美酒三百杯
@bish300.bsky.social
2 followers
1 following
110 posts
日本酒情報局
https://news.bish300.com/
Posts
Media
Videos
Starter Packs
美酒三百杯
@bish300.bsky.social
· 10d
日本酒レビュー・情報メディア「Japan Cellar」グランドオープン
日本酒・焼酎・日本ワインの魅力を世界に発信する新しい情報プラットフォーム「Japan Cellar(ジャパン・セラー)」が、2025年10月にグランドオープンしました。運営は、東京・高田馬場に拠点を置く株式会社ハイパープロダクティブ。同社は、国内外の酒類を評価・紹介する統一的なレビュー基準を確立し、日本の酒文化を国際的に通用する形で可視化することを目標に掲げています。 世界基準に近づく「日本酒レビュー」の新時代 「Japan Cellar」は、ワイン業界における“パーカーポイント”のように、専門的で透明性のある評価を行う仕組みを導入しました。その中核となるのが、独自の5指標「JC BLICU(Balance/Length/Intensity/Complexity/Uniqueness)」です。バランス、余韻、力強さ、複雑性、独自性という5つの観点から酒を総合的に分析し、85点以上の銘柄のみを掲載するという厳格な基準を設けています。 レビュアーには、全日本最優秀ソムリエの井黒卓氏や岩田渉氏、さらに世界的ワイン誌『The Wine Advocate』の元レビュアー星山厚豪氏など、国内外で実績を持つ専門家が参加。いずれも匿名ではなく記名制で評価することで、レビューの透明性と信頼性を担保しています。試飲用サンプルではなく、自社購入による評価方針を明確にしている点も、これまでの酒類メディアとは一線を画しています。 デジタル化と多言語展開が拓く新たな市場 同サイトは日本語と英語の2言語対応でスタートし、今後はフランス語、中国語など主要言語への展開も予定されています。対象は日本酒だけでなく、焼酎や日本ワインにも及びます。酒蔵やワイナリーのデータベース、ペアリングガイド、酒蔵見学情報なども充実しており、国内外の消費者・バイヤーが日本の酒文化を体系的に理解できる構成となっています。 これまで、ワインのように国際的な共通指標が存在しなかった日本酒市場では、輸出先ごとに味覚や品質評価が分散していました。「Japan Cellar」は、そうした断片的な情報の壁を取り払い、“世界の酒類の中での日本酒の位置づけ”を明確に示す試みといえます。特に、輸出拡大を狙う中小酒造にとっては、海外の流通業者や飲食店バイヤーへの新たなプレゼンテーション手段となる可能性を秘めています。 日本酒業界ではここ数年、品質や味わいの多様化が進み、従来の“地酒”という枠を超えて、クラフトやテロワールといった概念が注目され始めています。「Japan Cellar」は、こうした動きを国際的に可視化し、定量化する役割を果たすことで、ブランド価値の客観的評価や国際競争力の向上に寄与するでしょう。 一方で、点数化がもたらす序列や市場偏重への懸念もあります。特定の味覚傾向に評価が集中すれば、多様性が損なわれる可能性も否定できません。運営側はこの点を意識し、「文化的背景や個性を尊重したレビュー」を理念に掲げています。今後、どのように公平性と創造性を両立させるかが、プラットフォームの信頼性を左右する鍵となりそうです。 日本酒の魅力を“感覚”ではなく“共通言語”として伝える試み——。世界の愛好家が日本の酒を語るための新しい基準を築く第一歩として、「Japan Cellar」の今後の展開が注目されます。 ▶ Japan Cellar ホームページ
news.bish300.com
美酒三百杯
@bish300.bsky.social
· 11d
日本酒に広がる小容量化の動き──「開華」の新展開から見える未来
栃木県佐野市の第一酒造が手掛ける銘柄「開華」は、このたび既存の人気商品を小容量で展開する新たな取り組みを始めました。「日本酒をもっと身近に、もっと自由に楽しんでいただきたい」という思いから生まれたこの試みは、近年の消費者動向や流通環境の変化を象徴するものだといえます。日本酒業界における小容量化の潮流は、確実に全国に広がっています。 小容量需要の背景 まず背景として、日本酒消費のライフスタイルの変化が挙げられます。かつては一升瓶での購入が当たり前でしたが、少子高齢化や単身世帯の増加により、一度に多くを消費する機会は減っています。また、家庭内での飲酒は「少しずつ、さまざまな種類を飲み比べたい」という志向が強まり、720mlや300mlといった小瓶の需要が年々拡大しています。開華の小容量展開も、この流れを踏まえたものといえるでしょう。 小容量化には、流通や観光の場でも大きな利点があります。旅行先やイベントで「飲み切りサイズ」を持ち帰りたいというニーズは根強く、軽量で手軽な小瓶は土産物としても親和性が高いのです。加えて、EC販売においても、初めて購入する銘柄を気軽に試してみたい消費者にとって小容量は魅力的です。こうした需要を捉えることは、蔵元にとって新たな市場の拡大につながります。 さらに見逃せないのが、「鮮度保持」という観点です。日本酒は一度開栓すると酸化が進み、風味が劣化しやすい飲料です。その点、小容量であれば飲み切りやすく、常に新鮮な状態で味わうことができます。この利点に注目し、あえて一升瓶を廃止し、四合瓶や、さらに小容量に特化する蔵も出てきています。保存や流通の効率を考えれば一升瓶の役割は大きかったものの、鮮度や飲用シーンの多様化を優先する姿勢が見え始めているのです。 小容量化の課題と挑戦 一方で、小容量化は製造やコスト面での課題も伴います。瓶やパッケージの単価は容量が小さいほど割高になり、流通コストの上昇を招く恐れがあります。また、蔵元にとっては充填ラインの整備や在庫管理の複雑化といったハードルも存在します。それでもなお、多くの酒蔵が小容量化に取り組むのは、消費者との接点を増やし、市場全体を活性化させるために不可欠だからです。 さらに注目すべきは、小容量化が日本酒文化の新たな発信手段となり得る点です。たとえば、地域限定商品や季節限定酒を180mlや300mlで展開することは、観光客の購買意欲に訴えかけ、SNSで発信する可能性を高めます。結果的に、ブランドや地域の認知度向上に寄与し、次なる購入や訪問需要へとつながる循環が期待できます。 加えて、小容量展開は健康志向や多様化する飲酒スタイルとも相性が良いと言えます。アルコール摂取量を抑えながらも味わいを重視する層にとって、少量パックは理想的です。ワインやクラフトビールに見られるように、シーンに合わせてサイズを選ぶ習慣が根付けば、日本酒もより柔軟に生活に溶け込むでしょう。 今回の「開華」の取り組みは、単なる容量の変更にとどまらず、日本酒の未来を切り拓く実験の一環だといえます。飲みきりサイズが生み出す鮮度の魅力、そして一升瓶からの転換という大きな価値観の変化を背景に、日本酒はより幅広い世代やライフスタイルに受け入れられるはずです。小容量化は、一見すると小さな変化に見えますが、実は日本酒文化を次の時代へと導く大きな一歩となるでしょう。
news.bish300.com
美酒三百杯
@bish300.bsky.social
· 12d
月桂冠『アルゴ』グッドデザイン賞受賞|若者に響く革新で日本酒離れに挑む
月桂冠株式会社(本社:京都市伏見区)が開発したアルコール度数5%の日本酒「アルゴ」が、2025年度グッドデザイン賞を受賞しました。従来の日本酒のイメージを刷新する革新的な商品として、デザイン性と飲みやすさの両面から高く評価されました。 「アルゴ」は、ギリシャ神話に登場する伝説の船「アルゴー号(Argo)」にちなみ、新しい価値の探求から生まれた商品です。爽やかでフルーティな味わいを特徴とし、平日にも気軽に楽しめる日本酒として開発されました。一般的な日本酒のアルコール度数が15%前後であるのに対し、「アルゴ」はその約3分の1。これにより、飲酒のハードルを下げ、若年層やライトユーザーにも親しみやすい商品となっています。 日本酒離れに立ち向かう革新の一手 近年、日本酒業界では若者離れや消費量の減少が深刻な課題となっています。伝統的な酒造りの技術や文化が継承される一方で、現代のライフスタイルや嗜好に合った新たな提案が求められてきました。そうした中で「アルゴ」は、低アルコールという切り口と洗練されたデザインによって、これまで日本酒に馴染みのなかった層へのアプローチを可能にしています。 月桂冠の調査によれば、日本酒は週末に飲まれる傾向が強く、平日の需要は限定的でした。一方で、低アルコール市場は近年急速に拡大しており、ビールやチューハイに加え、日本酒にもその波が押し寄せています。「アルゴ」は、こうした市場の変化に応える形で誕生した製品であり、同社の挑戦的な姿勢がうかがえます。 デザインと味わいで新たな層へ グッドデザイン賞の審査員は、「非炭酸でアルコール度数5%という新しい日本酒の提案」「ネーミングと数字の“5”による直感的な訴求」「青を基調とした軽やかで上質なパッケージデザイン」などを高く評価しました。これらの要素が相乗的に機能し、従来の日本酒に対する敷居の高さを感じていた層にもアプローチできる点が受賞の決め手となりました。 業界への影響も大きいと考えられます。「アルゴ」のような低アルコール・高デザイン性の商品は、新たな顧客層の開拓につながる可能性があります。また、グッドデザイン賞の受賞は、酒類業界におけるデザインの重要性を再認識させる契機ともなり得ます。 さらに、「アルゴ」は食品ヒット賞にも選ばれており、その商品力と市場での評価は確かなものです。スパークリングタイプや缶入りなど、ラインアップの拡充もあり、日本酒の新しい楽しみ方を提案する存在として注目が集まっています。 月桂冠の「アルゴ」は、単なる新商品にとどまらず、日本酒の未来を切り拓く一歩となるかもしれません。伝統と革新が融合したこの一杯が、より多くの人々の暮らしに寄り添うことを期待したいところです。
news.bish300.com
美酒三百杯
@bish300.bsky.social
· 13d
青森・西田酒造店の若き情熱が結実 数年ぶりに限定酒『外ヶ濱』をリリース
『田酒(でんしゅ)』で知られる青森県の銘醸蔵、株式会社西田酒造店から、この度、数年ぶりとなる限定銘柄『外ヶ濱(そとがはま)』が発売されました。今回の『外ヶ濱』は、酒蔵の未来を担う若手蔵人たちが、杜氏の指導なしで、自らの経験と創意工夫を注ぎ込んだ意欲作として、大きな注目を集めています。 蔵の未来を懸けた若き蔵人たちの挑戦 今回リリースされたのは、同じ仕様で仕込まれた対照的な二つの純米吟醸酒、「外ヶ濱 純米吟醸 モノクロ」と「外ヶ濱 純米吟醸 ハイカラ」です。この二つの銘柄は、製造時に20代と30代であった若手蔵人たちが、製造工程の全てを主導し、一切の妥協なく造り上げられたものです。 「モノクロ」と「ハイカラ」は、どちらも青森県の酒造好適米である「華吹雪」を精米歩合50%まで磨き上げた純米吟醸酒という点では共通しています。しかし、それぞれ異なる世代の蔵人が、それぞれの持つ感性と技術を反映させた結果、ユニークな個性を獲得しています。 20代の蔵人が仕込んだ「モノクロ」は、甘みが際立つ一本です。フレッシュで軽快な飲み口と、その奥に広がる米の旨み、そして甘さのバランスが絶妙で、若々しくも綺麗な味わいが特徴です。一方、30代の蔵人が仕込んだ「ハイカラ」は、「モノクロ」と比較してやや辛口に仕上げられています。低アルコール酒(アルコール度13%)でありながら、それを感じさせないしっかりとした骨格と、心地よい酸味が特徴で、後味がキレ良く軽やかにまとまっています。 伝統と革新を繋ぐ「杜氏不在」の酒造り この若手蔵人による「杜氏からの指示なし」というチャレンジは、単なる企画的な商品展開以上の意味を持っています。西田酒造店が長年守り続けてきた伝統的な酒造りの技術を、次世代の蔵人たちが単に受け継ぐだけでなく、自らの力で解釈し、新しい挑戦を通じて技術を昇華させる「継承と革新」の試みであるからです。 酒造りにおける杜氏の存在は、経験に基づく知識と技術の集大成であり、酒の品質を決定づける重要な要素です。その杜氏の指導を排し、若手がゼロから全てを組み立てることは、若手自身の力量と判断力を最大限に引き出すための、酒蔵の未来を懸けた教育的な意味合いも持ちます。これにより、若手蔵人は試行錯誤を通じて深い経験を積み、将来的に蔵を支える核となる人材へと成長することが期待されます。 『外ヶ濱』から見える日本酒業界の未来 近年、日本酒業界では、若手蔵元のUターンや新進気鋭の若手杜氏の活躍が目覚ましくなっていますが、西田酒造店のこの取り組みは、既存の蔵の内部から新しい風を吹き込む、大変建設的なチャレンジです。 この「モノクロ」と「ハイカラ」の飲み比べは、消費者にそれぞれの酒の個性を楽しんでもらうだけでなく、「同じ蔵の、同じ米、同じ精米歩合で、造り手によって味わいがこれほど変わる」という日本酒の奥深さを伝える貴重な機会ともなります。 『田酒』の看板と共に歩んできた西田酒造店が、数年の沈黙を破ってリリースした『外ヶ濱』。それは、単なる限定酒ではなく、同蔵の若き情熱が詰まった「未来への布石」と言えるでしょう。日本酒業界の明るい未来を示すものとして、今後の動向が注目されます。 ▶ 田酒|米と水だけで生まれる日本酒。風格ある純米酒の代表格
news.bish300.com
美酒三百杯
@bish300.bsky.social
· 14d
全国47都道府県の米が一つに——被災地復興支援「絆舞」プロジェクト始動
全国47都道府県の米を使って仕込む日本酒「絆舞(きずなまい)」の仕込みが、2025年10月11日、福島県会津坂下町の曙酒造で始まりました。このプロジェクトは、東日本大震災の被災地復興を支援し、日本各地の絆を酒という形で結び直そうという思いから2017年に誕生したものです。酒の名に込められた「絆」と「舞」という言葉は、支え合いの象徴と、喜びを分かち合う姿を重ね合わせています。 今回の仕込みには、全国各地の信用金庫関係者をはじめ、地域活性化に携わる人々が参加しました。全国179地域から集められた米が用いられ、曙酒造が中心となって醸造を担当します。同蔵は「天明」や「一生青春」で知られる実力派で、繊細なブレンド技術と高い発酵管理能力を活かし、多様な産地の米を調和させる難題に挑みます。精米歩合は47%と、都道府県の数にちなみ、大吟醸酒としての品質を追求しています。 出来上がった「絆舞」は、大吟醸、純米大吟醸、生酒、貴醸酒の4種類が予定されており、500ml瓶で約8,000本の出荷を見込んでいます。発売は11月26日~27日に東京で開催される「よい仕事おこしフェア」でのお披露目を経て、全国の酒販店などで順次販売される予定です。売上の一部は被災地支援や地域復興のために寄付される仕組みで、飲むことで支援の輪が広がる一本として注目を集めています。 「絆舞」の最大の特徴は、単なる地域コラボレーションにとどまらず、全国を結ぶ象徴的な取り組みである点です。各都道府県から集められる米は、それぞれ気候や風土、育て方が異なります。粒の大きさや水分量もさまざまで、ひとつの仕込みタンクにまとめるには高度な調整が求められます。それでもあえて“混ぜる”ことに挑むのは、地域の個性を一つにまとめ、支え合う日本全体の姿を映し出したいという想いからです。 このプロジェクトは、震災から十数年が経過した今でも「忘れない」というメッセージを発信し続けています。仕込みの際には、各地の生産者の思いが書かれた札が持ち寄られ、酒米とともにタンクへと投入されるという演出も行われました。人と人、地域と地域の絆を象徴する儀式として、多くの参加者の心を打ちました。 「絆舞」は、単なる日本酒ではなく、全国の支援と希望を一つに醸した“祈りの酒”ともいえます。被災地支援から始まったこの試みは、今や日本全体を結ぶ文化プロジェクトへと成長しました。地域の力を束ね、未来へと舞い上がるその姿は、日本酒がいまなお「人をつなぐ文化」であることを雄弁に語っています。
news.bish300.com
美酒三百杯
@bish300.bsky.social
· 15d
白鶴、「HAKUTSURU SAKE CRAFT No.12」発売 ― 大手酒造が挑む“小ロット時代”の象徴に
白鶴酒造株式会社(神戸市)は、同社のマイクロブルワリー「HAKUTSURU SAKE CRAFT」で醸造した新作酒「HAKUTSURU SAKE CRAFT No.12」を10月4日より白鶴酒造資料館で数量限定(219本)販売しました。大手酒造が自社内であえて小ロットの実験的な酒造りを行う試みとして、業界関係者の注目を集めています。 「HAKUTSURU SAKE CRAFT」は、2024年に始動した白鶴の小規模醸造プロジェクトです。酒造資料館の一角に設けられたガラス張りのミニ蔵で、来場者が発酵や搾りなどの工程を間近に見ることができます。従来の大量生産では試みづらい、酵母や発酵条件の違いによる新たな香味表現に挑む場として設計されました。 今回の「No.12」は、ワイン酵母と日本酒酵母を掛け合わせた白鶴独自の改良酵母(Hi-EtCap434、Hi-TRP475)を用い、マスカットのような果実香と穏やかな酸味を特徴とする純米酒。オリジナル酒米「白鶴錦」を100%使用し、精米歩合50%、アルコール度数12%。価格は720mlで税込6,600円と高価格帯に位置づけられています。 大手が小さく造る意味 大手酒造の主戦場はこれまで、安定した品質と供給量を求められる全国流通市場でした。しかし、消費者の嗜好が多様化し、特定の地域やスタイル、香味個性を求める声が高まる中で、「一つの味で全国をカバーする」時代は過ぎつつあります。 白鶴がマイクロブルワリーを立ち上げた背景には、そうした変化への対応力を磨く意図がうかがえます。大量生産のノウハウを持つ大手こそ、小規模で柔軟な開発力を内包する必要がある――「HAKUTSURU SAKE CRAFT」は、その象徴的な一歩といえます。 業界では近年、月桂冠や宝酒造など他の大手メーカーも限定醸造やコラボ製品を相次いで展開しており、かつて“実験的な挑戦”が地酒蔵の専売特許だった時代から、明確な潮流の変化が見て取れます。 多様性がもたらす広がりと課題 今回の「No.12」は、香りと味わいの新境地を示すだけでなく、日本酒の「多様性」を正面から捉える試みでもあります。マスカットや白ワインを思わせる酸味の効いた味わいは、従来の清酒とは異なる層――特に若年層やワインユーザーを意識したアプローチとも言えます。 日本酒市場は人口減少と嗜好の分散によって縮小傾向にありますが、同時に「クラフト日本酒」「低アルコール」「ボタニカル日本酒」など、新しいカテゴリが次々と登場。多様性はもはや一時的な流行ではなく、業界の生存戦略として無視できないものになっています。 白鶴のような大手がその多様化を自らの手で体現することは、業界にとって大きな意味を持ちます。品質管理力や資本力を備えた企業が、小規模ながら挑戦的な製品を市場に出すことで、消費者側も「新しい日本酒」への関心を高めやすくなるからです。 “変化に応える軽さ”こそ、次代の鍵 今回のプロジェクトで注目すべきは、白鶴が自社の巨大生産体制の一角に“軽やかな醸造部門”を組み込んだ点です。変化を恐れず、企画から醸造、販売まで短期間で回せる仕組みを作ったことが、従来の大手モデルとの最大の違いといえます。 市場の動きが早まる中、変化に対応できる「軽快さ」は、日本酒業界全体の課題です。地方蔵では柔軟な発想が強みとなる一方、大手は組織の大きさゆえに動きが鈍くなりがちでした。白鶴の挑戦は、その構造的課題を突破する試みとして注目されます。 「HAKUTSURU SAKE CRAFT No.12」は、単なる新商品ではなく、大手酒造が自ら“変化の装置”を内製化した象徴的なプロジェクトです。日本酒の多様性を受け止め、実験的な小ロット生産を通じて次代の味を探る姿勢は、今後の業界に新しい風を吹き込むでしょう。
news.bish300.com
美酒三百杯
@bish300.bsky.social
· 16d
超硬水と超軟水で醸す日本酒セット『浅間嶽 阿吽』誕生——“水の個性”を味わう新たな挑戦
10月11日土曜日、長野県小諸市の酒蔵「大塚酒造株式会社」 が、超硬水と超軟水という対極の水質で醸した日本酒セット『浅間嶽 阿吽』の予約販売を、クラウドファンディング方式で開始すると発表しました。水という要素を対比させたコンセプトを掲げる日本酒としては、非常に異例の試みといえます。 水の違いを打ち出す意義と背景 日本酒の約八割を占める仕込み水。多くの酒造は、水の清らかさ、湧水地、軟水・硬水の良さなどを宣伝文句として掲げています。しかし、それはあくまで「この水は優れている」という訴求が中心であり、異なる水を意図的に使い分け、その違いを飲み手に体験させる商品は極めて少ないのが現実です。 大塚酒造が今回のプロジェクトで明確に打ち出したのは、「超硬水での酒」と「超軟水での酒」という対照ペア。双方とも同じ原料米、同じ精米歩合、同じ酵母、同じ酒造という前提ながら、仕込み水を変えるだけでどう変化するかを飲み比べられるという設計になっています。これは、水質を実験的に可視化するような商品とも言えるでしょう。 小諸市は、浅間山を含む地域が長年かけてろ過を続けた地層を通して湧き出る水により、超硬水から超軟水までバリエーションある湧水群 を擁している地域とされています。その恵まれた水資源を、「飲み比べ」という体験型商品に昇華させるという点で、このプロジェクトは、水そのものを“商品軸”に据える野心的なものです。 二水源使いの異例さ 酒造りにおいて最も安定を求められるもののひとつが、仕込み水の品質と供給体制です。多くの酒造は、一つの水源に依拠して年間を通じて安定した条件を確保し、発酵プロセスを再現可能にすることを重視します。異なる水を使うということは、発酵速度、温度管理、酵母の挙動など多くの変数が増え、醸造管理が複雑になります。 その点を理解したうえで、大塚酒造はあえて「二つの水源」を使う道を選びました。浅間山近傍の硬度の高い伏流水(通常の「浅間嶽」ブランドでも用いられてきた水源)を「超硬水」側に採用し、また別の軟水寄りの湧水を「超軟水」側に据えることで、水質そのものの差異を明示的に表現しようという意図です。 このように、醸造変数を敢えて揺らす構造を採る蔵は極めて限定されており、技術と胆力が求められる挑戦とも言えます。中には、仕込み水をアッサンブラージュする先駆的取り組みを行っている市野屋(長野県大町市)のような酒造もありますが、「対比構造」による今回のような商品化は、極めて珍しいと言えます。 今回、「水の違いで飲み比べる」商品が登場したことは、日本酒の価値観を揺さぶる可能性があります。これまで「この水がいい」「この水源が清らかだ」という抽象的な訴求はありましたが、水質の違いを飲み手に体感させるフェーズには至っていなかったからです。 これはまた、地方酒蔵や水資源を抱える地域にとって、“水をストーリー資源化する”手法として参考になるモデルになり得ます。水源保全・管理といったインフラ課題を抱える地域こそ、水の魅力を可視化できれば、観光や地域振興と結びつけやすくなるでしょう。 また、醸造技術の面でも、異なる水質に対応する酒造の醸造ノウハウが蓄積されれば、新たなスタイルの日本酒づくりへの展開も期待できます。たとえば、今後「三種水飲み比べ」「地域複数水源ミックス酒」などの拡張も考えられます。こうなると、日本酒を通じてさまざまなコラボが促進されるかもしれません。 ただし、リスクもあります。温度管理、発酵進行の差異、酵母ストレスなど技術的困難に直面する可能性は高く、計画通りの熟成安定性を得られないケースも想定されます。加えて、飲み手に“水の違い”を明確に感じてもらうストーリーテリングと解説が不可欠で、マーケティングの力も問われます。 大塚酒造が手がける『浅間嶽 阿吽』は、水を味わいの主役へと昇華させた挑戦です。クラウドファンディングという形式も、単なる販路ではなく、地域と飲み手をつなぐコミュニケーション手段として機能しようとしています。 水という目に見えにくい要素を、飲み比べという体験に変えるこの試みが成功すれば、日本酒産業の価値観を刷新する起点となるかもしれません。飲む人が「この水はこういう風に効いているのだな」と感じられる対話型の酒。それが『浅間嶽 阿吽』という物語なのです。 ▶ 小諸の水源から生まれた奇跡 超硬水と超軟水で醸す日本酒セット『浅間嶽 阿吽』
news.bish300.com
美酒三百杯
@bish300.bsky.social
· 17d
映画『種まく旅人~醪のささやき~』が公開 情報化時代に見直される“ものづくり”の原点
淡路島の老舗・千年一酒造が舞台に 2025年10月10日、映画『種まく旅人~醪(もろみ)のささやき~』が全国で公開されました。日本の第一次産業をテーマにした人気シリーズ「種まく旅人」の第5作となる本作は、兵庫県淡路島を舞台に、日本酒づくりに携わる人々の情熱と苦悩、そして未来への希望を描いています。 主人公は農林水産省で働く官僚・神崎理恵(菊川怜)です。理恵は酒造業の現状を調査するため、淡路島の老舗酒蔵「千年一酒造」を訪れます。蔵では、伝統を守ろうとする蔵元・松元恒雄(升毅)と、時代の変化に合わせた酒づくりを模索する息子・孝之(金子隼也)が対立しながらも、理恵の存在を通じて少しずつ歩み寄っていきます。若手蔵人の夏美(清水くるみ)らも加わり、後継者問題や地域再生の課題など、現代の酒造業が直面する現実が丁寧に描かれています。 本作の重要な舞台となる千年一酒造は、淡路島に実在する明治創業の老舗蔵です。淡路島産の米と湧水を使い、今なお手づくりにこだわった酒造りを続けています。映画では実際の蔵で撮影が行われ、蒸し米の香り、醪のゆらめき、木桶の音など、五感に訴える映像が印象的に映し出されています。主演の菊川怜さんは「現場の空気そのものが物語を語ってくれるようでした」とコメントし、リアリティを大切にした撮影を振り返っています。 近年、情報化が進み、AIやデジタル技術が日常に浸透する一方で、土や水、人の手が生み出す“ものづくり”の価値が改めて注目されています。かつては時代遅れと見なされ、若者が離れていった第一次産業が、今では「かっこいい仕事」として再評価されつつあります。SNSや動画配信などを通じて、酒造りや農業の現場がリアルに発信され、職人たちの姿が憧れの対象となる時代になりました。 『醪のささやき』は、まさにそうした時代の転換を象徴する作品です。日本酒という伝統産業の中で、デジタルでは再現できない人の感性や手仕事の尊さを見つめ直しています。理恵が蔵人たちと心を通わせる過程は、効率やデータでは測れない“人のぬくもり”を描き出しており、観客に深い余韻を残します。 淡路市では映画公開に合わせて特別上映会が予定されており、千年一酒造にも見学希望が増えているといいます。蔵元の松元氏は「映画をきっかけに、若い世代にも酒造りの魅力を知ってもらいたい」と語り、地域全体で作品を支えています。 映画は107分のヒューマンドラマとして構成され、淡路島の美しい風景とともに、伝統産業が現代に生き続ける理由を静かに問いかけます。第一次産業への回帰が叫ばれる今、忘れかけていた“手でつくることの意味”を思い出させてくれる作品です。 『種まく旅人~醪のささやき~』は、日本酒という一滴に込められた人々の想いを通して、変化の時代を生きるすべての人に、「本当の豊かさとは何か」を問いかけます。その答えを探す旅が、今、静かに始まったのです。
news.bish300.com
美酒三百杯
@bish300.bsky.social
· 18d
インドネシア商社が高知を訪問~甘口日本酒で新市場開拓の兆し
インドネシアの食品輸入商社「リブラフードサービス社」が、10月7日から9日にかけて高知県内の酒蔵を訪問しました。訪問の目的は、日本酒の輸出に向けた具体的な協議や商品選定で、今後の東南アジア市場における日本酒展開を見据えた動きとみられます。 富裕層を中心に広がる「甘口日本酒」人気 近年、インドネシアでは日本酒への関心が高まり、富裕層や都市部のレストランを中心に“ちょっとした日本酒ブーム”が起きています。人口2億7000万人を誇る同国は、イスラム教徒が多数を占めるため、飲酒が文化的に制限されている一方で、非イスラム層や外国人駐在員などを含めると約5000万人規模の飲酒市場が存在するとされています。これは東南アジアの中でも非常に大きな潜在需要といえます。 その中で特徴的なのが、インドネシアの食文化に合った“甘口嗜好”です。現地では甘味の強い料理が多く、これに寄り添う形で、やや甘口の日本酒が好まれる傾向にあります。これまで辛口で知られてきた日本酒の中でも、フルーティーで柔らかい甘みを持つタイプが人気を集めています。 「CEL-24酵母」がもたらした新しい味わい 高知県の日本酒といえば、長らく「土佐鶴」や「司牡丹」に代表されるようなキリッとした辛口が主流でした。しかし、2013年に高知県工業技術センターが開発した酵母「CEL-24」の登場により、状況は一変しました。この酵母を使うことで、リンゴや南国フルーツを思わせる華やかな香りと、独特のフルーティーな甘みを持つ酒が誕生し、全国的に注目を浴びています。今回、リブラフードサービス社が高知を訪問した背景にも、この「CEL-24」系統の酒がインドネシア市場で受け入れられる可能性を見据えた狙いがあるとみられます。 課題と可能性 一方で、輸出には課題もあります。日本酒は温度管理が品質を大きく左右する繊細な酒です。インドネシアのような高温多湿な気候では、輸送中や保管中の品質維持が難しく、現地の物流体制や保冷輸送の確立が重要になります。また、インドネシア国内でのアルコール販売に関する規制も複雑で、宗教的配慮を踏まえた販売戦略が求められます。現在、流通している日本酒は高価格帯のものが中心で、一般市場にはまだ十分に浸透していません。 それでも、今回のように現地商社が日本の酒蔵を直接訪問するケースが増えていることは、海外市場の広がりを象徴する動きといえます。特に東南アジアでは、日本食レストランの増加に伴い、日本酒を「料理と楽しむ文化」として紹介する動きが活発化しています。甘口の酒が人気という傾向は、高知の新しい酒質との親和性が高く、今後、同県がインドネシア市場で存在感を高める可能性もあります。 日本酒業界にとって、インドネシアは決して容易な市場ではありません。しかし、5000万人という飲酒可能人口を抱える巨大な潜在市場であり、品質管理や現地の嗜好に合わせた酒づくりが進めば、新たな成長の柱となることも期待されます。今回の商談は、そうした未来に向けた第一歩として、大きな意味を持っているといえるでしょう。
news.bish300.com
美酒三百杯
@bish300.bsky.social
· 19d
福千歳、「蕎麦冷酒」を発売~「蕎麦の日」に合わせた挑戦が示す日本酒の新潮流
山廃仕込みで知られる福井の老舗酒蔵・福千歳(田嶋酒造株式会社)は、10月8日の「蕎麦の日」に合わせて新商品『蕎麦冷酒』を発売しました。古来より「蕎麦前」という言葉に象徴されるように、日本酒と蕎麦は深い縁で結ばれていますが、蔵元が正面から“蕎麦専用”をうたった酒を出すのは極めて珍しい試みです。季節の節目と食文化を結びつけたこの商品は、今後の日本酒市場における新しい方向性を示すものとして注目されています。 “蕎麦の日”に合わせた発売の意図 10月8日は日本麺類業団体連合会などが制定した「蕎麦の日」です。新そばの時期を前に、全国各地で蕎麦イベントやキャンペーンが行われる日でもあります。福千歳がこの日に合わせて商品を投入したのは、単なる話題作りではなく、「日本酒を食文化の一部として再定義する」という明確な狙いがありました。 同蔵はこれまでも「山廃仕込み」という伝統技法を軸に、食との相性を追求してきました。今回の『蕎麦冷酒』は、まさにその延長線上にあるものです。蕎麦の香りやのど越しを損なわず、つゆの出汁やかえしの塩味にも寄り添うよう、キレのある辛口で酸のバランスを整えた仕上がりになっているといいます。冷やして飲むことで山廃由来の複雑な旨味が引き締まり、蕎麦との調和を生み出す設計です。 「蕎麦専用酒」という新カテゴリーの可能性 これまでにも「牡蠣専用」「寿司専用」「チーズ専用」など、特定の料理と合わせることを目的にした日本酒はありました。しかし「蕎麦専用酒」として一般流通する商品はほとんど前例がありません。日本酒の多様化が進むなかで、蕎麦という和食の代表格に焦点を当てた点は業界的にも意味があります。 蕎麦は香りや喉ごしといった繊細な感覚を楽しむ料理であり、これに寄り添う酒には軽やかさと輪郭の明確さが求められます。福千歳の山廃仕込みはその条件を満たすだけでなく、冷やでも燗でも表情が変わるという柔軟性を持つため、食中酒としての可能性を広げています。今回の発売が評価されれば、今後は「天ぷら専用」「蕎麦屋限定」など、料理と一体化した酒造りがさらに加速する可能性があります。 食文化コラボが拓く新市場 この数年、日本酒業界では「季節」「食」「地域」とのコラボレーションを重視する動きが顕著です。酒を単体で楽しむのではなく、食体験や文化の文脈で価値を高める方向です。福千歳が「蕎麦の日」という明確な記念日に合わせて商品を出したのは、まさにその象徴的な一例といえるでしょう。 特に外食業界では、蕎麦屋が地酒やこだわりの日本酒を揃える傾向が強まっています。『蕎麦冷酒』の登場は、飲食店側にとっても「メニューの物語性」を高める格好の題材となります。たとえば「新そばに合わせる冷酒」という季節提案は、SNS時代の発信にも適しており、販促効果も見込まれます。 伝統と新しさを融合した挑戦 福千歳は創業150年を超える蔵ですが、挑戦的な姿勢でも知られています。山廃仕込みという古典技法を基盤に置きつつ、新しいテーマを打ち出す姿勢は、地方蔵が生き残るための一つの方向性を示しています。『蕎麦冷酒』のラベルには葛飾北斎の意匠が使われ、女将の直筆文字をあしらうなど、伝統美と現代感覚の融合も印象的です。 「蕎麦の日」に合わせて発売されたこの一本は、単なる季節限定酒ではなく、“日本酒を文化で味わう時代”の到来を告げる試金石といえるでしょう。今後、他蔵が同様の「食文化特化型」商品を展開していく可能性も高く、日本酒市場の新しい波を呼び起こすかもしれません。
news.bish300.com
美酒三百杯
@bish300.bsky.social
· 20d
月桂冠「炭酸割りでおいしい純米酒」が通年販売へ 1.8Lパックで広がる“酒ハイ文化”の定着
月桂冠株式会社(京都市伏見区)が今年3月に発売した「炭酸割りでおいしい純米酒」がこの秋、通年販売となりました。発売当初は春から夏にかけての期間限定商品という設定でしたが、想定を上回る販売実績とリピート購入の多さを受け、年間を通じて提供されることとなったのです。日本酒を炭酸で割る“酒ハイ(SAKE HIGH)”が、いよいよ一過性のブームを超え、飲酒文化として根づきつつあることを示す動きです。 炭酸で引き立つ旨み 家庭で手軽に“日本酒ハイボール” 「炭酸割りでおいしい純米酒」は、炭酸で割ることを前提に設計された純米酒です。米の旨みや香りをしっかり残しながら、炭酸を加えることで軽やかで爽快な口当たりを実現しています。アルコール度数はやや低めで、氷を入れたグラスに注ぎ、炭酸水で1:1に割ると、刺激のあるすっきりとした“日本酒ハイボール”が完成します。特に夏場は冷たく爽やかに、寒くなれば柚子や生姜を加えるなど、季節に合わせてアレンジを楽しむこともできます。 同商品は1.8リットルの紙パックで販売されており、軽量で冷蔵庫にも収まりやすく、保存や注ぎやすさに優れた形態です。パック酒というと、「晩酌用にコスパ重視」といったイメージがありましたが、この商品は「自由にアレンジできるベース酒」としての新しい価値を提案しています。炭酸水やレモン、ハーブなどを加えた自分好みの味付けを楽しめ、自宅での「おうち酒ハイ」を楽しむユーザーが増えているようです。 “酒ハイ”がファッションから文化へ “酒ハイ”という飲み方は、焼酎ハイボールやウイスキーハイボールの流行に続く形で広まりました。当初は「SNS映えする新しい日本酒の飲み方」として注目されていましたが、現在ではすっかり定番化。アルコール度数を自分で調整できること、炭酸による飲みやすさ、料理との相性の良さなどが支持され、幅広い世代に浸透しています。 そのような中、1.8Lパックの当商品が通年商品に移行したということは、酒ハイが一時的なファッションではなく、日常の飲酒文化として根づいた証ともいえます。 日本酒の未来を変える“日常化”の流れ これまで日本酒は“特別な日に飲む酒”という印象が強くありましたが、近年はスパークリング日本酒や氷専用酒など、よりカジュアルな方向へと進化しています。月桂冠の「炭酸割りでおいしい純米酒」は、その流れの中心にある商品です。伝統的な清酒の枠を守りつつ、現代のライフスタイルに合わせた提案を行うことで、新しい層を取り込み、日本酒の裾野を広げています。 “酒ハイ”がファッションを超え、文化として定着する今、1.8Lパックの純米酒を手に取る姿は、もはや「庶民的」ではなく「時代のスタンダード」といえるかもしれません。炭酸割りというシンプルな発想が、古くて新しい日本酒の魅力を再発見させているのです。
news.bish300.com
美酒三百杯
@bish300.bsky.social
· 21d
SHUWAN、意匠登録を取得~五感に響く“体験型酒器”の誕生
酒器「SHUWAN」を展開する株式会社シュワン(福岡市)は、同ブランドの酒器デザインが日本国特許庁より意匠登録を正式に認定されたと発表しました。日本酒業界では、酒そのものの多様化が進む一方で、それを受け止める酒器の進化にも注目が集まっています。今回の登録は、SHUWANが単なるデザイン性の高い器ではなく、“体験としての酒器”を志向していることを象徴する出来事です。 「香り」中心の酒器から“五感”に響く体験へ ここ数年、日本酒専用グラスの開発は「香り」を最大限に引き出すことに焦点が当てられてきました。リーデルや木本硝子、薫香の拡散性を高めるチューリップ型の酒器などがその代表です。これらは、ワイングラスの文脈を日本酒に応用した“香りの可視化”を目的としていました。 しかし、SHUWANが提示したのは、その一歩先を行く「五感に訴える酒器」という新たな方向性です。形状は、口縁から胴張り部にかけて柔らかく広がり、高台に向かって絞り込む流線形。上から見ると円形と楕円形が交錯する独特のフォルムをもち、手に取った瞬間の“触感”や“重量バランス”までもが設計に織り込まれています。 この曲線がもたらす香りの対流や温度変化は科学的にも検証されており、ガスクロマトグラフィー分析によって、従来の猪口やワイングラスよりも香気成分の安定性と拡散性が優れていることが報告されています。香りだけでなく、視覚・触覚・温度感覚までを統合的に演出する――まさに“飲む”という動作そのものを体験化した酒器といえます。 今回の意匠登録は、こうしたSHUWAN独自のフォルムと機能性が「創作性と新規性をもつもの」として公的に認められたことを意味します。外観の模倣を防ぎ、ブランドの知的財産を守る基盤を得たことに加え、今後の製品展開やライセンス戦略の強力な支えにもなります。酒器が「工芸」から「デザイン知財」へと昇華する流れを示した点でも意義深いといえるでしょう。 みむろ杉とのコラボなどに見る新しい酒器の未来 SHUWANはまた、奈良の今西酒造が手がける人気ブランド「みむろ杉」とのコラボレーションを発表しています。これは、酒器ブランドが単に器を提供するのではなく、“酒そのものの世界観を共に構築する”という新しいアプローチです。香りや味わいを受け止める「器」ではなく、酒造と共に“体験の設計者”として関わる姿勢は、これまでの酒器業界には見られなかったものです。みむろ杉の透明感ある旨味と、SHUWANの柔らかな香気表現は、共振するようにして飲み手の感覚を刺激します。 酒器がもたらす“新しい日本酒体験” 意匠登録によって保護された独創的デザイン、科学的裏付けを持つ香り設計、そして酒蔵との協働――SHUWANが描く未来は、日本酒を「味わう」から「感じる」文化へと進化させることにあります。 これまで香り中心に設計されてきた酒器の世界に、触れる、見る、聴く、香る、味わう――そのすべてを統合した体験価値を持ち込むことは、日本酒文化の拡張でもあります。 SHUWANの挑戦は、酒器という小さな器の中に、五感と知性、伝統と革新をどう共存させるかという、日本酒の未来を映す実験でもあるのです。
news.bish300.com
美酒三百杯
@bish300.bsky.social
· 22d
10月6日は仲秋の名月~酒と月のおはなし
月見の風習は、中国・唐の中秋節(陰暦8月15日)に由来します。奈良時代(8世紀)に遣唐使がもたらしたとされ、宮中行事として定着しました。最初は貴族たちが詩歌を詠み、音楽を奏でる雅な宴でした。そこでは酒も欠かせぬものであり、池に浮かぶ月を眺めながら、盃を交わしたと考えられています。 平安貴族の「観月の宴」 平安時代になると、この風習は宮廷文化の象徴となります。特に有名なのは、池のほとりで舟を浮かべて行う「舟遊び」。盃を水面に浮かべ、流れ着くまでに詩を詠む「曲水の宴」と同じ発想で、杯に映る月を飲むように見立てる「飲月」の美意識が生まれました。 紫式部や清少納言の随筆にも月見の情景が登場します。単なる宴ではなく、自然と一体化する精神行為として、月と酒は密接に結びついていたのです。 民間へと広がる江戸時代 江戸時代になると、月見は庶民にも広まりました。稲の収穫期にあたることから、収穫祭・豊穣祈願の意味が強くなります。農村では「芋名月」と呼ばれ、里芋・団子・栗・豆・すすきを供えて月を拝みました。月見団子は、稲穂に見立てたすすきとともに供えられ、実りへの感謝を象徴します。このときに飲まれるのが「月見酒」。 現代ではその伝統を受け継ぎ、前年の酒を秋まで熟成させた「秋あがり」や「ひやおろし」を楽しむのが定番となっています。 月見酒のしきたり・作法 月見酒は、月を眺めながらゆっくり酒を味わう行為です。盃に酒を注ぎ、その表面に月を映して飲むという作法がありました。これを「盃中の月」と呼び、古来から詩歌や茶の湯の題材にもなっています。飲むことで「月を体に取り込む」「月の気を受ける」とされ、吉兆の象徴でもありました。 なお、伝統的な月見の供え物には次のような意味があります。 【月見団子】満ちた月を象徴。通常15個を三方に盛る(十五夜にちなむ)。 【すすき】稲穂の代わり、神を招く依代(よりしろ)。 【里芋・栗・豆】秋の収穫への感謝。「芋名月」の名の由来。 【清酒】神々へのお供え。豊作祈願と感謝の象徴。 これらを縁側や窓辺、月の見える場所に供え、家族で月を眺めながら酒を酌み交わすのが伝統的な形です。 現代に生きる月見酒 近年は、酒蔵や観光地で「観月会」や「月見の宴」が復活しています。京都では、ライトアップされた夜空の下で日本酒を味わう催しが人気を集めています。また、酒造も「満月仕込み」や「月光」など、月をテーマにした限定酒を販売し、古の風習を現代の感性で再解釈しています。 デジタル時代になっても、月を眺めながら静かに盃を傾ける時間には、どこか懐かしい安らぎがあります。月見酒は、自然と人、神と生活をつなぐ文化的な儀礼として、今も日本人の心の中に息づいているのです。
news.bish300.com
美酒三百杯
@bish300.bsky.social
· 23d
ミラノ酒チャレンジ2025、マニフィカ賞を発表~国際舞台で光る日本酒の存在感
イタリア・ミラノで開催された国際日本酒コンペティション「ミラノ酒チャレンジ2025」の最高賞にあたる「マニフィカ賞」が、2025年9月28日に発表されました。マニフィカ賞は、各部門のプラチナ賞受賞酒の中からさらに突出した1本にのみ与えられる特別な称号であり、日本酒の国際的評価を象徴するものとして注目を集めています。 最高賞「マニフィカ賞」とは ミラノ酒チャレンジは2019年に始まり、ヨーロッパにおける最大規模の日本酒審査会として急速に存在感を高めてきました。その特徴は、単に酒質を競うだけでなく、「テイスティング」「フードペアリング」「デザイン」という三つの視点から総合的に評価を行う点にあります。これにより、世界市場で選ばれるために必要な味わいの普遍性、料理との親和性、そして商品としての魅力が同時に審査されます。 その中でマニフィカ賞は、プラチナ賞の中からさらに「その年を代表する酒」として選ばれる特別賞です。まさに“唯一無二の一本”として認められるこの賞は、世界における日本酒の評価軸を示す存在として年々注目を増しています。 2025年のマニフィカ賞受賞結果 本醸造部門 愛宕の松 宮城県限定本醸造 株式会社新澤醸造店 スパークリング部門 水芭蕉 雪ほたか 永井酒造株式会社 にごり部門 博多練酒 株式会社若竹屋酒造場 特殊製造部門 一ノ蔵 Madena 株式会社一ノ蔵 吟醸部門 金鯱山田錦 盛田金しゃち酒造株式会社 純米吟醸部門 SETOICHI 手の鳴る方へ 株式会社瀬戸酒造店 純米部門 超特撰白雪江戸元禄の酒 小西酒造株式会社 普通酒部門 白雪樽酒カップ 小西酒造株式会社 純米大吟醸部門 楯野川 純米大吟醸 十八 楯の川酒造株式会社 大吟醸部門 夜明け前 大吟醸 株式会社小野酒造店 古酒部門 夢乃寒梅 古酒 2000年 鶴見酒造株式会社 今年は、宮城県の新澤醸造店「愛宕の松 宮城県限定本醸造」や、長野県の小野酒造店「夜明け前 大吟醸」などがマニフィカ賞に選ばれました。いずれも国内で確固たる評価を得てきた銘柄ですが、国際舞台での審査員からも高く支持され、料理との相性やデザイン面においても総合的に優れていると認められました。 特に「愛宕の松」は、本醸造というカテゴリーでありながら、飲みやすさと奥行きを兼ね備えた味わいが高評価となりました。「夜明け前」は大吟醸らしい華やかさと品格を備え、イタリア料理との相性でも群を抜いた結果を示しました。これらの結果は、カテゴリーの違いを超えて、日本酒の多様な魅力が国際的に認知されていることを物語っています。 日本酒業界への影響 ミラノ酒チャレンジは、審査結果をヨーロッパ市場に広く発信しており、受賞酒は現地での販路拡大やレストランでの採用につながるケースが増えています。特にワイン文化が根付いたイタリアにおいて、日本酒が「食と合わせて楽しむ酒」として浸透するきっかけとなっており、輸出の拡大に直結する重要な場となっています。 また、デザイン審査の存在は、海外消費者の感覚に合う商品開発を促す契機となっています。伝統を重んじつつも国際市場を意識した新しいラベルやボトルが登場することで、日本酒のイメージ刷新にもつながっています。 さらに、フードペアリング部門ではパルミジャーノ・レッジャーノやサンダニエーレ生ハムといったイタリアの食材との相性が審査されるなど、現地の食文化との接点が意識されている点も特徴です。これにより、日本酒が和食専用にとどまらず、多様な料理に合わせられる酒として認知されつつあります。 2025年のマニフィカ賞は、日本酒が世界の舞台で改めて評価され、その可能性が広がっていることを示す象徴的な出来事となりました。受賞した蔵元にとっては名誉であると同時に、海外市場に踏み出す強力な追い風となるでしょう。 ミラノ酒チャレンジが持つ「国際基準で日本酒を評価する」という仕組みは、今後ますます業界に影響を与え、日本酒の国際化を後押ししていくと考えられます。今年選ばれたマニフィカ賞の酒が、どのように世界の食卓へ広がっていくのか、今後の展開が注目されます。
news.bish300.com
美酒三百杯
@bish300.bsky.social
· 24d
タカラ「料理のための清酒」新発売にみる、料理酒が切り開く日本酒の新たな可能性
宝酒造は9月23日、料理酒ブランド「料理のための清酒」から期間限定商品<旨にごり>を発売しました。にごりならではの旨味を取り入れ、煮物や炒め物にコクを加えることを狙った一品です。これまで「万能調味料」としての側面が強かった料理酒に、日本酒的なバリエーションを持ち込む試みといえます。 料理酒市場の現状と位置づけ 全国の料理酒市場は年間およそ150億円規模と推定されます。これは日本酒全体のおよそ5%にとどまり、本みりん市場(約350〜400億円)の40%程度の大きさです。醤油の国内市場が約3,000億円、さらに世界市場では10兆円規模に拡大していることを踏まえると、料理酒はまだ小さな市場といえます。しかし、その小ささは裏返せば成長余地の大きさでもあります。 日本酒の多様性を料理に活かす挑戦 料理酒はアルコールによって臭みを消し、米由来の旨味で料理に深みを加えるという特性を持ちます。飲用の日本酒が停滞感を抱える中でも、料理シーンに寄り添うことで新たな需要を開拓できる可能性があります。今回の<旨にごり>は「にごり酒」という日本酒のカテゴリーを調味料に応用するもので、料理酒の幅を広げる試みです。吟醸やスパークリングなど、日本酒の多様なスタイルが将来的に料理酒に展開される道筋を示しているとも言えるでしょう。 近年は減塩や健康志向の高まりを背景に、無塩タイプや低塩タイプの料理酒が広がっています。調味料としての役割に加えて、健康的で繊細な味わいを提供できる点は、消費者のニーズに合致します。宝酒造の新商品もまた、単なる風味補助にとどまらず、こうした流れを後押しする存在になることが期待されます。 しょうゆが世界市場で存在感を放つように、料理酒もまた「発酵による旨味」という普遍的な価値を軸に、海外市場への展開余地を持っています。和食がユネスコ無形文化遺産に登録され、世界中で親しまれている今こそ、料理酒が「日本酒のもう一つの可能性」として注目される機会が訪れるかもしれません。 宝酒造の「料理のための清酒」<旨にごり>は、にごりの旨味を活かした新しい提案です。規模はまだ小さいものの、料理酒は日本酒文化の多様性を家庭の台所から広げていく存在として期待されます。今回の新商品は、その未来に向けた重要な布石といえるでしょう。
news.bish300.com