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KPLUSヘルメットの魅力に迫る。台湾発、デザインと機能美の融合

こんにちは、ヒロヤスです。大阪の街を今日も自転車で駆け抜けているアラフォー、デザイナーの僕です。 僕のブログをいつも読んでくださっている皆さん、本当にありがとうございます。さて、皆さんもご存知の通り、自転車に乗る際のヘルメット着用が努力義務となり、その必要性がこれまで以上に大きくなってきました。ご多分に漏れず、この流れの先には着用が完全に義務化される日も、そう遠くないでしょう。…
KPLUSヘルメットの魅力に迫る。台湾発、デザインと機能美の融合
こんにちは、ヒロヤスです。大阪の街を今日も自転車で駆け抜けているアラフォー、デザイナーの僕です。 僕のブログをいつも読んでくださっている皆さん、本当にありがとうございます。さて、皆さんもご存知の通り、自転車に乗る際のヘルメット着用が努力義務となり、その必要性がこれまで以上に大きくなってきました。ご多分に漏れず、この流れの先には着用が完全に義務化される日も、そう遠くないでしょう。 そんな時代の変化の中で、これまで以上に「どんなヘルメットを選ぶか」ということが、僕たちサイクリストにとって重要なテーマになっています。今回は僕が普段から愛用しているヘルメットブランド、「KPLUS(ケープラス)」について、その魅力を余すところなくお伝えしたいと思います。 自転車に乗る上で、安全性はもちろん最も大切です。でも、デザイナーという仕事柄か、どうしても身につけるものの「美しさ」から逃れられない性分でして。安全性、快適性、そして被った時のシルエットの美しさ。この三つを追い求めて色々なヘルメ-ットを試した結果、僕がたどり着いた一つの答えがKPLUSでした。ちなみに僕が使っているのは、少し珍しい紫色のモデル。この発色の良さも、KPLUSならではの魅力の一つです。 他のどのメディアよりも深く、KPLUSというブランドの背景や哲学、そして製品が持つ物語を掘り下げていきたいと思いますので、ぜひ最後までお付き合いください。 KPLUSとは?台湾・台北で生まれた新星 KPLUSというブランド名を聞いて、どこの国のメーカーかすぐに思い浮かぶ人は、まだ少ないかもしれません。彼らは2014年に台湾の台北で産声をあげた、比較的新しいヘルメットブランドです。 しかし、その背景には確かな技術力と経験が横たわっています。実はKPLUSの親会社は、30年以上にわたって世界中の名だたるヘルメットブランドのOEM生産(他社ブランドの製品を製造すること)を手掛けてきた、いわばヘルメット製造のスペシャリスト集団。その製造ノウハウと品質管理の厳しさは、世界トップレベルと言っても過言ではありません。 そんな盤石な基盤の中から、「自分たちの理想とする、新しいヘルメットを作りたい」という情熱を持った若い世代のチームが中心となって立ち上げたのがKPLUSなのです。長年培われた確かな技術力に、新しい世代の感性が加わって生まれたブランド。それがKPLUSの正体です。 スポーツとファッションの融合。KPLUSのデザイン哲学 KPLUSの製品を見ていると、他のブランドとは一線を画す独特の美意識を感じます。それは彼らが掲げる「スポーツとファッションのいかに融合させるか」という哲学に起因しています。 サイクリングはスポーツですが、街乗りやツーリングは僕たちの日常の延長線上にあります。だからこそ、いかにも「競技用」といったデザインではなく、普段の服装にも自然に溶け込むような、洗練されたデザインが必要だと彼らは考えました。 「ありそうでなかった美しさ」を追求し、機能性を損なうことなく、まるでアートピースのような美しいフォルムを生み出すこと。そのために、シェルの形状、色の出し方、細部の仕上げに至るまで、徹底的なこだわりが詰め込まれています。 もちろん、安全性への取り組みも一切妥協はありません。むしろ、安全性を再解釈し、新しいテクノロジーを取り入れながら、より高いレベルの安全性をファッショナブルなデザインの中に落とし込んでいるのです。 アジア人のための「ニューアジアンフィット」という答え ヨーロッパのブランドのヘルメットを被った時に、どうにも頭の形に合わない、いわゆる「キノコ頭」になってしまう…そんな経験をしたことがあるサイクリストは、僕だけではないはずです。これは欧米人とアジア人の頭蓋骨の形状の違いからくる、構造的な問題でした。 KPLUSはこの問題に真正面から向き合いました。膨大な頭部形状のデータをリサーチし、長年の製品開発で培った技術を投入して、彼ら独自の「ニューアジアンフィット」を開発したのです。 このフィット感が、本当に素晴らしい。ただ幅が広いだけでなく、頭部全体を優しく、かつ均一に包み込んでくれるような感覚です。被った瞬間に感じる、オーダーメイドのような一体感。これにより、長時間のライドでも痛みや不快感が出にくく、安全性も格段に向上します。 そして何より、シルエットが本当に美しい。横から見ても、前から見ても、頭が不自然に大きく見えることがなく、スッキリとした自然な見た目を実現してくれます。僕がKPLUSを選んだ大きな理由の一つが、この完璧なフィット感とシルエットの美しさでした。 KPLUSを代表するプロダクト ここでは、現在のKPLUSのラインナップの中から、特徴的なモデルをいくつかピックアップしてご紹介します。 ロードバイク / オールラウンド NOVA KPLUSの中で最も人気のあるモデルと言えるのが、このNOVAです。シンプルで洗練されたデザインは、どんなウェアにも合わせやすく、まさに「ありそうでなかった」美しいシルエットを実現しています。15個のベンチレーションホールが効率的な通気性を確保し、快適性も抜群。僕が使っているのもこのモデルの系統です。 ALPHA フィット感、通気性、エアロダイナミクス、デザイン性といったヘルメットに求められる要素を、極めて高い次元でバランスさせたフラッグシップモデル。多方向からの衝撃を緩和する「Mips® Air」システムを搭載し、最高の安全性を備えながらも軽量性を損なっていません。レースシーンでもその性能を遺憾なく発揮します。 グラベル / クロスオーバー META マグネットで簡単に着脱できるバイザーが特徴的なモデル。オンロードを軽快に走りたい時はバイザーを外し、グラベルやトレイルへ入る時にはバイザーを装着する、といったクロスオーバーな楽しみ方に対応します。アースカラーを中心とした絶妙なカラーリングも魅力です。 アーバン / 街乗り RANGER KPLUSのアーバンシリーズを代表するモデル。より深い帽体と優れた調整機能が、街中でのライディングに安心感をもたらします。ヘルメット後部には着脱可能なLEDライトが標準で付属しており、夜間の視認性を高めてくれるのも嬉しいポイントです。 まとめ 今回は、台湾発のヘルメットブランド「KPLUS」について、その成り立ちから哲学、製品の魅力までを深く掘り下げてみました。 30年以上のOEM生産で培われた、確かな技術的背景 「スポーツとファッションの融合」を掲げる、洗練されたデザイン哲学 アジア人の頭を知り尽くした「ニューアジアンフィット」による最高の被り心地 KPLUSは、ただ安全なだけ、ただ格好良いだけのヘルメットではありません。サイクリストが本当に求めるものは何かを真摯に追求し、技術と美意識を見事に融合させた、まさに現代を走る僕たちのためのブランドだと感じています。 もしあなたがヘルメット選びで悩んでいたり、今のヘルメットにしっくりきていないのであれば、ぜひ一度KPLUSを試してみてほしいと思います。きっと、その素晴らしいフィット感と美しいデザインの虜になるはずです。 この記事が、あなたのヘルメット選びの参考になれば嬉しいです。皆さんが使っているヘルメットや、KPLUSについての感想などがあれば、ぜひコメントで教えてくださいね。 それでは、また次の記事で会いましょう!ヒロヤスでした!
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ROCKSHOXの軌跡をたどる、僕が惹かれるサスペンションの哲学

こんにちは、ヒロヤスです。大阪の街を今日も自転車で駆け抜けているアラフォー、デザイナーの僕です。 僕のブログをいつも読んでくださっている皆さん、本当にありがとうございます。さて、今回は、僕が長年追いかけてきたMTBパーツブランド、ROCKSHOXについて、他のどのブログにも負けないくらい深く掘り下げてお伝えしたいと思います。…
ROCKSHOXの軌跡をたどる、僕が惹かれるサスペンションの哲学
こんにちは、ヒロヤスです。大阪の街を今日も自転車で駆け抜けているアラフォー、デザイナーの僕です。 僕のブログをいつも読んでくださっている皆さん、本当にありがとうございます。さて、今回は、僕が長年追いかけてきたMTBパーツブランド、ROCKSHOXについて、他のどのブログにも負けないくらい深く掘り下げてお伝えしたいと思います。 マウンテンバイクの歴史を語る上で、このブランドの存在は決して外せません。サスペンションという概念をMTBの世界に持ち込み、常識を覆したそのストーリーには、僕たちデザイナーやモノづくりに携わる人間が学ぶべき多くの哲学が詰まっていると感じています。単なるパーツではなく、文化を作り上げてきたROCKSHOXの情熱と軌跡を、僕なりの視点でお話しします。 創業者の夢から始まった革新 ROCKSHOXの歴史は、1989年、カリフォルニア州のガレージから始まりました。 創業者であるポール・ターナーは、元々モトクロスレーサーとして活躍していました。彼は、オートバイの世界では当たり前だったサスペンションの快適性と走破性を、自転車にも持ち込めないかと考えていました。当時は、ほとんどのMTBが「リジッドフォーク」と呼ばれるサスペンションのない硬いフォークを使っており、ライダーは路面からの衝撃をダイレクトに受けていた時代です。 ポール・ターナーとスティーブ・サイモンズは、その常識に挑戦しました。そして、試行錯誤の末に生まれたのが、彼らの最初のプロダクト「RS-1」です。このフォークは、軽量で画期的なエアスプリングシステムを採用し、瞬く間にMTBレース界の勢力図を塗り替えました。この瞬間、ROCKSHOXは単なるパーツメーカーではなく、マウンテンバイクの未来を切り拓く存在となったのです。彼らの成功は、技術だけでなく、「誰もがもっと楽しく、速く走れるようにしたい」という創業者の純粋な想いがあったからこそだと僕は考えます。 日本での歩みと愛される理由 ROCKSHOXは、1990年代初頭のMTBブームと共に日本にも上陸しました。当初は、その革新的なテクノロジーと、どこかメカニカルで力強いデザインが、多くのMTBライダーの心を掴みました。特に、その特徴的な赤色はブランドのシンボルとなり、今でも「ROCKSHOXといえば赤」というイメージを持つライダーも多いのではないでしょうか。 日本で長く愛され続けている理由は、ハイエンドモデルから手頃な価格帯のエントリーモデルまで、幅広いラインナップを展開している点にあります。レースで勝利を目指すプロライダーはもちろん、初めてMTBを買う初心者まで、自分のレベルや予算に合わせた最適なサスペンションを見つけられるのが、ROCKSHOXの大きな魅力です。また、メンテナンスのしやすさも高く評価されており、長く付き合える相棒として選ばれ続けています。 ROCKSHOXが追求するテクノロジーと哲学 ROCKSHOXのプロダクトは、常に「シンプルさ」と「高性能」の両立を追求しています。最新のモデルに搭載されている技術は、その哲学を体現していると言えるでしょう。 Charger 3ダンパー: 高速・低速のコンプレッション調整が独立して行えるため、路面状況や好みに合わせて、非常に細かなセッティングが可能です。ライダーが直感的に、かつ正確に調整できることを重視した設計です。 DebonAir+エアスプリング: 小さな段差でもスムーズに動く、高い感度を持っています。これにより、疲労を軽減し、より快適なライディングを実現します。 ButterCups(バターカップ): 高周波の振動を吸収する特殊な素材で、手や腕の疲労を大幅に軽減します。長時間のダウンヒルや荒れたトレイルでも、ライダーをサポートします。 これらの技術は、単なるスペックの向上だけでなく、「ライダーがより長く、より楽しく、そしてより速く走る」ための手段として開発されています。派手な機能よりも、ライダーの感覚に寄り添うことを大切にする姿勢に、僕は強く共感します。 ROCKSHOXを代表するプロダクトラインナップ ここでは、現在販売されているROCKSHOXの代表的なプロダクトを、それぞれの用途別にピックアップしてご紹介します。 クロスカントリー(XC)/トレイル向け SID: 軽量性とレースでの高いパフォーマンスを両立したXCレーシングフォーク。特にSID SLは、最軽量を求めるライダーに支持されています。 REBA: XCからトレイルまで、幅広い用途に対応する万能モデル。初心者からベテランまで、多くのライダーに選ばれています。 トレイル/エンデューロ向け PIKE: トレイルライドの定番とも言えるモデル。軽量でありながら高い剛性を持ち、登りも下りも快適に楽しめるバランスの良さが特徴です。 LYRIK: エンデューロやアグレッシブなトレイルライドに特化したモデル。PIKEよりも長いトラベル量と高い剛性を持ち、ハードなライディングをサポートします。 ダウンヒル向け ZEB: ストロークの長いエンデューロやダウンヒルに特化した、高剛性フォーク。38mmの太いアッパーチューブは、過酷な路面でも圧倒的な安定感とコントロール性を誇ります。 BOXXER: ダウンヒルレースの最高峰モデル。長年にわたり、ワールドカップの舞台で数々の勝利を支えてきた実績を持ちます。 グラベル向け RUDY: グラベルバイクの走りを革新したサスペンションフォーク。トラベル量が少ないながらも、荒れたグラベルや未舗装路での快適性と走破性を大幅に向上させます。 まとめ:文化を作り上げてきたROCKSHOXの軌跡 改めてROCKSHOXについて掘り下げてみて、僕が感じたのは、彼らがただサスペンションを「製造」してきたわけではない、ということです。彼らは「マウンテンバイクという文化」そのものを創造し、発展させてきたパイオニアです。 創業者のポール・ターナーがオートバイの世界からヒントを得て、自転車にサスペンションを導入したように、彼らは常に既存の枠組みを飛び越え、新しい常識を作り続けてきました。僕たちの暮らしを快適にする製品、人々の心を豊かにするモノづくりは、このような開拓者精神から生まれるのだと、改めて教えられた気がします。 ROCKSHOXのサスペンションは、単なる路面からの衝撃を吸収する道具ではありません。それは、ライダーがまだ見ぬ道を走り、新しい冒険に挑むための信頼できるパートナーです。彼らの製品には、速さを追求する情熱と、ライダーを思う優しさの両方が詰まっています。そして、それは創業から30年以上経った今も、決して変わることのない哲学として受け継がれています。 僕たちの日常を彩る「自転車」という存在を、ROCKSHOXはもっと自由で、もっとエキサイティングなものにしてくれた。そんな彼らの功績に、深く敬意を表したいと思います。 この記事を読んで、ROCKSHOXの製品に興味を持っていただけたら嬉しいです。皆さんの自転車ライフが、さらに豊かになることを願っています。 それでは、また次の記事で会いましょう!ヒロヤスでした!
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クロモリフレームの心臓部!パイプブランドの世界を巡る旅

こんにちは、ヒロヤスです。大阪の街を今日も自転車で駆け抜けているアラフォー、デザイナーの僕です。 僕のブログをいつも読んでくださっている皆さん、本当にありがとうございます。さて、今回は、クロモリフレームを愛する僕たちが、避けては通れない、いや、むしろ深く知ることで、さらにその魅力にどっぷりと浸かることができる「パイプブランド」の世界について、じっくりとお伝えしたいと思います。…
クロモリフレームの心臓部!パイプブランドの世界を巡る旅
こんにちは、ヒロヤスです。大阪の街を今日も自転車で駆け抜けているアラフォー、デザイナーの僕です。 僕のブログをいつも読んでくださっている皆さん、本当にありがとうございます。さて、今回は、クロモリフレームを愛する僕たちが、避けては通れない、いや、むしろ深く知ることで、さらにその魅力にどっぷりと浸かることができる「パイプブランド」の世界について、じっくりとお伝えしたいと思います。 自転車のフレームは、その乗り心地や性能を決定づける最も重要な部分。そして、クロモリフレームのキャラクターを決定づけているのが、どのブランドの、どのパイプを使うかなんです。それはまるで、料理人が食材を選ぶように、フレームビルダーが丹精込めてパイプを選ぶところから、一台の自転車の物語は始まります。 「Columbus」「Reynolds」「KAISEI」「TANGE」…一度は耳にしたことがある名前かもしれませんね。でも、それぞれのブランドがどんな歴史を持ち、どんな哲学でパイプを作っているのか、ご存知でしょうか?この記事を読めば、あなたの愛車が、そして次に手に入れたいと思っているフレームが、まったく違って見えてくるはずです。フレームのステッカーに込められた、ブランドの誇りと歴史の重み。それを知ることで、僕たちの自転車ライフは、もっと豊かになるに違いありません。 それでは、クロモリパイプの奥深い世界へ、僕と一緒に旅立ちましょう。 自転車の魂はパイプに宿る クロモリ、つまりクロームモリブデン鋼という素材は、鉄にクロムとモリブデンを添加することで、強度としなやかさを見事に両立させた合金です。その独特の乗り心地、細身で美しいシルエットは、多くのサイクリストを魅了してやみません。 しかし、「クロモリ」と一括りにはできないほど、そのパイプには様々な種類と個性があります。パイプの厚みを部分的に変える「バテッド加工」や、熱処理による「焼き入れ」といった技術。パイプ内部に螺旋状の溝を入れる「スプライン加工」。各ブランドが長年の歴史の中で培ってきた独自の技術が、パイプ一本一本に注ぎ込まれているんです。 これから、世界を代表するいくつかのパイプブランドを、その歴史と哲学、そして特徴的なテクノロジーと共に見ていきましょう。 イタリアの情熱が生んだ芸術品:Columbus(コロンバス) イタリアの「Columbus」は、1919年創業という長い歴史を持つ、まさにパイプ界のサラブレッド。元々は航空機や自動車のチューブを製造していましたが、その高い技術力は自転車の世界でも瞬く間に評価を高めました。 フェラーリやモトグッツィのフレームにも使われたという逸話は、コロンバスの品質を物語っています。自転車部門が独立したのは1977年ですが、それ以前から数々の名車を支えてきました。 コロンバスの特徴は、なんと言ってもその革新性です。例えば、パイプの内側に5本のリブ(補強)を入れた「SLX」や、ニッケルとクロムを添加した「ニバクロム鋼」を採用した軽量パイプ「GENIUS」など、常に新しい技術でスチールフレームの可能性を押し広げてきました。あの独特のしなりと剛性感のバランスは、まさにイタリアンバイクの情熱そのものと言えるでしょう。 コロンバスを代表するプロダクト SPIRIT / ZONA: まさに「走る」ためのパイプ。SPIRITはニオブ、ZONAはニバクロムという特殊な合金を使い、ダブルバテッド加工で極限まで軽量化されています。クロモリならではのバネ感を残しつつ、ペダルを踏み込んだ瞬間にスッと前に出る鋭い反応性が持ち味です。ヒルクライムやクリテリウムのような、俊敏さが求められるレーシングバイクに最適な選択と言えるでしょう。 Cromor: SPIRITやZONAとは対照的に、こちらは堅実で信頼性の高いパイプです。肉厚をしっかり確保(0.9-0.7mmなど)したダブルバテッドチューブで、高い耐久性を誇ります。乗り味はマイルドで振動吸収性に優れており、長距離を走るツーリングバイクや、未舗装路も走るグラベルロードなどで真価を発揮します。日々のライドを快適に楽しむ相棒にぴったりのパイプです。 伝統と信頼の英国紳士:Reynolds(レイノルズ) イギリスの「Reynolds」は、1890年代に世界で初めて「バテッドチューブ」の特許を取得した、鋼管メーカーのパイオニアです。その歴史はコロンバスよりもさらに古く、自転車フレームの進化の歴史はレイノルズと共にあったと言っても過言ではありません。 特に有名なのが「531」というマンガンモリブデン鋼のパイプ。1930年代に開発されて以来、その驚くべき軽さと絶妙な粘り強さで、数え切れないほどのレースで勝利を収めてきました。第二次世界大戦中には、英国の爆撃機の構造材としても使われていたというから驚きです。 その後も、熱処理によって強度を飛躍的に高めた「853」など、数々の名パイプを世に送り出しています。「レイノルズに乗らずしてスチールを語るな」と言われるほど、その乗り心地は優雅で、まさに英国紳士のような品格を感じさせます。 レイノルズを代表するプロダクト 853: レイノルズの代名詞とも言えるハイテクパイプ。最大の特徴は「エアハードニング」という性質です。これは、TIG溶接などの熱が加わると、その部分の強度が逆に上がるというもの。これにより、接合部の強度を心配することなくパイプを極限まで薄くでき、軽量で高剛性なフレームが生まれます。しなやかでありながら、芯のあるしっかりとした乗り心地は、まさに唯一無二です。 531 / 520: 531はもはや伝説的な存在。マンガンモリブデン鋼から作られ、その独特のしなやかさと粘りは「魔法の絨毯」とまで評されました。現在ではクラシックバイクのレストアなどで重宝されています。一方の520は、高品質なクロモリ鋼(4130)のパイプで、熱処理はされていませんが、非常にバランスの取れた乗り味と信頼性で、幅広いジャンルの自転車に採用される定番中の定番です。 日本のモノづくり魂の結晶:KAISEI(カイセイ) ヨーロッパ勢に負けず劣らず、日本にも世界に誇るパイプブランドが存在します。まずは「KAISEI」。 「カイセイ」は、かつて存在した名門「石渡製作所」の血を引くブランド。石渡製作所が培った技術と設備を受け継ぎ、福島県で高品質なパイプを製造し続けています。その精度と品質の高さは、国内外の多くのフレームビルダーから絶大な信頼を得ています。日本の職人気質が生んだ、実直で信頼性の高いパイプと言えるでしょう。 カイセイを代表するプロダクト 8630R: クロモリにニッケルを添加した、カイセイのハイエンドパイプ。スタンダードなクロモリ(4130)に比べて硬質で、カリッとした乾いた乗り味が特徴です。力の伝達効率が非常に高く、踏んだ力が逃げずに推進力に変わる感覚は、まさにレーシングスペック。特にトラック競技や、一瞬のキレが勝負を分けるロードレースでその性能を遺憾なく発揮します。 019 / 022: 日本のカスタムフレームビルダーから絶大な支持を受ける、カイセイのスタンダード。数字はパイプの肉厚を示しており、019(0.8-0.5-0.8mm)は軽量性を活かしたロードバイクやスポルティーフに。一方、022(0.9-0.6-0.9mm)は少し肉厚で、より頑丈さが求められるツーリングバイクや体格の大きなライダーのフレームに適しています。クセのない素直な乗り味は、ビルダーの思想を忠実に反映してくれるキャンバスのような存在です。 日本が誇るもう一つの雄:TANGE(タンゲ) 1920年に大阪・堺で創業した「TANGE」もまた、日本の自転車産業を支えてきた重要なブランドです。僕が住む大阪で生まれたブランドだと思うと、なんだか特別な親しみが湧いてきます。フレームパイプだけでなく、フォークやラグ、ヘッドパーツなど、フレームにまつわるあらゆる部材を手がけてきました。 タンゲの名を世界に知らしめたのが、1984年に登場した「Prestige(プレステージ)」。熱処理によって極限まで薄く、軽く仕上げられたこのパイプは、当時のマウンテンバイクシーンに衝撃を与えました。現在も生産拠点は台湾に移りましたが、そのモノづくりへの情熱は変わらず、多くの自転車に採用されています。 タンゲを代表するプロダクト Prestige: 「名声」の名を冠するにふうさわしい、タンゲのフラッグシップ。熱処理によって素材の強度を極限まで高め、驚くほどの薄肉化を実現した軽量パイプです。クロモリとは思えないほどの軽さと、シャープで俊敏な加速感は、多くのライダーを虜にしてきました。特に、ハードなライディングが求められる往年のマウンテンバイクシーンで一世を風靡したパイプです。 Champion No.1 / No.2: タンゲのラインナップを支える、信頼のスタンダードパイプ。No.1がカイセイ019に相当する軽量タイプ、No.2がカイセイ022に相当する頑丈なタイプと考えると分かりやすいでしょう。長年の生産で培われた品質と安定した性能は、多くのメーカー製バイクに採用されていることからも明らか。日々の通勤から週末のロングライドまで、あらゆるシーンで期待に応えてくれる優等生です。 新時代の息吹:DEDACCIAI(デダチャイ) イタリアの新興勢力「DEDACCIAI(デダチャイ)」も忘れてはなりません。歴史は他の老舗ブランドほど長くはありませんが、その革新的なアプローチと高い技術力で、瞬く間にトップブランドの仲間入りを果たしました。 クロモリだけでなく、アルミやチタン、カーボンなど、様々な素材を扱うデダチャイ。そのスチールパイプは、伝統的なクロモリフレームの乗り味を尊重しつつも、現代的な軽量性と剛性を高いレベルで実現しています。 デダチャイを代表するプロダクト ZERO / ZERO UNO: デダチャイのスチールパイプの代名詞的存在。創業期に開発された熱処理スチールチューブ「ZERO」は、シャキッとした乗り味で人気を博しました。その流れを汲む「ZERO UNO」は、軽量なダブルバテッドのシームレスパイプで、クラシックな見た目と現代的な性能を両立させたいビルダーやライダーにとって、非常に魅力的な選択肢となっています。 まとめ さて、クロモリパイプを巡る旅、いかがでしたでしょうか。各ブランドのセクションで具体的な製品にも触れてみましたが、改めてそれぞれのブランドの個性をまとめてみましょう。 Columbusは、革新的な技術で常にスチールの可能性を追求するイタリアの芸術家。 Reynoldsは、バテッドチューブを生んだ、伝統と信頼の英国紳士。 KAISEIとTANGEは、日本のモノづくり精神を体現する、実直で精度の高い職人。 DEDACCIAIは、伝統に敬意を払いつつ、現代の要求に応える新時代のチャレンジャー。 このように、それぞれのブランドには、一言では語り尽くせないほどの歴史と哲学が詰まっています。フレームに貼られた一枚のステッカーは、単なるブランドロゴではありません。それは、その自転車の出自と個性を物語る、いわば血統書のようなものなのです。 もしあなたが今、クロモリフレームの自転車に乗っているなら、ぜひそのフレームがどこのパイプを使っているのか調べてみてください。そして、そのブランドの歴史に思いを馳せてみてください。きっと、ペダルを漕ぐ一漕ぎ一漕ぎが、今まで以上に味わい深いものになるはずです。 そして、これからクロモリフレームを手に入れようと考えているなら、ぜひパイプブランドにもこだわってみてください。どんな風に走りたいのか、どんな旅をしたいのか。あなたの理想を形にしてくれるパイプが、きっと見つかるはずです。 この奥深いパイプの世界、あなたはどう感じましたか?ぜひ、コメントであなたの愛車のパイプブランドや、好きなブランドについて教えてくださいね。 それでは、また次の記事で会いましょう!ヒロヤスでした!
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僕たちの暮らしに溶け込むパーツメーカー「OGK」。OGK KABUTOとの関係、ママチャリパーツメイン?歴史を調べてみました。

こんにちは、ヒロヤスです。大阪の街を今日も自転車で駆け抜けているアラフォー、デザイナーの僕です。 僕のブログをいつも読んでくださっている皆さん、本当にありがとうございます。さて、今回は、僕たち日本の自転車乗りにとって、あまりにも身近な存在であるパーツメーカー「OGK」について、他のどのブログやホームページよりも深く、そして僕自身の想い出も交えながらお伝えしたいと思います。…
僕たちの暮らしに溶け込むパーツメーカー「OGK」。OGK KABUTOとの関係、ママチャリパーツメイン?歴史を調べてみました。
こんにちは、ヒロヤスです。大阪の街を今日も自転車で駆け抜けているアラフォー、デザイナーの僕です。 僕のブログをいつも読んでくださっている皆さん、本当にありがとうございます。さて、今回は、僕たち日本の自転車乗りにとって、あまりにも身近な存在であるパーツメーカー「OGK」について、他のどのブログやホームページよりも深く、そして僕自身の想い出も交えながらお伝えしたいと思います。 僕たちが日常で何気なく目にしている自転車のチャイルドシートやグリップ。その多くに「OGK」というロゴが刻まれていることにお気づきでしょうか?僕自身、大阪という土地柄もあってか、街中で見かける自転車の多くにOGK製品が使われているのを見て、「このOGKって、一体どんな会社なんだろう?」とずっと気になっていました。製品のクオリティの高さは知っているけれど、その背景にある物語や哲学については、意外と知られていないように思います。 さらに、いつの間にか「OGK KABUTO」という名前も聞くようになりました。これは単なるヘルメット部門のブランド名なのか、それとも会社名が変わったのか。そんな素朴な疑問を解き明かすべく、今回は僕たちの自転車ライフに深く根付いているこの偉大なメーカーの正体に迫ってみたいと思います。 大阪で生まれた、日本のものづくりの魂 OGKの正式名称は、オージーケー技研株式会社。そして、僕と同じ大阪に本社を構える企業です。そのルーツは、1948年に設立された「大阪グリップ化工」(OGKの社名の由来)にまで遡ります。東大阪の小さな町工場から、OGKの挑戦は始まりました。 当初から自転車用のプラスチック製グリップを手掛け、その高い技術力で評価を高めていきました。その後、日本の自転車の普及とともに、バスケットやチャイルドシートといった製品を次々と世に送り出していきます。特に、OGKのチャイルドシートは、日本の「ママチャリ」文化を語る上で欠かせない存在となり、その安全性と使いやすさで、多くの子育て世代から絶大な信頼を得ています。 OGKとOGK KABUTO、そして僕のBMX時代 さて、ここで冒頭の疑問、「OGK KABUTO」とは何なのでしょうか。 実は、OGKグループは大きく分けて二つの会社で構成されています。 一つは、これまで話してきたチャイルドシートやバスケット、グリップなどを製造するオージーケー技研株式会社(OGK Giken)。 そしてもう一つが、ヘルメットを専門に開発・製造する**株式会社オージーケーカブト(OGK KABUTO)**です。 OGK KABUTOは、1982年にOGKから分社化する形で設立されました。その目的は、より専門性を高め、世界トップレベルのヘルメットを開発すること。日本の武将が身につけた「兜(かぶと)」をブランド名に冠することで、ライダーの頭部を守る最後の砦としての強い決意と、日本ブランドとしての誇りを表現しているのです。 実は、僕にとってこのOGK KABUTO(当時はまだOGKブランドでしたが)は、特別な思い入れのあるブランドなんです。今でこそグラベルロードやMTBでのんびり走るのが好きですが、僕がまだ若かった頃、BMXレースに熱中していた時期がありました。スタートゲートに並ぶ時の緊張感、ジャンプを飛ぶ時の浮遊感、そしてゴールラインを駆け抜ける達成感。その全てが、今の僕の自転車好きの原点になっています。 その時、僕の頭をいつも守ってくれていたのが、OGKのフルフェイスヘルメットでした。正直に言うと、当時は海外ブランドへの憧れも強かった時代です。でも、僕がOGKを選んだのは、なによりもその信頼性でした。激しいレースでの転倒は日常茶飯事。そんな時でも、OGKのヘルメットは確かな安心感を与えてくれました。日本人の頭の形に合わせたフィット感、そして厳しい安全基準をクリアした品質。若い僕でも、その「道具」としての誠実さを感じ取ることができたんです。 安全こそがすべて。OGKの揺るぎない哲学 僕自身のBMXレースでの経験も、この哲学を裏付けています。OGKの製品に共通しているのは、「安全」に対する徹底したこだわりです。 OGK Gikenのチャイルドシートは、日本の厳しい安全基準をクリアするだけでなく、転倒時に子どもの頭部を衝撃から広範囲に守るワイドヘッドレストなど、独自の安全機能を数多く搭載しています。デザイナーの僕から見ても、その設計には、子供の安全を第一に考える親の視点が深く反映されていることがわかります。 一方、OGK KABUTOのヘルメットは、プロのレースシーンで培われた技術を惜しみなく投入しています。僕がBMXで感じたフィット感や安心感は、まさにこの技術の賜物だったのでしょう。空力性能や軽量性はもちろんのこと、万が一の衝撃からライダーを守るための衝撃吸収性能など、あらゆる面で妥協のない製品開発が行われています。 彼らの製品が、単なる「モノ」ではなく、僕たちの命を守る「道具」として信頼されている理由。それは、創業から70年以上経った今も、日本のものづくり精神に根ざした、実直で誠実な製品開発を続けているからに他なりません。 OGKを代表するプロダクトたち ここで、僕たちの周りにあるOGKの代表的な製品をいくつか見ていきましょう。 オージーケー技研(OGK Giken)を代表するプロダクト 自転車用チャイルドシート もはや説明不要の、日本のスタンダードと言える存在です。安全性、快適性、そして使いやすさを追求した設計は、多くのお父さんお母さんから支持されています。街でこのチャイルドシートを見かけると、なんだか心が温かくなるのは僕だけでしょうか。 自転車用バスケット・グリップ 自転車の使い勝手を大きく左右するバスケットやグリップも、OGKの得意分野です。豊富なデザインとカラーバリエーションで、どんな自転車にもマッチする製品が見つかります。 OGK KABUTOを代表するプロダクト サイクルヘルメット プロのロードレーサーから、僕たちのような週末サイクリスト、そしてかつての僕のようなBMXレーサーまで、幅広い層に向けたヘルメットをラインナップしています。日本人の頭の形にフィットしやすい「アジアンフィット」をいち早く採用するなど、ユーザーに寄り添った製品開発が魅力です。近年では、空力性能と快適性を両立した「AERO-R2」や、普段着にも合わせやすいデザインの「CANVAS-URBAN」などが人気を集めています。 まとめ 今回、OGKというブランドを深く掘り下げてみて、僕が感じたのは、彼らが日本の自転車文化そのものを支えてきた、偉大な存在だということです。 大阪の小さな町工場から始まった彼らの物語は、常にユーザーの安全と快適性を第一に考え、実直なものづくりを続けてきた歴史でした。僕自身の青春時代、BMXレースで僕の頭を守ってくれたのも、その実直さの結晶だったのだと、今改めて感じています。 派手さはないけれど、僕たちの日常生活に静かに寄り添い、時には命を守るパートナーとして、当たり前のように安全と安心を提供してくれる。その姿勢は、僕が愛するクロモリフレームの自転車が持つ、実直で長く付き合える魅力とどこか重なる部分があるように感じます。 そして今、自転車に乗る際のヘルメット着用が努力義務となり、将来的には必須となる流れの中で、OGK KABUTOの存在価値はさらに高まっていくはずです。これまでヘルメットに馴染みがなかった多くの人々が、初めてのヘルメットを選ぶ時。その選択肢として、長年日本のサイクリストの安全を守り続け、日本人の頭を知り尽くしたOGK KABUTOが有力な候補になるのは、ごく自然なことでしょう。 OGKとOGK KABUTO。二つの顔を持つこのブランドは、これからも僕たちの自転車ライフに欠かせない存在であり続けるでしょう。 皆さんの周りにも、きっとOGKの製品があるはずです。この記事を読んで、少しでも彼らの製品に込められた想いに興味を持っていただけたら、これほど嬉しいことはありません。あなたのOGKにまつわる思い出などがあれば、ぜひコメントで教えてください。 それでは、また次の記事で会いましょう!ヒロヤスでした!
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世界が認める日本の光。自転車パーツメーカー「キャットアイ」の物語を紐解く

こんにちは、ヒロヤスです。 大阪の街を今日も自転車で駆け抜けているアラフォー、デザイナーの僕です。 僕のブログをいつも読んでくださっている皆さん、本当にありがとうございます。 さて、今回は、僕たちの自転車ライフに欠かせない、ある日本のメーカーについて、深く、そしてじっくりとお伝えしたいと思います。 その名は「CATEYE(キャットアイ)」。 ライトやサイクルコンピューターでお馴染みの、あのブランドです。…
世界が認める日本の光。自転車パーツメーカー「キャットアイ」の物語を紐解く
こんにちは、ヒロヤスです。 大阪の街を今日も自転車で駆け抜けているアラフォー、デザイナーの僕です。 僕のブログをいつも読んでくださっている皆さん、本当にありがとうございます。 さて、今回は、僕たちの自転車ライフに欠かせない、ある日本のメーカーについて、深く、そしてじっくりとお伝えしたいと思います。 その名は「CATEYE(キャットアイ)」。 ライトやサイクルコンピューターでお馴染みの、あのブランドです。 おそらく、スポーツバイクに乗っているほとんどの人が、一度はキャットアイの製品を使ったことがあるのではないでしょうか。 僕自身、これまで何台もの自転車を乗り継いできましたが、気づけばいつもハンドルバーにはキャットアイのライトが、そして時にはサイクルコンピューターが取り付けられていました。 それは、意識的な選択というよりも、信頼性の高さからくる、ごく自然な選択だったように思います。 「とりあえずキャットアイを選んでおけば間違いない」 そんな安心感を、なぜ僕たちは抱くのでしょうか。 それは、彼らが長年にわたって製品に込めてきた哲学や、弛まぬ技術革新の歴史があるからに他なりません。 今回は、そんなキャットアイという企業が、どこで生まれ、どのような道を歩んできたのか。 そして、なぜ世界中のサイクリストから支持され続けるのか。 その背景にある物語を、僕なりに解き明かしていきたいと思います。 同じ大阪に拠点を置く企業ということもあり、今回は特に思いを込めてお話しさせていただきます。 大阪の小さな町工場から世界へ。キャットアイの歩み 株式会社キャットアイ。 その本社が、何を隠そう僕の住む大阪市東住吉区にあると知った時、なんだかとても誇らしい気持ちになったのを覚えています。 世界的なブランドが、こんなにも身近な場所で生まれていたなんて。 その歴史は、1946年に「津山製作所」として創業したことから始まります。 戦後の混乱期、自転車のプレス部品や金型を製造する小さな町工場からのスタートでした。 そして1954年に株式会社キャットアイが設立されます。 キャットアイの名を世界に知らしめた最初の製品、それは「リフレクター(反射板)」です。 今では自転車に当たり前についているあの小さなパーツ。 しかし、その小さな部品に、彼らのモノづくりの原点と哲学が凝縮されています。 創業者は、金型の最終工程である鏡面仕上げの技術を専門の学校で学んでおり、その卓越した技術が、光を正確に、そして強く反射させるリフレクターの製造に活かされたのです。 「キャットアイ(猫の目)」という社名は、夜間、僅かな光を捉えて鋭く光る猫の目に由来します。 まさに、彼らの作るリフレクターの性能を象徴する名前ですよね。 この高性能なリフレクターは、国内はもちろん、当時急成長していたアメリカ市場をはじめ、世界各国の安全基準をクリアし、絶大な信頼を獲得。 自転車の安全性を飛躍的に向上させ、世界のトップブランドへと駆け上がる大きな原動力となりました。 「安全」「健康」「環境」を照らす光。製品に宿る哲学 キャットアイがただのパーツメーカーと一線を画すのは、その製品開発の根底に流れる一貫した企業理念があるからだと僕は考えています。 彼らが掲げるのは、「『安全』『健康』『環境』に新しい価値を創造し、社会に貢献する」という言葉。 これは単なるスローガンではありません。 彼らの製品を見れば、その理念が具現化されていることがよくわかります。 ■ 安全へのこだわり 彼らの原点であるリフレクターから最新のヘッドライトに至るまで、その最大の目的は常にサイクリストの「安全」を守ること。 特にライトの配光技術には目を見張るものがあります。 ただ明るいだけでなく、必要な範囲を効率的に照らし、対向車や歩行者を幻惑させないように考え抜かれたレンズカット。これは、長年培ってきた光学成型技術の賜物です。 JIS規格(日本産業規格)やドイツの厳しいStVZO規格に準拠した製品を多く生み出していることからも、その安全に対する真摯な姿勢がうかがえます。 ■ 健康への貢献 サイクルコンピューターの開発もまた、彼らの理念を体現しています。 速度や距離を測ることで、サイクリングは単なる移動手段から「健康」を増進させるスポーツへと進化しました。 走った記録が可視化されることで、達成感が得られ、次のライドへのモチベーションに繋がる。 GPSを搭載したモデルや、心拍数、ケイデンスを計測できるモデルなど、サイクリストの多様なニーズに応え、より豊かで健康的な自転車ライフをサポートし続けています。 ■ 環境への配慮 近年では、「環境」への取り組みも積極的に行っています。 ソーラー充電式のライトの開発や、製品パッケージの脱プラスチック化など、持続可能な社会の実現に向けた挑戦を続けているのです。 僕たちサイクリストが、自然の中で楽しむアクティビティだからこそ、こうした企業の姿勢はとても重要だと感じます。 キャットアイを代表するプロダクト ここで、現在のキャットアイを象徴する、いくつかの代表的な製品をジャンル別に紹介したいと思います。 ■ ライト AMPPシリーズ / VOLTシリーズ キャットアイのヘッドライトの代名詞とも言えるシリーズ。AMPPシリーズは、ワイドで強力な配光が特徴で、街乗りからトレイルライドまで幅広く対応します。一方、VOLTシリーズは、カートリッジ式のバッテリーを採用しているモデルが多く、ロングライド中でもバッテリー交換で即座に対応できるのが魅力です。どちらのシリーズも、光量やバッテリー容量によって豊富なラインナップが揃っており、自分の使い方に最適なモデルを選ぶことができます。 ■ セーフティライト / テールライト WEARABLE mini / TIGHT KINETIC 「WEARABLE mini」は、その名の通り、自転車本体だけでなく、カバンやウェアにも取り付け可能な小型軽量のセーフティライト。そして「TIGHT KINETIC」は、加速度センサーを内蔵し、減速を感知すると自動でハイモードで点灯する「キネティックモード」を搭載した革新的なテールライトです。周囲に自分の存在と動きを効果的に知らせることで、安全性を格段に高めてくれます。 ■ サイクルコンピューター PADRONEシリーズ 「PADRONE(パドローネ)」は、大きな画面と文字表示が特徴のワイヤレスコンピューター。視認性が非常に高く、走行中でも瞬時に速度や距離を確認できます。シンプルな操作性も魅力で、初心者からベテランまで、幅広い層に支持されている定番モデルです。 STRADA SMART スマートフォンと連携することで、計測したデータを専用アプリ「Cateye Cycling™」に記録・管理できる高機能モデル。GPSによる走行ルートの記録や、各種センサーとの連携も可能です。日々のライドの記録を管理したい、トレーニングに活用したいというサイクリストに最適な一台です。 まとめ 今回、株式会社キャットアイという企業を深く掘り下げてみて、僕が改めて感じたのは、彼らの製品に宿る「誠実さ」でした。 大阪の町工場から始まった彼らは、リフレクターという、自転車の安全における最も基本的なパーツを、卓越した技術で作り上げ、世界にその名を轟かせました。 そして、その成功に甘んじることなく、「安全」「健康」「環境」という揺るぎない理念のもと、ライト、サイクルコンピューターと、常に時代が求める製品を世に送り出し続けています。 一つの製品を長く使える耐久性。 誰にでも直感的に使える操作性。 そして、何よりもサイクリストの安全を第一に考える設計思想。 僕たちが「とりあえずキャットアイを」と無意識に選んでしまう背景には、こうしたユーザーに対する誠実な姿勢が、製品を通じて静かに、しかし確実に伝わってきているからなのでしょう。 派手なプロモーションや奇抜なデザインに頼るのではなく、真摯にモノづくりと向き合い、着実に信頼を積み重ねてきた日本のメーカー、キャットアイ。 その光は、これからもきっと、世界中のサイクリストの道を、そして自転車文化の未来を、明るく照らし続けてくれるはずです。 皆さんが使っているキャットアイ製品の思い出や、お気に入りのモデルなどがあれば、ぜひコメントで教えてください。 それでは、また次の記事で会いましょう! ヒロヤスでした!
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CRUST BIKESが、もっと身近になる。正規代理店登場に思う、evasion乗りのちっちゃな嫉妬とおっきな期待。

こんにちは、ヒロヤスです。大阪の街を今日も自転車で駆け抜けているアラフォー、デザイナーの僕です。 僕のブログをいつも読んでくださっている皆さん、本当にありがとうございます。さて、今回は僕が愛してやまない、というか、その存在に常に心を揺さぶられ続けている自転車ブランド、「CRUST…
CRUST BIKESが、もっと身近になる。正規代理店登場に思う、evasion乗りのちっちゃな嫉妬とおっきな期待。
こんにちは、ヒロヤスです。大阪の街を今日も自転車で駆け抜けているアラフォー、デザイナーの僕です。 僕のブログをいつも読んでくださっている皆さん、本当にありがとうございます。さて、今回は僕が愛してやまない、というか、その存在に常に心を揺さぶられ続けている自転車ブランド、「CRUST BIKES(クラストバイクス)」についてのお話をしたいと思います。最近、自転車好きの間で「お!」っとなる大きなニュースがありましたよね。そう、僕たちのブルーラグがCRUSTの日本の正規販売代理店になったようなのです。 これは本当に素晴らしいニュースで、これまで欲しくてもなかなか手が出せなかった人たちにとって、大きな扉が開かれた瞬間だと思います。全国の感度の高いショップで、あの独特のオーラを放つフレームが次々と組まれていく光景が目に浮かびます。実際、第一弾としてオレンジの新型Evasionや、鮮やかなブルーのBombora、そしてEvasionのステップスルーモデルなんかが、もうすでにショップのSNSを賑わせています。 正直に言うと、この状況に、僕は少しだけ、いや、かなりジェラシーを感じています(笑)。というのも、僕のEvasionは今のモデルより2世代前のもの。当時はまだ情報も少なく、個人でなんとか手に入れて、パーツ選びにも頭を悩ませた記憶があります。特にリアのエンド幅がBoost規格(148mm)だったので、MTB用のハブを探す必要があって、本当に選択肢が限られていたんです。それが、今のEvasionはどうでしょう。リアエンドは142mmのスルーアクスル。グラベルやロード用のパーツが当たり前に使える。もちろん、シングルスピードにも対応できるスイングドロップアウトの魅力はそのままに。…羨ましい!本当に羨ましい! でも、この少し悔しい気持ちと同じくらい、いや、それ以上にワクワクしている自分もいるんです。これからEvasionやBomboraだけでなく、RomanceurやMalocchioといった、さらに個性的なフレームたちが日本にやってくるかもしれない。そう思うと、もういてもたってもいられません。今回はそんな、一人のCRUSTファンとしての、嫉妬と期待がないまぜになった今の気持ちを、少しお伝えできればと思います。 そもそもCRUST BIKESとは?物語から始まる自転車づくり CRUST BIKESの話をする上で、創業者であるMatt Whiteheadの存在は欠かせません。オーストラリア出身で、サーフィンやBMXにルーツを持つ彼が、ネパールを自転車で旅している最中に思い描いた「ドリームバイク」がブランドの原点だと言われています。宿のWi-FiとiPod touchだけで台湾の工場とやりとりを始め、旅から帰った半年後には、最初のプロダクトであるEvasionのプロトタイプを生み出したというエピソードは、あまりにも有名ですよね。 彼の作るバイクは、単なる移動手段としての工業製品ではありません。そこにはいつも旅の匂いや、古いものへの敬意、そして何より「どうすればもっと楽しめるか?」という純粋な探究心が詰まっています。トレンドを追いかけるのではなく、自分たちが本当に乗りたいもの、長く付き合えるものを追求する。その姿勢が、フレームの随所に現れているからこそ、僕たちはこんなにも心を惹かれるのかもしれません。 身近になったCRUST。その功罪とこれからへの期待 ブルーラグが正規代理店になったことで、僕たち日本のユーザーには計り知れないメリットがあります。まず、購入のハードルが劇的に下がりました。これまでは個人輸入や、ごく一部のショップでしか手に入らなかったものが、これからは全国の取扱店で実物を見ながら、スタッフの方と相談して選べるようになります。保証やアフターサービスだって安心です。 その一方で、これまで「知る人ぞ知る」存在だったCRUSTが、ある意味で「誰もが知る」存在になっていくことへの一抹の寂しさも、正直なところ感じてしまいます。僕が苦労して組んだBoost規格のEvasionが、まるで苦労の証のように思えてきたり(笑)。 でも、それもすべて含めて、素晴らしいことなんだと思います。良いものが、それを求める人の手に届きやすくなる。そして、CRUSTというブランドが持つ唯一無二の魅力が、もっと多くの人に伝わる。それは、自転車というカルチャー全体が豊かになることと同義です。 僕が今、心から期待しているのは、ラインナップの拡充です。EvasionやBomboraはもちろん最高ですが、CRUSTの魅力はそれだけではありません。1インチスレッドとスルーアクスルを融合させたような「Romanceur」や、Columbus社の軽量パイプを使った美しいロードフレーム「Malocchio」。そういった、さらに深く、ある意味で少し偏屈な(褒め言葉です)モデルたちが日本の道を走り始める日を、僕は心待ちにしています。 新型EvasionとBombora、あなたならどう組む? さて、これからCRUSTの世界に足を踏み入れようとしている方のために、現在日本で手に入る代表的な2つのフレーム、「Evasion」と「Bombora」の特性の違いと、僕なりの「こんな風に組んだら楽しいだろうな」というビルドの提案を少しだけしてみたいと思います。 冒険のための相棒「Evasion」 Evasionは、CRUSTの原点ともいえるフラッグシップモデル。「MTBとツーリングバイクの境界を飛び越えた」と表現されるように、その懐の深さが最大の魅力です。26x3.0インチのようなファットなタイヤから、27.5インチ、29インチまで対応するタイヤクリアランスは、まさにどこへでも行けるパスポートのようなもの。 このフレームで組むなら、やはりその走破性を最大限に活かすアッセンブルが面白いと思います。 ハンドル: ゆったりとした姿勢で、オフロードでもバイクをコントロールしやすい幅広のライザーバーや、Crust自身がリリースしている "Harvey Mushman Riser Bar" のようなスイープの強いハンドル。 コンポーネント: SRAMのMTBコンポ(GX Eagleなど)を使ったフロントシングルのワイドレンジなギア構成。急な登りも、荷物を積んだ状態も、これなら安心です。 ホイール/タイヤ: 27.5インチホイールに、2.6〜2.8インチ幅のチューブレスタイヤを。オンロードの転がりも意識しつつ、いつでもグラベルやトレイルに飛び込んでいけるような、そんな足回りが理想です。 ラックやフェンダーを取り付けるダボ穴も豊富なので、バイクパッキングやキャンプツーリングのベース車として、これ以上ない相棒になってくれるはずです。 軽快なオールラウンダー「Bombora」 一方のBomboraは、Evasionに比べてより軽快でスピーディーな走りを意識したモデル。「オンロード7割、オフロード3割」という表現がされるように、舗装路の巡航性能と、グラベルでの走破性を高い次元で両立させています。熱処理が施された軽量なクロモリパイプが、その乗り味を支えています。 こちらのフレームは、その軽やかさを活かしたアッセンブルが似合います。 ハンドル: フレア形状のドロップハンドル。グラベルでの安定性と、オンロードでのエアロポジションを両立できるSalsaのCowchipperなどが定番でしょうか。 コンポーネント: ShimanoのGRXやSRAMのRival/Apexなど、グラベル用のコンポーネントが最適です。フロントダブルで組めば、より高速域のギアもカバーでき、長距離のロードツーリングも快適になります。 ホイール/タイヤ: 700cホイールに、38c〜48cくらいのグラベルタイヤ。PanaracerのGravelKingあたりは、見た目も性能も相性が良さそうです。軽快さを重視するなら、カーボンリムという選択肢も面白いかもしれません。 通勤や週末のサイクリングから、少し荷物を積んでの林道ツーリングまで。日常に寄り添いながら、時々冒険にも連れ出してくれる、そんな一台が組み上がるでしょう。 まとめ CRUST BIKESが日本の正規代理店体制になったことは、僕たち自転車好きにとって、本当に大きな出来事です。手に入れやすくなったことを素直に喜びたい気持ちと、少しだけ遠い存在であってほしかったような、複雑なファン心理。でも、それもすべて含めて、CRUST BIKESというブランドが持つ物語の一部なのかもしれません。 古いEvasionオーナーとしては、パーツ選びが楽になった現行モデルに嫉妬しつつも、これからこの魅力的な自転車と、どんな新しい仲間たちが出会っていくのだろうと考えると、楽しみで仕方がありません。 この記事を読んで、CRUST BIKESの世界に少しでも興味を持っていただけたら嬉しいです。きっと、あなたの自転車ライフを、もっと豊かで、もっと自由なものにしてくれるはずですから。 皆さんは、もしCRUSTのバイクを組むとしたら、どのフレームで、どんな風に組んでみたいですか?ぜひコメントで教えてくださいね。 それでは、また次の記事で会いましょう!ヒロヤスでした!
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クランクブラザーズ徹底解剖!代表プロダクトやメーカーの歴史、製品に込められたコンセプトをご紹介します。

こんにちは、ヒロヤスです。大阪の街を今日も自転車で駆け抜けているアラフォー、デザイナーの僕です。 僕のブログをいつも読んでくださっている皆さん、本当にありがとうございます。さて、今回は僕が個人的にとても注目している自転車パーツメーカー、「クランクブラザーズ」について、その魅力の核心に迫ってみたいと思います。…
クランクブラザーズ徹底解剖!代表プロダクトやメーカーの歴史、製品に込められたコンセプトをご紹介します。
こんにちは、ヒロヤスです。大阪の街を今日も自転車で駆け抜けているアラフォー、デザイナーの僕です。 僕のブログをいつも読んでくださっている皆さん、本当にありがとうございます。さて、今回は僕が個人的にとても注目している自転車パーツメーカー、「クランクブラザーズ」について、その魅力の核心に迫ってみたいと思います。 自転車好きなら、一度はその独創的なデザインのプロダクトを目にしたことがあるはず。特に、泡立て器のような形状の「エッグビーター」ペダルは、あまりにも有名ですよね。しかし、その美しいデザインの裏に、どんな哲学や物語が隠されているのかを知る人は、意外と少ないのではないでしょうか。 ただのパーツメーカーとして語るには、あまりにもったいない。彼らのモノづくりには、僕らデザイナーの心をくすぐる「何か」が確実に存在します。今回は、他のどのメディアよりも一歩深く、クrankbrothersというブランドの核心に触れるようなお話ができればと思っています。創業者たちの情熱から、製品一つ一つに込められた思想まで、じっくりと紐解いていきましょう。 ラグナビーチの小さなガレージから始まった物語 クランクブラザーズの歴史は、1997年、アメリカ・カリフォルニア州の美しい海岸沿いの街、ラグナビーチで幕を開けます。創業者であるカール・ウィンフォードナーとフランク・ハーマンセン。この二人の出会いが、すべての始まりでした。 面白いことに、彼らはもともと自転車業界の人間ではなく、スキューバダイビング用品の会社で働いていました。カールがエンジニア、そしてフランクがインダストリアルデザイナー。異なる専門分野を持つ二人が、デザインパートナーとして意気投合するのに時間はかかりませんでした。 やがて大企業での仕事に物足りなさを感じ始めた二人は、共通の情熱であった「サイクリング」の世界で、自分たちの理想を形にすべく独立。ラグナビーチの小さなガレージを拠点に、サイドビジネスとしてバイクパーツのデザインを始めたのです。 ちなみに「クランクブラザーズ」というブランド名。これは、周りの友人たちがカールとフランク、二人の名前をいつもごちゃ混ぜにして呼んでいたことから、「いっそのこと、二人をまとめて『クランク』と呼ぼう」となった逸話から生まれたそうです。なんともユニークで、彼らの親密な関係性が伝わってきますよね。 最初の一歩はペダルではなかった 今でこそペダルのイメージが強いクランクブラザーズですが、彼らが最初に世に送り出した製品は、意外にもペダルではありませんでした。それは「Speed Lever(スピードレバー)」という、非常に革新的なタイヤレバーだったのです。 ここにも、彼らのデザイン哲学が色濃く反映されています。彼らのモノづくりの信条は、「白紙の状態から始め、すべてのライドを前回よりも優れたものにする製品で終える」というもの。既存の概念にとらわれず、ゼロベースで物事を考え、サイクリストが抱える問題を解決するための、美しく機能的なプロダクトを生み出す。このスピードレバーは、まさにその哲学を体現した最初の一歩でした。 革命を起こした「エッグビーター」の誕生 そして2001年、ついにブランドの象徴とも言える「エッグビーター」ペダルが誕生します。 その名の通り、泡立て器のようなミニマルなデザインは、当時のMTBペダルの中でも異彩を放っていました。しかし、そのデザインは単なる奇抜さだけを狙ったものではありません。泥詰まりに非常に強く、どの角度からでもステップインできる4面キャッチ機構は、特にマウンテンバイクのクロスカントリーやシクロクロスのレースシーンで絶大な支持を集めました。 美しさと機能性が見事に両立されたエッグビーターの登場は、まさに革命的でした。このペダルによって、クランクブラザーズの名は世界中のサイクリストに知れ渡ることになったのです。 デザインと機能性の間で。愛され、時に議論を呼ぶ哲学 クランクブラザーズの製品は、しばしば「love/hate relationship(愛憎関係)」と表現されることがあります。その独創的なデザインと機構は、熱狂的なファンを生む一方で、時にはそのデリケートさから批判的な意見を生むこともありました。 しかし、創業者たちもそれを理解した上で、自分たちの信念を貫いています。彼らは「他と違うものを作るのは、その製品カテゴリーに何か新しい価値をもたらし、その存在を正当化するものでなければならないからだ」と語っています。見た目のデザインだけでなく、そこには必ず機能的な裏付けがある。この揺るぎないスタンスこそが、クランクブラザーズが唯一無二の存在であり続ける理由なのでしょう。 日本での展開と現在 日本にいつ頃から本格的に流通し始めたのか、正確な記録を見つけるのは難しいのですが、現在ではライトウェイプロダクツジャパンとカワシマサイクルサプライという二つの代理店が国内での販売を担っており、僕らの身近なショップでも手軽に製品を見つけることができます。すっかり日本の自転車シーンにも馴染んだブランドの一つと言えるでしょう。 その後、クランクブラザーズはイタリアのサドルメーカー「セラ・ロイヤル」グループの一員となり、より豊富なリソースを得てさらに成長を続けています。ペダルやツールの枠を超え、ホイールセットやドロッパーシートポスト、そして近年ではサイクリングシューズまで、その創造性の幅を広げているのです。 クランクブラザーズを代表するプロダクト ここで、現在のラインナップから、ブランドを象徴するいくつかの製品をジャンル別に見ていきましょう。 ペダル eggbeater(エッグビーター): ブランドのアイコン。軽量で泥はけ性能に優れ、クロスカントリーやシクロクロスに最適。 candy(キャンディ): エッグビーターのステップイン機構の周りに小さなプラットフォームを設け、安定感を高めたモデル。トレイルライドやグラベルロードにも人気です。 mallet(マレット): ダウンヒルやエンデューロ向け。広いプラットフォームとピンが、激しい下りでの安定したペダリングをサポートします。 stamp(スタンプ): フラットペダルの代表作。豊富なサイズ展開と考え抜かれたピン配置で、足のサイズに合わせた最適なグリップ力を提供します。 ツール マルチツール: 美しいアルミ製のケースに、必要十分な工具が機能的に収められています。デザイン性の高さから、持っているだけで満足感を得られる逸品です。 ホイールやその他のコンポーネント synthesis(シンセシス)ホイールセット: 前後で異なるリム幅やスポーク数、テンションを採用し、フロントの追従性とリアの剛性を両立させたユニークな設計思想のホイール。 highline(ハイライン)ドロッパーシートポスト: スムーズな作動と高い信頼性で評価の高いドロッパーポスト。バイクの操作性を格段に向上させます。 まとめ クランクブラザーズというブランドを深掘りしていくと、そこには単なるパーツメーカーという言葉だけでは片付けられない、熱い情熱と哲学の物語がありました。 カリフォルニアのガレージで、二人のデザイナーが抱いた「サイクリングをもっと良くしたい」という純粋な想い。既存の常識を疑い、白紙のキャンバスに機能美を描き出す創造性。彼らの製品が僕らの心を掴んで離さないのは、その背景にあるストーリーと、製品の細部にまで宿る作り手の体温を感じ取れるからなのかもしれません。 彼らはこれからも、時に僕らを驚かせ、時に議論を巻き起こしながら、自転車の世界に新しい価値を問いかけ続けてくれるはずです。クランクブラザーズのプロダクトを手に取ったとき、ぜひその裏側にある物語に思いを馳せてみてください。きっと、あなたのサイクルライフはもっと豊かなものになるでしょう。 皆さんはクランクブラザーズの製品を使ったことがありますか?ぜひ、コメントであなたのお気に入りのアイテムや、製品にまつわるエピソードを教えてくださいね。 それでは、また次の記事で会いましょう!ヒロヤスでした!
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Oury Grip(オーリーグリップ)の物語。Made in USAの魂、握り心地への最高のアンサー。

こんにちは、ヒロヤスです。大阪の街を今日も自転車で駆け抜けているアラフォー、デザイナーの僕です。 僕のブログをいつも読んでくださっている皆さん、本当にありがとうございます。さて、今回は、自転車のパーツの中でも、僕たちが常に触れている部分、それでいて、その選択にはっきりと個性や哲学が表れる「グリップ」について、じっくりとお伝えしたいと思います。数あるグリップメーカーの中でも、一度使ったら忘れられない、独特の存在感を放つブランドがあります。その名は「Oury…
Oury Grip(オーリーグリップ)の物語。Made in USAの魂、握り心地への最高のアンサー。
こんにちは、ヒロヤスです。大阪の街を今日も自転車で駆け抜けているアラフォー、デザイナーの僕です。 僕のブログをいつも読んでくださっている皆さん、本当にありがとうございます。さて、今回は、自転車のパーツの中でも、僕たちが常に触れている部分、それでいて、その選択にはっきりと個性や哲学が表れる「グリップ」について、じっくりとお伝えしたいと思います。数あるグリップメーカーの中でも、一度使ったら忘れられない、独特の存在感を放つブランドがあります。その名は「Oury Grip(オーリー・グリップ)」。 このワッフルパターンのような、一度見たら忘れないデザイン。ピストバイクやオールドMTBが好きな人なら、一度は目にしたことがあるのではないでしょうか。でも、その背景にある物語を知っている人は、意外と少ないかもしれません。単なる「握りやすいグリップ」という言葉だけでは到底語り尽くせない、Oury Gripが持つ深い魅力と歴史の旅へ、皆さんと一緒に出かけたいと思います。 モトクロスコースの土埃から生まれたグリップ Oury Gripの物語は、今から50年以上も前の1960年代後半に遡ります。創業者であるウィリアム・"ビル"・オーリー氏は、当時盛り上がりを見せていたモトクロスのライダーでした。激しいライディングで求められるのは、確実なバイクコントロールと、長時間の走行でも疲れにくい快適性。彼は市販のグリップに満足できず、理想のグリップを自ら作り出すことを決意します。 こうして生まれたのが、Oury Gripの原型でした。そのルーツは、自転車ではなくパワースポーツ、つまりオートバイの世界にあったのです。だからこそ、Oury Gripは他の自転車用グリップとは一線を画す、振動吸収性や耐久性への強いこだわりを持っているんですね。 変わらないことの美学、Made in USAへのこだわり Oury Gripを語る上で絶対に外せないのが、その生産背景です。創業から今日に至るまで、Oury Gripは一貫して「Made in USA」を貫いています。 多くのブランドが生産拠点を国外に移していく中で、彼らは頑なにアメリカでの生産を続けてきました。そこには、自社製品の品質に対する絶対的な自信と、モノづくりへのプライドが感じられます。 2017年、Ouryは大きな転機を迎えます。創業から長年ブランドを支えてきた中心人物の引退を機に、同じくアメリカのグリップ・バーテープメーカーである「Lizard Skins(リザードスキンズ)」社へブランドが引き継がれることになりました。しかし、Lizard Skins社はOuryが築き上げてきた伝統を深く理解していました。ブランド名はもちろん、その象徴であるデザイン、そして何より「Made in USA」の生産体制も、そのまま受け継ぐことを約束したのです。時代が変わっても、会社が変わっても、Ouryの魂は変わらない。この一貫した姿勢こそが、多くのファンを惹きつけてやまない理由の一つなのでしょう。 なぜOury Gripはこれほどまでに愛されるのか? では、具体的にOury Gripの魅力とは何なのでしょうか。 まず、そのアイコニックなデザイン。大きな四角いブロックが並んだような独特のパターンは、抜群のクッション性を生み出します。この肉厚で柔らかいコンパウンドが、路面からの不快な振動を吸収し、手のひらの痺れや疲れを劇的に軽減してくれます。長距離を走るツーリングや、荒れた道を行くグラベルライドでは、この恩恵をはっきりと感じることができるはずです。 それでいて、グリップ力も非常に高い。ブロックのエッジが指にしっかりと食いつき、雨の日や汗をかいた手でも滑りにくい。見た目のポップさとは裏腹に、非常に実直で機能的な設計がされているんです。 そして、このグリップが持つ独特の「空気感」。どこか懐かしく、それでいて古さを感じさせない普遍的なデザインは、クロモリフレームの繊細なバイクから、ストリートを駆け抜ける無骨なMTBまで、どんな自転車にも不思議と馴染んでしまいます。愛車に少しだけ「カルチャー」の香りを加えたい、そんな時にもOury Gripは最高の選択肢になります。 自転車シーンとの出会い モトクロスから始まったOury Gripが、どのようにして自転車の世界にやってきたのでしょうか。 その性能の高さは、BMXや初期のマウンテンバイクのライダーたちの間ですぐに評判となりました。彼らはOury Gripがもたらす快適性とコントロール性をいち早く見抜き、自分たちのバイクに採用し始めたのです。 日本でその名が広く知られるようになったきっかけの一つは、2007年に公開されたサンフランシスコのピストバイククルー「MASH SF」の映像作品でしょう。彼らのアグレッシブなライディングスタイルと、それを支えるバイクのパーツチョイスは、世界中のストリートシーンに大きな影響を与えました。その映像の中で、多くのライダーがOury Gripを装着していたことで、日本でもピストバイクやシングルスピードのカスタムにおける定番アイテムとして確固たる地位を築いたのです。 Ouryを代表するプロダクト 現在も、Oury Gripはその基本設計を変えることなく、時代のニーズに合わせた製品を展開しています。いくつか代表的なモデルを紹介しますね。 Oury Grip Mountain Grip (Original) すべての基本となる、最もクラシックなモデル。スリップオンタイプで、その握り心地はまさに「Oury」そのもの。豊富なカラーバリエーションで、愛車のアクセントに最適です。自分の好きな長さにカットして使えるのも魅力ですね。 Oury Lock-On Grip クラシックな握り心地はそのままに、ボルトでハンドルバーに固定できるロックオンタイプ。激しいライディングでもグリップがずれる心配がなく、MTBやグラベルバイクで安心して使えます。取り付けや取り外しも簡単です。 Oury V2 Grip オリジナルのデザインを踏襲しつつ、現代のワイドなハンドルバーに合わせて少し長めに設計されたモデル。より多様なライディングスタイルに対応する、進化版のOuryです。 まとめ:グリップひとつに宿る、カルチャーと哲学 今回は、Oury Gripという一つのグリップが持つ、深い物語についてお伝えしてきました。 それは単なるゴムの塊ではありません。モトクロスの情熱から生まれ、アメリカのモノづくり精神に育まれ、そしてストリートカルチャーの中で愛されてきた、歴史そのものだと僕は思います。ハンドルを握るたびに、そのブロックの一つひとつから、50年以上の歴史と哲学が伝わってくるようです。 もしあなたが、自分の自転車にもっと愛着を持ちたい、パーツ一つひとつにこだわりたいと考えているなら、ぜひ一度Oury Gripを試してみてください。きっと、あなたの自転車ライフが、もっと豊かで楽しいものになるはずです。 この記事を読んで、Oury Gripについて感じたことや、あなたのおすすめのグリップなどがあれば、ぜひ下のコメント欄で教えてください。皆さんの自転車の話を聞けるのを楽しみにしています。 それでは、また次の記事で会いましょう!ヒロヤスでした!
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クロモリの系譜を辿る:スポルティーフとランドナー、そしてグラベルロードの共通言語

こんにちは、ヒロヤスです。大阪の街を今日も自転車で駆け抜けているアラフォー、デザイナーの僕です。 僕のブログをいつも読んでくださっている皆さん、本当にありがとうございます。さて、今回は、僕たちクロモリ愛好家が常に心を惹かれる、クラシックなツーリングバイクの二大巨頭、「スポルティーフ」と「ランドナー」についてのお伝えしたいと思います。…
クロモリの系譜を辿る:スポルティーフとランドナー、そしてグラベルロードの共通言語
こんにちは、ヒロヤスです。大阪の街を今日も自転車で駆け抜けているアラフォー、デザイナーの僕です。 僕のブログをいつも読んでくださっている皆さん、本当にありがとうございます。さて、今回は、僕たちクロモリ愛好家が常に心を惹かれる、クラシックなツーリングバイクの二大巨頭、「スポルティーフ」と「ランドナー」についてのお伝えしたいと思います。 どちらもフランス発祥の自転車文化から生まれ、日本の自転車文化にも深く根を下ろしている車種ですが、「似ているようで何が違うの?」と感じている人も多いのではないでしょうか。さらに、現代のトレンドである「グラベルロード」と、このクラシックなツーリングバイクたちとの間に、どんな関係性があるのか、その共通言語を探ってみたいと思います。 デザインを生業とする僕としては、機能性はもちろん、それぞれのスタイルが持つ「美しさ」や、その背景にある「哲学」に強く惹かれます。クロモリという素材が持つ普遍的な魅力と、これらの車種が辿ってきた歴史を深く掘り下げていきましょう。 そもそも、スポルティーフとランドナーって何? この二つの車種は、どちらも長距離を走るためのツーリングバイクという大きなカテゴリーに属しています。しかし、その誕生の背景や目的に着目すると、明確な違いが見えてきます。 ランドナー(Randonneur)のバックストーリー ランドナーはフランス語の「ランドネ(Randonnée)」、つまり「小旅行」や「散策」に由来します。その名の通り、荷物を積んで舗装路から未舗装路まで、数日にわたる長距離の自転車旅行を快適にこなすことを目的としてフランスで生まれました。 生まれた年代と歴史: 1900年代初頭からフランスで発達し、特に戦後の日本では、山岳地が多く舗装率が低かった日本の道路事情に合わせて独自の進化を遂げました。 特徴的な設計思想: 積載性: 前後のパニアバッグ(サイドバッグ)をフル装備できるよう、多くのダボ穴(キャリア取り付け用のネジ穴)を備える拡張性の高さ。 走破性: 当時の悪路にも対応できるよう、比較的太めのタイヤ(650Aや26インチなど)を装着。 輪行への対応: 日本独自の発展として、分割式の泥除けや、工具なしでフォークが外せる工夫など、輪行(電車などで自転車を運ぶこと)を前提とした設計が取り入れられることも多いです。 乗り心地: 安定性を重視した設計で、比較的アップライトな乗車姿勢になりやすいです。 スポルティーフ(Sportif)のバックストーリー スポルティーフはフランス語で「スポーツマン」や「運動好き」を意味する「sportif」から来ています。ランドナーが「旅」を重視したのに対し、スポルティーフは**短期間の比較的速いサイクリングやブルベ(超長距離のタイムトライアル)**での使用を主な目的としています。 生まれた年代と歴史: ランドナーとほぼ同時期に発達しましたが、ロードレース文化の影響をより強く受けた車種です。 特徴的な設計思想: スピード: ロードバイクに近い700Cのタイヤ(あるいは細身の650B)を履き、ランドナーよりも高い速度域での走行を意識しています。 積載性: 荷物は主にフロントバッグやサドルバッグ程度の少量・軽量にとどめ、キャリアも小型のものが中心です。 ジオメトリー: ランドナーよりも前傾姿勢が強く、機敏なハンドリングと高い巡航性能を目指した設計になっています。 美意識: ランドナーと同様に泥除けを装備しますが、より流線形で洗練されたルックスを重視する傾向が強いです。 スポルティーフとランドナーの決定的な違い まとめると、両者の違いは「旅のスタイルと速度への志向」に集約されます。 項目 ランドナー (Randonneur) スポルティーフ (Sportif) 主な目的 長期・多荷物の自転車旅行、悪路走破 短期・軽荷物の高速ツーリング、ブルベ タイヤサイズ 650A、26インチ(太め) 700C、650B(細身) 荷物の積載 前後パニアバッグなどフル装備(積載量大) フロントバッグ、フレームバッグなど(積載量小) 走行速度 安定性・快適性重視でゆったり 巡航速度を意識した快速性重視 乗車姿勢 比較的にアップライト(楽) 比較的に前傾姿勢(スポーティー) ランドナーが「どこへでも、多くの荷物と共に、ゆっくりと旅をするための道具」だとすれば、スポルティーフは「荷物を最小限に抑え、美しく、より速く走破するための道具」と言えるでしょう。どちらもクロモリフレームが持つ、しなやかな乗り心地と堅牢性、そして何よりそのクラシックな佇まいが魅力のコアになっています。 現代の潮流:グラベルロードとの共通言語 さて、このクラシックなツーリングバイクの系譜に、現代の「グラベルロード」はどう位置づけられるのでしょうか? グラベルロードは「ネオ・ツーリングバイク」 グラベルロードは、舗装路(ロード)と未舗装路(グラベル)の境界を越えて走ることを目的としています。これはまさに、かつてランドナーが日本の山道や未舗装路を走破するために進化してきた歴史と重なります。 グラベルロードは、現代のテクノロジーと解釈で**ランドナーとスポルティーフの特性を融合させた「ネオ・ツーリングバイク」**と言えるでしょう。 特性 ランドナー/スポルティーフのDNA グラベルロードの現代的解釈 積載性 ダボ穴の多さ(ランドナー) 多数のダボ穴、バイクパッキングへの対応 走破性 太めのタイヤ、低速ギア(ランドナー) ワイドクリアランス、油圧ディスクブレーキ 快速性 700C、スポーティーなジオメトリー(スポルティーフ) 軽量な設計、ロードに近いジオメトリー 特に、太いタイヤクリアランス、安定した低速域の走行性能、そしてディスクブレーキの採用は、ランドナーが目指した「どんな道でも荷物と共に安全に走破する」という哲学を、現代のパーツで極限まで高めた結果だと僕は捉えています。 スポルティーフとの関係性: グラベルロードの中には、より舗装路での快速性を重視したモデルがあり、これはまさに「ネオ・スポルティーフ」と呼べる位置づけです。少量・軽量のバイクパッキング装備で、軽快なロングライドを楽しむスタイルと親和性が高いです。 ランドナーとの関係性: グラベルロードは、フルパッキングに対応する拡張性と、悪路をものともしない走破性から、「ネオ・ランドナー」とも呼ばれています。重い荷物やキャンプ道具を積んで、未舗装路を深く分け入る旅のスタイルを可能にしています。 グラベルロードのクロモリフレームが持つ、クラシックな見た目とタフな実用性は、これら伝統的なツーリングバイクが持つ「文化」と「機能美」を現代に受け継いでいる証拠だと感じています。 伝統を今に伝えるプロダクトの紹介 このスポルティーフとランドナーの伝統は、一部のブランドによって今も大切に受け継がれています。ここでは、それぞれの設計思想を体現した、現行・または近年まで販売されていた代表的なプロダクトをピックアップしてご紹介します。 ランドナーを代表するプロダクト:ARAYA(アラヤ)『Touriste (ツーリスト)』 新家工業株式会社が手がけるブランド、ARAYA(アラヤ)は、日本の自転車産業の歴史を語る上で欠かせない存在です。特にツーリングバイクにおいては、長年の経験とノウハウが凝縮されています。 『Touriste』は、日本独自のランドナー文化の「輪行」や「山岳ツーリング」の精神を色濃く受け継いだモデルです。650Bのタイヤサイズを採用し、分割式泥除けなど、クラシックな意匠と現代的な実用性をバランスさせています。美しいラグフレームのクロモリ造形は、まさに日本のツーリングバイクの伝統を今に伝える鏡のような一台です。 スポルティーフを代表するプロダクト:DAVOS(ダボス)『D-309 ネオ・スポルティーフ』 パーツ代理店である株式会社フカヤが立ち上げたDAVOS(ダボス)は、「日本のツーリングスタイルを現代に再解釈する」という明確なコンセプトを持つブランドです。 『D-309 ネオ・スポルティーフ』は、その名の通り、スポルティーフの快速性と美意識を現代に蘇らせたモデルです。カーボンフレームを採用していますが、そのジオメトリーやコンセプトは、まさに現代のブルベや軽快なロングライドを想定したもの。ディスクブレーキや太めのタイヤクリアランス(700Cで最大50mm)を持つことで、スポルティーフが目指した「速さと快適性の両立」を、グラベルロード的な要素を取り入れながら実現しています。伝統的なスポルティーフのスタイルを、最新の素材と技術で極限まで洗練させた一台です。 まとめ:クロモリツーリングの未来は続く スポルティーフもランドナーも、そしてグラベルロードも、根本にあるのは「自転車に乗って、遠くへ、自由に旅をしたい」という人間の根源的な欲求です。 ランドナーは「荷物と共に、どこへでも踏破する許容力」、スポルティーフは「最小限の荷物で、美しく、速く駆け抜ける美意識」。そして、グラベルロードは、その両方の良さを現代の技術で融合し、**「ボーダレスな走破性」**という形で進化させています。 僕たちクロモリ愛好家にとって、ラグワークのランドナーや、洗練されたスポルティーフの佇まいは、いつまでも色褪せない憧れの存在です。しかし、現代のクロモリグラベルバイクが、その魂を受け継ぎ、新しい時代のツーリングスタイルを提案していることにも、デザイナーとして非常に心を動かされます。 フレームの造形や素材に宿る物語を読み解くことは、僕のライフワークです。皆さんも、ご自身の自転車がどんな歴史を背負い、どんな旅のDNAを持っているのかを想像しながら、次のライドを楽しんでみませんか。 皆さんは、ランドナーとスポルティーフ、どちらの設計思想に惹かれますか?そして、ご自身のグラベルロードは、どちらの要素をより強く受け継いでいると感じますか?ぜひコメントで教えてください! それでは、また次の記事で会いましょう!ヒロヤスでした!
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ROCKBROSを徹底解剖!どこの国?何者?謎多き高コスパブランドの背景と魅力に迫る

こんにちは、ヒロヤスです。大阪の街を今日も自転車で駆け抜けているアラフォー、デザイナーの僕です。 僕のブログをいつも読んでくださっている皆さん、本当にありがとうございます。さて、今回は、多くのサイクリストが一度はオンラインストアで見かけたことがあるであろう、あの「ROCKBROS(ロックブロス)」について、じっくりと掘り下げてみたいと思います。…
ROCKBROSを徹底解剖!どこの国?何者?謎多き高コスパブランドの背景と魅力に迫る
こんにちは、ヒロヤスです。大阪の街を今日も自転車で駆け抜けているアラフォー、デザイナーの僕です。 僕のブログをいつも読んでくださっている皆さん、本当にありがとうございます。さて、今回は、多くのサイクリストが一度はオンラインストアで見かけたことがあるであろう、あの「ROCKBROS(ロックブロス)」について、じっくりと掘り下げてみたいと思います。 Amazonや楽天を覗けば、ペダルやバッグ、サングラスからウェアまで、ありとあらゆるプロダクトがずらりと並び、そのどれもが驚くほどのコストパフォーマンスを誇る。僕もデザイナーという仕事柄、モノの背景にあるストーリーやデザインの哲学に惹かれるタイプなのですが、ROCKBROSに関しては「一体どこの国のブランドなんだ?」「どうしてこんなに手頃な価格で、これだけの製品が作れるんだ?」と、ずっと不思議に思っていました。もしかしたら、皆さんの中にも同じような疑問を抱いている方がいるかもしれませんね。 そこで今回は、謎に包まれたブランド、ROCKBROSの正体に迫ってみたいと思います。その起源から、製品に込められた思想、そして世界中のサイクリストから支持される理由まで、他のどのブログよりも詳しくお伝えしたいと思います。 ROCKBROSの起源:一体どこから来たブランドなのか? まず、多くの人が気になっている「ROCKBROSはどこの国のブランド?」という疑問からお答えしましょう。 その答えは、中国です。 ROCKBROSは2010年に中国で設立された、自転車関連のアウトドアスポーツ用品を手がけるブランドです。浙江省に本社を構える企業で、その正式名称は「Zhejiang ROCKBROS Sports Goods Co., Ltd.」。オンラインのショッピングサイトを見ていると、あまりに日本市場に馴染んでいるので、日本のブランドだと勘違いしている方も少なくないようです。 その背景には、彼らの巧みなグローバル戦略があります。ROCKBROSは中国で誕生した後、世界へと目を向け、ECサイトを中心にその販路を拡大していきました。そして、ただ製品を販売するだけでなく、各国の市場に合わせたローカライズにも力を入れています。 その一環として、2015年には日本法人である「株式会社ロックブロス」が兵庫県姫路市に設立されました。同じ年にはドイツ法人が、翌2016年にはアメリカ法人が設立されるなど、世界各国に拠点を置くことで、よりユーザーに近い場所でビジネスを展開しているのです。僕たちが日本でスムーズに製品を購入でき、サポートを受けられるのは、こうした日本法人の存在が大きいと言えるでしょう。 ROCKBROSのコンセプト:すべてのサイクリストに寄り添うモノづくり 創業者の具体的なストーリーはあまり表に出てきていませんが、その製品ラインナップや価格設定から、ROCKBROSが目指すモノづくりのコンセプトを垣間見ることができます。 それは**「サイクリングの楽しみを、もっと身近に、もっと多くの人に」**という想いではないでしょうか。 スポーツサイクルはどうしても初期投資が高くなりがちです。しかしROCKBROSは、これからサイクリングを始めたいという初心者から、日々の通勤で自転車を使う人、本格的なバイクパッキングに挑戦したいベテランまで、あらゆる層のサイクリストが必要とするであろうアイテムを、驚くほど手に入れやすい価格で提供しています。 この「圧倒的なアクセシビリティ(手に入れやすさ)」こそが、彼らの最大の強みであり、ブランド哲学の根幹をなしていると僕は考えています。 また、単に安いだけでなく、その品質やデザインにもこだわりを見せているのがROCKBROSの面白いところ。例えば、2017年にはズボンの裾を巻き込みから守る「裾止めバンド」が、世界的に権威のあるデザイン賞の一つである**「iFデザイン賞」**を受賞しています。これは、彼らが機能性や価格だけでなく、デザインという付加価値にも真摯に向き合っている証拠と言えるでしょう。 なぜROCKBROSは世界中のサイクリストに受け入れられているのか では、なぜROCKBROSはこれほどまでに世界中のサイクリストから支持を集めることができたのでしょうか。その理由は、大きく3つあると僕は分析しています。 1. 圧倒的なコストパフォーマンス 何と言っても最大の魅力は、その価格と品質のバランスです。数万円もするようなハイブランドの製品と全く同じとは言いませんが、日常的な使用や週末のサイクリングで使うには十分すぎるほどの機能性を、数分の一の価格で実現しています。 実は僕、サイクルフェスなどのイベントにROCKBROSが出展している時に開催される、B品の**「投げ売りガレッジセール」**が密かな楽しみなんです。ちょっとした傷や塗装ムラがあるだけで、驚くような価格で手に入ることがある。まさに宝探しのような感覚で、これもまた彼らがサイクリングのハードルを下げ、僕たちに楽しみを提供してくれている一つの形なんだろうなと感じます。 2. あらゆるニーズに応える幅広い製品ラインナップ 「こんな製品があったらいいな」と思うようなニッチなアイテムから、ヘルメットやペダルのような必須アイテムまで、そのラインナップは驚くほど多岐にわたります。特定のジャンルに特化するのではなく、サイクリングという大きな枠組みの中で、あらゆるニーズをカバーしようという姿勢が、多くのユーザーにとっての「とりあえずROCKBROSを見てみよう」という動機に繋がっています。 3. グローバルな販売網 Amazonをはじめとする巨大なEコマースプラットフォームを最大限に活用し、世界中のどこにいても手軽に製品を購入できる環境を整えたこと。これが、ブランドの認知度を飛躍的に高め、世界的な人気を不動のものにした大きな要因です。 ROCKBROSを代表するプロダクト ここで、実際に販売されている製品の中から、特にROCKBROSらしさが表れている代表的なプロダクトをいくつかご紹介します。 ペダル 驚くほど多くの種類がありますが、特に人気なのが軽量なアルミ合金製のフラットペダルです。広い踏面と滑り止めのピンが配置され、街乗りからオフロードまで幅広く対応します。CNC加工による美しい仕上げや、豊富なカラーバリエーションも魅力で、手軽に愛車のカスタムを楽しめます。 バッグ類 バイクパッキングの流行をいち早く捉え、大容量のサドルバッグやフレームバッグ、パニアバッグなどを数多くラインナップしています。その多くが防水仕様でありながら、手頃な価格で手に入るため、「バイクパッキングを始めてみたい」という人の最初の選択肢として、絶大な支持を集めています。 ライト・サングラス 高輝度のフロントライトや、自動点灯機能付きのテールライトなど、安全性に直結するアイテムも充実しています。また、調光レンズや偏光レンズを採用した高機能なサングラスも、数千円という価格で手に入るため、多くのサイクリストが利用しています。 まとめ 今回は、ROCKBROSというブランドについて深く掘り下げてみました。 中国で生まれ、巧みなグローバル戦略とインターネットを駆使して世界中に広がったROCKBROS。その正体は、**「すべてのサイクリストに、手頃な価格でサイクリングの楽しさを提供する」**という、非常にシンプルで力強い哲学を持ったブランドでした。 高価な機材を揃えることだけが、自転車の楽しみではありません。ROCKBROSの製品は、僕たちに「もっと気軽に、もっと自由に自転車を楽しんでいいんだ」というメッセージを伝えてくれているような気がします。 もちろん、製品によっては仕上げの甘さや、長期的な耐久性に課題が残るものもあるかもしれません。しかし、それを補って余りある魅力と価値を提供してくれていることは間違いないでしょう。 皆さんのガレージにも、一つや二つ、ROCKBROSの製品がありませんか? この記事を読んで、ROCKBROSに対する見方が少しでも変わったら嬉しいです。ぜひ、コメント欄で皆さんが使っているROCKBROS製品やお気に入りのポイントなどを教えてください! それでは、また次の記事で会いましょう!ヒロヤスでした!
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【決定版】シマノXTの歴史を深掘り!MTBコンポーネントの真髄に迫る

こんにちは、ヒロヤスです。大阪の街を今日も自転車で駆け抜けているアラフォー、デザイナーの僕です。 僕のブログをいつも読んでくださっている皆さん、本当にありがとうございます。さて、今回は、僕が長年愛してやまないマウンテンバイクのコンポーネント、シマノ「DEORE XT」について、その歴史と哲学を深掘りする記事をお伝えしたいと思います。…
【決定版】シマノXTの歴史を深掘り!MTBコンポーネントの真髄に迫る
こんにちは、ヒロヤスです。大阪の街を今日も自転車で駆け抜けているアラフォー、デザイナーの僕です。 僕のブログをいつも読んでくださっている皆さん、本当にありがとうございます。さて、今回は、僕が長年愛してやまないマウンテンバイクのコンポーネント、シマノ「DEORE XT」について、その歴史と哲学を深掘りする記事をお伝えしたいと思います。 MTBコンポーネントの世界は日進月歩。レースで勝つための最高性能を追求するXTRや、より手頃な価格帯のDEOREなど、多種多様なグレードが存在します。しかし、その中でもXTは、ただの「セカンドグレード」という言葉では語り尽くせない、特別な存在感を放ち続けていると僕は感じています。 今回の記事では、XTがどのようにして生まれ、なぜ今も多くのライダーに選ばれ続けているのかを、僕なりの視点で紐解いていきたいと思います。そして、XTの存在を語る上で欠かせない、最高峰のコンポーネントであるXTRとの関係性にもしっかりと触れていきます。 XTの誕生と哲学:MTBコンポーネントの夜明け シマノがMTBコンポーネントの歴史に名を刻んだのは、1982年に発表された初代DEORE XT (M700) からです。この「DEORE XT」こそ、シマノが初めて本格的に開発した、マウンテンバイク専用のコンポーネントグループでした。 当時のMTBシーンは、まだ黎明期。アメリカ西海岸のクランカーたちが、ビーチクルーザーを改造して山を下る遊びから生まれたばかりで、パーツもロードバイク用やBMX用を流用している状況でした。当然、耐久性や操作性はMTBの過酷な環境には適しておらず、多くの課題がありました。 こうした状況をいち早く捉えたシマノは、単なる既存パーツの流用ではない、MTBの要求に特化したコンポーネントの開発に着手します。この時、掲げられた哲学は**「プロフェッショナルな競技者だけでなく、すべてのアウトドア愛好家が快適にMTBを楽しめること」**。初代DEORE XTは、耐久性、信頼性、そして何よりも使いやすさを追求し、市場に登場しました。その総合的な完成度の高さは、瞬く間にMTBライダーたちのスタンダードな存在となったのです。 XTとXTR、それぞれの役割と関係性 実は、シマノのMTBコンポーネントの最高峰「XTR(M900系)」が発表されたのは、XTの誕生からおよそ10年後の1991年のことです。 XTが「普遍的なMTBの楽しみ」を追求したのに対し、XTRは**「X-Treme Racing」**の名が示す通り、XC(クロスカントリー)レースでの勝利を目的とした、一切の妥協を排した軽量・高性能コンポーネントとして位置づけられました。 これはシマノのMTBコンポーネントにおける重要な設計思想となりました。 XTRは、最先端のテクノロジーを最初に搭載する開発プラットフォームです。プロライダーと過酷なフィールドでテストを繰り返し、そこで得られた技術や知見が、やがてXTへと降りてきます。そしてXTは、その最高峰の技術を、より多くのライダーが手の届く範囲で楽しめるように最適化する役割を担っています。 XTは、XTRの「妥協なき性能」を「耐久性」と「信頼性」というフィルターを通して再構築し、あらゆるマウンテンバイクのフィールドで最高のパフォーマンスを発揮する「最高の道具」として進化を続けているのです。 年代別XTの進化とモデル番手 XTは、MTBシーンの変遷に合わせて、常に進化を遂げてきました。ここでは、シマノ公式サイトに掲載されている、より細かいモデルチェンジとその背景を振り返ってみましょう。 モデル番手 発表年 主要な進化・トピック M700系 1982年 初代XT。マウンテンバイク専用設計として誕生。 M730系 1987年 **SIS(シマノ・インデックス・システム)**を搭載し、正確な変速を実現。 M732系 1989年 **HG(ハイパーグライド)**技術が登場。変速性能が飛躍的に向上。 M735系 1992年 Rapidfireレバーが登場。現代のシフターの原型となる操作系。 M737系 1994年 リア8速システムに本格対応。より細やかなギア選択が可能に。 M739系 1996年 Vブレーキの時代へ。Vブレーキの高い制動力で評価を得る。 M750系 1999年 油圧式ディスクブレーキがラインナップに初登場。Vブレーキとの両立期間が始まる。 M760系 2003年 ホローテックIIクランクが登場。剛性と軽量化を両立。 M770系 2007年 ディスクブレーキが標準化。システム・インテグレーションが深化。 M780系 2011年 10速化とダイナシスコンセプト導入。 M8000系 2015年 11速化、フロントシングル対応強化。 M8050系 2016年 **Di2(電動変速)**モデルが登場。電動化をXTグレードにも展開。 M8100系 2019年 12速化。XTRの技術を継承し、最高峰に迫る性能を実現。 ブレーキ規格の変遷:カンチ、Vブレーキからディスクブレーキへ XTの歴史を語る上で欠かせないのが、ブレーキシステムの進化です。特に、カンチブレーキからVブレーキへ、そしてディスクブレーキへと続く変遷は、MTBの安全性と性能を劇的に向上させた大きな転換点でした。 MTB黎明期から1990年代中盤まで、主流だったのはカンチブレーキでした。しかし、カンチブレーキは泥詰まりに弱く、制動力もライダーの体重やライディングスタイルに依存しがちでした。 この課題を解決したのが、1996年にシマノが発表したVブレーキです。より強力な制動力と優れたコントロール性を両立し、MTBブレーキのスタンダードを一気に塗り替えました。M739系XTは、このVブレーキを搭載した世代として、高い評価を得ました。 そして、ディスクブレーキの時代へと移行します。この転換期を象徴するのが、M750系です。この世代で、XTは初めて油圧式ディスクブレーキをラインナップに加えました。それまでの主流だったVブレーキと並行して販売され、ライダーは自分のスタイルや用途に合わせてブレーキシステムを選べるようになりました。 続くM760系では、ディスクブレーキがさらに進化し、Vブレーキのシェアを大きく逆転させました。そして、M770系になると、油圧式ディスクブレーキがXTの標準的なブレーキシステムとして定着し、Vブレーキは徐々にその役目を終えていきました。 このブレーキ規格の変遷は、単なるパーツの変更ではなく、MTBの走りの安全性とパフォーマンスを根本から高める、技術的なマイルストーンだったと言えるでしょう。 まとめ シマノのXTは、ただのコンポーネントグレードではありません。それは、MTBの歴史とともに歩み、常にその進化を支えてきた存在です。初代M700系で「すべてのアウトドア愛好家へ」という哲学を掲げ、M8050系Di2で電動化を実現し、最新のM8100系ではXTRと遜色ない性能を手に入れるまで、XTは常に時代の流れを汲み取りながら、ライダーの期待を裏切らない「最高の道具」として進化を続けてきました。 XTRがレースの最前線で技術革新を追求する旗艦だとすれば、XTは、その技術を**「耐久性」と「信頼性」**というフィルターを通して洗練させ、僕たちホビーライダーの手に届く最高のパフォーマンスとして具現化してくれます。過酷なトレイルライドから、週末のバイクパッキング、そして日々の街乗りまで、どんなシーンでも最高のパフォーマンスを発揮してくれる。それが、僕がXTに深い魅力を感じる理由です。 時代は変わっても、XTが持つ**「最高の道具を、より多くのライダーへ」**という哲学は決して揺らぎません。このぶれない姿勢こそが、XTが今も多くのライダーに愛され、そしてこれからも愛され続ける理由なのだと、僕は信じています。 この記事を読んで、XTの魅力に少しでも興味を持っていただけたら嬉しいです。皆さんはどの世代のXTに思い入れがありますか?ぜひコメント欄であなたのXTエピソードを教えてくださいね。 それでは、また次の記事で会いましょう!ヒロヤスでした!
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革サドルの革命児「セラアナトミカ」の物語

こんにちは、ヒロヤスです。大阪の街を今日も自転車で駆け抜けているアラフォー、デザイナーの僕です。僕のブログをいつも読んでくださっている皆さん、本当にありがとうございます。さて、今回は、革サドルというクラシックな世界に、まったく新しい風を吹き込んだメーカーについてお伝えしたいと思います。 その名は「セラアナトミカ」。…
革サドルの革命児「セラアナトミカ」の物語
こんにちは、ヒロヤスです。大阪の街を今日も自転車で駆け抜けているアラフォー、デザイナーの僕です。僕のブログをいつも読んでくださっている皆さん、本当にありがとうございます。さて、今回は、革サドルというクラシックな世界に、まったく新しい風を吹き込んだメーカーについてお伝えしたいと思います。 その名は「セラアナトミカ」。 自転車乗りの皆さんなら一度は耳にしたことがあるかもしれません。特に、長距離を走るブルベライダーや、バイクパッキングで旅をする人たちに深く愛されているサドルメーカーです。その独特なデザインと、一度座ったら忘れられないその快適性から、僕はかねてからその背景にとても興味を持っていました。今回は、そんなセラアナトミカの成り立ちから、その哲学、そして僕なりに細やかに捉えたプロダクトの魅力まで、じっくりと皆さんと分かち合いたいと思います。 セラアナトミカはどこにある?創業者と会社の物語 セラアナトミカは、アメリカ国内で手作業で革サドルを製造し続けている、数少ないメーカーのひとつです。その歴史は、2007年にウルトラサイクリストであるトム・ミルトン氏によって始まりました。彼は、長年にわたる自身のサイクリング経験から、「世界で最も快適なツーリング革サドル」という明確なビジョンを掲げ、革サドルの新たな可能性を追求し始めます。 革サドルは、使い込むほどにお尻の形に馴染み、唯一無二の座り心地になると言われますが、その一方で、硬くて馴染むまで時間がかかるという難点がありました。トム・ミルトン氏は、この「馴染ませるまでの苦痛」を無くし、買ったその日から快適な乗り心地を提供するサドルを生み出すことに情熱を注ぎました。 その結果生まれたのが、革の中央に縦に長いスリットを開けるという、革サドルの常識を覆すデザインです。このスリットによって、サドルの左右の面が独立して動き、座骨や会陰部にかかる圧力を効果的に逃がすことに成功しました。この革新的な構造は、後に「Flex-Flyシステム」として特許を取得することになります。 セラアナトミカの製品哲学と特徴 セラアナトミカのサドルは、単に快適性を追求しただけではありません。そこには、機能性だけでなく、美しさや持続可能性といった、デザイナーである僕も共感する深い哲学が息づいています。 革新的な製造方法 彼らは伝統的な革サドルの製法にとらわれず、独自の技術を開発しています。一般的な革サドルが、革を水に浸して成形するのに対し、セラアナトミカは水を使用しない「hot-molded dry製法」を採用。これにより、革が最初からしなやかになり、ひび割れが起こりにくく、短期間で体形に馴染むようになります。また、トップレザーとサポートレザーの二重構造にすることで、高い柔軟性を持ちながらも型崩れしにくい耐久性を実現しています。 究極の乗り心地 セラアナトミカのサドルに座ると、まるでハンモックに包まれているかのような感覚になります。これは、中央のスリットがペダリングの動きに合わせてしなやかにたわみ、お尻にかかるストレスを分散してくれるからです。長時間のライドでもお尻が痛くなりにくく、走りに集中できるのは、この独特な構造のおかげです。 メンテナンスと持続可能性 セラアナトミカは、サドルに使われる革を「消耗品」と考えています。だからこそ、一部のモデルではボルトとナットで革が固定されており、ユーザー自身で簡単に革を交換できるようになっています。これにより、一つのサドルをフレームはそのままに、革だけ交換して長く使い続けることが可能となり、持続可能なモノづくりへの姿勢がうかがえます。 日本での歩みと愛され方 セラアナトミカは、国内の熱心な自転車ショップやサイクリストの間で徐々に知られるようになり、今では多くのファンを持つサドルメーカーとなりました。その魅力は、やはり「革サドルなのに、最初からお尻が痛くならない」という圧倒的な快適性に尽きるでしょう。 特に、クラシックなスチールバイクやクロモリの自転車を好む人たちに深く受け入れられています。伝統的な革サドルのルックスを持ちながら、中身は最先端の技術が詰まっているというギャップが、モノの背景にこだわる人々の心を掴んでいるのだと思います。 セラアナトミカを代表するプロダクト Xシリーズ セラアナトミカの代表的なシリーズです。革サドルの「X1」、ラバーサドルの「R2」など、複数のラインナップがあります。特に「X1」は、独自の穴空きデザインと二重革構造の「WaterShedレザー」により、軽量な乗り心地を追求したモデルです。 Hシリーズ 「Xシリーズ」よりも革が厚く、より耐久性を高めたシリーズです。体重が重めのライダーや、よりタフなライドを求める人に向けて設計されています。「H1」はスチールフレームとクロモリレール、一方「H2」は軽量なアルミフレームとステンレスレールを採用するなど、用途や好みに合わせて選ぶことができます。 まとめ セラアナトミカのサドルは、ただの自転車パーツではありません。それは、サイクリストの経験から生まれた、機能と美しさを両立させた「作品」だと僕は感じています。 革サドルというと、馴染むまで大変、雨に弱い、重い、といったネガティブなイメージを持つ人もいるかもしれません。しかし、セラアナトミカは、それらの課題を独自の技術と哲学で解決し、革サドルの魅力を最大限に引き出すことに成功しました。 特に、そのユニークなスリットやモジュール式のデザインは、見た目からして他とは一線を画しています。このサドルが、サイクリストにとっての新たな選択肢となり、自転車での旅や街乗りをさらに豊かなものにしてくれることは間違いありません。 この記事を読んで、セラアナトミカに興味を持った方がいたら、ぜひ一度その乗り心地を試してみてください。その感動は、きっと新しい自転車ライフへの扉を開いてくれるはずです。 それでは、また次の記事で会いましょう!ヒロヤスでした! ご意見やご感想があれば、ぜひコメントで教えてくださいね。
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ジルベルソーが紡ぐ、革サドルとフランスの物語

こんにちは、ヒロヤスです。大阪の街を今日も自転車で駆け抜けているアラフォー、デザイナーの僕です。僕のブログをいつも読んでくださっている皆さん、本当にありがとうございます。 さて、今回は、僕が長年追い求めている自転車のパーツ、特にクロモリバイクにぴったりの「革サドル」について、とことん深く掘り下げてお伝えしたいと思います。 革サドルといえば、多くの人がイギリスの老舗ブランド、ブルックスを思い浮かべるかもしれません。僕自身もブルックスのサドルには多くの思い出があります。…
ジルベルソーが紡ぐ、革サドルとフランスの物語
こんにちは、ヒロヤスです。大阪の街を今日も自転車で駆け抜けているアラフォー、デザイナーの僕です。僕のブログをいつも読んでくださっている皆さん、本当にありがとうございます。 さて、今回は、僕が長年追い求めている自転車のパーツ、特にクロモリバイクにぴったりの「革サドル」について、とことん深く掘り下げてお伝えしたいと思います。 革サドルといえば、多くの人がイギリスの老舗ブランド、ブルックスを思い浮かべるかもしれません。僕自身もブルックスのサドルには多くの思い出があります。 ただ、今回僕が皆さんに紹介したいのは、そのブルックスと並び称される、いや、ある意味ではブルックスの美学をさらに現代的に進化させたと言える、フランスのブランド「Gilles Berthoud(ジルベルソー)」です。 正直に言うと、ジルベルソーは、まだ日本ではそこまで広く知られているわけではないかもしれません。だからこそ、僕は皆さんに、このブランドが持つ物語と、そのプロダクトの素晴らしさを知ってほしい。 今回は、単なる製品レビューではなく、このブランドがどうして生まれ、どんな哲学を持ってモノづくりをしているのか、その背景にある「魂」の部分まで、熱くお伝えしていきたいと思います。さあ、一緒にジルベルソーの世界を旅してみましょう。 ジルベルソーの歴史とブランド哲学 ジルベルソーは、1977年にフランスのポン・ド・ヴォーという街で創業されました。創業者であるジル・ベルソーは、もともと自転車フレームビルダーとして名を馳せていた人物です。彼は、自分の手で作り出す自転車に、それにふさわしいパーツ、特にサドルが必要だと考えました。単なる既製品ではなく、自転車と一体となり、乗り手に長く寄り添うようなサドルを求めたのです。 そうして生まれたのが、彼自身の名を冠した「Gilles Berthoud」ブランドです。ジルベルソーの哲学は、単に美しいモノを作るだけでなく、「機能性、耐久性、そしてエレガンス」を追求することにあります。それはまるで、フランスのオートクチュール(高級仕立服)のように、細部にまでこだわり抜かれたモノづくりです。 彼らの工房には、サドル職人、バッグ職人、フレームビルダー、メカニック、ホイールビルダーといった、それぞれの専門家が小さなチームを組んで働いています。これは、単一の製品を作るだけでなく、自転車の全体像を理解した上で、パーツとしてのサドルを最高の形で提供しようという彼らの強いこだわりを物語っています。 ジルベルソーの製品が持つ唯一無二の魅力 ジルベルソーのサドルは、他の革サドルとは一線を画すいくつかの特徴を持っています。 まず、その素材です。ジルベルソーのサドルには、上質な厚手の天然植物性タンニンなめし革が使われています。この革は、化学染料を一切使わずに仕上げられているため、しなやかで、乗り手の身体に驚くほど素早く馴染みます。 また、革を裁断する際も、革の最も強い繊維の向きを考慮して、左右対称に、そして均等に馴染むように工夫されています。この細やかな配慮が、長期的な快適性につながるのです。 そして、最も特徴的なのは、その構造です。一般的な革サドルは、テンションをかけるためのボルトがサドルの裏側に露出していることが多いですが、ジルベルソーのサドルは、ボルトがプレートの中に隠れるような設計になっています。 これにより、革に過度な負担がかからず、革のよじれを防ぐことができます。 また、サドルを構成するバックプレートやノーズパーツには、高い耐久性を持つテクニカルコンポジット素材が採用されています。これは、鉄よりも軽量で、振動吸収性に優れているだけでなく、分解してメンテナンスや修理がしやすいというメリットもあります。 すべてのパーツが分解可能なため、革が傷んだり、部品が摩耗したりしても、交換して長く使い続けることができるのです。これは、使い捨ての文化とは真逆の、モノを大切に使い続けるという哲学が形になったものだと言えるでしょう。 日本での愛され方と代表的なプロダクト ジルベルソーのサドルは、日本では主にシクロツーリズムやランドナーといった、クラシックな自転車文化を愛する人々の間で静かに広まっていきました。彼らのサドルが持つ、普遍的な美しさと機能性が、日本の自転車愛好家の心を掴んだのです。 特に、旅をする人々の間で支持されているのは、メンテナンスをしながら長く使えるという点です。自分で革のテンションを調整し、時には分解して手入れをする。そうやって乗り手と共に時を重ねていくサドルは、単なる道具ではなく、旅の相棒のような存在になります。 ジルベルソーを代表するプロダクト Aspin(アスピン) ジルベルソーの最もクラシックなモデル。幅が広く、快適な座り心地が特徴で、特にツーリングや日常のサイクリングに適しています。 Aravis(アラヴィス) アスピンに比べ、やや細身で、よりスポーティなライドポジションに適したモデルです。ロードバイクやスポーティなツーリングバイクに合わせやすく、その美しいシルエットは多くのサイクリストを魅了しています。 まとめ 今回、ジルベルソーというフランスのブランドについて、その歴史や哲学、そしてプロダクトの細部にまでこだわったモノづくりについて、僕なりの視点でお伝えしました。 彼らのサドルは、決して安価なものではありません。しかし、それは単に高価なパーツというだけでなく、職人の手仕事、時代を超えて受け継がれるデザイン、そしてモノを大切に使い続けるという哲学が詰まった、まさに「アート」のような存在だと思います。 使い始めから快適で、乗るほどに自分の身体に馴染んでいく革サドルは、クロモリフレームとの相性も抜群です。乗り手のペダリングの力強さをしっかりと受け止めながら、路面からの不快な振動を和らげてくれる。僕が日々乗っている自転車に、もしこのサドルをつけたら、どんな物語が生まれるだろうと想像するだけでワクワクします。 皆さんも、このジルベルソーのサドルを、もしどこかで見かける機会があれば、ぜひその細部の作り込みをじっくりと見てみてください。きっと、単なるサドルを超えた、深い物語を感じることができるはずです。 今回の記事について、皆さんのご意見や感想、あるいは「このブランドについても深く掘り下げてほしい」といったご要望があれば、ぜひコメントで教えてください。 それでは、また次の記事で会いましょう!ヒロヤスでした! この度は、ジルベルソーに関するブログ記事の作成をご依頼いただきありがとうございます。記事の構成は上記の内容でよろしいでしょうか。もし、特定の製品について、より詳しいレビューや比較情報が必要でしたら、その旨を教えていただけますか?
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ストリッツランド:デンマーク発、レトロMTB愛が生んだパーツブランドの物語

こんにちは、ヒロヤスです。大阪の街を今日も自転車で駆け抜けているアラフォー、デザイナーの僕です。 僕のブログをいつも読んでくださっている皆さん、本当にありがとうございます。さて、今回は僕が最近注目している、デンマーク発のパーツブランド「ストリッツランド(Stridsland)」について、誰よりも詳しくお伝えしたいと思います。…
ストリッツランド:デンマーク発、レトロMTB愛が生んだパーツブランドの物語
こんにちは、ヒロヤスです。大阪の街を今日も自転車で駆け抜けているアラフォー、デザイナーの僕です。 僕のブログをいつも読んでくださっている皆さん、本当にありがとうございます。さて、今回は僕が最近注目している、デンマーク発のパーツブランド「ストリッツランド(Stridsland)」について、誰よりも詳しくお伝えしたいと思います。 たくさんのパーツブランドがひしめく中で、なぜこのブランドが特別な輝きを放っているのか。それは、一人の自転車好きの純粋な情熱から生まれた、確固たる哲学とストーリーがあるからです。会社がどこにあるのか、創業者や設立の経緯、どんなプロダクトをどのような想いで作っているのか。そして、日本の自転車乗りたちにどのように受け入れられているのか。これらの物語を深く掘り下げていきます。これを読めば、きっとあなたもストリッツランドの魅力に心を奪われるはずです。 創業者の情熱から生まれたブランド ストリッツランドの創設者、それはカナダとデンマークのハーフであるマティアス・ストリッツランド氏です。彼の物語は、彼自身が心から愛する「レトロなMTB」の改造に端を発しています。 彼は2013年頃から、自分のユニークなアイデアを形にしたいという夢を抱き始め、2017年にはインスタグラムアカウント「@stridsland_journal」をスタート。そして2019年後半には、ついに「ストリッツランド」としてビジネスを登録し、彼の情熱は具体的な形となりました。彼は、デザインから梱包、請求書作成、コンテンツ制作まで、すべての業務をたった一人でこなす、まさにブランドそのものを体現する人物です。 「妥協なきタフさと汎用性」に込められた哲学 ストリッツランドのプロダクトは、流行の最先端を追いかけるのではなく、あくまで「強度と汎用性」にこだわり抜いてデザインされています。レトロなMTBやBMXを心から愛するマティアス氏の情熱は、彼のプロダクトすべてに反映されています。 1. タフで美しいデザイン 彼のパーツは、単なる機能部品ではありません。90年代のオールドMTBや、現代のグラベルバイク、どんな自転車にも馴染むよう、無骨でありながら計算された美しさを持っています。特に、彼の生み出すハンドルバーやチェーンリングは、そのルックスから「クランカーバー」や「MTBMXバー」と呼ばれることもあります。ストリッツランドは、自転車の性能だけでなく、スタイルや「遊び心」を大切にしているのです。 2. 使い込まれて生まれる「味」 マティアス氏は、プロダクトの素材にもこだわりを持っています。例えば、彼のハンドルバーの一部は、「ロウ」と呼ばれるクリアパウダーコートが施されており、使い込むほどに錆びて「パティーナ(古色)」が生まれるようになっています。これは、傷や錆びをネガティブに捉えるのではなく、愛車と共に歩んだ歴史として楽しんでほしい、という彼の想いの表れでしょう。 日本での愛され方 ストリッツランドは、東京を拠点とする「ブルーラグ(Blue Lug)」や「ムーブメント(MOVEMENT)」といった、日本の自転車カルチャーを牽引するショップで取り扱われています。これらのショップは、単に製品を販売するだけでなく、そのブランドが持つ哲学やストーリーを深く理解し、ユーザーに伝えています。 「オールドMTB」や「バイクパッキング」といったカルチャーが盛んな日本の自転車シーンにおいて、ストリッツランドのプロダクトはまさに最高のカスタムパーツです。タフで個性的な彼のパーツは、日本のサイクリストたちの間で熱狂的に支持されています。 ストリッツランドを代表するプロダクト ストリッツランドのプロダクトは、自転車の心臓部からアクセサリーまで多岐にわたります。ここでは、特に人気の高いプロダクトをいくつかご紹介します。 ハンドルバー:あなたのバイクをタフな相棒に ストリッツランドのハンドルバーは、その独特な形状とタフなルックスが魅力です。 ANCHOR BAR (アンカーバー): 幅850mm、バックスウィープ20°、ライズ75mmという、クランカーやMTBMXバーとも呼ばれる独特なジオメトリが特徴。幅広いハンドル幅と大きなスイープ角度が、優れたコントロール性と快適なライディングポジションを両立します。4130クロモリ鋼製で、熱処理が施されており、耐久性も抜群です。 BULLSHIP BAR (ブルシップバー): 1970年代のトム・リッチーの「ブルムースハンドル」に敬意を表して作られた一体型ハンドル。バックスウィープ25°、ライズ120mmと非常にアップライトなポジションで、街乗りやツーリングでの快適性を追求しています。 チェーンリング:レトロMTBのコンポを蘇らせる レトロなMTBやヴィンテージバイクのカスタムには、チェーンリング選びが欠かせません。ストリッツランドのチェーンリングは、現代のナローワイド規格で、昔のMTBクランクに合うように作られています。これにより、古いバイクに最新のコンポーネントを組み合わせることが可能になり、自転車に新たな命を吹き込むことができます。 PCD94 ナローワイドチェーンリング: 94BCD規格のクランクに対応しており、ナローワイドの歯形状がチェーン落ちを防いでくれます。 フォーク:タフなライドを支える骨格 ストリッツランドは、フォークも手掛けています。 BARNACLE FORK (バーナクルフォーク): QRとスルーアクスル、両方のモデルがあるフォーク。クロモリ製で熱処理が施されており、タフなライドにも耐えうる強度を持っています。バイクパッキング用のマウントポイントも豊富に備えており、荷物を積んでの冒険にも対応可能です。 まとめ ストリッツランドは、単なるパーツメーカーではありません。それは、一人の自転車好きの情熱と、**「タフで、実用的で、遊び心のある自転車」**という哲学を体現する、特別なブランドです。 創業者のマティアス氏が、自分の求める最高のバイクを自らの手で作りたいという思いから始まったこのブランドは、今や世界中のサイクリスト、特にオールドMTBやグラベルロードを愛する人々の心を掴んで離しません。彼のプロダクトは、あなたの自転車を、単なる移動手段ではなく、日々の冒険を共にする「最高の相棒」へと変えてくれるでしょう。 もしあなたが、人とは違う、自分だけのスタイルで自転車を楽しみたいと考えているなら、ぜひ一度ストリッツランドのプロダクトに触れてみてください。その一つ一つに込められた熱い想いが、きっとあなたの心を揺さぶるはずです。 今回の記事を読んで、ストリッツランドに興味を持った方や、すでに愛用している方がいたら、ぜひコメントであなたの想いを教えてくださいね。 それでは、また次の記事で会いましょう!ヒロヤスでした!
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ポートランドデザインワークス:ラッコとツバメとヘビと猫!?特別なデザインが誘う、機能美と遊び心の自転車パーツメーカー

こんにちは、ヒロヤスです。 大阪の街を今日も自転車で駆け抜けているアラフォー、デザイナーの僕です。僕のブログをいつも読んでくださっている皆さん、本当にありがとうございます。 さて、今回は、僕が心から魅力を感じているパーツブランド、**Portland Design Works(PDW)**について、深くお伝えしたいと思います。…
ポートランドデザインワークス:ラッコとツバメとヘビと猫!?特別なデザインが誘う、機能美と遊び心の自転車パーツメーカー
こんにちは、ヒロヤスです。 大阪の街を今日も自転車で駆け抜けているアラフォー、デザイナーの僕です。僕のブログをいつも読んでくださっている皆さん、本当にありがとうございます。 さて、今回は、僕が心から魅力を感じているパーツブランド、**Portland Design Works(PDW)**について、深くお伝えしたいと思います。 PDWのプロダクトは、日々のライドを快適にするための気の利いたアイデアと、所有欲を満たしてくれる美しいデザインが魅力です。ただの機能部品ではなく、愛車を彩る**「遊び心溢れるアートピース」**として存在しているんです。 今回は、他のどのブログやホームページよりも詳しく、このブランドのバックストーリーから、特に目を引くユニークなプロダクトの秘密まで、僕なりに深く掘り下げてみたいと思います。 PDWの生まれた場所:ポートランドという街が育んだ哲学 Portland Design Worksは、その名の通りアメリカのオレゴン州ポートランドで生まれました。 創業者はDan Powell氏で、2008年8月にこのブランドは産声をあげました。ポートランドは、全米で最も自転車に優しい都市の一つとして知られ、街の至るところに自転車文化が根付いています。 創業者のPowell氏をはじめとする彼らの哲学はいたってシンプル。 それは「機能的で、美しく、そして何より楽しいもの」を作ることです。 自分たちが本当に使いたいと思う、機能性と美しさを両立させたパーツがないことに気づき、自らの手で創造を始めました。 PDWのプロダクトには、デザイナーたちの遊び心と、自転車に対する深い愛情が込められています。単なる道具としてではなく、愛車のスタイルを彩り、日々のライドを豊かにしてくれる相棒として、彼らはプロダクトを創造しているんです。 日本にやってきたPDWと、愛され方 PDWのプロダクトが日本に本格的に紹介され始めたのは、2010年代に入ってからのこと。日本の自転車文化、特にカスタムバイクやバイクパッキングが盛り上がり始めた時期と重なります。 日本でPDWがこれほど愛される理由は、その性能や美しさだけではありません。 それは、彼らのプロダクトに込められた「DIY精神」や「遊び心」が、日本の「個性を大切にする」自転車文化に深く通じるものがあったからです。 単に流行を追うのではなく、自分だけのスタイルを大切にする日本のサイクリストたちにとって、PDWのプロダクトは、まさに自分を表現するための最高のツールとして、受け入れられているんです。 PDWを代表するプロダクトをピックアップ PDWのプロダクトは多岐にわたりますが、ここでは特に僕が注目している、遊び心と洗練されたデザインが光るプロダクトをジャンル別に紹介します。 ボトルケージ:愛らしい物語を添えるアートピース The Otter Cage ラッコがボトルを抱きかかえるような、その愛らしいデザインが世界中で話題となったボトルケージです。その造形にはユーモアと優しさが溢れています。さらに、このケージの売り上げの10%が野生動物保護団体に寄付されるというバックストーリーも、PDWの真摯な姿勢を物語っています。 The Bird Cage 小鳥がボトルをくわえているかのような、ミニマルながらもユニークなデザインのボトルケージです。ボトルケージは自転車の印象を大きく変えるパーツの一つですが、こんな遊び心のあるケージを選べば、日々のライドがもっと楽しくなるはずです。 グリップ・ハンドル:洗練された金属の輝き Speed Metal Grips 「スピードメタル」の名にふさわしい、アルミ製のクランプがアクセントになったロックオングリップ。クッション性の高いラバーを使用しながらも、人差し指と親指でユニークなアルミ製の溝を包み込む構造になっており、優れたコントロール性を実現しています。そのシャープで洗練されたデザインは、都市を駆けるバイクのハンドル周りを引き締める最高のプロダクトです。 ライト・リフレクター:安全とデザインを両立する光 The Fenderbot 泥除け(フェンダー)に装着するリアライトです。まるでロボットの目のように光るデザインは、後方からの視認性を高めるだけでなく、愛車の個性を引き立ててくれます。実用性とユーモアが融合した、PDWらしいプロダクトです。 まとめ:PDWは、自転車の楽しさを再発見させてくれる Portland Design Worksのプロダクトは、単に自転車のパーツを交換する楽しさだけでなく、自転車に乗るという行為そのものを、もっと豊かで、もっとクリエイティブなものにしてくれます。彼らがこだわるのは、軽さやエアロ性能といったカタログスペックだけではありません。 自転車に乗るすべての瞬間を、より楽しく、より快適にするための**「機能性」と、長く使い続けられる「耐久性」、そして愛車に個性を与える「美しさ」**を、高い次元で融合させています。 これは、大量生産・大量消費とは一線を画す、真のクラフトマンシップと言えるでしょう。 PDWの哲学は、自転車は単なる移動手段や競技の道具ではなく、僕たちの生活を豊かにし、冒険心を掻き立ててくれる最高の相棒である、ということを教えてくれます。 もしあなたが、自分の自転車に、遊び心と信頼を兼ね備えた特別なパーツを求めているなら、ぜひ一度、PDWの世界に触れてみてください。あなたの自転車ライフは、きっともっと豊かで、もっと自由なものになるはずです。 もし、この記事を読んで、PDWのプロダクトを使っている方や、気になるアイテムがあれば、ぜひコメントで教えてください! それでは、また次の記事で会いましょう!ヒロヤスでした!
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僕らが愛してやまない、KASHIMAXのサドルに宿る魂

こんにちは、ヒロヤスです。大阪の街を今日も自転車で駆け抜けているアラフォー、デザイナーの僕です。僕のブログをいつも読んでくださっている皆さん、本当にありがとうございます。さて、今回は僕が長年、個人的に深く関心を寄せてきたブランドについてお伝えしたいと思います。それは、自転車乗りなら誰もが一度は耳にしたことがあるであろう、日本の誇るサドルブランド「KASHIMAX(カシマックス)」です。…
僕らが愛してやまない、KASHIMAXのサドルに宿る魂
こんにちは、ヒロヤスです。大阪の街を今日も自転車で駆け抜けているアラフォー、デザイナーの僕です。僕のブログをいつも読んでくださっている皆さん、本当にありがとうございます。さて、今回は僕が長年、個人的に深く関心を寄せてきたブランドについてお伝えしたいと思います。それは、自転車乗りなら誰もが一度は耳にしたことがあるであろう、日本の誇るサドルブランド「KASHIMAX(カシマックス)」です。 単なる自転車パーツという枠を超え、多くのサイクリストに愛され続けているKASHIMAXのサドル。なぜ僕らはこんなにもその魅力に惹かれるのか。今回はその秘密を、他のどこにも負けないくらい、創業から現在に至るまでのストーリーを紐解きながら、とことん掘り下げてみたいと思います。 創業の地、そして歴史が紡ぐ物語 KASHIMAX、つまり「加島サドル製作所」の歴史は、僕が暮らすここ大阪で始まりました。1936年、加島金吾氏が大阪市西成区で個人経営として創業。そこから日本の自転車文化の発展とともに歩みを進め、1947年には株式会社へと改組しました。 その歩みは順風満帆なばかりではなく、拠点を大阪市内から松原市、そして堺市へと移転し、また松原市へ戻ってくるという変遷をたどっています。僕も大阪の街を自転車で走る身として、大阪の地でこれほど長く、職人の技を継承し続けているブランドがあることに、いつも心の中でエールを送っています。 KASHIMAXのサドルが特別なのは、こうした歴史の重みと、何より「唯一の日本製サドルメーカー」という誇りを持ち続けている点です。大量生産が当たり前となった現代においても、彼らの製品には、創業者から受け継がれた職人の魂がしっかりと宿っているように感じます。それは、単なる機能性を超えた、使う人の心を豊かにする「モノづくり」そのものだと言えるでしょう。 時代を超えて愛される、揺るぎないモノづくりの哲学 KASHIMAXのモノづくりに対するスタンスは、とてもシンプルでありながら、僕たちデザイナーの心を強く打つものです。それは「営利目的ではなく、伝統を重んじ、実直なモノづくりに専念する」という哲学。彼らのサドルが、時間を経てなお風格を増していくのは、この揺るぎない信念があるからだと僕は思います。 特に、競輪界で圧倒的な支持を集める「FIVE GOLD」の存在は、その哲学を象徴しています。NJS(日本自転車競技連盟)認定というプロの厳しい基準をクリアし、多くのトップレーサーに選ばれる品質は、細部にまでこだわる職人技術の賜物です。 また、彼らは過去の名作を単なる懐古趣味で終わらせず、現代に蘇らせています。1980年代に一世を風靡したBMXサドルの復刻版などは、当時のライダーだけでなく、新たな世代の自転車乗りからも大きな支持を集めています。これは、彼らのモノづくりが単なる伝統継承だけでなく、常に時代と向き合い、進化し続けている証拠でしょう。 KASHIMAXを代表するプロダクト NJS認定の最高峰「FIVE GOLD」 競輪用サドルとして、多くのプロ選手に愛用されているのが「FIVE GOLD」です。その堅牢な作りと、乗り手のパワーをダイレクトに伝える設計は、まさにトップアスリートのためのプロダクト。本革を使用したモデルもあり、使い込むほどに味わいが増していきます。 街乗りとBMXカルチャーの象徴「AERO」 スマートな流線形のデザインが特徴的な「AERO」は、街乗りピストやBMXのライダーたちから絶大な人気を誇ります。その洗練されたルックスは、自転車全体をスタイリッシュに見せてくれるだけでなく、軽量で快適な乗り心地も両立しています。 BMX黎明期のレジェンド「RMH Sports」と「MRS-2H」 BMXの歴史を語る上で欠かせないのが、往年の名作「RMH Sports」や「MRS-2H」の復刻版です。当時の雰囲気を色濃く残しながら、現代の技術でアップデートされたこれらのサドルは、オールドBMXファンにとってはもちろん、レトロなスタイルを好む新しい世代にとっても魅力的な存在となっています。 まとめ KASHIMAXのサドルは、その歴史と職人のこだわりが凝縮された、まさに「魂」が宿るプロダクトです。創業から80年近くにわたり、一貫して「メイドインジャパン」の品質を守り続け、時代ごとのニーズに応えながらも、その根本にある哲学をぶらさない姿勢に、僕は深く心を打たれます。 サドルは自転車と乗り手をつなぐ唯一の接点であり、座るだけでそのモノづくりの思想やこだわりが伝わってくる、そんな不思議な魅力を持っています。KASHIMAXのサドルは、単に座るための道具ではなく、長い年月をかけて育てていく相棒のような存在。僕も自分の自転車のサドルを見つめ直しながら、改めて彼らのモノづくりの奥深さに感動しました。皆さんもこの機会に、ご自身の自転車に付いているサドルがどんな物語を持っているのか、調べてみてはいかがでしょうか。 この記事を読んで、KASHIMAXのサドルに少しでも興味を持っていただけたら嬉しいです。もし、皆さんの愛用する自転車にKASHIMAXのサドルが付いていたら、ぜひコメントでその魅力を教えてくださいね! それでは、また次の記事で会いましょう!ヒロヤスでした!
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マジックコンポーネント:90年代の魂と遊び心が宿る、オールドMTB復活魔法の「架空の」自転車パーツたち

こんにちは、ヒロヤスです。大阪の街を今日も自転車で駆け抜けているアラフォー、デザイナーの僕です。 僕のブログをいつも読んでくださっている皆さん、本当にありがとうございます。さて、今回は僕が最近知り、レストアして乗っているARAYAのMuddyFoxにもこのブランドのフォークを使用している、あるパーツブランドについてお伝えしたいと思います。 その名は「マジックコンポーネント」。 他のどのブログやホームページよりも詳しく、そして正確に、このブランドが持つ奥深い物語を紐解いてみたいと思います。…
マジックコンポーネント:90年代の魂と遊び心が宿る、オールドMTB復活魔法の「架空の」自転車パーツたち
こんにちは、ヒロヤスです。大阪の街を今日も自転車で駆け抜けているアラフォー、デザイナーの僕です。 僕のブログをいつも読んでくださっている皆さん、本当にありがとうございます。さて、今回は僕が最近知り、レストアして乗っているARAYAのMuddyFoxにもこのブランドのフォークを使用している、あるパーツブランドについてお伝えしたいと思います。 その名は「マジックコンポーネント」。 他のどのブログやホームページよりも詳しく、そして正確に、このブランドが持つ奥深い物語を紐解いてみたいと思います。 どこの国のブランドなのか、創業者や会社設立のヒストリー、どういったプロダクトをどういったスタンスで作っているのか。 僕なりに徹底的に調べ上げ、このブランドが持つ確固たる哲学と、日本の自転車文化との深いつながりを丁寧にまとめました。さあ、一緒にマジックコンポーネントが紡ぐ、魔法の世界へと足を踏み入れてみましょう。 90年代へのオマージュから生まれたブランド マジックコンポーネントは、特定の巨大企業が作ったブランドではありません。彼らは、90年代のMTB黄金期に存在した、伝説的なブランドたち(Paul, Kooka, White Industries, Ringleなど)への深い敬意を込めて、当時の雰囲気を現代に蘇らせることを目的とした、ユニークなバックストーリーを持っています。 どこにある会社なのか?その答えは「日本発のコンセプト」 このブランドには、一般的に公開されている本社所在地や創業者名がありません。なぜなら、マジックコンポーネントは、日本の熱心な自転車カルチャーに根差したプロデュースチームが発信する「架空のコンポーネントメーカー」というコンセプトを持っているからです。 なんだか何をいってるのかはよくわかりませんが、とてもワクワクするコンセプトであることは間違いありません! つまり、発祥のルーツは日本にあり、その哲学は日本のカスタムカルチャーから生まれています。特定の場所を持たないことで、より自由に、あの頃の自転車文化へのオマージュを具現化しているのです。 その製品は、単なる機能部品の製造に留まらず、自転車に乗る人たちに笑顔と喜びを届けたいという、温かいメッセージに満ちています。ユーモアあふれるユニークなデザインは、まるで陽気な職人たちが「こんなパーツがあったら面白いじゃないか!」と純粋な探究心から生み出したかのようです。 日本のカルチャーに深く根差した存在 マジックコンポーネントの製品が日本で特に愛されているのは、日本の熱心な自転車カルチャー、特にOLD MTB(90年代頃までの古いマウンテンバイク)のレストアやカスタムシーンと深く結びついているからです。 彼らが作るパーツは、古い規格のバイクにもぴったりとハマり、失われつつあるスタイルを現代に蘇らせてくれます。 製品が持つ独特なデザインや、実用性を兼ね備えたシンプルさは、日本人の美意識やモノづくりへのこだわりに通じるものがあります。 例えば、あえて現代では少なくなった25.4mmクランプ径を採用したクロモリ製ハンドルバーは、古いステムを使いたいライダーへの配慮であり、過去と現在をつなぐ架け橋のような役割を果たしているように感じます。このニッチな需要をしっかりと捉えている点が、日本のライダーから熱烈に愛される理由です。 マジックコンポーネントの製品は「Made in Taiwan」 マジックコンポーネントの製品の多くは、台湾製であることがわかっています。台湾は世界でも有数の自転車製造国であり、高い技術力と品質管理で知られています。 彼らは、この台湾の確かな技術力を背景に、自らの持つデザインと遊び心を融合させることで、高品質かつ個性的なパーツを世に送り出しています。 日本のプロデュースチームが持つ「架空のメーカー」というコンセプトと、台湾の確かな製造技術が結びつくことで、マジックコンポーネントのユニークなアイデンティティが確立されているのです。 街乗りからツーリングまで。カスタムの自由度を高めるラインナップ マジックコンポーネントのパーツは、最新鋭のロードバイクやシリアスなMTBレース向けではありません。むしろ、毎日の街乗りや週末のバイクパッキング、軽めのツーリングなど、より自由に自転車を楽しむためのカスタムに最適なラインナップになっています。 高価なパーツばかりでは、なかなか気軽にカスタムを楽しむことはできませんよね。マジックコンポーネントは、比較的手の届きやすい価格帯でありながら、そのデザインや品質は非常に高いのが特徴です。例えば、ハンドルバーを交換するだけでも、これまでとは全く違うバイクの表情に出会えます。 **「Dango Bros」**のような小さなアクセサリーひとつでも、バイクに自分だけの個性をプラスすることができ、カスタムの入り口としても最適です。彼らのパーツは、自転車を愛するすべての人に、カスタムの楽しさや奥深さを教えてくれる、そんな役割を担ってくれているのです。 マジックコンポーネントを代表するプロダクト マジックコンポーネントの哲学が詰まった、代表的なプロダクトを紹介します。 ハンドルバー MOTHBAR (モスバー) 「巨大な蛾」をモチーフにしたという、ユニークな名前を持つハンドルバーです。その名の通り、幅広な形状が特徴のクロモリ製コミューターバーで、リラックスした姿勢と安定したハンドリングを両立します。 WORMBAR (ワームバー) ハイライズでワイドな、OLD MTBに最適なクロモリライザーバーです。今では希少となった25.4mmクランプを採用しており、古き良き自転車のカスタムをより快適に、楽しくしてくれます。 ステム ELBO Stem (エルボーステム) L字に曲がった配管継手(エルボー)のような、直角の形状を持つ珍しいスレッドステムです。シンプルながらも存在感があり、OLD MTBやツーリングバイクのアクセントになります。 フォークを代表するプロダクト 90's ATB Fork その名の通り、90年代のATBフレームに最適なクロモリ製のリジッドフォークです。最小限のキャリアダボとフェンダーダボのみが用意されたシンプルさが、オールドな雰囲気を損なうことなく、現代的なカスタムにも対応します。 僕もレストアしたアラヤの「MuddyFox」にこのフォークを使っています。少し重ためですが、その分頑丈で安心感があり、当時のバイクにもよく似合う、いいフォークだと感じています。 その他アクセサリー Dango Bros (ダンゴブラザーズ) アルミ削り出しで作られた、笑顔や不機嫌な顔の表情が描かれたユニークなチドリ(カンチブレーキのケーブルを吊るすパーツ)です。これひとつで、バイクに遊び心あふれるアクセントを加えることができます。 Candy Crank Bolt Sets カラフルなアルマイト処理が施された、クランクボルトのセットです。小さなパーツですが、これひとつでバイクの雰囲気をガラリと変えることができます。 まとめ:マジックコンポーネントは、自転車に物語を宿す魔法の杖 マジックコンポーネントは、単なるパーツメーカーではありません。彼らが本当に作っているのは、自転車に「物語」を宿らせるための「魔法の杖」です。 性能を競う最新のパーツとは一線を画し、彼らのプロダクトは90年代の古き良き自転車文化への深い敬意と、自転車に乗ることを心から楽しむための遊び心に満ちています。それは、単に自転車を走らせるための道具ではなく、あなたのバイクに個性と魂を吹き込み、唯一無二の存在へと変えてくれる力を持っています。 たとえば、「Dango Bros」が持つ陽気な表情、「MOTHBAR」が持つ力強いコンセプト。その一つひとつが、僕たち自転車乗りの想像力を掻き立て、「このパーツをつけたら、どんな冒険が待っているんだろう?」というワクワク感を運んできてくれます。それは、ガレージで黙々とバイクを組む時間も、街をのんびり流す時間も、すべてを特別な物語に変えてくれる魔法です。 もしあなたが、自分の自転車をもっと個性的にしたい、もっと愛着の持てる一台にしたいと考えているなら、マジックコンポーネントのパーツは最高の選択肢になるでしょう。彼らのパーツが持つ温かいストーリーに触れることで、あなたの自転車ライフはさらに豊かで、心温まるものになるはずです。 皆さんはマジックコンポーネントのどんなパーツが好きですか?もし、愛車につけているパーツがあれば、ぜひコメントで教えてください! それでは、また次の記事で会いましょう!ヒロヤスでした!
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BMXの魂を宿す、時代を超えた名作。ダイアコンペ MX-2ブレーキレバーの物語

こんにちは、ヒロヤスです。大阪の街を今日も自転車で駆け抜けているアラフォー、デザイナーの僕です。 僕のブログをいつも読んでくださっている皆さん、本当にありがとうございます。さて、今回は、自転車のカスタムシーンで長年にわたって愛され続ける、ある小さな巨人について、じっくりとお伝えしたいと思います。その名も「ダイアコンペ MX-2 ブレーキレバー」。…
BMXの魂を宿す、時代を超えた名作。ダイアコンペ MX-2ブレーキレバーの物語
こんにちは、ヒロヤスです。大阪の街を今日も自転車で駆け抜けているアラフォー、デザイナーの僕です。 僕のブログをいつも読んでくださっている皆さん、本当にありがとうございます。さて、今回は、自転車のカスタムシーンで長年にわたって愛され続ける、ある小さな巨人について、じっくりとお伝えしたいと思います。その名も「ダイアコンペ MX-2 ブレーキレバー」。 このブレーキレバー、一度は目にしたことがある方も多いのではないでしょうか。オールドBMXからピストバイク、そして僕らが愛するクロモリフレームの街乗りバイクまで、本当に多くの自転車に装着されています。 なぜこのレバーは、これほどまでに多くのサイクリストを惹きつけるのでしょうか?その背景には、単なる機能性を超えた、モノづくりへの哲学と、自転車史に残る熱いストーリーがありました。今回はその魅力の核心に、他のどのブログよりも深く迫ってみたいと思います。 大阪で生まれた世界のブレーキメーカー「ダイアコンペ」 MX-2の物語を始める前に、まずその生みの親である「ダイアコンペ」について触れないわけにはいきません。ダイアコンペは、株式会社ヨシガイが展開するブレーキパーツのブランドです。 そして、そのヨシガイが創業したのは、何を隠そう僕らの地元、大阪なんです。1930年に自転車用リムブレーキの製造販売を開始したのがその始まりでした。 1960年代にはスイスのワインマン社と技術提携し、アルミ合金製のブレーキ製造を開始。これが大きな転機となります。 そして1970年代、海の向こうアメリカでBMX(バイシクルモトクロス)という新しいカルチャーが爆発的なブームを迎えます。このムーブメントの中で、ダイアコンペのブレーキはその信頼性と性能で多くのBMXライダーたちの支持を集め、一気に世界的なブランドへと駆け上がっていきました。僕らが知る「MX」シリーズのルーツは、まさにこのBMXの黄金時代にあるのです。 小さなボディに宿る、機能美と哲学 MX-2ブレーキレバーを一言で表すなら、「用の美」という言葉がぴったりかもしれません。その特徴を紐解いていきましょう。 1.計算されたコンパクトなデザイン MX-2は、主に2本指で操作することを想定したコンパクトな設計です。 この絶妙なサイズ感が、ハンドル周りをすっきりと見せてくれます。BMXの激しい動きの中でも邪魔にならず、確実な操作を可能にするために生まれたこの形は、ジャンルを超えて、ミニマルな美しさを求めるカスタムバイクに完璧にフィットします。 2.カチッとした心地よい操作感 実際に握ってみるとわかるのですが、MX-2は非常に剛性感があり、カチッとした節度のある引き心地が特徴です。これは、素材であるアルミの品質と、精密な設計の賜物。 ブレーキという安全を司るパーツだからこそ、この「信頼感」のある操作フィーリングが、ライダーに安心感を与えてくれます。 3.驚くべき汎用性 そして、このレバーが「名作」と言われる最大の理由が、その驚くべき汎用性です。 レバー内部にあるケーブルのタイコを引っ掛けるパーツの位置を切り替えるだけで、Vブレーキと、キャリパーブレーキやカンチブレーキの両方に対応できるのです。 これにより、BMXだけでなく、ロードバイク、マウンテンバイク、クロスバイクなど、多種多様なブレーキシステムに一つのレバーで対応可能。これはカスタムを行う上で、非常に大きなメリットとなります。作り手の「どんな自転車にも使ってほしい」という懐の深さを感じますね。 ジャンルを超えて愛される理由 元々はBMXのために生まれたMX-2ですが、今ではその活躍の場を大きく広げています。 オールドBMXのレストアにはもちろん欠かせない存在ですし、シンプルな構造が求められるピストバイクやシングルスピードのカスタムでは定番中の定番です。 また、僕のようなクロモリフレームのバイクを自分好みに組むのが好きな人間にとっても、これほど魅力的なパーツはありません。クラシックな雰囲気にも、モダンなストリートスタイルにも自然に溶け込むデザイン。そして豊富なカラーバリエーションが、僕らの「自分だけの一台を作りたい」という欲求を見事に満たしてくれるのです。 カスタムが楽しくなるカラーバリエーション MX-2は、定番のシルバーやブラックだけでなく、ゴールド、レッド、ブルー、グリーンといったアルマイトカラーが豊富にラインナップされています。 自転車のフレームカラーや、他のパーツとの組み合わせを考えながら色を選ぶ時間は、まさにカスタムの醍醐味。あえて差し色として派手なカラーを選んでみるのも面白いですし、オールブラックでシックにまとめるのも格好いい。この選択肢の多さが、MX-2を単なる部品ではなく、自己表現のツールにまで高めてくれているのです。 時代を彩る、二つの名作 MX-2ブレーキレバーの世界をさらに深く楽しむ上で、ぜひ知っておいてほしい二つの特別な存在があります。これらは、単なるバリエーションや関連製品という言葉だけでは片付けられない、特別な物語を持つプロダクトです。 輝きを放つ逸品。「BLUE LUG」別注ポリッシュモデル 数多くの自転車好きから絶大な支持を集める東京のプロショップ「BLUE LUG」。彼らがダイアコンペに別注をかけたのが、このオールポリッシュのMX-2です。 通常のラインナップにあるシルバーとは一線を画す、職人の手で磨き上げられた鏡のような輝きは、もはや工芸品の域。クロモリフレームの繊細な美しさを最大限に引き立ててくれる、まさに切り札のような存在です。この特別な輝きは、僕らのカスタムへの情熱をさらにかき立ててくれます。 最高の相棒。伝説のブレーキキャリパー「MX-1000」 MX-2レバーの話をする上で、このブレーキキャリパーの存在は絶対に外せません。80年代のBMXシーンを席巻した伝説的なモデル「MX-1000」。当時、多くの完成車に標準装備され、子供たちの憧れの的でした。 そのアイコニックなデザインと確かな性能は、今なお色褪せることがありません。現在でも復刻版が製造されており、オールドBMXを当時の姿に蘇らせたいと願う世界中のファンにとって、これ以上ない選択肢となっています。MX-2レバーとMX-1000キャリパー。この二つを組み合わせることは、あの熱狂の時代への敬意を形にすることでもあるのです。 まとめ ダイアコンペのMX-2ブレーキレバーは、単なる自転車の部品ではありませんでした。それは、僕らの地元である大阪で生まれ、BMXというカルチャーの熱狂と共に世界へと飛び立ち、今なお多くのサイクリストの心をつかんで離さない「生きた伝説」そのものだと思います。 小さなボディに凝縮された機能美、カチッとした操作感、そしてどんな自転車にも対応できる懐の深い汎用性。これらは、単に使いやすいからという理由だけではなく、モノづくりに真摯に向き合う作り手の誠実な哲学が形になったものだと僕は感じています。 流行が目まぐるしく変わる現代において、MX-2のようなタイムレスなデザインを持つプロダクトは、僕たちに大切なことを教えてくれます。それは、一過性のトレンドに流されるのではなく、本当に良いもの、愛着を持って長く使えるものを選ぶことの喜びです。自分の手で組み上げた一台に、この小さな名作を添えることで、あなたの自転車は単なる移動手段ではなく、歴史や物語を宿した、世界に一つだけの特別な存在になるでしょう。 皆さんのMX-2を使ったカスタムのこだわりや、思い出話などがあれば、ぜひ下のコメント欄で教えてくださいね。 それでは、また次の記事で会いましょう!ヒロヤスでした!
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足元から、走りは変わる。Crankbrothers Stampペダルが起こした静かな革命

こんにちは、ヒロヤスです。大阪の街を今日も自転車で駆け抜けているアラフォー、デザイナーの僕です。 僕のブログをいつも読んでくださっている皆さん、本当にありがとうございます。さて、今回は、僕が自転車のパーツの中でも特に「デザインと機能の融合」という点で、いつも注目しているブランドのひとつ、Crankbrothers(クランクブラザーズ)のStamp(スタンプ)シリーズというフラットペダルについて、じっくりとお伝えしようと思います。…
足元から、走りは変わる。Crankbrothers Stampペダルが起こした静かな革命
こんにちは、ヒロヤスです。大阪の街を今日も自転車で駆け抜けているアラフォー、デザイナーの僕です。 僕のブログをいつも読んでくださっている皆さん、本当にありがとうございます。さて、今回は、僕が自転車のパーツの中でも特に「デザインと機能の融合」という点で、いつも注目しているブランドのひとつ、Crankbrothers(クランクブラザーズ)のStamp(スタンプ)シリーズというフラットペダルについて、じっくりとお伝えしようと思います。 単なる「踏むための板」ではない、ペダルというパーツ。ライダーの力を推進力に変える、バイクとの数少ない接点です。だからこそ、ここにはブランドの哲学や作り手の思想が色濃く反映されるんですよね。Stampペダルを知ったとき、僕が感じたのは「ああ、ここまで乗り手のことを考えて作られたペダルがあったのか」という純粋な驚きでした。なぜこのペダルが世界中のMTBライダーから街乗りのサイクリストまで、多くの人々に支持されているのか。その背景にあるストーリーや、プロダクトとしての魅力を、他のどこよりも詳しく掘り下げていきたいと思います。 デザインと機能が生んだ、Crankbrothersの哲学 Crankbrothersというブランドが生まれたのは1997年のこと。カリフォルニア州南部のラグナビーチにある小さなガレージで、二人の創業者によって設立されました。彼らが目指したのは、既存の常識にとらわれず、あらゆる概念や障壁を取り払い、シンプルで美しく、かつ機能的な製品を世に送り出すことでした。 Crankbrothersの名を世に知らしめたのは、泡立て器のような形状の「eggbeater」ペダルに代表される、ミニマルで機能的な製品群でした。彼らの製品に共通しているのは、常識にとられない発想で課題を解決し、それを美しいデザインに落とし込むこと。所有する喜びを感じさせてくれるような、工芸品にも似た佇まいを持っていることです。デザイナーである僕の心が惹かれるのも、まさにその点であり、その哲学がフラットペダルというジャンルでどのように表現されたのかが、今回の主役であるStampシリーズなのです。 なぜStampは生まれたのか?シューズサイズに着目した革新 そんな彼らがフラットペダルの世界に投じた一石が、このStampシリーズです。開発の根底にあったのは、非常にシンプルでありながら、これまで誰も本格的に着手してこなかった問いでした。 「ライダーの足の大きさが違うのに、なぜペダルはワンサイズなんだ?」 そこでCrankbrothersは、トップライダーたちと協力し、膨大なテストを実施。シューズのアウトソール形状とペダルの踏み面の関係を徹底的に分析しました。そうして導き出されたのが、ライダーのシューズサイズに合わせてペダルの大きさを選ぶという、革新的なコンセプトだったのです。具体的には、シューズサイズEU43〜43.5(約27.5cm〜28cm)あたりを境に、それより小さい方向けのSmallと、大きい方向けのLargeという2サイズを展開しました。 このコンセプトのユニークさは、実際に製品を手に取るとより明確にわかります。自転車ショップで他の多くのブランドのペダルと並べてみると、特にLargeサイズは、明らかに一回り、いやそれ以上に大きく設計されていることに驚くはずです。従来の「フリーサイズ」的なペダルがいかに妥協の産物であったかを物語っています。この広大なプラットフォームは、シューズのソールを面でしっかりと支え、これまでにないほどの安定感と安心感をライダーに与えてくれます。コーナーで一度足を外しても、焦らずに踏み直せる。この余裕こそが、Stampペダルがもたらす大きなメリットなのです。 ミニマルなデザインに隠された、徹底的なこだわり Stampペダルの魅力は、サイズ展開だけではありません。そのミニマルな造形には、ライディング体験を向上させるための工夫が随所に凝らされています。 吸い付くような安定感を生む「コンケーブ形状」 ペダルの踏み面は、中央部が薄く、外周部が厚い「コンケーブ(凹面)形状」になっています。これにより、シューズのソールが自然とペダルの中央に収まり、まるで吸い付くかのような安定感が生まれます。特に荒れた路面を走るときや、コーナリング時のバイクコントロールにおいて、この安定感は絶大な安心につながります。 計算され尽くしたピン配置 グリップの要となるピンは、モデルごとに最適な高さや形状のものが採用され、交換や調整も可能です。片面あたり9〜10本配置されたピンがシューズソールを確実に捉えつつ、過度に食い込みすぎない絶妙なバランスは、ライダーの自由な足の動きも妨げません。 長く使うことを前提とした、信頼性の高い内部構造 ペダルの心臓部であるベアリングにも、Crankbrothersのこだわりが見られます。一般的にベアリングといえば、内部のボールが転がる「ボールベアリング」を想像しますよね。しかし、Stampペダルの多くには、ドイツのIgus(イグス)社製の特殊な**グライドベアリング(滑り軸受)**が採用されています。 これは、金属のボールを使わず、自己潤滑性に優れたポリマー樹脂製のスリーブが軸と直接接して滑ることで、スムーズな回転を生み出す仕組みです。ここで面白いのが、このベアリングの特性です。よく「良いペダルは指で弾くとクルクルと長く回り続ける」と言われますが、Igusベアリングを使ったペダルは、そのような派手な空転はしません。むしろ、少し粘りのあるような、ぬるっとした感触です。 初めて触ると「これ、回転が渋いんじゃないの?」と不安に思うかもしれません。でも、心配は無用です。これはあくまで荷重がかかっていない状態でのこと。実際にバイクに乗ってペダルを踏み込むと、この自己潤滑性ポリマーが真価を発揮し、驚くほどスムーズに、そして抵抗なく回転してくれるんです。 さらに素晴らしいのが、Crankbrothersが「長く使い続けること」を前提に製品を設計している点です。ベアリングやシール、エンドキャップといった消耗部品は「ペダルリフレッシュキット」として販売されており、国内でも安定して流通しています。つまり、もし回転性能が落ちてきても、自分でメンテナンスを行うことで、まるで新品のような性能を取り戻すことができるのです。これは、ペダルを単なる消耗品ではなく、長く付き合えるパートナーとして考えているブランドの姿勢の表れですよね。 足元から個性を主張する。豊富なバリエーション Stampペダルのもうひとつの大きな魅力は、その豊富なラインナップとカラーバリエーションです。自分のバイクやスタイルに合わせて、最適な一つを選べる楽しさがあります。 ブラックやシルバーといった定番色はもちろん、レッド、ブルー、オレンジ、パープルなど、鮮やかなアルマイトカラーが揃っており、バイクの差し色としてカスタムのアクセントにぴったりです。最近ではアースカラーのような現代的なニュアンスカラーも登場しています。特にクロモリフレームのようなシンプルなバイクには、こうしたパーツのカラーがよく映えますよね。 そのデザイン性の高さから、本来の主戦場であるマウンテンバイクだけでなく、グラベルロードやBMX、そして僕らが楽しむような街乗りのカスタムバイクにも広く取り入れられています。足元に少し色が入るだけで、バイク全体の印象がガラリと変わる。そんなカスタムの醍醐味を味わえるパーツです。 STAMPシリーズのラインナップ Stampシリーズは、素材や内部構造の違いによっていくつかのグレードに分かれています。代表的なモデルをいくつかご紹介します。 Stamp 1 コストパフォーマンスに優れた強化コンポジット(樹脂)ボディのモデル。軽量で、カラーバリエーションも非常に豊富。街乗りからトレイルライドの入門用として最適です。 Stamp 3 堅牢なアルミ合金(アルミニウム)ボディを採用したモデル。よりタフなライディングにも対応する耐久性が魅力です。 Stamp 7 Stampシリーズの中核をなすハイエンドモデル。鍛造アルミ製の薄く軽量なボディと、高品質な内部パーツで、最高のパフォーマンスを発揮します。プロライダーのフィードバックが色濃く反映された、まさにレースグレードの逸品です。 Stamp 11 アクスルシャフト(軸)に軽量で高剛性なチタンを採用した、シリーズ最上位のフラッグシップモデル。究極の軽さと性能を求めるライダーのための、まさに"最終兵器"と言えるペダルです。 まとめ:Stampペダルが変える、ライディング体験 今回は、CrankbrothersのStampペダルについて、その背景からプロダクトの魅力までを掘り下げてきました。 Stampペダルが多くのライダーに支持される理由は、単に高性能だから、というだけではありません。そこには「すべてのライダーに最適なインターフェースを提供する」という明確な哲学があります。自分の足に合ったシューズを選ぶように、自分の足に合ったペダルを選ぶ。広大なプラットフォームがもたらす安心感は、まさにその哲学の賜物です。 そして、その内部構造に目を向ければ、Igusベアリングのように実際のライディングでの信頼性を重視したパーツを選び、さらに補修パーツを供給することで一つの製品を長く使えるように配慮する、実直で誠実なブランドの姿勢が見えてきます。 それは、バイクとライダーの繋がりを、より深く、より確かなものにしてくれるパーツです。もしあなたが今、ペダル選びに悩んでいたり、自分のバイクの走りをもう一段階上のレベルに引き上げたいと考えているなら、選択肢の一つとして検討してみてはいかがでしょうか。きっと、あなたのライディング体験を足元から変えてくれるはずです。 この記事が、あなたのペダル選びの参考になれば嬉しいです。皆さんはどんなペダルを使っていますか?ぜひコメントで教えてくださいね。 それでは、また次の記事で会いましょう!ヒロヤスでした!
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踏み心地は三者三様。三ヶ島製作所(MKS)が生んだ傑作ペダル「ラムダ」「プレッツェル」「オールウェイズ」の物語

こんにちは、ヒロヤスです。大阪の街を今日も自転車で駆け抜けているアラフォー、デザイナーの僕です。 僕のブログをいつも読んでくださっている皆さん、本当にありがとうございます。さて、今回は、以前ご紹介した三ヶ島製作所の定番「シルヴァン」シリーズとは少し趣向を変えて、一度見たら忘れられない、そして一度使ったら手放せなくなる、そんな個性的なペダルたちについて、さらに深く掘り下げてお伝えしたいと思います。…
踏み心地は三者三様。三ヶ島製作所(MKS)が生んだ傑作ペダル「ラムダ」「プレッツェル」「オールウェイズ」の物語
こんにちは、ヒロヤスです。大阪の街を今日も自転車で駆け抜けているアラフォー、デザイナーの僕です。 僕のブログをいつも読んでくださっている皆さん、本当にありがとうございます。さて、今回は、以前ご紹介した三ヶ島製作所の定番「シルヴァン」シリーズとは少し趣向を変えて、一度見たら忘れられない、そして一度使ったら手放せなくなる、そんな個性的なペダルたちについて、さらに深く掘り下げてお伝えしたいと思います。 今日ご紹介するのは、MKSが誇る個性派トリオ、「LAMBDA(ラムダ)」、「Pretzel(プレッツェル)」、そして「ALWAYS(オールウェイズ)」です。 巨大な踏み面から「ゲタ」とも呼ばれるラムダ。お菓子の形がチャーミングなプレッツェル。そして、本格的なオフロード走行にも応えるほどのグリップ力を持つオールウェイズ。これらは決して奇をてらっただけのペダルではありません。そこには、日本の老舗メーカーが70年以上にわたって培ってきた技術と、サイクリストの足元を真摯に見つめ続けてきたからこそ生まれた、それぞれに異なる確かな思想が宿っています。 この記事を読み終える頃には、きっとあなたもこの”三者三様”のペダルたちが持つ、奥深い世界の虜になっているはずです。 すべてはサイクリストの「快適」のために。三ヶ島製作所の挑戦の歴史 本題に入る前に、まずは三ヶ島製作所(MKS)について少しだけおさらいさせてください。 1949年創立。現在は埼玉県所沢市に拠点を置く、日本が世界に誇るペダル専門メーカーです。競輪選手が使うNJS認定のトラック用ペダルから、僕たちが日常で使うシティサイクル用のペダルまで、その品質と信頼性は折り紙付き。すべての製品を日本国内で生産することにこだわり、熟練の職人さんたちの手によって、一つひとつ丁寧に作られています。 MKSのペダルの特徴は、何と言ってもその「回転性能」。手で回してみると、いつまでも滑らかに回り続けるあの感覚は、まさに芸術品です。この滑らかさが、僕たちのペダリングをどれだけ快適にしてくれていることか。 そんなMKSが、伝統的なペダルの形に捉われず、全く新しい「踏み心地」を追求して生み出したのが、今回主役となる3つのペダルなのです。 個性派ペダル三者三様、その魅力に迫る 「ゲタ」の愛称は伊達じゃない。オートバイから着想を得た巨大ペダル「LAMBDA(ラムダ)」 アメリカ市場からの「もっと大きくて踏みやすいフラットペダルが欲しい」という声に応え、サンフランシスコのバイクブランド「RIVENDELL BICYCLE WORKS」と共同開発されたのが、この「ラムダ」です。 ギリシャ文字の「Λ(ラムダ)」に似た独特の形状は、圧倒的な安定感を生み出します。土踏まずで踏んでも、母指球で踏んでも、足の裏全体をしっかりと受け止めてくれるこの感覚は、他のペダルでは味わえません。実は僕の親父もツーリングバイクにこのラムダを付けているのですが、「ピンがないから雨の日は滑るけどな。でも、この縦に長い形がどういうわけか足に合うんや」と、その独特な使用感を語っていました。 見て楽しい、踏んで驚く。遊び心から生まれた「Pretzel(プレッツェル)」 ラムダの次にMKSが世に送り出したユニークなペダルが、この「プレッツェル」です。 ドイツの焼き菓子をモチーフにしたデザインは、とにかくチャーミング。愛車の足元に「遊び」を加えてくれる最高のアクセントになります。かくいう僕も、レストアしたオールドMTBの足元には、このプレッツェルを合わせて遊んでいます。 しかし、これはデザインだけのペダルではありません。ベースとなった名作ペダル譲りの8本のスパイクピンと、踏み面全体が少し凹んだコンケーブ設計により、スニーカーのソールを確実に捉え、見た目からは想像できないほどのグリップ力を生み出します。「見た目の楽しさ」と「本格的な機能性」のギャップこそ、プレッツェルの真骨頂です。 いつでも、どこでも。最高の踏み心地を約束する「ALWAYS(オールウェイズ)」 そして、三部作の最後を飾るのが「オールウェイズ」。その名の通り「いつでも」最高の性能を発揮することを目指して開発された、高性能フラットペダルです。 開発の背景には、グラベルロードやアドベンチャーバイクの隆盛があります。僕もバイクパッキング仕様のツーリング車にはこのオールウェイズを付けていますが、雨の日の峠道でも足元が滑る不安が全くなく、絶大な信頼を寄せています。 オールウェイズ最大の特徴は、わずかに凹んだ「コンケーブ設計」の踏み面と、交換可能なスパイクピン。これにより、足がペダルに吸い付くような驚異的なグリップ力を実現し、いかなる状況でもライダーをサポートします。MKS伝家の宝刀であるトリプルシールドベアリングによる回転性能も健在で、まさに究極の万能ペダルと呼ぶにふさわしい仕上がりです。 あなたの愛車にはどれが似合う?カスタムのヒント LAMBDA(ラムダ)が似合うバイク 無骨で実用的な雰囲気を重視するカスタムに。 SURLYのようなアドベンチャーバイク: バイクパッキングなどの旅仕様カスタムには最高の相棒です。 実用的なコミューターバイク: 革靴でも気兼ねなく乗れるラムダは、働く大人のためのペダルです。 Pretzel(プレッツェル)が似合うバイク 自転車全体のコーディネートや、遊び心を表現したいカスタムに。 BROMPTONのようなミニベロ: 洗練されたバイクに、チャーミングな形が絶妙なアクセントになります。 クラシカルなランドナーやオールドMTB: 優雅なフレームワークに、少しレトロな雰囲気がマッチします。 ALWAYS(オールウェイズ)が似合うバイク グリップ力と走行性能を妥協したくない、本気のカスタムに。 グラベルロード、シクロクロス: 泥道や荒れた路面でも、足元を確実にホールドしてくれます。 最新のクロモリMTB: 高い剛性を持つフレームの性能を、余すことなく路面に伝えます。 全天候型ツーリング車: 雨の日でも滑らないという安心感は、日々のライドをより安全で快適なものに変えてくれます。 【Tips】自転車ライフが劇的に変わる? MKS独自の着脱機構「Ezy Superior」とは さて、上で紹介したペダルたちの多くに、「Ezy Superior(イージー スーペリア)」という機構を備えたモデルが存在します。これが、僕たちの自転車ライフを想像以上に豊かにしてくれる、本当に素晴らしいシステムなんです。 簡単に言うと、「工具を一切使わずに、手でワンタッチでペダルの着脱ができる」MKS独自の機構のこと。クランク側に専用のアダプターを取り付けておけば、あとは手でストッパーを回して引き抜くだけで、本当に数秒でペダルが外せてしまいます。 じゃあ、ペダルが簡単に外せると何が良いのか? 輪行・車載が驚くほど楽に: 電車や車に自転車を積むとき、一番出っ張って邪魔になるのがペダルです。これを外すだけで、輪行袋への収納がスムーズになり、車内のスペースも有効活用できます。 省スペース保管: 自宅の玄関や室内に保管する際、ペダルがないだけで壁に寄せやすくなり、かなりスリムになります。 究極の盗難防止: ペダルを外して持ち歩けば、自転車を乗り去られる心配がほぼなくなります。短時間の駐輪でも安心感が全く違いますよ。 メンテナンス性の向上: クランク周りを掃除したり、メンテナンスしたりする時に、ペダルがないだけで作業が格段にしやすくなります。 まさに日本のモノづくりの知恵が詰まった、痒い所に手が届く機能。もしあなたが輪行や室内保管、盗難対策に関心があるなら、この「Ezy Superior」モデルを選ばない手はない、と僕は思います。 まとめ 今回は、三ヶ島製作所が生み出した個性派ペダル、「ラムダ」「プレッツェル」「オールウェイズ」について、僕や家族の体験も交えながら、その魅力をお伝えしてきました。 この三つのペダルに共通しているのは、単に「踏む」という機能だけでなく、サイクリストの「体験」そのものを豊かにしようというMKSの強い意志です。 「どんな靴でも快適に」という懐の深さを持つラムダ。 「自転車との付き合いをもっと楽しく」という遊び心を形にしたプレッツェル。 「どんな状況でも最高の性能を」という信頼性で応えるオールウェイズ。 それぞれのアプローチは異なりますが、その根底には、サイクリストへの深い愛情と、メイド・イン・ジャパンの誇りが流れています。そして、「Ezy Superior」という機構は、そんな彼らの思想をさらに高いレベルへと引き上げる素晴らしい発明です。 あなたの愛車とライディングスタイルには、どのペダルが一番しっくりくるでしょうか?ぜひ、次のカスタムの候補に加えて、その素晴らしい踏み心地を体感してみてください。ペダル一つで、あなたの自転車の世界は、間違いなくもっと広く、もっと楽しくなるはずです。 あなたのペダル選びのこだわりや、この3つのペダルの使用感など、ぜひコメントで教えてくださいね。 それでは、また次の記事で会いましょう!ヒロヤスでした!
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KMCってどんなメーカー?世界で愛される理由 – 台湾の小さな町工場から世界一への道

こんにちは、ヒロヤスです。大阪の街を今日も自転車で駆け抜けているアラフォー、デザイナーの僕です。 僕のブログをいつも読んでくださっている皆さん、本当にありがとうございます。さて、今回は自転車の心臓部とも言える「チェーン」に焦点を当て、その中でも世界中のサイクリストから絶大な信頼を得ているブランド「KMC」について、じっくりとお伝えしたいと思います。…
KMCってどんなメーカー?世界で愛される理由 – 台湾の小さな町工場から世界一への道
こんにちは、ヒロヤスです。大阪の街を今日も自転車で駆け抜けているアラフォー、デザイナーの僕です。 僕のブログをいつも読んでくださっている皆さん、本当にありがとうございます。さて、今回は自転車の心臓部とも言える「チェーン」に焦点を当て、その中でも世界中のサイクリストから絶大な信頼を得ているブランド「KMC」について、じっくりとお伝えしたいと思います。 皆さんは、ご自身の自転車についているチェーンのメーカーを意識したことはありますか?完成車に最初からついていることが多いので、シマノやスラムといったコンポーネントメーカーのものをそのまま使っている方も多いかもしれません。しかし、チェーンは走りの質を大きく左右する重要なパーツ。そして、この分野で「専業メーカー」として圧倒的な存在感を放つのが、何を隠そうKMCなのです。 KMCのチェーンは、なぜこれほどまでに多くのサイクリストに選ばれるのか。それは、単に性能が良いから、価格が手頃だから、という言葉だけでは片付けられません。そこには、小さな町工場から始まった彼らの情熱的なモノづくりへの姿勢と、自転車という文化そのものへの深い理解がありました。今回は、他のどのブログよりも詳しく、KMCというブランドの核心に迫っていきたいと思います。 KMCの誕生と歴史:台湾の誇る世界最大のチェーンメーカー KMC、正式名称は「KMC Chain Industrial Co.」。その歴史は1977年、創業者チャールズ・ウー氏によって、台湾の台南市で始まりました。数台の機械と数人の従業員という、まさに小さな町工場からのスタートでした。 創業当時、自転車産業は多段変速機が普及し始めた変革の時代。チェーンにはこれまで以上に高い精度と耐久性が求められるようになりました。そんな中、KMCは「世界最高のチェーンを作る」という純粋かつ野心的な目標を掲げ、ひたすら研究開発に没頭します。 その真摯なモノづくりへの姿勢が、やがて日本の巨人、株式会社シマノの目に留まります。そして1986年、KMCはシマノとの技術提携を開始。これはKMCにとって、そして世界の自転車業界にとっても非常に大きな転換点でした。シマノの設ける厳しい品質基準をクリアすることで、KMCの技術力は飛躍的に向上し、世界市場への扉を力強く開くことになったのです。 現在、KMCは世界130カ国以上に製品を供給し、年間1億本以上ものチェーンを製造する、文字通り世界最大規模のチェーンメーカーへと成長しました。しかし、その根底にあるのは、創業当時から決してぶれることのない「チェーン一筋」のクラフトマンシップ。彼らは総合パーツメーカーの道を選ばず、あくまでチェーン専門メーカーであることに誇りを持ち、その性能を極限まで追求し続けているのです。 KMCチェーンの哲学と特徴:なぜサイクリストを魅了するのか では、具体的にKMCのチェーンは、他のメーカーと何が違うのでしょうか。僕が考えるKMCの最大の魅力は、その「圧倒的な耐久性」「あらゆるコンポーネントに対応する互換性」、そして「ユーザーを想う革新性」に集約されると思います。 驚異の耐久性と防錆技術 KMCのチェーンは、とにかく「伸びにくく、錆びにくい」ことで有名です。チェーンは使用に伴いプレートの連結部が摩耗し、わずかに伸びていきます。この「伸び」が、スプロケットやチェーンリングといった他の高価なパーツへの攻撃性を高め、変速性能の低下やパーツ全体の寿命を縮める元凶となるのです。 KMCは、独自の熱処理技術や表面加工技術によって、チェーンの耐久性を極限まで高めています。特に「EPT(エコプロテック)」コーティングは、塩水噴霧試験で650時間以上も錆の発生を抑えるという驚異的な防錆性能を誇り、雨の日も走る通勤・通学ライダーや、過酷な環境を走るマウンテンバイカーから絶大な支持を得ています。 シマノ、スラム、カンパニョーロ…全てに対応する懐の深さ 多くのサイクリストにとって、コンポーネントの互換性は悩みの種です。しかし、KMCは「シマノ用」「スラム用」といった垣根なく、各社の多段変速システムに対応するチェーンを幅広くラインナップしています。これにより、ユーザーはコンポーネントのメーカーを気にすることなく、自分のライディングスタイルや予算に最適なチェーンを自由に選ぶことができます。この「オープンであること」も、KMCが世界中で愛される大きな理由の一つと言えるでしょう。 メンテナンス性を劇的に変えた「ミッシングリンク」 そして、KMCの革新性を語る上で絶対に外せないのが「ミッシングリンク」の存在です。これは、工具を使わずに手でチェーンの着脱を可能にする画期的なパーツ。今でこそ多くのメーカーが同様のシステムを採用していますが、これを90年代からいち早く開発し、標準装備として普及させたのがKMCです。 ミッシングリンクのおかげで、チェーンの掃除やメンテナンスは劇的に簡単になりました。自転車を深く愛し、自分で整備する人ほど、この手軽さと確実性がいかに革命的であったかを理解しているはず。こうしたユーザー目線に立った細やかな工夫こそ、専門メーカーであるKMCの真骨頂と言えるでしょう。 KMCを代表するプロダクト それでは、実際にKMCがどのようなチェーンを作っているのか、代表的なモデルをいくつか見ていきましょう。 Xシリーズ:パフォーマンスと耐久性の高次元での両立 ロードバイクやMTBなど、スポーツバイクのスタンダードとなっているのが「X」シリーズです。「ダブルXブリッジシェイプ」と呼ばれるプレート形状が、高速でスムーズな変速性能を実現。軽量性と耐久性のバランスに優れ、多くの完成車にも採用されています。特に「X11EL」や「X11SL」といった上位モデルは、中空ピンや肉抜きされたプレートを採用することで、驚くほどの軽さを実現しています。 DLCシリーズ:究極の性能を求めるライダーへ KMCのフラッグシップモデルが、究極のコーティング技術「DLC(ダイヤモンドライクコーティング)」を施したシリーズです。F1マシンのエンジンパーツにも使われるこの技術は、圧倒的な低摩擦とダイヤモンドに次ぐ表面硬度を誇ります。これにより、驚くほど滑らかなペダリングフィールと、信じられないほどの長寿命を両立。価格は高価ですが、その性能は唯一無二。一度使えば、もう元には戻れないと言われるほどの魅力を持っています。ブラックやレッド、ブルーといった鮮やかなカラーリングも、バイクのドレスアップにこだわるデザイナーの僕としては見逃せないポイントです。 eシリーズ:E-BIKEの強大なトルクを受け止める専用設計 近年急速に普及しているE-BIKE(電動アシスト自転車)にも、KMCは専用のチェーンを用意しています。E-BIKEはモーターの強力なアシストによって、通常の自転車とは比較にならないほどの負荷がチェーンにかかります。KMCの「e」シリーズは、特許取得の新しいリベット技術でピンの強度などを大幅に向上させた専用設計により、その強大なトルクを確実に受け止め、安全性と耐久性を確保しています。 まとめ 台湾の小さな町工場から、世界一の自転車チェーンメーカーへ。KMCの歩みは、まさに「チェーン一筋」という彼らの哲学を体現する物語です。彼らは決して流行を追うのではなく、チェーンに求められる本質的な性能、つまり「正確な変速」「高い耐久性」「メンテナンスのしやすさ」を、愚直なまでに追求し続けてきました。 シマノとの技術提携によって品質を磨き上げ、ミッシングリンクという革新的なアイデアでユーザーの心を掴み、そしてDLCコーティングという最先端技術で究極の性能を提示する。その一つ一つのステップに、彼らのモノづくりへの情熱と、自転車を愛する人々への誠実な想いが込められています。 僕たちが何気なくペダルを漕ぐその力を、静かに、そして確実に後輪へと伝え続けるチェーン。その小さなパーツの中に、KMCというブランドの壮大なストーリーが詰まっているのです。もし今、あなたの自転車のチェーンが交換時期を迎えているなら、次の候補にKMCを選んでみてはいかがでしょうか。きっと、あなたの自転車ライフが、今よりもっと豊かで楽しいものになるはずです。 皆さんはKMCのチェーンを使ったことがありますか?もしお気に入りのモデルや、チェーンに関するこだわりがあれば、ぜひコメントで教えてください。 それでは、また次の記事で会いましょう!ヒロヤスでした!
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パークツール(Park Tool)ってどんなメーカー?自転車乗りの夢を叶える青い工具箱の歴史となりたちを徹底追跡しました。

こんにちは、ヒロヤスです。大阪の街を今日も自転車で駆け抜けているアラフォー、デザイナーの僕です。 僕のブログをいつも読んでくださっている皆さん、本当にありがとうございます。さて、今回は、僕たちの愛する自転車のメンテナンスに欠かせない、あの「青い工具」のブランド、パークツール(Park Tool)について、じっくりとお伝えしたいと思います。…
パークツール(Park Tool)ってどんなメーカー?自転車乗りの夢を叶える青い工具箱の歴史となりたちを徹底追跡しました。
こんにちは、ヒロヤスです。大阪の街を今日も自転車で駆け抜けているアラフォー、デザイナーの僕です。 僕のブログをいつも読んでくださっている皆さん、本当にありがとうございます。さて、今回は、僕たちの愛する自転車のメンテナンスに欠かせない、あの「青い工具」のブランド、パークツール(Park Tool)について、じっくりとお伝えしたいと思います。 自転車を自分でいじる人なら、自転車屋で見かけたことがあるであろう、あの鮮やかな青色の工具たち。プロのメカニックから週末のホビーイジリストまで、世界中の自転車乗りに信頼されているパークツールですが、その背景にある物語を知る人は意外と少ないのではないでしょうか。 彼らがどこで生まれ、どんな想いで工具を作り続けているのか。今回は、単なる製品紹介に留まらず、その歴史と哲学の奥深くに迫っていきたいと思います。他のどのブログよりも詳しく、そして熱く、パークツールの魅力をお届けできれば嬉しいです。 すべてはミネソタの小さな自転車店から始まった パークツールが誕生したのは、1963年のアメリカ・ミネソタ州セントポール。ハワード・C・ホーキンスとアート・エングストロームという二人の男が経営する「パーク・シュウィン」という自転車店がその原点です。 当時の自転車は、今僕らが乗っているような複雑な構造ではなく、もっとシンプルなものでした。しかし、60年代に入ると、変速機などが搭載された新しいタイプの自転車が登場し始めます。それに伴い、修理やメンテナンスも専門的な知識と道具が必要になってきました。 ハワードとアートはすぐに問題に直面します。「新しい自転車を直すための、まともな工具が存在しないじゃないか!」と。市販の工具では対応できない作業がたくさんあったのです。 「なければ、自分たちで作ればいい」 彼らは、ただ不満を言うだけではありませんでした。必要に迫られた二人は、店の裏手で自分たちのための専用工具を作り始めます。これがパークツールの原点であり、今も続くブランドの哲学の根幹を成しています。「必要は発明の母」とは、まさにこのことですね。 彼らが最初に作ったのは、自転車を地面から持ち上げて作業しやすくするための「リペアスタンド」でした。このスタンドが、近隣の自転車店や、当時アメリカ最大の自転車メーカーであったシュウィン社の目にとまります。「ぜひ、そのスタンドを量産してくれないか?」という依頼が舞い込み、二人の運命は大きく動き始めました。 自転車店から、世界一の工具メーカーへ リペアスタンドの成功を皮切りに、彼らは振取台やレンチ、ゲージ類など、次々と新しい工具を開発していきます。その評判は口コミで瞬く間に広がり、彼らが作る工具はプロのメカニックにとってなくてはならない存在になっていきました。 1980年代初頭には、ハワードとアートは経営していた3つの自転車店をすべて売却し、自転車工具の製造に専念することを決意します。自転車を愛し、その最前線にいたからこそわかる「本当に必要な工具」を作る。その一点にすべての情熱を注いだのです。 現在、パークツールは創業者のハワードの息子であるエリック・ホーキンスが事業を引き継ぎ、500種類以上の自転車専用工具を世界75カ国以上に向けて製造・販売する、世界最大の自転車工具メーカーへと成長しました。 日本の自転車乗りとパークツール さて、そんなパークツールが日本に入ってきたのはいつ頃なのでしょうか。正確な年代を特定するのは難しいのですが、古くから日本の代理店を務めているのが、僕らの地元・大阪に本社を置く「ホーザン株式会社」です。 ホーザンもまた、高品質な工具を作ることで知られる日本の老舗メーカー。その確かな目利きによって、パークツールの工具は日本のプロメカニックや自転車愛好家に届けられてきました。大阪の企業が、アメリカのミネソタで生まれた情熱を日本の僕らに繋いでくれていると考えると、なんだか感慨深いものがありますね。 なぜパークツールは世界中で愛されるのか パークツールが単なる工具メーカーにとどまらず、世界中の自転車乗りから絶大な信頼を得ている理由は、その品質だけではありません。 現場から生まれる製品開発 パークツールの製品は、今もなお「現場の必要性」から生まれています。自転車の技術が進化すれば、新しい工具が必要になる。その変化に誰よりも早く対応し、メカニックが本当に使いやすいと感じるものを形にし続けています。 「教える」ことへの情熱 そして特筆すべきは、彼らの「教育」に対する情熱です。YouTubeチャンネルを見れば、伝説的なメカニックであるカルビン・ジョーンズ氏が、あらゆる修理方法を丁寧に解説してくれています。これは単なる製品プロモーションではありません。「自分たちの工具を使って、ユーザーに自転車メンテナンスの楽しさと知識を深めてほしい」という、純粋な想いの表れです。この姿勢が、ブランドへの深い信頼感とコミュニティを育んでいるのです。 揺るぎない「パークツールブルー」 あの鮮やかな青色は、もはや品質と信頼の証。工具箱の中にこの青色があるだけで、なんだか少しだけ、自分の腕が上がったような気がしてしまいますよね。 パークツールを代表するプロダクト ここで、数あるパークツールの製品の中から、特に象徴的ないくつかのプロダクトをジャンル別に見ていきましょう。 メンテナンスの基本セット ・AK-5 アドバンスメカニックツールキット 基本的なメンテナンスから、少し高度な作業までをカバーする工具が詰まったセット。これから本格的に自分でメンテナンスを始めたいという方に最適な、まさに「夢の工具箱」です。 ・PCS-10.3 ホームメカニックリペアスタンド パークツールの原点ともいえるリペアスタンドの現行モデル。安定性が高く、愛車をしっかりと保持してくれるので、あらゆるメンテナンス作業の効率が劇的に向上します。一家に一台あると、自転車ライフがより豊かになること間違いなしです。 専用工具 ・CC-4 チェーンチェッカー チェーンの伸び具合を簡単に測定できる専用工具。チェーンは消耗品であり、伸びたまま使い続けると他のパーツにもダメージを与えてしまいます。これを一つ持っておくだけで、コンポーネントを長持ちさせることができます。 ・TS-2.3 プロフェッショナル振取台 プロのショップでは必ずと言っていいほど見かける、ホイールの振れ取り作業を行うためのスタンド。精度と剛性が非常に高く、ミリ単位での精密な調整が可能です。まさに「プロの仕事道具」といった風格が漂います。 ・BBT-69.4 ボトムブラケットツール 多様化するBB(ボトムブラケット)規格に対応するため、様々な種類のツールがラインナップされています。自分の自転車の規格に合ったものを一つ持っておけば、クランク周りのメンテナンスも自分で行うことができます。 まとめ いかがでしたでしょうか。パークツールの歴史を紐解いてみると、そこには単なるビジネスの成功物語だけではない、自転車への深い愛情と、現場のメカニックへの敬意、そして「本当に良いものを作りたい」という純粋な職人の魂が見えてきます。 そして、その職人の魂は、製品の**「精度」**という具体的な形となって僕たちの手元に届きます。現代の自転車、特にロードバイクやMTBに使われているカーボンや軽量なアルミ部品は、非常にデリケートです。ここで精度の低い工具を使うと、ボルトの頭をなめてしまったり、最悪の場合は高価なフレームやコンポーネントを傷つけてしまうことにも繋がりかねません。 だからこそ、一つ一つの部品にぴったりと合うように設計されたパークツールのような高品質な工具を選ぶことは、愛車を長く、最高の状態で維持するための**「最良の選択」**なのです。それは、単なるメンテナンスを超えた、愛車への敬意の表れとも言えるでしょう。 ミネソタの小さな自転車店のバックヤードで生まれた一つのアイデアが、半世紀以上の時を経て、世界中の自転車乗りのガレージを青く染めている。その事実に、僕は深い感動を覚えずにはいられません。 僕たちがパークツールの工具を手にするとき、それはただの金属の塊を握っているわけではないのかもしれません。ハワードとアートが抱いた情熱、現場の知恵、そして自転車を愛するすべての人々の想いが、その青いハンドルには込められているのです。 皆さんの工具箱にも、パークツールの工具はありますか?ぜひ、お気に入りの一つや、それにまつわるエピソードがあれば、コメントで教えてください。 それでは、また次の記事で会いましょう!ヒロヤスでした!
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「hi-bar」「hihi-bar」NITTOとBLUE LUGが生んだ名作ハンドルバーの知られざる正体に迫る!

こんにちは、ヒロヤスです。大阪の街を今日も自転車で駆け抜けているアラフォー、デザイナーの僕です。 僕のブログをいつも読んでくださっている皆さん、本当にありがとうございます。さて、今回は僕たちが何気なく握っている自転車の「ハンドル」に焦点を当て、その中でも特に深い物語を持つプロダクトについてお伝えしたいと思います。それは、日本の老舗パーツメーカーNITTO(日東)と、東京を拠点に世界中の自転車好きを魅了するバイクショップBLUE…
「hi-bar」「hihi-bar」NITTOとBLUE LUGが生んだ名作ハンドルバーの知られざる正体に迫る!
こんにちは、ヒロヤスです。大阪の街を今日も自転車で駆け抜けているアラフォー、デザイナーの僕です。 僕のブログをいつも読んでくださっている皆さん、本当にありがとうございます。さて、今回は僕たちが何気なく握っている自転車の「ハンドル」に焦点を当て、その中でも特に深い物語を持つプロダクトについてお伝えしたいと思います。それは、日本の老舗パーツメーカーNITTO(日東)と、東京を拠点に世界中の自転車好きを魅了するバイクショップBLUE LUG(ブルーラグ)**のコラボレーションによって生まれた「hi-bar(ハイバー)」と「hihi-bar(ハイハイバー)」です。 僕自身、デザイナーという仕事柄、モノの背景にあるストーリーや作り手の哲学に強く惹かれます。なぜこの形なのか、どんな想いで作られたのか。それを知ることで、プロダクトへの愛着は格段に深まりますよね。この2本のハンドルバーは、まさにそんな物語に満ち溢れた名作。今回は、その誕生秘話から素材選定のドラマ、デザインの細部、そして作り手の想いまで、じっくりと掘り下げていきたいと思います。 すべては一本のビンテージハンドルから始まった この物語の始まりは、BLUE LUGの敏腕メカニックであり、数々の名作オリジナルパーツのデザイナーでもある金子さんが、一本の古いBMXハンドルに出会ったことに遡ります。それは80年代のビンテージBMXに付いていたハンドルで、高すぎず、低すぎず、そして絶妙な手前への曲がり(バックスイープ)を持つ、なんとも言えない魅力的な形状をしていました。 当時のマウンテンバイク(MTB)やBMXのハンドルは、今の基準で見るとライズ(高さ)が控えめなものが主流。しかしそのハンドルが持つ独特の「高さ」と「引き」は、リラックスした乗車姿勢を生み出し、視界を広げ、街中をゆったりと流すのに、これ以上ないほど心地よいものでした。 「この乗り心地を、現代の規格で、もっと多くの人に届けたい」。その想いが、新しいハンドルバー開発の原点となったのです。それは単なる復刻ではなく、ビンテージへの敬意を払いながらも、現代の多様な自転車にフィットする新しい価値を生み出す挑戦の始まりでした。 老舗メーカーNITTOとBLUE LUGの幸福な出会い このアイデアを実現させるパートナーとして白羽の矢が立ったのが、日本の自転車パーツ業界の至宝、NITTOでした。 1923年創業という100年以上の歴史を持つNITTOは、その卓越した金属加工技術で世界中にその名を知られています。競輪選手が使うNJS認定のステムやハンドルから、旅好きのためのキャリアまで、彼らの作る製品は常に「信頼」の二文字と共にあります。機能一辺倒ではなく、工芸品のような佇まいを併せ持つのがNITTO製品の真骨頂。僕のようなモノ好きにはたまらないブランドです。 一方のBLUE LUGは、単なる自転車屋ではありません。自分たちの「好き」を突き詰め、それをオリジナル製品として形にし、独自の自転車カルチャーを発信し続けるクリエイティブ集団です。彼らのフィルターを通して生まれる製品は、常に実用的でありながら遊び心に溢れ、世界中のサイクリストから熱烈な支持を受けています。 そんな両者がタッグを組む。ビンテージへの深い造詣と柔軟な発想を持つBLUE LUGのアイデアを、NITTOが世界最高峰の技術で形にする。このコラボレーションは、名作が生まれるべくして生まれた、幸福な出会いだったと言えるでしょう。 ハンドルに込められた思想。デザイナー金子さんという人物 この「hi-bar」「hihi-bar」を語る上で絶対に欠かせないのが、生みの親であるBLUE LUGの金子さん(愛称:金やん)の存在です。 彼はBLUE LUG幡ヶ谷店のチーフメカニックでありながら、同社のオリジナルパーツのデザインを数多く手掛けるキーマン。彼のInstagramを見れば、ビンテージMTBから最新のグラベルバイクまで、古今東西のあらゆる自転車への深い愛情と知識を持っていることが伝わってきます。 金子さんのデザインの根底にあるのは、常に「乗り手」としての視点です。「どうすればもっと快適になるか」「どうすればもっと格好良くなるか」という問いを、豊富な経験と知識、そして卓越したセンスで解き明かし、形にしていく。彼が生み出す製品は、決して奇をてらったものではありません。自転車の歴史の中に確かなルーツを持ちながら、現代の僕たちの乗り方に寄り添う、絶妙な「さじ加減」が魅力なのです。 このハンドルに込められたのも、まさにその哲学。「楽な姿勢で、広い視野で、街の景色を楽しんでほしい」。そんなシンプルな想いが、あの美しい曲線の中に凝縮されています。 素材を巡るドラマ。「hi-bar」と「hihi-bar」徹底解説 さて、いよいよプロダクトそのものを見ていきましょう。この2つのハンドルは、見た目は似ていますが、実は素材と開発経緯に面白いストーリーが隠されています。 当初、金子さんが思い描いていたのは、ビンテージハンドルのようなルックスを持つクロモリ製のハイライズバーでした。しかし、試作品をNITTOの厳しい強度試験にかけたところ、残念ながらクリアすることができませんでした。NITTOからの提案は「クロスバー(補強のブリッジ)を入れれば強度は確保できる」というもの。 この提案が、結果的に2つの異なる名作を生み出すきっかけとなります。 B903 "Hi-Bar" (アルミニウム) まず、クロスバーなしのシンプルなスタイルを実現するために、素材をクロモリからアルミニウムに変更して開発されたのが「hi-bar」です。 強度を確保するために、NITTOの得意とする焼き入れ(HEAT TREATED)処理が施されたアルミパイプを使用。これにより、高いライズと広いハンドル幅を持ちながらも、NITTOの安全基準をクリアする十分な強度を実現しました。 素材がアルミになったことで、軽量かつ、乗り味もクロモリとは異なるダイレクトなフィーリングに。MTBやクロスバイクのカスタムの第一歩として、劇的な乗りやすさの変化を体感できるハンドルです。 B904 "HiHi-Bar" (クロモリ) そして、当初のアイデアだったクロモリ製というコンセプトと、NITTOからの提案であったクロスバーを融合させて誕生したのが「hihi-bar」です。 BMXハンドルのようなクロスバーが追加されたことで、見た目のインパクトと、どんなラフなライディングにも耐えうる圧倒的な剛性を手に入れました。ライズ(高さ)はhi-barよりもさらに高い約100mm。クロモリ特有のしなやかな乗り心地と相まって、究極のリラックスポジションを提供してくれます。 一つのアイデアが、予期せぬ課題を経て、特性の異なる2つの素晴らしいプロダクトに昇華した。この開発ストーリーこそ、このハンドルたちの最大の魅力かもしれません。 このハンドルは、なぜこれほどまでに愛されるのか 「hi-bar」と「hihi-bar」が多くのサイクリストに支持される理由は、その普遍的なデザインと懐の深さにあります。 どんな自転車にも似合う魔法のデザイン: 古いクロモリのMTBはもちろん、最新のグラベルバイク、クロスバイク、シングルスピードまで。不思議なことに、どんな車種に付けてもすんなりと馴染み、その自転車が元々持っていたかのような自然な佇まいを見せてくれます。 カスタムの幅を広げる汎用性: クランプ径は25.4mmや31.8mmが用意されており、多くのステムに対応します。また、ハンドル幅も十分にあり、カットして自分の肩幅に合わせ込むことも可能です。グリップやブレーキレバーの選択肢も広く、自分だけの一台を作り上げる楽しみを広げてくれます。 「楽」がもたらす「楽しさ」: 自転車の楽しみ方はスピードだけではありません。楽な姿勢で走ることで、今まで気づかなかった街の風景や季節の移ろいを感じることができる。このハンドルは、そんな自転車の原点ともいえる「散歩するような楽しさ」を再発見させてくれるのです。 カラーバリエーションと仕上げの美学 現在のカラーバリエーションは、美しいポリッシュ仕上げのシルバーと、どんな車体も引き締めて見せる精悍なブラックが基本です。(hi-barには渋いスチールグレーなども存在します) 特筆すべきは、やはりNITTOならではの仕上げの美しさ。シルバーは、金属の質感を活かした磨き込みが所有する喜びを感じさせてくれます。ブラックも同様に、均一で滑らかな塗装が施されており、その品質の高さは一目見れば分かります。 こうした細部へのこだわりが、製品全体の品格を高め、僕たちのようなモノ好きの心を掴んで離さないのでしょう。 僕のMuddyFoxを変えた、魔法のハンドル 何を隠そう、僕の自転車のルーツはBMXにあります。だから、こういうアップライトで幅広なハンドルには、どうしても心が躍ってしまうんです。NITTOとBLUE LUGがこのハンドルをリリースした時、「これは事件だ」と本気で思いました。 そして、その想いは今、僕のオールドMTBで最高の形になっています。レストアしたARAYAのMuddyFoxに、試しに「hi-bar」を取り付けてみたんです。するとどうでしょう。あれほど前傾姿勢で戦闘的だったMTBが、まるで魔法にかかったように、肩の力を抜いてどこまでも走っていけるような、最高にゴキゲンなクルーザーに生まれ変わりました。 その乗り心地が本当に快適で、最近では僕のメインバイクであるEvasionの出番が減ってしまうほど。晴れた日には決まってこのMuddyFoxにまたがり、大阪の街をのんびり流しています。 このハンドルは、ただのパーツ交換ではなく、自転車との新しい関係性を築いてくれる、そんな力を持っているんです。 まとめ:一本のハンドルが繋ぐ、作り手と乗り手の物語 今回は、NITTOとBLUE LUGが生んだ「hi-bar」と「hihi-bar」について、その背景を深く掘り下げてみました。 一本のビンテージハンドルとの出会いから始まり、デザイナーである金子さんの情熱と哲学、そしてNITTOの確かな技術力。さらに、開発過程で生まれた「強度」という課題を乗り越えるアイデアが、結果として素材とキャラクターの異なる2つの名作を生み出したという事実は、モノづくりの面白さと奥深さを教えてくれます。 自分の愛車にこのハンドルを取り付けたら、いつもの道がどんな風に見えるだろうか。そんな想像をしてみるだけで、なんだかワクワクしてきませんか? もしあなたが今の乗車姿勢に少しでも疑問を感じていたり、自転車の見た目をガラッと変えてみたいと思っていたりするなら、この物語を持つハンドルを試してみる価値は十分にあります。きっと、新しい自転車の楽しみ方が見つかるはずです。 この記事を読んで、「hi-bar」や「hihi-bar」について感じたことや、実際に使っている方の感想などがあれば、ぜひ下のコメント欄で教えてくださいね。 それでは、また次の記事で会いましょう!ヒロヤスでした!
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100年の歴史と誇り。大阪が世界に誇るIZUMIチェーンの物語を紐解く

こんにちは、ヒロヤスです。大阪の街を今日も自転車で駆け抜けているアラフォー、デザイナーの僕です。 僕のブログをいつも読んでくださっている皆さん、本当にありがとうございます。 さて、今回は自転車を構成するパーツの中でも、特に「チェーン」に焦点を当ててみたいと思います。フレームやホイールのように目立つ存在ではないけれど、僕たちの脚力を後輪に伝え、自転車を前進させるためには絶対に欠かせない、まさに心臓部とも言えるパーツです。…
100年の歴史と誇り。大阪が世界に誇るIZUMIチェーンの物語を紐解く
こんにちは、ヒロヤスです。大阪の街を今日も自転車で駆け抜けているアラフォー、デザイナーの僕です。 僕のブログをいつも読んでくださっている皆さん、本当にありがとうございます。 さて、今回は自転車を構成するパーツの中でも、特に「チェーン」に焦点を当ててみたいと思います。フレームやホイールのように目立つ存在ではないけれど、僕たちの脚力を後輪に伝え、自転車を前進させるためには絶対に欠かせない、まさに心臓部とも言えるパーツです。 普段何気なく見ているチェーンですが、その一つ一つに、作り手の想いや歴史、そしてテクノロジーが詰まっていると考えると、なんだかワクワクしてきませんか?僕が自転車の沼にハマった理由の一つは、まさにこういうところにあるんです。パーツの背景にあるストーリーを知ることで、自分の自転車がもっと愛おしく、特別な存在に感じられるようになる。 そして、そんな熱いストーリーを持つメーカーが、何を隠そう僕の地元、大阪にあるんです。その名も「和泉チエン株式会社」、ブランド名「IZUMI」。 今回は、このIZUMIというメーカーについて、その歴史からモノづくりへのスタンス、そして世界中のサイクリストから支持される理由まで、他のどのブログよりも深く、じっくりとお伝えしたいと思います。 IZUMIとはどんなメーカー? - 大阪・阪南市から世界へ 皆さんは「IZUMI」と聞いて、すぐにピンとくるでしょうか?特にトラックバイク(ピストバイク)に乗っている方なら、一度は耳にしたことがある、あるいは既にご自身のバイクにインストールしているかもしれませんね。 IZUMI、正式名称を「和泉チエン株式会社」と言います。その本社と工場は、僕が住む大阪の南部、阪南市にあります。そう、世界的なチェーンメーカーが、この大阪の地にあるんです。これって、同じ大阪人としてなんだか誇らしい気持ちになります。 彼らは「日本でしか良い製品は作れない」という強い信念のもと、創業から一貫して国内生産を貫いています。海外に生産拠点を移す企業が多い中で、このスタンスを維持し続けるのは、並大抵のことではないはず。品質に対する絶対的な自信と、日本のモノづくりへの誇りが感じられます。 自転車用チェーンはもちろん、オートバイや自動車、さらには様々な産業機械用のチェーンまで手掛ける総合チェーンメーカーであり、その技術力の高さは国内外で高く評価されています。 創業100年を超える歴史と哲学 - IZUMIのモノづくりへのこだわり IZUMIの歴史を遡ると、その始まりはなんと1916年(大正5年)にまで及びます。100年以上も前、関西で唯一の自転車用チェーン専門製作所として産声をあげたのが、そのルーツです。 自転車がまだ貴重品だった時代から、IZUMIはその発展と共に歩んできたのですね。戦後の復興期を経て、日本の自転車産業が大きく成長していく中で、IZUMIは常にその中心で品質を支え続けてきました。 特筆すべきは、1970年代に日本の自転車パーツを語る上で欠かせない2つの巨人、株式会社シマノ、そして株式会社椿本チエインと業務提携を結んでいること。これは、IZUMIの技術力と品質が、業界のトップランナーたちに認められていた何よりの証拠と言えるでしょう。シマノと共同で変速機用のチェーンを開発するなど、IZUMIの技術は日本の自転車の進化に大きく貢献してきたのです。 「従業員数をむやみに増やさず、営業マンも少なくする」という経営方針も、彼らの哲学を象徴しています。それは、いたずらに規模を追うのではなく、目の届く範囲で、一つ一つの製品と真摯に向き合うという姿勢の表れ。まさに職人気質、僕のようなデザイナーやモノづくりに関わる人間には、グッとくるものがあります。 世界が認める品質。競輪選手から愛される理由 IZUMIチェーンの品質を語る上で絶対に外せないのが、「NJS認定」の存在です。 NJSとは、日本の競輪(プロのトラックレース)で使用が許可されているパーツに与えられる認定のこと。競輪はコンマ1秒を争う非常にシビアな世界。そこでは、どんな状況でも絶対に壊れない耐久性と、ペダリングのパワーをロスなく伝える高い精度が求められます。NJSの認定基準は世界で最も厳しいと言われており、この認定を受けているということは、品質、性能、信頼性において最高水準であることの証明に他なりません。 IZUMIのチェーンは、多くの競輪選手たちの決戦用パーツとして、その足元を支え続けてきました。プロの選手たちが、自らの身体とキャリアを預けるパーツとしてIZUMIを選ぶ。これ以上に説得力のある事実はないでしょう。 その評価は国内に留まらず、海外のトラックレーサーや、ストリートのピストバイクカルチャーにおいても絶大です。なぜなら、彼らが求めるのもまた、競輪選手と同じく「信頼性」と「ダイレクトな踏み心地」だから。IZUMIのチェーンは、踏んだ瞬間に違いがわかると言われます。チェーンの遊びが少なく、力がダイレクトに伝わる感覚。一度この感触を知ってしまうと、もう元には戻れない。それほどまでに、IZUMIのチェーンは多くのサイクリストを魅了しているのです。 IZUMIを代表するプロダクト それでは、実際にIZUMIがどのようなチェーンをラインナップしているのか、代表的なモデルをいくつかご紹介します。 トラックバイク/ピストバイク用チェーン IZUMI-V SUPER TOUGHNESS (イズミ・ブイ スーパータフネス) まさにIZUMIの代名詞。NJS認定を受けた、最高峰のトラックレーシングチェーンです。スタンダードなチェーンの3倍以上とも言われる圧倒的な耐久性を誇り、その滑らかな駆動性能と信頼性から、世界中のトップアスリートや、本物志向のピストバイク乗りに選ばれ続けています。ゴールドとブラックのカラーリングも、特別な存在感を放っています。 IZUMI-KAI (イズミ・カイ) IZUMI-Vをベースに、さらなる駆動抵抗の削減をコンセプトに開発された、次世代のフラッグシップモデル。特殊なコーティングなどを施すことで、究極の速さを追求しています。まさに決戦用、勝利を目指すライダーのためのチェーンです。 一般車用チェーン IZUMIは、レーシングパーツだけでなく、私たちが日常的に使うシティサイクル(ママチャリ)用のチェーンも製造しています。レースシーンで培われた技術と品質管理は、もちろんこれらのスタンダードな製品にも活かされています。普段使いだからこそ、丈夫で長持ちするIZUMIのチェーンは、安心して使える選択肢と言えるでしょう。 まとめ 今回は、僕の地元・大阪が世界に誇るチェーンメーカー「IZUMI」について、その魅力の核心に迫ってみましたがいかがでしたでしょうか。 1916年の創業から100年以上にわたり、大阪・阪南市の地で、ひたむきに高品質なチェーンを作り続けてきたIZUMI。その歴史は、単に古いというだけではありません。シマノをはじめとするトップメーカーと技術を磨き合い、競輪という極限の舞台でその信頼性を証明し続けてきた、まさに日本のモノづくりの良心が凝縮された歴史です。 僕たちがIZUMIのチェーンを選ぶということは、ただ「性能の良いパーツ」を手に入れるということだけではないのだと思います。それは、彼らが守り続けてきた「Made in Japan」への誇りと、一つの製品に魂を込める職人たちの哲学を、自分の自転車にインストールするということ。ペダルを踏み込むたびに感じる、あのダイレクトで滑らかな感触は、100年という時間が育んだ信頼の証そのものなのです。 たかがチェーン、されどチェーン。普段はあまり意識しない小さなパーツにも、こんなにも深く、熱い物語が流れている。これだから、自転車はやめられないんです。皆さんも次にチェーンを交換する機会があれば、ぜひIZUMIのチェーンを候補に入れてみてはいかがでしょうか。きっと、あなたの自転車がもっと特別な一台になり、ペダルを漕ぐのが今よりもっと楽しくなるはずです。 あなたのIZUMIチェーンにまつわるエピソードや、お気に入りのモデルなどがあれば、ぜひ下のコメント欄で教えてくださいね。 それでは、また次の記事で会いましょう!ヒロヤスでした!
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荒野を切り開く、情熱の遺伝子。「WTB」が自転車文化に刻み込んだストーリー

こんにちは、ヒロヤスです。大阪の街を今日も自転車で駆け抜けているアラフォー、デザイナーの僕です。僕のブログをいつも読んでくださっている皆さん、本当にありがとうございます。さて、今回は、多くの自転車乗りが知っているであろう、アメリカのコンポーネントブランド「WTB」について、僕なりの視点で深く掘り下げてみたいと思います。 WTBと聞いて、どんなイメージを持つでしょうか?グラベルロードに乗っている方なら「Byway」や「Riddler」といったタイヤを、MTBに乗っている方なら「Vigilante」や「Trail…
荒野を切り開く、情熱の遺伝子。「WTB」が自転車文化に刻み込んだストーリー
こんにちは、ヒロヤスです。大阪の街を今日も自転車で駆け抜けているアラフォー、デザイナーの僕です。僕のブログをいつも読んでくださっている皆さん、本当にありがとうございます。さて、今回は、多くの自転車乗りが知っているであろう、アメリカのコンポーネントブランド「WTB」について、僕なりの視点で深く掘り下げてみたいと思います。 WTBと聞いて、どんなイメージを持つでしょうか?グラベルロードに乗っている方なら「Byway」や「Riddler」といったタイヤを、MTBに乗っている方なら「Vigilante」や「Trail Boss」を思い浮かべるかもしれません。はたまた、その快適さで知られる「Volt」や「Silverado」といったサドルも有名ですね。でも、WTBが単なるパーツメーカーではない、もっと奥深い「物語」を持っていることをご存知でしょうか。今回は、その創業の歴史から、彼らの哲学、そして日本との関わりまで、他ではあまり語られない背景について、熱い想いとともにしっかりと深掘りしてお伝えしたいと思います。 マウンテンバイク誕生の地、カリフォルニア州マリン郡で生まれた必然性 WTBは「Wilderness Trail Bikes」の頭文字を取ったもので、日本語に直訳すると「荒野の道を行く自転車」となります。この名前がすべてを物語っていると言っても過言ではありません。 彼らの歴史は、マウンテンバイクの黎明期、1982年に始まります。創業者のスティーブ・ポッツ、チャーリー・カニンガム、そしてマーク・スレートは、MTBが生まれたとされるカリフォルニア州マリン郡の荒々しい山道を、まだ未完成な自転車で駆け抜けていました。しかし、当時の市販パーツは、オフロード走行の過酷さに耐えうるものがほとんどなく、彼らは自分たちの自転車に最適な、よりタフで機能的なパーツを自作するようになりました。 この「自分たちが本当に欲しいものを作る」という情熱と、プロのフレームビルダーやデザイナーとしての高い技術力が結びつき、彼らが作るパーツは瞬く間に評判となります。そして、増え続ける需要に応える形で、3人はWTBを設立したのです。単なるビジネスではなく、自分たちのライフスタイルから生まれた必然的なプロダクト。この原体験こそが、40年以上にわたるWTBの物づくりを支える根幹にあるのです。 「TCS」が拓いた新たな道 WTBの製品哲学は、創業当時から一貫しています。それは「より良いものを作る」というシンプルな信念です。彼らは常に、ライダーが求める耐久性と信頼性、そして性能を追求してきました。その象徴的な功績の一つが、現在ではロードバイクやグラベルロードでも当たり前になった「チューブレス」システムの発展です。 WTBは、チューブレス化を最も早くから推進したブランドの一つであり、その技術を「TCS(Tubeless Compatible System)」と名付けました。タイヤ、リム、リムテープ、バルブ、そしてシーラントまで、チューブレスシステム全体を一つのパッケージとして提供することで、誰でも簡単に、そして確実にチューブレス化できる環境を整えました。パンクのリスクを減らし、低い空気圧で走行できるチューブレスは、荒れた路面を走るMTBやグラベルロードにおいて、圧倒的な優位性をもたらしました。これは、単に製品を開発するだけでなく、自転車の楽しみ方そのものを変革するような、彼らの創造性の証だと思います。 日本の自転車文化との深い結びつき WTBは、特にグラベルロードが流行するずっと前から、日本の自転車乗りにも深く愛されてきました。正確な日本上陸時期を特定するのは難しいのですが、古くからMTBやシクロクロスを愛好する人々の間では、その信頼性の高さから、WTBの製品は定番の選択肢でした。 僕も昔からWTBの製品をよく見ていましたが、日本のディストリビューターやショップが彼らの製品哲学をしっかりと理解し、国内に広めてきたことで、WTBは単なる海外ブランドではなく、日本の自転車文化に溶け込んだ存在になったのだと感じています。特に、近年では「SimWorks」のような個性的なショップがWTBの製品を積極的に紹介することで、多くの新しいライダーがその魅力に触れる機会を得ています。彼らの製品は、派手さよりも実直さ、そしてライダーに寄り添う姿勢が感じられるからこそ、日本の自転車乗りから長年にわたって支持されているのではないでしょうか。 WTBを代表するプロダクトたち WTBのプロダクトは、その確固たる哲学に基づいて作られています。ここでは、その中でも特に代表的な製品をいくつかご紹介します。 サドル WTB Volt: WTBサドルのアイコン的存在。ややラウンドした形状と適度なクッション性が、あらゆるカテゴリーのライドで快適性を提供します。特にマウンテンバイクやグラベルライドでの安定感は抜群です。 WTB Silverado: スリムで軽量なサドルを好むライダーに人気のモデル。特にタイトなペダリングフォームを維持したいライダーや、グラベルレースなど軽量性が求められるシーンで力を発揮します。 タイヤ WTB Byway: グラベルロード用のセミ・スリックタイヤ。センター部分はスリックで舗装路での転がり抵抗を軽減し、サイドに配置されたノブが未舗装路でのグリップを確保します。舗装路と未舗装路の両方を楽しむ「グラベルライド」の理想形を体現するタイヤです。 WTB Ranger: マウンテンバイク用のオールラウンドタイヤ。細かく配置されたノブが、様々な路面状況で優れたトラクションと安定した走行感をもたらします。トレイルライドからバイクパッキングまで、幅広い用途で活躍します。 WTB Resolute: 様々なコンディションに対応する、オールコンディション・グラベルタイヤ。ノブの高さと間隔が絶妙で、ドライな路面からややウェットな路面まで、安定したグリップ力を発揮します。グラベルライドの楽しさを一段と引き上げてくれる一本です。 まとめ WTBの歴史と製品を深く掘り下げてみて、彼らが「偶然」ではなく、必然的に現在の地位を築き上げてきたことがよくわかりました。マウンテンバイクの黎明期に、自分たちが本当に欲しいと願った理想のパーツを形にし、その哲学を今も頑なに守り続けている。そして、常に進化を止めず、チューブレスシステムのような革新的な技術を世に送り出し続けています。 彼らのプロダクトは、デザイナーの僕から見ても、機能性と美しさが高い次元で融合していると感じます。ただ単にカッコいいだけでなく、それぞれのパーツに確固たる意味と目的があり、それがデザインに落とし込まれている。まさに「機能美」を体現しているブランドだと思います。 WTBの創業者たちは、単に部品を製造するだけでなく、自転車という乗り物が持つ可能性を広げ、荒れた道や未知のトレイルへとライダーを誘う「道しるべ」を作ってきたのではないでしょうか。彼らの情熱は、製品の一つ一つに脈々と受け継がれており、僕たちが安心して、そして心からライドを楽しめる理由になっています。流行りのプロダクトを追いかけるのではなく、本当に良いものを長く使うという僕の価値観に、WTBの哲学は深く共鳴します。 WTBの製品を手に取るとき、ぜひその背景にあるストーリーや、創業者の情熱に思いを馳せてみてください。きっと、あなたの愛車が、そしていつものライドが、さらに特別なものになるはずです。 皆さんのお気に入りのWTBプロダクトや、WTBにまつわる思い出があれば、ぜひコメントで教えてくださいね。 それでは、また次の記事で会いましょう!ヒロヤスでした!
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