ひるねりんね
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ひるねりんね
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誰も知らない夢の国。ひるねりんねへようこそ。
映像面の話も少しだけ。新劇場版から入った自分には今までピンときていなかったが、本作がいかに画期的であったかというのが少し分かった気がする。美術設定とプロップの描き込みや貼り込みが細密で、「本物らしさ」がすごい。そして使徒やエヴァを始めとした非人間キャラクターのデザインがもアイコニックで中二心をくすぐる。しかもそうした絵の魅力をさりげなく出してくるので、非常に贅沢なアニメだ。その一方で、止め絵でじっくり見せる勇気も持ち合わせている。『ハイジ』や『ガンダム』といった作品の解説をここ数年で読む機会が増え、そこで得た知識や考え方をベースに『エヴァ』を観ているのだが、予想以上の収穫があった。
October 31, 2025 at 4:47 PM
『うちがキングダム』の感想。ジャンルとしてはホームドラマ・ホームコメディだと思う。
その中で主人公であるミキのキャラクター造形が良い。騒動の渦中の人間とは思えないほど冷静で頭が良く、しかし急接近した異性の少年に対してドギマギする思春期の感性も持ち合わせている。容姿も二次元的な美しさと三次元的な親しみやすさを内包していて、彼女が作品の中心にいることで読みやすさが段違い。
この微妙なニュアンスは映像化だと残せないだろうなぁ……という良さがある。社会風刺的なストーリーに対して、ポップな青春漫画の雰囲気を作画が与えており、漫画であることの強みを非常に感じる。
20代以上向けの漫画かな。
October 5, 2025 at 10:02 AM
自分も東京に来てそろそろ10年なので、東京ご当地映画としても非常に優れていてよかった。結界が破られると現実に破壊がもたらされるという設定も良く機能していて、術師の死が描かれるまでは「なんとかもとに戻るかも」という希望を観客に持たせつつ、結界が溶けていく様子で絶望に叩き落とす手腕が巧み。ちょうど池袋で観たので、火の海になっている池袋を見るのはちょっと怖かった。一般人にはわからない戦いが陰でおこなわれていて、その結果として災害が起こるという設定は『すずめの戸締まり』にも通じる。『すずめ』を初めて観たときは「オタクっぽい設定だなぁ」と直感的に思ったが、これを煮詰めると『X』っぽくなるのだろう。
August 24, 2025 at 5:14 PM
この映画を観ていて一番気になるのは「封真、なんで敵になっちゃったの?」という点で、恐らく「親友同士の決闘」というシチュエーションが先行しているのだろう。神威が「なんでこんなことに……」と最後に泣くところは「本当にそうだよ!」と観ている側も変な意味で共感しちゃうので、もう少しうまくやってほしかった(と30年前の映画に言うのも野暮だが……)。東京タワーと滅びという同じモチーフを使いつつ、同時期の『カードキャプターさくら』があれだけ前向きな方向へ振り切れていたのは、裏側に『X』があったからなのかも?と思ったり。終始陰鬱で変な映画ではあるものの、見ごたえはすさまじい。
August 24, 2025 at 5:07 PM
⇒続)『前橋ウィッチーズ』もこの花田イズムの系譜にあると思うが、大きな違いは社会派視点を内包していることと、女性の生々しい生きづらさを明確に描写していること、の2点だろう。(キャラクターデザインも女性向け作品に通じる繊細さがあり(特に目元)、かなり意識してやっていることと思う。)
シリーズ構成/脚本の吉田恵里香の書きたいことがそこにあるのかなと推測しているが、そういった「今、視聴者に伝えたいこと」がハッキリ作品に出るのは、劇場オリジナル以外では昨今珍しいので、やはり貴重な作品だと思う。
商売的にそれがプラスになるかというと微妙……と思うが、脚本に強度のある作品の秀逸さを改めて感じた。
August 14, 2025 at 6:32 PM
⇒続)ここからは余談だが、2010年代後半に花田十輝が大ブレイクを果たし、女性チームの青春アニメのトレンドが出来上がったと思う。「エロを前面に出さない」「メンバー同士の熱い友情が描かれる(時として友情以上にも見える)」「泣いて叫ぶ」「走る」というあたりの要件が揃うと、花田イズムを感じる作品になりやすい。本作『前橋ウィッチーズ』でもたびたび「エモエモ」という語が出てくるが、端的に言うと「エモさ」がキーになってくるのだ。男性向けの美少女アニメの様式を守りつつ、儚さやスポ根っぽさをプラスすることで女性客の支持も獲得できるようにする……という優れたフォーマットだと思う。
August 14, 2025 at 6:20 PM
⇒続)ただ、この時点では本作がそこまで社会問題に踏み込む作品なのかが分かっていなかったので、はっきりとその線を踏み越えた回であり、「魔法」が効果的に使われているのもよかった。ユイナとチョコが一緒にアイスを食べる場面の美しさも、ベタな演出を恐れずに繰り出す堂々とした感じが好き。
キャラクターとしては、ファッション系インフルエンサーのマイが、容姿・内面ともに気に入った。同性の友人に対して重い感情を抱くキャラ……というある種のステレオタイプなヒロインではあるが、そのディテールにリアリティがあったと思う。「オシャ(おしゃれ)」を連発する本作において、真の意味でおしゃれだったのはマイだった。
August 14, 2025 at 6:13 PM
⇒続)『おおかみこどもの雨と雪』以降は(私自身は『おおかみこども』が最高傑作だと思っているが)、『時かけ』『サマーウォーズ』のような強い普遍性や他の作品への影響力がなかなか感じられず、むしろ物語展開の大味さやセリフ回しの切れ味の鈍さが目立つ傾向にある。日本有数のヒットメーカーであることは疑いないが、なにかもうひとつ弾けた作品を観てみたい。『果てしなきスカーレット』が細田守の強みを生かした作品になっていることを祈るばかりである。(終わり)
August 1, 2025 at 5:27 PM
⇒続)『サマーウォーズ』のほうは意外にフォロワー作がはっきりしない。絶対にいるはずだが、一目で分かるような作品は少ない。強いて言うなら『ぼくらの7日間戦争』(2019年)はそうかもしれない。『サマーウォーズ』の功績は、『デジモンアドベンチャー ぼくらのウォーゲーム!』の要素を自ら再利用していること。スタイリッシュに描かれたインターネット空間、日本の片隅から世界の危機を救うギャップ、そのために用意される数々のガジェット……『ぼくらのウォーゲーム!』に全部あったものだが、誰かに説明するときは『サマーウォーズ』の方が通りが良い。ある意味、『ぼくらのウォーゲーム!』を再ブレイクさせたのだ。⇒続
August 1, 2025 at 5:27 PM
⇒続)さて、現在の地点から振り返ると、細田の手がけた中でも『時をかける少女』と『サマーウォーズ』は、各所に与えた影響が大きい2作だろう。
『時かけ』は「すこし不思議×恋愛」の組み合わせを発見し、劇場アニメのみならず小説や漫画などの分野にもフォロワー作品を生み出した。仕事柄(小説の編集者をしている)、青春小説の審査をしていると、必ずタイムリープ×恋愛ものを読むことになる。『君の名は。』の影響も当然あるが、男女入れ替わりというギミックを避けると、どうしても『時かけ』に近似する傾向にある。劇場アニメでは、クライマックスでティーンの人物が走り出したら、まず『時かけ』の影響だろう。⇒続
August 1, 2025 at 5:26 PM
⇒続)国内の映画会社では最大手、東宝の配給による『おおかみこどもの雨と雪』(2012年)では興行収入42.2億円の大ジャンプ。作品の内容は『サマーウォーズ』と比べても一段と趣味性がなくなり、大手配給会社が得意とするような“家族向け”映画を志向していくこととなる。次作以降は、興行面での山や谷や新海誠の大ブレイクなど挟みつつも、2025年現在、国内ではヒットメーカーとして、海外では作家性の強い監督としての地位を確立した、と言える。特に、『君の名は。』以降の劇場アニメの爆発的増加の中で、実力あるスタッフの意欲作がことごとく苦戦している状況では、細田作品の堅実な興行は際立って見える。⇒続
August 1, 2025 at 5:26 PM
⇒続)細田がフリーに転向した1作目、『時をかける少女』(2006年)もロングランの達成やファンからの高評価を集めたが、興行収入は2.6億円。TV放送やレンタルビデオで知名度を広げていくという状況にあった。
そんな中、2009年の『サマーウォーズ』は、原作のないオリジナル作品ながら興行収入16.5億円のスマッシュヒット。日本テレビの後押しがよかったのか、同時期公開の『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』の波に乗れたからなのか、『時かけ』からのファンが想定上に多かったのか……理由はいくつも挙げられるが、ハッキリしているのは、「売れる監督」としてアニメファン以外からも注目を集めたということだ。⇒続
August 1, 2025 at 5:25 PM
アニメの作り手に「映画コンプレックス」があって、それが日本のアニメ全体のクオリティを底上げしてきた……というのは周知の事実だが、まさにそのど真ん中にある作品だと思った。『オンリー・ユー』と『ビューティフル・ドリーマー』の間は文字通り1年しか空いていないので、押井守が急激に成長したというよりは、もともと持っていた映画的素養が結実した、ということだろう。現代は「内容は『オンリー・ユー』だが画面の作りは『ビューティフル・ドリーマー』」的な劇場アニメが多いので、「映画コンプレックス」が駆動力になっていた時代は終わったのかなと思う。
July 26, 2025 at 5:51 PM
トークショーで押井監督は「1作目は大きなテレビにしかならなかった。どうしてだろうと考えて作ったのが2作目」「映画というものは夢そのものだから、2作目は夢が題材」という旨のことを言っていて、実際に両作を観るとそれがよく分かる。夢や虚構という格調高いテーマを軸にすることで、作品の魅力がより大人びた方向に伸びていっている。そして、それを支えているのが画面の力だ。背景に色んなものを並べた密度の高い画面設計のおかげで、このシリアスなテーマを観客もしっかり受け取れるようになっている。そのうえで、しのぶが遭遇する風鈴のシーンなど、「夢」的なアイディアもばっちり決まっていて、とにかく面白い画面のつるべうちだ。
July 26, 2025 at 5:43 PM