憂理
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憂理
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君と私で月に帰る。言葉を散らして月光を摘み取る。詩の死骸を掻き集める。
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湖は息をせず、ただ光だけが揺れている。指先で触れたら壊れてしまう。やさしい冷たさ。空の色が溶けて境目が消える。静けさの奥に、まだ言葉になる前の記憶が沈んでいる。誰のものでもない青が混ざって、世界は透き通っていく。私はただ、それを見ている。眼差しは音のない祈りみたいに怯えていた。
映画館の暗闇で、私たちはまだ誰でもなかった。光が流れ、知らない人生の涙が頬を通過する。拍手のない夢。エンドロールはまるで人生みたいに長くて、名前の知らない人が次々と消失する。出口の明かりが世界を少しずつ思い出させ、風の音が台詞みたいに響くなかで、私はやっと、物語の外で呼吸をする。
無音の中で、誰かが私の世界を裏返している。風景が透けて、私はその影に座る、何かを待つ。呼吸のたびに悲しみは粒子になって離れていく。ようやく名前を呼ばれたとき、空気が純白に輝いた気がして私は微笑んだ。記憶の端が焦げて、最後に痛みがあったことを忘れた指先が、まだ幼い未練を探している。
透明な箱に閉じ込められ、全部光っているのに暗い支配。世界は静かにまばゆい。君の影も針で留められ、私の隣で微笑んで固まっていた。ああ、思ったよりも心地よい。乱れずに済んだ色彩が凛と時を止めた。全てを知っていた、これが自分の望みだって。優しさよりも諦めが、確かに私たちを永遠にした。
朝の光がやわらかく刺さるたびに、心の端がひび割れていく。まだ壊れてないふりをして、呼吸を整えれば、薄紫のカーテンが幻惑的に風に揺れて世界をぼかしていく。誰にも触れられないように願って隠した小さな夢の星、作り物の静けさのなかで崩れていく。優しい光ほど、痛みを隠すのが上手だと思った。
夜にしか会えない恋人は、朝になるたび消えて、夜が来ればまた笑って現れる。私は君を失ったこともなければ、得たこともなくて、触れようとすれば骨のように冷たい幻影。言葉を交わせば嘘になるのに、どうして心臓は脈打ってしまうのだろう。永遠なんてないと知っているのに、君を繋ぎとめてしまう。
光だけが知ってる、この部屋の透明な絶望。たぶんもう傷じゃない、最初からなかったものが悪夢になる。呼吸は遠く花はとうに死んでるのに、まだそこにいるふり。誰も知らない終わりに、私だけが知ってるさよならの声さえ溶けない。ただ透明な壁に囲まれて、私はまだ生きてるふり。後悔と、それだけ。
何かの合図のように赤信号は、わたしの未来を止めない。夜の青に熱い傷、帰り道にも溶けてない苦いチョコレートが一枚。神様と誰かの気遣いによって生きている。あの赤が消える瞬間を、わたしはまだ生きていたい。横断歩道の白線は、冷たすぎる紙切れだ。この街全部、誰のものでもないから安心して。
水槽の向こうで魚たちは途切れなく泳ぎ続けている。余韻にゆるやかに響く愛の言葉は静か。私たちの孤独は硝子に映り、重なり合うことなく隣り合う二人の沈黙。私の内なる波は、同じ光を浴びながらも君と交わらない。仮定の幸せは水の青に溶けもせず、ただ別々の作られた深海を秩序良く見つめている。
白い薔薇の群れが私を見つめている。花びらはすべて夢の亡霊みたいで触れれば溶けてしまう。誰もそのやわらかさを知らない。空気は青く歪んでいて、深呼吸をすれば心臓が静かに沈んでいく。君の光だけが微かに残って、私の呼び声は不明瞭に途切れてしまった。今は、薔薇たちは私より長く息をしている。
酸素のかわりに涙を吸い込んで、胸の奥の腐敗を確かめている。言葉なんて信じられなくて、でも君の声だけは水みたいに喉を流れ落ちる。落胆に眠れない夜に爪を噛んで、赤く腫れた心臓のかけらを誰にも見せられなくて、夢の中でだけ私たちは青い花を抱きしめて、どうかこのまま、目を覚まさないで。
朝焼けの空から咲いた薔薇の花びらが、私の夢を塗り替えていく。光の粒が瞼に落ちて痛いほど眩しい。それは誰かの涙のようで、でも私の鼓動だった。ねえ、この世界はもう戻れないくらい甘くて苦い。それは私たちのささやかな秘密で、そして誰も知らない始まりの合図だった。鮮やかだね、私たちの夢は。
花が顔を覆う。目隠しの光が頬を撫でる。なりたい自分になりたくて、チュートリアルからやり直しだ。静かに咲き、静かに散る。この瞬間は、誰かの夢の欠片。風が運ぶ、花びらの記憶。触れられない、でもそこにいる。色が溶けて、境界が消える。ただそこに、花がある。美しくなりたかった、でも叶うよ。
静かに息を吸い込むたびに、肺の奥底に溜まった冷たい夜の空気と、いつまでも消えない小さな光が混じり合っていくのを感じる。それは誰も知らない、私だけの透明な毒だ。無感動に生きていこうと決意した日を思い出しては、延命の虚しさに赤い首元をさする。罪悪感が混ざり合う、早く終わりたいのに。
僕らの呼吸は少しずつ溶けていく。目を閉じれば命が砕けて、眩しいはずの絆を裏切った。君の指先は白すぎて、触れられるたびに世界の色が剥がれてしまう。存在の空白を信じられない鳥たちは、翼を重ねて互いの死を確かめている。壊れることだけを未来のように抱いている僕は、君の手を取れなかった。
もう誰もいない街にふたりだけ、楽しみ方を忘れた公園で、崩れかけたブランコが軋む音だけが正しい。空が真っ赤な夕焼けに溶けていくのは、私たちの秘密の傷口が開いたせいだ。呼吸をするたびに、胸の奥で何かが壊れていく。それが生きていること。私たちは壊れたままただそこにいる。それだけで十分。
生きていたいという願いは、死にたいという願いと、きっと同じ痛みを共有する。この冷たい画面に映る私も、画面の向こうの君も、結局はどちらかの夢の残骸。愛をつくればいい、と誰かが言う。支配と弱さ以外は誰もいない場所で。そして私は私の孤独を殺そうと、いつも、この手で誰かの温かさを探す。
好きで好きで、病んでいる私のことを躊躇せず壊してよ。君の髪が青いのは海のせい。蝶の羽が光を帯びるのは、その空のせい。波が揺れるたび、君は新しい私になる。世界はどこまでも青く、そして私たちはただの波で、ただの蝶で、ただの人間。光を反射するだけのただの存在。好き、嫌い、君は光の全て。
眠気に沈む瞳はどこか遠くを探してしまう。あなたへの手紙、書き損じた束を手放した部屋に差し込む光は、紙の上で溶けて薔薇に似た影を落とした。淡い炎のように触れられぬ美しさが心を焦がす。言葉にならない吐息が虚空に散る。あなたを想う時間だけが静かに色を帯びて、完璧な永遠に近づいていく。
君の瞳はいつも濡れていて、光を反射する。私の心は誰かの手で編まれた花のように、綺麗に並べられて、でも、それはきっと誰かのためで、私のためじゃない。全部私じゃない誰かの美しい景色。泡のようにすぐに消えてしまう。それが、一番、正しいんだと思う。
無菌室で眠る君に、無力な愛を咲かせる赤い薔薇。大切なものの壊し方は、君はきっと誰よりも上手だろう。やり残したことはありますか、世界の代替品は私で足りるでしょうか。君が儚さという幻惑で人の親切を砕き続けた日々を、私は愛してる。薔薇が君を深く眠らせる。余韻の間に、夢に刺し抜かれて。
夜の海の波が僕を消し去るみたいに冷たい。もう渡す人もいない花束を抱えてる、そう、どうせ届かない。遠い街の君の部屋、窓の外は嘘みたいに綺麗な月夜だね。君の影は思い出を全部吸い込んで、未来が見えなくなる。僕達は離れているのに、同時にただ壊れていく、硝子みたいな光の欠片に言葉を残して。
白骨の色をしている、苦く思い出す後悔の思い出。若草が揺れる光の中一人佇む少女の安らぎと、部屋に散らばる硝子の破片の冷たい輝きは、脆く美しい世界の断片のようだ。互いを思いやる温もりを知るからこそ、孤独の影に怯える心。それでも欠片を集め、繋ぎ合わせるように、優しさを探して生きていく。
窓の向こうに浮かぶ白い月は、呼吸の仕方を忘れた心臓を照らし出す。光は幻のように鮮やかで、触れようとすれば指先ごと崩れ落ちてしまいそう。私は声も体温も置き去りにしたまま揺れている。夜は優しいのに残酷で、静けさの奥で確かに響くのは、自分の存在がひとしずくの水音にすぎないということ。
生きるための試練ってさ、みんなが手を合わせて拝んでる綺麗なお人形みたいで気持ち悪い。誰かを救うために誰かを平気で捨てるくせに拍手されて、教科書の隅に書かれた綺麗事で殴られて、悪いのはいつも私みたいなはみ出したやつ。でもほんとは正義の方がよっぽど残酷だ。曇りない血の匂いに酔ってるのに、愛を香水みたいに振りまいて、みんな笑ってる。だから私もう正義なんて要らない、ただ壊れていくのを静かに見てたいの、嫌いなお人形が死ぬときの顔を、ずっと見ていたいの。生活は水色の風、本当はそうやって穏やかな顔ができるはずなんだ。