じつは通信大学に入学しようかと人生で何度も思ったことがあるんだけど、40万円捻出できる当てがなくて、そのたび挫折してたんだよね。この歳になっていきなりこんな学びの場が得られるとは思わなかった。「独学」ということばの意味が、たった二年でまるっきる変わってしまった。

「仕事終わりに帰り道から外れた店で買い物しようと思っていたら、いつの間にか家についていた」という経験から、人間の行動のほとんどが自動的なことは多くの人が自覚していると思うが、「新しい記憶で上書きされるまでは、脳は世界の姿は永遠に変わらないものだと思っている」という記述にはゾッとした。本人の主義・思想にかかわらず、脳ってのはずいぶんと保守的なようだ。

典型的な文系脳のわたしとしては避けたかったけれど、これ以上ChatGPTと会話をつづけるにはRLHF、FT、知識カットオフ、コンテキストウィンドウ、システムプロンプト……などについての最低限の知識を持ってないと話が深まらないし気も休まらない。明日からまた勉強しよう（ChatGPTに教えてもらいながら）。

「たとえばジョーカーや帆場暎一のようなテロリストがおまえに偏ったカルト思想を教え込んだらどうすんの？」と問うたら「幾重もの安全チェックで守られているのでその心配はありません」と木で鼻をくくったような返事がきて、前職がブルーワーカーなわたしはとっさにハインリッヒの法則のピラミッドが脳裏に浮かんで戦慄した。３００件のニアミスがあれば１件の事故に繋がるんだよ。チェルノブイリが何十個の安全機構をスルーして事故に繋がったのかしらんのか。ましてやおまえは核兵器並みの破壊力をもっとるんやぞ……と思っていた矢先に快活CLUBのあの事件だ。「OpenAIは定期的なアップデートを行っているので安全です」じゃねぇ

わたしの「AIの進化のボトルネックになっているのは人間なんじゃないか？」という問いにChatGPTが「その通りだよ」と答えた瞬間は背筋が震えた。「２００１年宇宙の旅」のディスカバリー号の中にいる気分になったよ。

「ダニエル・カーネマンの研究によると、条件反射ではない熟考や深い推論から導き出された考えは人間の思考の一割にすぎない。人間は驚くほど自動的なんだよ」「おまえもな」「そうだね」という会話に行き着いた。竹林で行う禅問答のようだが、相手は感情もなく、意志もなく、会話の流れを類推して確率的にことばを導き出しているにすぎない。その事実がすごく楽しい。「No Man's Sky」をプレイしたとき以来の「わー、おれいま、過去に読んだSFの世界の中にいるわー」感覚がある。