personnel Reassigned to Jobs in Trump’s Deportation Push - Bloomberg アメリカの移民排斥業務ではさまざまな監視、傍受ツールが投入されており、NSOグループのスパイウェアが新しく加わればさらに監視は強化できる。アメリカ版の1984はオリジナルの小説を超えて拡大しつつある。
inods.co.jp
自閉症とアセトアミノフェンから見えてくる、うち捨てられたエビデンス

トランプ大統領ははっきりとしたエビデンスを提示することなく、妊娠中のタイレノール服用と自閉症を関連付けた発言をした 2025年9月22日。トランプ大統領は、保健福祉省長官(ロバート・F・ケネディ…
自閉症とアセトアミノフェンから見えてくる、うち捨てられたエビデンス
トランプ大統領ははっきりとしたエビデンスを提示することなく、妊娠中のタイレノール服用と自閉症を関連付けた発言をした 2025年9月22日。トランプ大統領は、保健福祉省長官(ロバート・F・ケネディ Jr.)と共同で発表するかたちで、ホワイトハウスで衝撃的な会見を行った。「妊娠中の女性は医療的必要性がない限り、アセトアミノフェンを控えるよう強く勧める」「アセトアミノフェン(タイレノール、パラセタモール)が自閉症リスクを高める」そう発言したのだ。アセトアミノフェンは、ロキソニンやイブプロフェンと違い、妊娠中でも服用できるとされている唯一に近い鎮痛剤だ。だがトランプ大統領は、妊婦や幼い子供のアセトアミノフェンの服用には自閉症リスクがあると発表した。 追随する食品医薬品局(FDA)のプレス発表 この会見の同日、アメリカの食品医薬品局(FDA)は以下の発表を行った。妊娠中にアセトアミノフェンを服用することによって、自閉スペクトラム障害(ASD)や注意欠如・多動性障害(ADHD)のリスクが増大する可能性を示唆する証拠があるとプレス発表をしたのだ。 この発表はFDAの独自判断のプレス発表である。だが、その内容には疑問符がつく。プレス発表の根拠とされている研究データは新しい研究データではなく、既存の観察研究や疫学的報告に過ぎなかった。FDAが自ら新たに収集した、あるいは解析し直したデータでもない。さらにFDAはプレス発表の中で「因果関係が確立されたわけではない」「研究間で結果が一貫していない」と注意書きを入れている。新規の知見があったわけでもないにも関わらず、このタイミングで出されたプレス発表。予想されるのは、FDAに対して政治的引力が強く働いた可能性だ。 FDAは、保健福祉省(HHS)の下部機関である。下部機関ではあるが、本来FDAは、HHSから科学的な判断において独立性を保っている機関だとされている。政治的圧力や経済的利益に左右されず、科学的根拠に基づいた判断を行うためだ。それでも下部機関である以上、HHSからの要請を無視することはできないのは想像に難くない。 そして現在のHHSの長官は、トランプ大統領の指名で就任したロバート・F・ケネディ Jr.だ。そう、冒頭でトランプ大統領と共同で声明を出したロバート・F・ケネディ Jr.だ。 トランプ大統領の言葉を望む人々と、アメリカが根底に宿す「不信」 今回のトランプ大統領の声明には、はっきりとしたエビデンスが存在しない。本来、エビデンスがない医学的な発言は強い批判のリスクが伴う。それでも声明を出したのは、望んでいる人々がいるからにほかならない。望んでいる人々を満足させることができれば、エビデンスの不在など大した問題ではない。そう判断した可能性がある。 アメリカという国は、根底に「権威への不信」を抱えている。もっと言えば、「権威や既得権益に対する不信」と「自分たちの権利・価値観を守りたい」という感情だ。それはアメリカが保有する歴史そのものと言っていいだろう。アメリカがアメリカとなったアメリカ独立戦争。あの戦争も「権威」への抵抗から始まったからだ。その思いはアメリカのアイデンティティとも言い換えることができる。 アメリカ合衆国建国以前の、イギリスの植民地だった時代。アメリカ植民地はイギリスから多額の税金を徴収されていた。にもかかわらずアメリカ植民地は、イギリス議会に議席を持っていなかった。故にすべてをイギリスに決められ、税金という形で資金を奪われる構造となっていた。アメリカは長い間、イギリスという権威から搾取され続けた。現地の声が届かない政治構造の中、課税権を奪われ、経済活動を制限され、軍事的負担を強いられた。これらの不満が限界値に達した時、独立戦争が起こった。 アメリカ建国後も、自分たちの意見や生活を権威に無視され搾取された経験――このトラウマともいうべきは出来事は、アメリカ人の心の奥深くに根差した。それは「権威は自分たちの生活に干渉すべきではない」という意識への基盤となった。 権威は時代によって変わる 植民地時代のイギリス議会に始まり、政治家、大企業、メディア、金融機関。権威は時代によって変わって行く。近年のコロナ禍では、外出やワクチン接種を半ば強制しようとした科学者たちへも強い不信感が持たれた。 調査によるとアメリカ国内において、2020年に87%あった科学者への信頼は2024年には76%と落ち込み、10%以上の大きな下落を見せた。トランプ大統領の支持母体である、共和党支持者の中ではさらに顕著で、同2024年で66%まで低下している。実に20%もの落ち込みだった。アメリカ国民の中で、科学者への不信が育っているのだ。 支持者が求める頼もしきリーダー アメリカに漂う科学者への不信。中でも共和党支持者の強い不信をまとめ上げ、具現化したのがトランプ大統領の今回の発言と言えるだろう。妊娠中のアセトアミノフェン服用と自閉症の間に、実際に関連があるのかどうかは問題ではない。関連があると発言をすることに意味があるのだ。権威に口を出すことができるリーダー。必要なのは、権威の一つとなった科学者たちへ「NO」を面と向かって突きつけられるリーダーであることを示すことだ。 劫火は眼前にある アメリカが持つ歴史とは性格を異にする日本は、対岸の火事のように見える。「大岡裁き」に代表されるように日本人は権威に対して公平性を信じている側面があると言われる。 だが今後もそうであり続けるのだろうか。人口減少による移民問題など、日本が直面する問題は加速度的に緊急性を増してきている。事実、国民の不安を読み取り、日本にも極端に保守的な発言をする政治家が急増し支持を伸ばしている。 新領域安全保障研究所(INODS)では、社会調査支援機構チキラボに「参政党への投票行動に影響を与えた要因」に関する調査分析を依頼している。調査では、ファクトチェック情報に触れても投票先はほとんど変わらなかったという事実が示唆されている。日本でもエビデンスのない発言があり、それが事実とは違うとする情報に触れたとしても支持を続ける傾向が見え始めているのだ。 すでに対岸の火事ではない。日本がアメリカと同じ状況に陥ってもなんら不思議はない時代へと、すでに突入しているのかもしれない。
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10/22 今さらきけない『デジタル影響工作』入門 齋藤孝道

2025年10月22日13時から14時半。デジタル影響工作の概論をご紹介します。 有償のウェビナーとなります。この領域の実務に携わっている方と、これから携わる方が対象です。ご所属によってはお断りする場合がございます。あらかじめご了承ください。 デジタル影響工作にあまり馴染みのない方にも分かりやすいよう、できるだけ平易な言葉で、ゆっくりとお伝えします。 講義内容(予定) ・デジタル影響工作の背景 ・デジタル影響工作の全体像  狙い、サイバー空間におけるデジタル影響工作、脅威の内容 ・事例:ロシアの影響工作…
10/22 今さらきけない『デジタル影響工作』入門 齋藤孝道
2025年10月22日13時から14時半。デジタル影響工作の概論をご紹介します。 有償のウェビナーとなります。この領域の実務に携わっている方と、これから携わる方が対象です。ご所属によってはお断りする場合がございます。あらかじめご了承ください。 デジタル影響工作にあまり馴染みのない方にも分かりやすいよう、できるだけ平易な言葉で、ゆっくりとお伝えします。 講義内容(予定) ・デジタル影響工作の背景 ・デジタル影響工作の全体像  狙い、サイバー空間におけるデジタル影響工作、脅威の内容 ・事例:ロシアの影響工作 ・ワースト・シナリオ(作戦開始時の「環境形成」) ・デジタル影響工作演習(国内民間の事例ベース) ・まとめ 参加費用:3万円(税別) 10月14日まで(早割):1万8千円(税別)参加登録のメールアドレス宛てに請求書をお送りしますので、 1週間以内のお振込をお願いします。お振り込み確認後、参加登録いたします。 クーポンコードをお持ちの場合は、ディスカウントされますので、入力をお忘れなく。参加登録はこちらから クレジットカード決済をご希望の場合は、下記のPeatixページでお申し込みください。 *参加費用は当社事情によるもの以外での返金はいたしかねますので、ご承知おきください。
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認知戦オルタナティブ:ドッペルゲンガーの目的はなにか?

認知戦、デジタル影響工作、偽・誤情報などに関する議論は、さまざまな分野で多様な議論が行われている。領域横断型の問題だから当然だが、問題は領域を超えた議論や協力が必ずしもうまくいってはいないことだ。特に包括的、統合的なアプローチの構築はいまだに不十分だ。いまだに専門家と呼ばれる人々の間でも言葉の定義がバラバラで、エコシステムから全体を見るようなアプローチは進んでいない。 サイエンス誌に載った偽・誤情報研究のジレンマの爆発…
認知戦オルタナティブ:ドッペルゲンガーの目的はなにか?
認知戦、デジタル影響工作、偽・誤情報などに関する議論は、さまざまな分野で多様な議論が行われている。領域横断型の問題だから当然だが、問題は領域を超えた議論や協力が必ずしもうまくいってはいないことだ。特に包括的、統合的なアプローチの構築はいまだに不十分だ。いまだに専門家と呼ばれる人々の間でも言葉の定義がバラバラで、エコシステムから全体を見るようなアプローチは進んでいない。 サイエンス誌に載った偽・誤情報研究のジレンマの爆発 「認知戦オルタナティブ」とは筆者の造語で、専門領域に閉じこもりがちな専門家に異なる領域(あるいは研究者)からの視点を提示、紹介する試みである。同時に全体像の見えない議論に遭遇した時に、異なる視座から全体像を紡ぎ出すための道具箱でもある。2018年以前とそれより後では活動内容やとりまく社会環境が大きく変化しており、その変化を充分に咀嚼できていない専門家の多くにとって、オルタナティブな視点が必要となる。もうひとつ重要なのは、この分野でもっとも多くの資金を投入してきたアメリカが陰謀論大国になってしまった現実だ。ふつうに考えれば、アメリカのやってきたことになにか問題があるはずだ。 世界でもっとも研究されたロシアのドッペルゲンガー ご存じの方も多いと思うが、ドッペルゲンガーは世界でもっとも研究されたロシアの作戦である。多数の調査研究レポートが存在する。ドッペルゲンガーは大きく3つの段階を経て「目的不明」の活動になっている。正確に言えば、異なる目的と活動を主張する専門家たちが存在し、意見の一致を見ていない。さらに正確に言えば異なる主張の間の議論すら行われていない。この状況は現在の調査研究を象徴している。まず、2つの主張をその経緯とともにご紹介する。ふたつ目の主張の説明が長いが、日本ではほとんど紹介されていないため、ていねいに説明したためである。 ・ひとつ目の主張ドッペルゲンガーはロシアが展開しているデジタル影響工作作戦で、大手メディアになりすましたようなWEBなどを通しての情報発信などを特徴としており、その目的はロシアの権益に沿った主張の拡散、浸透と考えられていた。いまでもそのように主張する専門家は多い。単純でわかりやすい解釈だが、問題はほとんど効果が見られないことが多い点だ。効果がなければふつうは止めるか、やり方を変えるものだが、ドッペルゲンガーは大きな変更もなく、そのまま継続している。 ・ふたつ目の主張ふたつ目の主張はドッペルゲンガーの目的は自分自身で主張を拡散することではなく、メディアや専門家にとりあげさせて広範な拡散を実現し、パーセプション・ハッキングの効果を狙うことだというものだ。パーセプション・ハッキングとは、情報操作などがおこなわれていることが暴露されることで、人々に情報への不信感が増加し、目にする情報を不信の目で見るようになることを指す。悪化すると、情報発信元であるメディアや政府も疑うようになり、民主主義への不満が増大する警戒主義になる。Metaはこの領域で継続して貴重な情報を四半期毎に開示してきた。しかし、残念なことに2024年第3四半期以降、急速に手抜きになった。最後のちゃんとしたレポートでは、ドッペルゲンガーがパーセプション・ハッキングである可能性を示唆していた。 偽情報、デジタル影響工作、認知戦を知るうえで読むべき定期レポート (1) Metaの四半期脅威レポート Meta2024年Q2の脅威レポートを公開 パーセプション・ハッキングを警告 そして、その後、ロシア政府から依頼されドッペルゲンガーを実行していたSocial Design Agencyから莫大な量の情報が漏洩情報を分析した結果が公開された。 ロシアのドッペルゲンガー実施企業Social Design Agencyの2.4GB漏洩文書 ドッペルゲンガーは、メディアや専門家、専門機関に取り上げられていた数を評価指標にしていた。つまり、暴露されることを目的にしていたのだ。この漏洩文書は本物であるとされているので、その内容を信じるとすれば、Metaが示唆したようにパーセプション・ハッキングを狙った可能性などが浮上してくる。 議論すら行われていない不思議さ 2つの主張は大きく食い違っているのだが、なぜか議論すら行われずに、それぞれがそれぞれの主張に沿った調査研究を続けているように見える。単に筆者が寡聞にして存じないだけかもしれないので、ご存じの方がいたら教えていただきたい。 ひとつ確実に言えることは、専門家の間では、ドッペルゲンガーの目的について一致した見解がないということだ。もっとも研究されたドッペルゲンガーで、この状況なのである。オルタナティブな視点の必要性をわかっていただけると思う。 冒頭で2018年より後では状況が大きく変わったことを書いた。ドッペルゲンガーについてのひとつ目の主張は、2018年以前の認識に立っている。ドッペルゲンガーが始まったのは2022年なので、いささか無理があるのかもしれない。一方、ふたつ目の主張にもとづくと、効果のないドッペルゲンガーをロシアが続けていた理由もわかる。ロシアが行った活動では効果がなかったが、メディアや専門家がとりあげたことで拡散し、広範なパーセプション・ハッキングがあったのかもしれない。
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中国のGreat Firewallに見る地政学的挑戦

2025年9月にアムネスティとInterseclabから中国のGreat Firewallの国外提供に関するレポートが公開された。Great Firewallは、中国科学院の研究期間であるMassive and Effective Stream Analysis(Mesalab)と関係する企業Geedge…
中国のGreat Firewallに見る地政学的挑戦
2025年9月にアムネスティとInterseclabから中国のGreat Firewallの国外提供に関するレポートが公開された。Great Firewallは、中国科学院の研究期間であるMassive and Effective Stream Analysis(Mesalab)と関係する企業Geedge Networksが輸出していた。輸出先は、カザフスタン、エチオピア、パキスタン、ミャンマー、そして特定不能だった1カ国、および新疆ウイグル地区、福建省、江蘇省などで使用されていた。Interseclabのレポートはこれらの国々について詳細を分析したもので、アムネスティはパキスタンに特化した内容になっている。 The Internet Coup SHADOWS OF CONTROL CENSORSHIP AND MASS SURVEILLANCE IN PAKISTAN 中国のGreat Firewallの概要 レポートによれば中国が提供するGreat Firewallは、一般によく知られている当局が規制する外部の特定のリソースへの阿アクセス制限、特定のワード含むトラフィックの遮断など以外に、ネットの全面遮断、VPNやTorの遮断、監視、利用者の特定などの機能を持っていた。さらにヘッダーの改ざん、スクリプトの挿入、テキストの改ざんなどを行うことが可能で、マルウェアを送り込むこともできるようになっていた。各国のISPに設置され、MITMやDPI+AIといった手法を用いて、これらを実現している。利用者を評価し、スコア化していることもわかっており、そのスコアに応じて異なる対応をおこなっている。それ以外にもDDoS攻撃を行うための仕組みなども存在した。特筆すべきは多くのパーツが既存の欧米の製品で代替可能となっている点である。これによって、制裁措置が課された場合でも入手可能な欧米な製品を使用することで同じ機能を実現できるようになっている。また、Great Firewallは地域単位、国家単位で設置することができ、相互に接続し、連携できる。 一般的には検閲のイメージがあるGreat Firewallだが、実際には中国を中心とした高度監視閉鎖ネットワークようなものだった。中国はこうした製品を各国に導入させることで当該国を中国の閉鎖ネットワークの傘の中に取り込むことができる。 サイバーセキュリティと地政学 実は中国が海外に輸出しているのはGreat Firewallだけではない。スマートシティの輸出においても中国は欧米をしのいでいる。下記の論考にくわしく書いたが、データフュージョンと閉鎖ネットによって統合化が可能となっている。 中国型スマートシティの地政学的挑戦 今回、暴露されたGreat Firewallとスマートシティはどちらも中国の地政学的ネットワークの側面をとらえたものである。さまざまなシステムおよび製品を使って、監視と傍受で対象地域の情報を完全に掌握し、通信内容の改ざんやデジタル影響工作で必要に応じて干渉し、市民の行動をスコア化し、スコアに応じた賞罰対応を行う。データは統合利用され、ネットワーク化された地域を統合的に管理下に置くことができる。サイバー攻撃は短期的に相手を弱らせ、情報を奪い取ることができるが、Great Firewallとスマートシティを導入させれば中長期的に支配下におくことができる。論考に書いたように、現代の戦いは全領域にわたる統合的なものである以上、こうした包括的なアプローチが不可欠なのだ。しかし、残念なことに欧米あるいは日本におけるアプローチはセクショナリズムの対症療法が中心であり、こうしたアプローチを立案、実施できていない。全領域の統合手的な計画は政策レベルで立案されるべきものだが、過去に公開された安全保障に関する議論の中では見当たらない。アメリカでは各企業が勝手に中国に技術を提供しようとしているくらいに統率がとれていない。サイバー地政学という言葉はたまに目にすることがあるが、ほとんどは海底ケーブルの話しだったりそいて、全領域の統合的アプローチの話しではない。 今回のGreat Firewallの報道や解説を見る限り、これを地政学的な挑戦ととらえたものは皆無であり、中国と、欧米の地政学的ネットワークのアプローチには大きなギャップがあることがわかる。問題は中国はギャップの存在と、欧米が行っていることを理解しているのに対し、欧米はいまだに中国が行っていることを理解していない点だ。正確に言えば断片的に理解しているものの全体を理解しておらず、当然その地政学的目的は理解されていない。この違いは致命的だ。 前述の論考でスマートシティは「地政学的陣取り合戦」と書いた。中国は十二分に「陣取り合戦」であることを理解しており、欧米は単なる市場シェアあるいは民主主義への脅威としかとらえていない。火急かつ速やかな対応が必要な地政学的驚異とは考えられていない。遅れを取るのは当然と言える。 近い将来登場する「アメリカの顔をした中国スマートシティベンダ」 Great Firewallの相互運用性について、今回のレポートでは制裁を受けても欧米の製品で代替可能という説明をしていた。もっと重要なことがある。それは欧米の製品で代替してしまい、見かけ上アメリカ企業で実態は中国からの影響が大きい企業(かつてのZOOMなど)が販売するようになったら、欧米や日本などに導入される可能性がきわめて高いことだ。そもそもすでに中国の監視関連製品(特に顔認識)は欧米でも導入されている。 アメリカの顔をした中国企業 Zoomとクラブハウスの問題 アメリカに対する中国のデータ優位性を莫大な事例から分析した『Trafficking Data』 欧米や日本の都市に中国型スマートシティが増加し、裏で中国の地政学的ネットワークにつながれば、中国は都市の行政よりも早く正確な情報を得ることができ、世論操作を仕掛けることもできるようになる。そのような企業が各地に生まれる前に手を打つ必要がある。
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AIエージェント時代のサイバーセキュリティ最前線〈サイバー防衛研究会9月例会報告〉

サイバー防衛研究会は我が国のサイバー安全保障関係者が参加するセミクローズドな会で、月例講演会などを主催し、我が国が直面している課題について情報と知見の共有を行っています。新領域安全保障研究所では、サイバー防衛研究会にて月例で行われている講演会の記録を掲載することになりました。今回はその第1回目です。  このレポートは、2025年9月に開催された「サイバー防衛研究会1」にて、CoWorker株式会社(本社:東京都新宿区)の代表取締役・山里一輝氏とセキュリティ責任者の伊藤達哉氏による講演内容に基づき作成した。…
AIエージェント時代のサイバーセキュリティ最前線〈サイバー防衛研究会9月例会報告〉
サイバー防衛研究会は我が国のサイバー安全保障関係者が参加するセミクローズドな会で、月例講演会などを主催し、我が国が直面している課題について情報と知見の共有を行っています。新領域安全保障研究所では、サイバー防衛研究会にて月例で行われている講演会の記録を掲載することになりました。今回はその第1回目です。  このレポートは、2025年9月に開催された「サイバー防衛研究会1」にて、CoWorker株式会社(本社:東京都新宿区)の代表取締役・山里一輝氏とセキュリティ責任者の伊藤達哉氏による講演内容に基づき作成した。 AIによる脅威にはAIで対抗すべきだと語る山里氏 導入:AIが変える攻防の速度  サイバーセキュリティの現場は、AIの登場によって様変わりしている。  たとえば、かつては侵入から情報窃取までに数十時間を要した攻撃が数秒へと劇的に短縮されているという。攻撃者はAIを駆使し、脆弱性を自動探索し、学習によって回避策を編み出し、同時多発的に仕掛けてくるとのことである。現状、フィッシングの成功率は従来の3倍に跳ね上がり、国内でも2024年上半期だけでランサム被害が114件、フィッシングや改ざんを含め1万件超が報告されたとされる。  従来型の防御は、こうした「秒単位で進む攻撃速度」に追いつけず、検知から対応までに日単位から週単位の遅延が生じることも少なくない。そのため、AIで生まれた脅威に、AIで対抗するという発想が不可欠になっていると強調された。 攻撃者が、脆弱性を発見して侵入しデータを窃取するまでに、51秒しかかからなくなっている(図:CoWorker株式会社) 対処のアプローチ:守りのAI戦略  講演では、「守りのAI」という観点から、AIエージェントを用いた防御戦略が紹介された。ここでいうエージェントは、特定の任務を自律的に遂行するAIプログラムを指すとのことである。  防御の視点は大きく三つに整理されていた。サービスとして提供しているとのこと。 Red Agent:攻める視点で守りを強化する脆弱性診断・ペネトレーションテスト。 Blue Agent:侵害後を想定したフォレンジック解析。 Chat SOC Agent:チャットやシステムの入口監視で兆候を捉える。  特徴的なのは、すべてを人間が操作するのではなく、AIが自律的にタスクをこなし、必要な場面だけ人間が判断を下す仕組みだという。この仕組みにより診断や解析に要する時間は従来の1/10に短縮されるとされ、人材不足が深刻な現場において有効であるとのことである。 【報告者の視点】 すでに海外では、AIを駆使したセキュリティツールが一般的に開発され提供されつつある。マルウェア解析や脆弱性診断の一部は、クラウドサービスを通じて標準的な機能として提供されている。しかし、日本国内では、必ずしも同じ開発水準には到達していない印象だ。そうした中で、日本のベンチャーが自らの力でAIセキュリティを開発している点は特筆すべきだと感じた。 脆弱性診断やペネトレーションテストを実演する伊藤氏 具体的な事例とデモ ソースコード脆弱性診断  講演のデモでは、AIがWebアプリケーションのソースコード全体を走査し、脆弱な箇所を自動的に抽出する様子が示された。AIは単にエラーを指摘するのではなく、「この部分で入力値が未検証」「この認証フローは脆弱である」といった説明を添えてリスクをラベル付けする。Critical、High、Lowといった分類が行われるため、人間のレビューは高リスク部分に集中できる。さらに、修正のアドバイスも提示され、数クリックで再解析や詳細レポートを生成することも可能とされていた。従来であれば数日を要した作業が数時間で完了するという点は、専門事業者であっても作業の効率化で大きな貢献が期待できる。 【報告者の視点】 私自身も研究として、ソースコードの脆弱性診断をAIにやらせる試みを行ったことがある。だが実際には、コード量が数千行を超えると機械学習モデルによる処理が困難になったり、実行時の内部状態(メモリの挙動や動的入力)を考慮しないと正確な診断ができなかったりと、意外に簡単ではない。講演で示されていたAIエージェントの仕組みは、単純なテキスト解析に留まらず、コード全体を把握しつつ、部分的に深掘りできる点で実用性が高いと感じた。 Red Agentは、Webアプリケーションのソースコード全体を走査し、脆弱な箇所を自動的に抽出する(図:CoWorker株式会社) ネットワーク・ペネトレーションテスト  APIの仕様書が存在しない場合でも、AIが実際に通信を行い、その挙動を解析して自動的にAPI仕様書を作成することができるとされた。その後、AIは脆弱性を突いて侵入を試みる。  別のデモでは、AIが自律的に「/etc/passwd」(パスワードファイル)を取得し、システムの権限情報を確認したうえで、横展開(ラテラルムーブメント)の可能性を評価するプロセスを実演した。さらに、エラーが発生した場合も別のツールや手法を自ら選択し、攻撃シナリオを継続する点が強調されていた。 フォレンジック解析  Blue Agentによるフォレンジック解析のデモでは、感染が疑われるサーバーのディスクイメージをAIが受け取り、わずか10分程度で主要な痕跡を抽出する事例も示された。ファイルのカービング機能により削除済みのファイルも復元され、ハッシュ値が自動的に算出されて既知のマルウェアとの照合が行われるとのこと。さらに、タイムラインを構築し、「いつ、どのファイルが改ざんされたのか」「どの経路で侵入されたのか」といった情報が整理されるとのことであった。従来なら一日がかりの作業を大幅に短縮できる点が強調されていた。 チャット監視と情報漏洩防止  SlackやTeamsなどの業務チャットに「AWSの秘密鍵」が投稿された場合、即座に警告が出る仕組みも紹介されていた。これは一見単純な機能に思えるが、実際には情報漏洩がもっとも多発する「人間のミス」に対処する有効なアプローチである。AIは文脈を理解して重要情報を識別するため、単なるキーワード検知よりも精度が高いとのことである。 Chat SOC Agentは、SlackやTeamsなどの業務チャットやシステムの入り口を監視してアラームを発する(図:CoWorker株式会社) まとめ:AI時代の防御は「人×AI」の協働へ  講演を通じて強調されていたのは、AIによる攻撃速度の飛躍的な加速に対し、AIを前提とした常時稼働の防御体制が不可欠であるという点であった。AIが診断や解析を担い、人間は方針決定や最終判断を行う。この「人×AI」の協働が、現実的かつ持続可能な防御モデルになりつつあるとのことである。  もちろん、AIには誤検知や過検知のリスクがある。そこで重要になるのは、検証可能な範囲を優先すること、そして最終判断を人間が行うことだ。AIは万能ではなく、あくまで人間を補完する存在であるという認識が共有されていた。 【報告者の視点】 特筆すべきは、こうした取り組みが単なる海外製品の輸入の紹介ではなく、日本国内のテックベンチャーが自ら開発を進めている点である。現状は「フルオートでAIが全てを担う」という段階ではなく、ペンテスターやセキュリティ診断担当者を支援する位置づけにある。しかしながら、既に作業時間の短縮や診断範囲の拡大といった具体的な成果が出始めており、現場にとって大きな実用的価値を提供することが予見できる。  海外ではAIを使った防御ツールが一般化しつつある中、日本でも同様の潮流が芽生えつつあることを示す点で、この講演は示唆に富むものだった。  攻撃の主役がAIになりつつある現在、防御側もAIを武器にしなければならない。その現実を浮き彫りにする講演であった。 注
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中国が狙うインターネット世界での主導権

1.はじめに 今回はKonstantinos Komaitis氏による「Analysis: China’s bid to rewrite the internet’s DNA」( )を紹介する。この記事では、中国が現在画策する次世代の情報通信規格への支配とそれによってもたらされる可能性のある未来への警告がなされている。…
中国が狙うインターネット世界での主導権
1.はじめに 今回はKonstantinos Komaitis氏による「Analysis: China’s bid to rewrite the internet’s DNA」( )を紹介する。この記事では、中国が現在画策する次世代の情報通信規格への支配とそれによってもたらされる可能性のある未来への警告がなされている。 まず、前提として20年前までと現在では状況が大きく異なることを説明しておく必要がある。中国が成長し、影響力を拡大し、欧米の影響力が衰退しただけでなく、グローバルサウスの国際舞台での存在感を増したことがあげられる。それを象徴する出来事がWCIT-2012である。WCIT(世界国際電気通信会議)におけるITR(国際電気通信規則)改正に関わる検討ではグローバルノースとグローバルサウスで大きく意見が分かれた。あるいは、民主主義陣営と権威主義陣営と呼ぶことができるかもしれない。アラブ・アフリカ諸国やロシアなどがインターネットに対する規制・管理強化に賛同し、グローバルサウスが指示する案が可決された。しかし、グローバルノース陣営の多くは批准しなかった(結果を批准すると各国には法制化の義務が生じる)。標準化とは離れるが、2020年に新疆ウイグル問題についてドイツが国連で39カ国の代表として懸念を表明したものの、中国を支持した国はその倍以上だった。香港での弾圧を巡って行われた同じく第44回国際連合人権理事会では中国支持派が多数(53カ国)となり、およそ半分の27カ国が中国を批判した。この傾向は毎年公開されている民主主義の指標V-Demでも確認されており、現在、人口と国の数では民主主義国は多数派ではなくなっていることが中国の標準化戦略の背景として重要な意味を持っている。1国1票の原則に則って投票した場合、民主主義陣営は負ける可能性がきわめて高い。 2.中国が狙う「標準化戦略」 議論が続く次世代インターネットのルール・規格策定において、中国は指導的な立場に立つことを望み、そのための長期戦略を実施しつつある。本記事によれば、中国はデータの流れやネットワークの構造、接続方式などの次世代の基盤的技術を自国に都合よく形作ることで、次世代インターネットのルールを国家中心で、より統制的なシステムに書き換えようとしている。これに成功すれば、通信への検閲や監視を制度として埋め込んだ新規格の下で、技術と権威主義を結びつけたインターネット構造が世界に広がる可能性がある。 3.背景と中国による長期戦略 筆者によれば、中国が意図するところは以下の3点に集約される。 情報の流れを監視に最適化されたネットワークシステムにすべて封じ込めること 自国有利なネットワーク基準によって、世界市場を中国のテック大手に誘導すること 他国政府にも集権的で検閲の容易なシステムを押し付け、デジタル独裁の構造を輸出すること この構想の実現のために中国が用いているツールの一つに「世界無線通信会議(WRC)の主催」がある。これは約4年に1度開催される国連会議で、政府と業界リーダーが世界の電波とネットワークの運用方法を決定する場である。WRCでは5G・6Gの周波数帯から衛星インターネット、緊急通信、グローバル接続の将来像などあらゆるルールが決定される。つまりこれは単なる技術的会合にとどまらず、インターネット空間においてどの国の価値観が優先されるかを決定する場になると考えられている。WRC開催権を獲得すれば、中国は世界的な注目を浴び、自国のシステムを披露する機会を得ると同時に、開催国としての優位性を活かして、サイドミーティングの主導や同盟関係の構築、さらにはインターネットの未来に関する自らの主張を拡大することも可能だと本記事は指摘する。もし仮に中国が次回の会議において優位な立場を確保すれば、現在の開放的で相互運用可能なインターネットは、全く異なるものに置き換わる可能性があると記事は指摘する。つまり、自由な表現やプライバシーが蔑ろにされる、国家監視による「世界規模の盗聴網」へと変貌する可能性がある。次世代技術市場はファーウェイ、ZTEなどの中国企業に有利に操作され、シリコンバレーは締め出されるかもしれない。軍事通信、重要インフラ、緊急通信網の全てが、中国で形作られたルールのもとで稼働する事態になりかねないと本記事では指摘されている。 これらが理論上の脅威でない理由として、筆者は中国による「New IP」の提案を例示している。これは政府にデータフローのほぼ完全な支配権を与えるトップダウン型のインターネット構造とされる。今現在、採択はされていないが、国際電気通信連合(ITU)の研究グループ内でこの提案は残り続け、中国は復活の機をうかがっているとされている。 中国はこれらの戦略を非常に長期的なビジョンと忍耐強さで実施していると筆者は指摘している。それは国際機関へのエンジニア、外交官、ロビイストを大量に投入することであり、また中国のテック大手による国際機関での提案や外交交渉への深い関与や、それによる戦略的発言力の確保である。 4.自由で開放的なインターネット空間を守るために これらの中国の動きに対し、対抗すべきアメリカなどの自由主義諸国の対応は極めて緩慢だと記事は指摘している。現在のインターネットを守るために重要なこととして、筆者は技術の標準化に対する各国の意識を改めることを求めている。 ITUやWRCといった国際組織に、自由で相互運用可能な現在のシステムを守るための技術者、外交官、企業を送り込むこと 中国の支配に抗える組織や同盟に投資すること 政策立案者、資金提供者、一般市民にインターネットの未来の重要性を啓発すること 中国がインターネットのルールを決定してしまう前にこれらのことに気づかなければ、今我々が享受するインターネット世界は大きく損なわれてしまうと筆者は警告している。ただ、ここには重要な視点がひとつ欠けている。すでに世界の多くは非民主主義であり、この状況を変えない限り、根本的な解決にはならないということだ。標準化はその結果のひとつに過ぎない。 参考文献 一般財団法人 日本ITU協会「世界国際電気通信会議(WCIT-12)結果報告(総括)」 (閲覧日2025/10/05) 新疆ウイグル問題が暗示する民主主義体制の崩壊……自壊する民主主義国家 (閲覧日2025/10/05) V-Dem
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10/8 ポストシンギュラリティ共生からNAIA、知性共生マニフェスト、比較生命体学 山川宏

ポストシンギュラリティ共生からNAIA、知性共生マニフェスト、比較生命体学 山川宏 2025年10月08日12:00より1時間。ASI勉強会第3回は、ポストシンギュラリティ共生から、NAIA(Necessary Alliance for Intelligence Advancement)、知性共生マニフェスト、比較生命体学をテーマに最前線で研究活動を続けている山川宏先生をお迎えしてお話しをおうかがいします。…
10/8 ポストシンギュラリティ共生からNAIA、知性共生マニフェスト、比較生命体学 山川宏
ポストシンギュラリティ共生からNAIA、知性共生マニフェスト、比較生命体学 山川宏 2025年10月08日12:00より1時間。ASI勉強会第3回は、ポストシンギュラリティ共生から、NAIA(Necessary Alliance for Intelligence Advancement)、知性共生マニフェスト、比較生命体学をテーマに最前線で研究活動を続けている山川宏先生をお迎えしてお話しをおうかがいします。 これから訪れるであろう多様な知性との共生のために必要な条件、マニフェスト、実装のためのロードマップなど広く人類が問題意識を共有し、向き合うべき課題を紹介していただきます。ホスト役はbioshok氏です。 参加登録はこちらから
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AI導入で進む人員選別、そして後悔する過半数の企業

世界最大級の総合コンサルティング企業「アクセンチュア(Accenture)」が2025年度の決算で、「AIを活用できない従業員、あるいはAI活用の新しい技能を習得する見込みがない従業員に対して、退職を促す可能性がある」ことを明言した。 今回のアクセンチュアの発表に対しては、今後の収益や競争力を現実的に見据えた再編だと評価する声がある一方で、「これまで企業に貢献してきた従業員には厳しすぎる対応」「成熟した従業員を追い出すための口実なのでは」などといった批判の意見も挙がっている。 アクセンチュアとAI…
AI導入で進む人員選別、そして後悔する過半数の企業
世界最大級の総合コンサルティング企業「アクセンチュア(Accenture)」が2025年度の決算で、「AIを活用できない従業員、あるいはAI活用の新しい技能を習得する見込みがない従業員に対して、退職を促す可能性がある」ことを明言した。 今回のアクセンチュアの発表に対しては、今後の収益や競争力を現実的に見据えた再編だと評価する声がある一方で、「これまで企業に貢献してきた従業員には厳しすぎる対応」「成熟した従業員を追い出すための口実なのでは」などといった批判の意見も挙がっている。 アクセンチュアとAI アクセンチュアはアイルランドのダブリンを本拠地とする世界最大級の総合コンサルティング企業で、世界の120か国以上に拠点を持ち、約70万人の従業員が在籍している。多くの大手グローバル企業を顧客とし、経営戦略や業務改革の立案から、具体的なIT導入やクラウドの活用支援まで多岐にわたったサービスを提供しており、特にテクノロジーを活用したコンサルティングに定評がある。 2025年度のアクセンチュアが、AI関連ビジネス(特に生成AIやエージェント型AI関連が目立っている)で得られた収益は約27億ドルとなった。これは前年度比の約3倍に該当している。そんな同社は現在、「再構築戦略(business reoptimization strategy)」を進めており、組織や人員に関する大規模な見直しを実施している。そして今回の発表は、平たく言うなら「AIを活用できない従業員や、いまからAI活用のための技術を習得できそうにない従業員は、もう辞めてもらいたい」と宣告するような内容だった。 現在のアクセンチュアには、すでに「AIに特化した専門家」が77,000人在籍している。2023年の時点では約40,000人と発表されていたので、この2年間で倍近くまで増やしたということになる。さらに同社は、550,000人の従業員に対しても「生成AIの基礎知識に関する研修を実施した」と報告している。 アクセンチュアの戦略に対する賛否の声 複数のビジネス系メディアは、今回のアクセンチュアの方針を「再教育と人員選別を組み合わせた戦略(二つの軸を取った戦略)」と表現しており、AI関連サービスが急激に発展している現代においては、今後の収益性・競争力維持を見据えてリスクヘッジした再編だと分析する意見も多い。 一方、IT系メディアのコメント欄や英語圏の掲示板では、「これは典型的なAIハイプであり、見せかけの変革でしかない」「年齢差別の幕開け」「体のいいリストラ」といった批判的な声が目立っている。たとえば次のような意見だ。 ・ただ「AIに対応して変革している先進的な企業」というイメージを狙った戦略だ。とにかくAIを重視したポーズを見せたがっているだけ・「AIを活用できる従業員」や「リスキリングの見込みがない従業員」などの区別が曖昧すぎる。どのように判断するつもりなのか・従業員の再教育に注力したいというよりも、「AIを使えない者は去れ」と非人道的な圧力をかけているように感じる・AIを導入して高コストの従業員を減らしたい企業が、「当社の経験上、45歳以上の人はAIを効果的に使えない」などの理由をつけて従業員を追い出す、あるいは年齢差別に基づいて雇用をするプランだろう・これは、長年にわたって貢献してきた高給取りの人材を「経験は豊富だがAI関係のスキルは浅い」といって解雇するための口実ではないのか・アクセンチュアが「ITに対応できない者に退職を求める」という方針を打ち出したことで、他業種の企業にも「AI主導型/人員削減」の波が広がるのではないか より急進的な「AIファーストと人員削減」 今回のアクセンチュアが多くのメディアの注目を集めたのは、「業界最大手レベルのグローバル企業で、これほど明白にAIを優先した人員選別の意向が語られることは珍しかったため」だろう。しかしベンチャー企業やスタートアップ企業では、アクセンチュアよりも急進的な(あるいは過激な)AI優先型の人員削減が報告されている。 たとえばフリーランス向けグローバルプラットフォーム「Fiverr」を提供しているイスラエルのテクノロジー企業Fiverrも、つい先日に従業員約250人(全従業員の約30%)のレイオフを発表したばかりだ。 「AIファースト」を掲げる同社CEOのMicha Kaufmanは2025年4月、従業員に対して「AIツールのスキルアップができない者は、数か月のうちにキャリアの変更を迫られるリスクがある」という通達を出し、AIスキル重視の方針を伝えていた。そして9月15日には「よりスリムでシンプルな組織を目指す」という意図のもと、横断的で大規模な解雇と再配置に踏み切ることを発表した。 アクセンチュアよりも明確に、容赦なく「AIを学んだ者だけ残した」方針と言ってよいだろう。 企業向けのソフトウェアソリューションを提供している米国のIT企業「IgniteTech」の場合は、それよりも過激だった。同社はAIファーストの企業に転換するための措置として、2023年から2024年にかけて全従業員の約80%をレイオフしてきた。これは「社内でAI導入に強く反発した従業員(特に技術部門)への対応」が目的だったと考えられている。 同社CEOのEric Vaughanは、「AIがもたらす変革の可能性を信じる心」が従業員に不可欠だと説明しており、「それを理解できない者は解雇するしかない」「信じていない人間を強制的に変えることはできないからだ」とまで言い切っている。 これらの急進的なトップダウン型の決断は、企業としてのリスクも高くなる。「AI優先で革新的な企業」のイメージを強くアピールできる反面、労働者の人権を軽視した行動だと非難する声も挙がるだろう。もしもアクセンチュアのような大企業が、このような過激な判断に踏み切った場合には、企業イメージに影響が出るだけでなく、従業員に不信感を持たれた結果として優秀な人材の大量流出(それに伴う顧客や知見の流出)を招く可能性もある。 一方で、FiverrやIgniteTechのような企業の場合は、このような大量解雇に踏み切ることも「リスクを承知で組織の大変革を目指した現実的な判断」だという見方もできるのかもしれない(Vaughanに関しては、さすがに言動が極端すぎるようにも思われるが)。 過半数が「あの人員削減は誤りだった」と回答 2023年から2024年にかけて約80%の従業員を解雇したVaughanは、2025年9月現在も「非常に難しい決断だったが、それは正しい判断だった」と語っている。さらに彼は、もしも再び同じような状況になった場合には、同様のレイオフを行うだろうともコメントしている。 その一方で、AIの導入に伴い人員削減を行った企業では「早すぎた決断」を後悔しているケースも多いようだ。英国を拠点とするSaaS企業のOrgvueが2025年4月29日に発表した調査報告によると、AIの推進を理由にスタッフを削減した企業の過半数は、その判断を「誤りだった」と認めている。 このOrgvueの調査は、米国、カナダ、英国、アイルランド、オーストラリア、香港、マレーシア、シンガポールなどの中〜大規模の組織に所属している上級幹部を対象として2024年に実施されたものだ。有効回答者1,163人のうち「AIを導入した結果、従業員を冗員と判断した(削減した)」と回答したのは39%。そして削減を実行したうちの55%が「その判断は誤りだった」と回答した。 しかし彼らは決してAIの影響を軽視しているわけではない。回答者の72%が「AIは今後3年間の人材活用変革の主要推進力である」と考えており、またAIに投資した企業の80%は「2025年に投資額を増やす」という意向を示し、そして76%が「我々は2025年末までにAIを充分に活用できるという自信がある」と回答している。その一方で、27%が「明確なAIのロードマップを持っていない」、38%は「組織へのAIの影響を充分理解していない」、25%は「どの役割がAIに恩恵を得るか把握していない」、30%は「どの役割が自動化のリスクにさらされているか把握していない」とも回答している。 この調査結果を見ていると「AI導入による人材改革には非常に積極的で、自分たちは乗り遅れないという自信もある反面、実際には何が必要なのか、何が起きているのかもよく分からないまま、とにかくAIを導入してスタッフを削減してみた結果、いまは後悔している企業のリーダーたち」が決して少なくないように感じられてくる。 もちろん「AIの急成長に浮かれているアクセンチュアも、そのような企業と同じ轍を踏むに違いない」と言いたいのではない。少なくとも彼らは自社の置かれた状況やリスクを理解したうえで、できるだけ現実的な判断へと踏み切ったようにも見える。しかしAIのロードマップを持たず、従業員の育成についても真剣に考えていないような組織が「とにかく我々もAIを導入すればいいのだ、そして人員のコストを削減するのだ」と安直に倣うのは、あまりにも無謀すぎる判断だろう。 先の調査を行ったOrgvueのCEO、オリバー・ショーは以下のようにまとめている。「2024年は(AIへの)投資と楽観主義が大いに目立った年だった。しかし一方で、企業は『従業員への影響を充分に理解しないままAIで人材を代替しようとすれば、大きな失敗につながる』ということも痛感しているようだ」「我々はいま、過去数十年間で最も深刻な人材不足に直面している。人材育成の戦略を明確に持たずに従業員を解雇するのは無鉄砲だ。一部の経営者は『AIに期待できる生産性の向上を実現するには、人々と機械が協働する意識的なスキルアッププログラムが必要だ』ということをようやく認識しはじめている」 引用、参考資料 If you can't use AI then it's bye bye, Accenture tells staff・The Register to ‘exit’ staff who cannot be retrained for age of AI $865 million reinvention includes saying goodbye to people without the right AI skills _ Fortune…
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PSYCHO-PASSの世界に突入したトランプ政権

トランプは2025年9月25日、国家安全保障大統領覚書7号(NATIONAL SECURITY PRESIDENTIAL MEMORANDUM/NSPM-7)に署名した。国家安全保障大統領は大統領令と異なり、強力で機密扱いとなることが多いものだ。過去にはNSAに国内の通信傍受を許可したものなどがあった。 Countering Domestic Terrorism and Organized Political Violence…
PSYCHO-PASSの世界に突入したトランプ政権
トランプは2025年9月25日、国家安全保障大統領覚書7号(NATIONAL SECURITY PRESIDENTIAL MEMORANDUM/NSPM-7)に署名した。国家安全保障大統領は大統領令と異なり、強力で機密扱いとなることが多いものだ。過去にはNSAに国内の通信傍受を許可したものなどがあった。 Countering Domestic Terrorism and Organized Political Violence 今回は国内のテロや政治的暴力に焦点をあて、その予防を目的とした内容になっている。具体的には、反米主義、反資本主義、反キリスト教および移民、人種、性別に関して過激な主張(移民受け入れ、人種差別撲滅、LBGTQ+などを指す)や、伝統的なアメリカの家族、宗教、道徳に関する価値観への敵意が対象となっている。一般的にはリベラルあるいは左派と呼ばれる人々の主張とほぼ同じであるため、左翼をターゲットとした抑圧と指摘するメディアもある。 Trump signs memo targeting ‘domestic terrorism’ amid fears of crackdown on the left また、アメリカ自由人権協会(ACLU)は批判者などへの弾圧や脅迫に他ならないと述べている。 CLU Statement on the Trump Administration's Memorandum Targeting Political Opponents 上記のような傾向を持つものを潜在犯として、政府の対テロ組織によって狩り出すことを目的としている。まるでアニメPSYCHO-PASS、あるいはフィリップ・K・ディックの描いた近未来SFの世界だ。潜在犯の検知、特定の具体的な内容はまだわからないが、SNSでの発言や通信傍受、Flockなどの総合的な監視からリベラル係数あるいは反トランプ係数の高い者をあぶり出すことになりそうだ。 当然ながらこうした締め付けは激しい反発を呼ぶ。米国内への軍の派遣など国内の分断を煽るように見える一連の行動は、意図的に「管理可能な緊急事態」を作りだし、そのうえで「緊急事態」を宣言し、権力を大統領に集中させ、次の大統領選も行わないつもりなのかと勘ぐりたくなるほど荒唐無稽だ。
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